突然旅館に呼び戻された俺たち。その前に広がっていたのは、ロビーに電話が次々と鳴り響き、お客さんが殺到している光景だった。
瑠璃乃「うるさっ!!電話電話電話おぶ電話じゃん!!」
梢「いったい、どういうこと?」
花帆「わかんないですけど、お客さんが殺到してるみたいで……」
綴理「……めぐ?」
慈「っ!まさか……!!」
めぐが先程自分が上げた旅館のPR動画を確認すると、
慈「やっぱり!さっき上げた動画、めちゃめちゃバズってる!!」
花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・淳平「「「「「「ええーーーっ!?」」」」」」
花帆「動画って、本当にバズるんですね!あたし、初めてみました!!」
瑠璃乃「めぐちゃん!がんばってよかったね!!」
綴理「すごーい」
慈「ええい!このお気楽三銃士!!」
梢「私たちのライブが、お役に立てたのは良かったけど……」
淳平「明らかに手が回ってなさそうだぞ……」
さやか「とはいえ、私たちもそろそろライブ会場に向かわないと……」
淳平「分かった。俺が残って手伝ってく」
花帆「淳兄ぃ……」
淳平「俺はライブに出るわけじゃないし、準備を除けば俺はいても居なくても変わらないからな。俺が手伝って、手が空き次第向かう」
梢「分かったわ。たぶんそれが良いわね。でも、ひとつ聞き捨てならない事があるわね」
淳平「?」
梢「淳が、いても居なくても変わらないなんてことはあり得ないわ。私たちにとって、淳はいなくてはならない存在なの」
さやか「そうですよ。自分のことをそんなふうに言わないでください!」
………俺にここまで言ってくれるのか。嬉しくて泣いちまうだろ。
淳平「悪い。とにかくお前らはライブ会場に向え」
梢「分かったわ」
慈「……………………」
淳平「めぐ?」
慈「いや、なんでも……。そうだね。行かなくっちゃ。私たちには、私たちのやるべきことがある。会場のみんなが、待ってるもんね!」
梢「ええ、心苦しいけれど。じゃあ淳、後はたのむわね」
淳平「おう!」
そして旅館を出てバス乗り場に行くみんな。バスはもう来ており出発間近だった。
花帆「って、もうバス来てますよ!」
梢「あれに乗らないと、遅れちゃうわ!」
さやか「急いでください、綴理先輩!」
綴理「ほら、るりも」
瑠璃乃「あっ、うん!」
慈(…………私は)
そしてみんなを乗せたバスは出発。ライブ会場に向かった。
花帆「ふー………、なんとかなりましたね!」
綴理「間に合って良かった」
さやか「あはは…最後はちょっと慌ただしかったですね。淳平先輩には申し訳ないです……」
梢「旅館の様子を見ると、どうしてもね。淳が残ったし、後ろ髪を引かれる思いだわ」
瑠璃乃「でも、めぐちゃんの動画、すごい効果だったよねー……。って!」
花帆「へ?」
瑠璃乃「め、めぐちゃん!? 手、繋いでたはずなのに、荷物にすり替わってる!!」
花帆・さやか・梢・綴理「「「「ええーーーっ!?」」」」
その頃、旅館では、
慈「『ごめん、ちょっと遅れる。みんなはライブの準備頑張って』、と……」
すると、慈のスマホに着信が。
慈「げ、電話だ……。まあいいや、電源切っちゃえ!ジュン!」
淳平「めぐ!? なんで! 他のみんなと一緒に行ったんじゃないのか!?」
慈「そもそも私のせいでこうなったんだから、全部ジュンに尻拭いさせるわけにはいかないよ!今までだってずっとそうだったんだから、今回は私も一緒にやる!」
淳平「……。アホかお前……」
慈「アホで良いよ。終わったらすぐに一緒に向おう!2人でやれば、その分早く終わるはず!」
………ったく、
淳平「分かったよ!」
慈「うん!」
そして旅館の従業員の制服に着替えた俺たちはお手伝いを始める。旅館の人には『ライブは大丈夫なのか?』と、聞かれたが、あいつらなら大丈夫だろうと答えた。
だが、
