蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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幕間 想いの芽生えた日
第72話:日野下花帆編


慈と2人でピクニックデートし、その時に俺はみんなの気持ちを知った。

 

まさか俺が、6人全員から恋愛対象と見られていたことは驚いたけど、嫌な気持ちはまったくしない。むしろ嬉しさを感じるまである。

 

だが、俺はあの6人の中から、たった1人を選ばなくてはならない。他の5人は深く傷つける事になってしまうだろう。

 

淳平(まあ、それが恋というものだって言ったらそうなんだけど………)

 

それでも、6人の内の誰か1人でも泣いているところを想像しただけで、オレの心にはモヤがかかる。

 

淳平(いっそのこと、6人以外から……っていうのはやっぱりダメだよな。俺もんなことできないし……)

 

やる気は無いが、もしやったらどうなるか分からんしな……。

 

淳平「はぁ……」

 

俺は部屋のカーテンを開けて外を見る。外はもう暗く、夜の闇が支配していた。

 

淳平(あれ? 今女子寮から…あれは、花帆?)

 

花帆に似た人影が女子寮から出てきた様に見えた。こんな時間に心配になり、俺も男子寮の外に出た。その人影は、すぐそこのベンチに座っていた。

 

花帆「はぁ……「花帆?」っ! あれ、淳兄ぃ?どうしてここに……」

 

淳平「なんか寮からお前が出てきたのが見えてさ。……眠れないのか?」

 

花帆「うん……。だって、ようやく淳兄ぃが気付いてくれて、やっとあたしの恋はスタートしたんだもん。まぁ、他のみんなも同時だったけどね……」

 

淳平「ああ………、悪い」

 

俺は申し訳無さそうに謝る。今だから分かる。花帆やみんなにはそうとうイライラさせたり、落ち込ませてしまっただろう。

 

花帆「いいよ! こうして気付いてくれたんだもん! でも、覚悟したほうが良いよ?今まで気づいてくれなかった分、みんなすごい勢いでアピールしてくるハズだから。もちろんアタシもね!」

 

淳平「ああ……。分かった」

 

そして、ここで俺は気になることを花帆に聞いた。

 

淳平「でも、いったいいつから俺のこと好きだったんだ?キッカケとかあったのか?」

 

花帆「え、聞いちゃう……?」

 

淳平「差し支えなければ答えられる範囲で良いから教えてくれると嬉しい」

 

花帆「ん〜、そうだなあ……。あたし、小学生の時良く病気してたせいで、お正月とかお盆とか集まるときっていつも淳兄ぃやおじさんたちがうちに来てたでしょ?」

 

淳平「そうだな」

 

花帆「それでも、あたしは中々部屋から出られなくて……でも、淳兄ぃはいつもあたしの部屋に来て、最近あった事とか、学校での事とか話してくれたでしょ? そのおかげで、あたしも少し楽しかったし、「絶対に良くなるんだ!」って、気持ちを強く持てたし。それに淳兄ぃ、「いつか花帆が良くなったら、一緒に楽しいことやろうな?」って、言ってくれたでしょ? その約束が、私の心の支えだったんだ……」

 

淳平「花帆………」

 

その時のことは良く覚えている。だが、あの言葉が花帆にとってそんなに大きな物だったとは思わなかった。

 

花帆「おかげで、淳兄ぃや梢センパイたちと今こうやってスクールアイドルやれてるしね!」

 

淳平 クスッ「そうだな……」

 

花帆「それがあったから、あたしの中で淳兄ぃは大好きなお兄ちゃんって感じだったんだあ。でも、恋に変わったのはあの時……」

 

淳平「あの時……?」

 

花帆「うん。小学校を卒業する3ヶ月前。お正月だね。ほら、あたしもようやく病気が良くなってきたからって、あたしと淳兄ぃで朝早くに初詣に行ったでしょ?」

 

淳平「ああ、覚えてる……。あのとき花帆、俺と逸れて、雪が降ってる中で一人になっちまったんだよな」

 

今思い出してもとんでもない状況だよな。花帆はようやく病気が治ったばかりなのに、下手したらまた再発してもおかしくない。

 

花帆「うん。あたし、それまであんまり外に出たこと無かったから、街の地理とかも地元なのに詳しくなくて、淳兄ぃ探してるうちに迷っちゃって……寒くて、どうしようかと思ってたら……」

 

淳平「俺が、なんとか見つけられたんだよな……」

 

花帆「そうだよ…。淳兄ぃ、すごい息を切らして、あんなに寒かったのに顔は汗だくで真っ赤。すごく心配してくれて、あちこち走り回って探してくれたんだって、すぐに分かった」

 

淳平「そうだったな。懐かしい……あっ、」

 

そう言えばその時……

 

花帆「そしたら淳兄ぃ、アタシをギュッて抱き締めて、すごく謝ってきたよね。あたしが手を離しちゃったのが原因なのに……」

 

淳平「いや、そりゃあな……」

 

やばい、恥ずかしくなってきた。

 

花帆「そしたら淳兄ぃ、自分の着てるジャンパーを脱いで私に着せてくれて、雪道で足元も悪いのにこれ以上疲れさせないように……って、あたしのことをおぶって家まで帰ってくれたでしょ? あんなことされたら惚れる人は惚れるよ? あたしはその惚れてしまう人だったわけだけど……」

 

淳平「あ〜……なるほどね。じゃあ、それから夏休みとか正月に俺の家が花帆の家に行ってた時によくくっついて来たのは、あの時からアプローチを開始してたのか?」

 

花帆「正解!!」

 

淳平「……なんで気づかなかったんだろ、俺」

 

花帆「そんなのあたしが聞きたいよ……。でも、こうして気づいてくれたから良いの! もしも、あたしを選んでくれたら、これ以上嬉しいことは無いよ?けどね、淳兄ぃには、自分が本当に好きな人と付き合って欲しい。たとえそれで、どんな結果になっても。淳兄ぃだったら、あたしたちに真剣に向き合って決めてくれるだろうから」

 

淳平「花帆………」

 

こんなに、信頼されてたのか………。それなのに俺は、何も気づかずに……

 

淳平「分かった。ちゃんと向き合って、考えて、答えを出す」

 

花帆「うん!!」

 

花帆は、まるでお日様のような眩しい笑顔で笑う。

 

淳平「っ/// じゃあ、そろそろ戻るか……「あっ、待って」ん? なん……チュッ…?!」

 

俺が花帆に呼び止められて振り向いた瞬間、花帆は俺の肩に手を掛けて背伸びして俺の唇にキスしてきた。

 

花帆「慈センパイばっかりズルいからね! じゃあ、お休み!!」

 

そして花帆は上機嫌で女子寮に戻っていった。俺はと言うと………

 

淳平「………………………………」

 

放心状態のままぶっ壊れており、再起動するまでに10分近くかかった。

 

 

ー つづく ー




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