蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第50話:囚われた心

ー 7年前 ー

 

瑠璃乃「めぐちゃん、すっごーい!ダンスじょうず!まるで大人のお姉さんみたい!」

 

慈「ふっふーん!でしょでしょー☆まっ、家でほんのちょっと練習しただけなんだけどねー☆」

 

瑠璃乃「えー!?めぐちゃん天才じゃーん!」

 

淳平(よく言うよ。俺に見てもらいながら3日間も練習してたくせに……ま、言わないけど)

 

慈「ほらほら、次はるりちゃんの番だよ。私とジュンでちゃーんと教えてあげる。2人で踊ったら100万倍かわいいんだから!」

 

瑠璃乃「世界中が、めぐちゃんとルリに夢中になっちゃうね!」

 

慈「そゆこと!ま、わたしたちにとっての1番は決まってるけど!」

 

瑠璃乃「うん!」

 

淳平「?」

 

ー それから1年後 ー

 

慈「えー!?るりちゃん転校しちゃうの!?」

 

淳平「そんな……」

 

瑠璃乃「うん……。やだ、ルリ、めぐちゃんとジュン兄ぃと離れたくない……ずっと、2人と一緒がいい……」

 

慈・淳平「「……………」」

 

 

 

そして、時は現在。合宿から学校に戻ってきたスクールアイドルクラブ。ルリのライブまで、あと3日に迫っていた。

 

瑠璃乃「ライブまで、あと3日……。今度こそだよ、めぐちゃん。ルリたちで、世界中を夢中に……。歌もダンスも頑張ってきたし、体力だってついた!あとはステージにあがって、ベリーベリー頑張るだけ……なんだけど」

 

瑠璃乃はもしもの時のことを考えてしまう。

 

瑠璃乃「はぁぁ……ルリ、大丈夫かなぁ。もしライブ中に充電が切れちゃったら……」

 

 

瑠璃乃『――あ、終わりです。では、さよなら……』

 

慈『る、るりちゃん!?』

 

 

 

 

瑠璃乃「全然ダメじゃん!ダメすぎるーー!!でも、こればっかりはどうしょうもないし……ソーラーパネルでも背負ってれば良いのかな?ラ〜イブ天気にな〜あれ〜!」

 

てるてる坊主を作り始める瑠璃乃。すると、部室に慈がやって来た。

 

慈「? るりちゃん、なにしてるの?」

 

瑠璃乃「て、てるてる坊主作ってる……」

 

慈「ふ~ん。ま、ライブは晴れててほしいもんね」

 

瑠璃乃「う、うん。あ、ていうかどうしたのめぐちゃん。部活復帰する気になった!?」

 

慈「いいえー?梢から借りてたノートを返しに来ただけで〜す」

 

瑠璃乃「ふ~ん。ま、めぐちゃん勉強だけは苦手だったもんね?」

 

慈「それは昔の話!!中学の時も赤点なんか取ったことないよ!!」

 

瑠璃乃「あはは。どーせジュン兄ぃに教えてもらったんじゃないのー?ジュン兄ぃ教えるのも先生よりもうまかったし」

 

慈「ぐっ、事実だから何も言えない……」

 

瑠璃乃「ホントにそーなの!?」

 

慈「うん。ジュンがいなかったら、テストのたびに毎回赤点取ってたと思うよ……」

 

瑠璃乃「うわぁ……めぐちゃんジュン兄ぃに足向けて寝れないじゃん」

 

慈「たとえそーじゃなくても、ジュンを粗末な扱いなんかしないからね!?」

 

瑠璃乃「わかってるよ……めぐちゃんの初恋だもんね。まだ続いてるんだ?ルリもだけど!」

 

慈「ふ~ん。やっぱりか……」

 

瑠璃乃「相変わらずジュン兄ぃは気づいてないからね」

 

慈「そう!あの朴念仁!!こっちがいくらアプローチしても気づかないの!!」

 

瑠璃乃「でも、めぐちゃんの成績を心配したおばさんとおじさんから蓮ノ空に入れられちゃったんだもんね?」

 

慈「そう!せっかくタレント活動が上手く言ってたのに、お願いだから一般教養を身に着けてね?、って寮に閉じ込められちゃって!人生終わったと思ったよ……」

 

瑠璃乃「めぐちゃん、魑魅魍魎(ちみもうりょう)って書ける?」

 

慈「馬鹿にしないでくれる?そのくらい簡単に、簡単に………さすがに書けないわよぉっ!!」

 

瑠璃乃「あははっ!」

 

まったく、と慈は一呼吸おき、

 

慈「るりちゃんのライブ、もうすぐだね」

 

瑠璃乃「んっ!めぐちゃんは、もちろん来てくれるよねっ?」

 

慈「……まあ。でも、大丈夫なの?」

 

瑠璃乃「え、何が?あ、いや、確かに合宿ではまだまだ実力が足りてない所も見せちゃったけど!でも、ちゃんと努力は続けてるんだからね!梢先輩も綴理先輩も、ジュン兄ぃだって、こんなに!?ってくらい親身になってくれてるし!」

 

慈「そうじゃなくて、ほら。るりちゃん人と一緒だとすぐ弱弱になっちゃうじゃん」

 

瑠璃乃「そ、それは……」

 