淳平「くそっ!お客さんぜんぜん減らねぇ!!」
慈「むしろ増えてるよ!」
淳平「めぐ、少し空きそうだから客室の清掃に回ってくれ!」
慈「分かった!」
そして淳平に言われて客室に向かった慈。
慈「まだお掃除の終わってない部屋を、片付けて、と……。タオルやシーツの交換!洗濯!アメニティの補充!ゴミも回収して、後は掃除機をかけて……!ぎゃー!この部屋めっちゃ散らかってる!元気のいいお子さんが泊まっていらっしゃったもんねぇ!」
すると慈はふと、思い出し、
慈「あの子、ミニライブ喜んでくれてたな……。そういえば、今度のライブも絶対行くよ、って応援してくれたっけ……。ライブ、この調子じゃあ間に合わないかな……。っ!ダメダメ!こんな事考えてる暇があるなら手を動かさないと!!」
そして客室の清掃をしためぐは女将さんに言われてフロントの方に来た。
慈「ええと、お次でお待ちの方、診察券と保険証をご用意して……って、違う違う!これは1日看護師でやったやつだ……えっとえっと……!い、いらっしゃいませー!」
すると、
瑠璃乃「めぐちゃん!」
慈「え"!るりちゃん!? みんなも!? なんで……」
梢「なんでもなにもないでしょ!」
花帆「大急ぎで、ライブの準備終わらせてきましたよ!!」
さやか「それで、バスに乗ってすぐに戻ってきた……というわけです」
綴理「時間は稼いだ。でも、ほんの少しだけど……」
淳平「お前らまで! ライブ、間に合わなくなるかもしれないんだぞ!」
瑠璃乃「だからめぐちゃんのために、ルリたちが戻ってきたんだよ!めぐちゃんのばか!自己チューギリギリライン越え!」
梢「さ、みんな。慈を叱るのは、また後でね。混雑が落ち着くまでは、もうひと働き。ライブの時間ギリギリまでは、粘りましょう」
慈「梢……」
梢「どうせ、こんなことだろうと思ったわ。淳1人に負担を押し付けたくなかったんでしょ?せめて一言、相談してほしかったわ」
慈「べ、別に、私とジュンでどうにでもなると思ったんだよ!」
梢「はいはい。それじゃあ花帆さんと私は、お部屋の掃除に回りましょう。昨日も少し手伝ったから、やり方は大丈夫よね」
花帆「はい!」
さやか「では、わたしたちは夕食の準備ですね。なるべくお使いを引き受けて、厨房の負担を減らせるように頑張りましょう」
綴理「ん」
慈「……みんなも、急いでライブの準備して戻ってきたから、へとへとのくせに……。だから、言わなかったんじゃん」
瑠璃乃「ね、ルリはどうすればいい?めぐちゃん、ジュン兄ぃ」
慈「ん……。それじゃあるりちゃんには、電話応対やフロント業務を手伝ってもらいたいな。ジュン、それでいい?」
淳平「おう!頼むルリ!」
瑠璃乃「よっし、やるぞー!なんとかならなかったら、そのときはそのときだ!」
慈「おっけ。じゃあ、蓮ノ空学院スクールアイドルクラブ!各自、出動ー!」
花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・慈・淳平「「「「「「「おおーーーーっ!!!」」」」」」」
そして各自の持ち場で仕事を始めた俺たち。お客さんは減らないまでも、なんとか捌き切れるくらいには持ち直した。
瑠璃乃「だめだぁ!なんとかついては行けるけど、減らない!」
綴理「さすがに、ライブまで時間ないね」
さやか「梢先輩は?」
花帆「抜け出せなかったよ〜!あたしだけ……」
瑠璃乃「どうしよ、めぐちゃん、ジュン兄ぃ……」
さやか「手順の複雑な料理をシンプルなものに変更して、厨房の人数を他の部署に回せるようにしようか、という案も出ていましたが……」
花帆「えーやだー!いちばん美味しい料理を食べてほしいよー!」
慈「ッ、ごめん、みんな。戻ってきてくれてありがとう。頑張ってみたけど、時間切れみたいだよ」
淳平「めぐ……?」
慈「みんなはライブに向かって。ここには、私とジュンで残るから」
淳平「は!?」
花帆「慈センパイ……」
慈「私は、もともとそのつもりだったしね。この状況を作ったのは私の責任。だったらどうするべきかは、決まってるでしょ。全員が丸く収まるには、もう、それしかないよ。これ以上、みんなにも、旅館の人にも、ライブに来てくれる人にも迷惑はかけられないよ。だって、今までもさんざん……。私がなんとかする。だからみんなは、みんなのやるべきことを――」
瑠璃乃「それは、なんか違う!」
慈「違う、って……」
瑠璃乃「めぐちゃんが1人で残ったときから、なんかやだなー、変だなーって思ってたんだよね。でも、ようやく分かった。うん。めぐちゃんぽくない!!」
慈「はあ!?そんな事言われても……私が藤島慈だよ!?」
瑠璃乃「めぐちゃんだったら、たとえ誰かのためでも、自分の楽しみを曲げたりしないんだよ!」
慈「は、はあ!?そんなの、さすがにわがまますぎじゃあ……」
淳平「今更それを言うのか……?」
慈「ジュン……」
淳平「俺、子供のときからずっとお前のわがままに振り回されてきたんだけど?」
慈「っ!それは……」
綴理「そうじゃなくても、誰にも誰かの代わりなんて無理。さやはさやだし、めぐもめぐ」
慈「でも、だけど、私のせいで……」
瑠璃乃「だから!ね、ちゃんとみんな全員で本当に納得できる道を探そ?」
淳平「そうだぞ?めぐのわがままなんて、今更増えたところでどうってことないさ。それにめぐは、そのわがままで、俺やルリに今まで見たこともなかった景色を見せてくれるんだ。めぐ、めぐはどうしたい?」
慈「っ!それは……」
瑠璃乃「そうだよ。めぐちゃんなら思いつくでしょ?それがめぐちゃんの役目だよ!」
慈「ジュン…、るりちゃん……」
さやか「厨房はもう少しで夕食の準備が終わるので、それさえ済めば手が空くはずです」
花帆「そういえばさっき女将さんが言ってたけど、もうちょっとで他の旅館からもお手伝いの人が来てくれるって」
瑠璃乃「フロントのお仕事はピーク過ぎちゃえば後は今いる人で回るはず!」
淳平「どうする?めぐ」
慈「……確かに、ちょっと変だったかもね。るりちゃんの言う通り、私がなんとかしなきゃって思ってた。今までさんざん梢と綴理とジュンに役目を押し付けてきて、だから挽回しなきゃって意固地になってた。けど、そうだね。私らしくなかったと思う」
瑠璃乃「めぐちゃん……!」
慈「私がやるなら、もっとちゃんと、みんなが楽しい道を選ぶよ。だから――、私がライブ会場に向かう。会場で、みんなが来るまで場をもたせる!」
花帆・さやか「「ええっ!?」」
花帆「そんな!慈センパイ1人で!?」
さやか「わたしたちがいつ合流できるかも分からないのに……!無茶ですよ!」
慈「そうだね……。他の誰かだったらね!! いつも配信でやってることをやるだけだから!他の人よりは可能性があるはず!!ちゃんと会場のみんなを楽しませて見せるから!」
瑠璃乃「めぐちゃん!!」
慈「私がなんとかしてみせる!それって、こういうことでしょ!」
綴理「うん。ビビッときた。たぶんそっちが、正解だ」
慈「偉そうに!」
さやか「慈先輩の配信、いつもハツラツとしていて、明るくて、眩しくて……。見ているととても、元気になれる気がして。だから、先輩ならきっと大丈夫です!」
花帆「すぐにあたしたちも追いつきますから!」
淳平「おう!一発かましてやれ!!」
慈「うん。行ってくる!!」
そして、慈は旅館から出てライブ会場に向かった。
すると、
梢「みんな!」
花帆「あっ、梢センパイ!今、慈センパイが……」
梢「! そう、慈が……。慈なら、心配は要らないわ!さあ、私たちは仕事をさっさと片付けて慈に合流するわよ!」
花帆・さやか・瑠璃乃・綴理・淳平「「「「「おおーーーーっ!!!」」」」」
ー つづく ー
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