慈「なのに、ほんとにみんなの前でライブができたりするのかなー、って」

 

瑠璃乃「る、ルリだって!留学でパワーアップしたんだよ!前よりずーっとたくましくなったんだもん!」

 

慈「そうかな、どうかなー。失敗するかもしれないんだったら、もうちょっと練習を積んでからのほうがいいんじゃない?」

 

瑠璃乃「のーぷろぶれむ!ルリのスペシャルでマーベラスなステージを見せて、めぐちゃんに元気になってもらうんだから!」

 

慈「……それなんだけど、あたしのためにライブをやろうっていうなら、やめたほうがいいよ」

 

瑠璃乃「えっ、どうして……?」

 

慈「気持ちは嬉しいし、るりちゃんのステージは私も楽しみだけど……。でもね、それを見ても、私がまたステージで踊れるようになるとは、思えないから。ごめんね」

 

瑠璃乃「なんでそんなこと言うの!?大丈夫だよ!ルリ、頑張るよ!」

 

慈「頑張るとかそういうのじゃなくてさ、るりちゃんと連絡取らなくなってからも、どうにかまたステージに立てるようにって、みんなの力を借りて私も手は尽くしてたんだけど、結局……だめだったから。好きだったスクールアイドルのライブ見に行ったり、ジュンに支えてもらいながらリハビリもやったんだけど……良くならなかった」

 

瑠璃乃「ルリが、バッテリー切れになるかもしれないからって、心配してそんなこといってくれているの……?」

 

慈「違うよ。私は、るりちゃんに無駄な努力をしてほしくないだけ」

 

瑠璃乃「やってみるまで分かんないじゃん!ね、どうしてそんなこと言うの!?やっぱりもう、スクールアイドルのこと、好きじゃなくなっちゃったの!?」

 

慈「違うってば!!!」

 

慈が瑠璃乃に怒鳴った。

 

慈「私のためとかじゃなくて、ちゃんと、自分のためにスクールアイドルをしてほしいの。きっと、楽しいことがたくさん待っているから。だから……」

 

瑠璃乃「ルリは!めぐちゃんと一緒にスクールアイドルがしたいの!!」

 

慈「煩いなぁ……!だったら言ってあげるよ!スクールアイドルなんかもう飽きたの!どうせただの暇つぶしで始めただけだし!ねえ、これで良いの?こう言えば満足!?」

 

瑠璃乃「ウソだよ!だって、電話であんなに楽しそうに……」

 

 

 

慈『今度はね、スクールアイドルで世界中を夢中にさせちゃうんだから!ねえ、るりちゃんも早くおいでよ、蓮ノ空に―――』

 

 

 

瑠璃乃「めぐちゃんのバカ!なんて言われても、ルリは止まらないんだからね!絶対、ぜったいぜったい、めぐちゃんとスクールアイドルするまで!ばーかー!!」

 

そして、瑠璃乃は部室を走って出ていってしまった。

 

慈「あっ、……るりちゃんの……バカ。なんで、そんな、私のために、そこまで……」

 

そこに、ルリと入れ違いで俺と梢、綴理が入って来た。

 

梢「慈?何か……あったの?」

 

綴理「今、るりが凄い勢いで飛び出していって……」

 

淳平「めぐ……?」

 

慈「え?ああ、うん、ぜんぜん、なんでもないよ!ただ、ちょっと軽くケンカしちゃっただけ。ぜんぜんだいじょーぶ……?」

 

すると、部室の隅に慈はあるものを見つけた。

 

慈「あ、私の靴。3人とも、まだこんなの取っておいたんだ……部活に来なくなって1年も経ってるんだから……捨ててくれても良かったのに……」

 

淳平「……めぐは、スクールアイドルクラブを辞めた訳じゃない。扱いはあくまでも休部だからな」

 

綴理「いつか戻ってきてくれるって、信じてるから……」

 

慈「……うん。うん…」グスッ

 

慈の瞳から、涙が溢れる。

 

慈「ジュン、梢、綴理……私、悔しい……。るりちゃんがあんなに言ってくれてるのに、目をとじるといつも、ステージの上で立ち竦んでる自分が……浮かぶんだ。3人にリハビリ手伝ってもらったけど、でもできなくて……ステージに立っても、ライブをぶち壊しそうになって……その度に、3人にフォローしてもらって……!!」

 

慈の口から、自分の思いが溢れ出る。すると、

 

慈「この…!この!!役立たず!!」バシッ、バシッ、バシィッ!!

 

慈は、なんどもなんども、自分の足をこれでもかと叩き始めた。

 

淳平「めぐ!そんなふうに自分の足を叩くな!!」

 

綴理「そうだよ!せっかく綺麗な足なのに!!」

 

慈「うっ……ジュンっ!!」

 

慈は、俺に必死の思いでしがみつくように抱きしめてきた。

 

慈「なんで……ステージで踊れないんだろ……やっぱり、もう、諦めるしか……ないのかなぁ……っ!」

 

淳平(めぐ……)ギュッ!

 

俺は、俺の胸の中で嗚咽を漏らすめぐを、ただ抱きしめる事しかできなかった……。

 

 

 

瑠璃乃「めぐちゃん……ルリ、がんばるかんね!!」

 

その会話を、慈の本当の気持ちを、ルリは扉の外で聞いていた。

 

 

ー つづく ー




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