梢「じゃあ、今日の練習はここまで!」
花帆・さやか・瑠璃乃「「「あ、ありがとうございました!!」」」
綴理「お疲れ〜」
慈「お疲れ様!」
みんなが練習を終えてレッスン室を後にする。
淳平「じゃあ片付け終ったら俺も帰るな」
梢「ええ」
俺がみんなが使った練習道具を片付けようとすると、
さやか「淳平先輩、わたしも手伝います!」
さやかちゃんが戻ってきて手伝いを申し出てくれた。
淳平「ありがとう。じゃあヨガマット畳んで鏡の脇に置いといて?」
さやか「分かりました」
さやかちゃんが6人分のヨガマットを畳んでいく。さやかちゃんは家事能力はとても高く、掃除洗濯任せて安心だと前に綴理が言っていた。
そのくらい自分でやれよと思ったけど……。
後はこの間の旅館でのお手伝いの時も凄かったらしいが、料理の腕もピカイチらしい。いつか食べてみたいなあ……。
俺がそんな事を考えていると、
さやか「……………」タッ
淳平「!?」
ギュッ!!
さやかちゃんが突然背後から抱きついてきた。俺の腹の方に腕を回して、背中に顔を埋めてくる。
淳平「さ、さやかちゃん?!」
さやか「大丈夫です。もう終わりましたから」
見るとマットは全てたたみ終わっていた。いや、そうじゃなくて!!
さやか「淳平先輩、覚えてますか?わたしのお姉ちゃんの引退の日程と綴理先輩が楽しみにしていた大会の日程が重なってしまって、わたしが綴理先輩にフィギュアかスクールアイドル、どちらをやってどちらを辞めるかの選択を迫られたときを……」
淳平「………覚えてるよ。あの時は綴理にスゲェ呆れてしまったけどな。「なにそんな酷なこと言ってんだ!」って」
すると、さやかちゃんは首を横に振り、
さやか「わたしも、あの時は本当にショックでした。でもその後、すぐに先輩が追いかけて来てくれて、嬉しかったんです……」
淳平「…………………」
さやか「淳平先輩は、わたしがどうしたらいいかと悩んでいたら、わたしにフィギュアよりもスクールアイドルやって欲しいって言いましたよね?」
淳平「うっ! その、ごめん……」
さやか「謝らないでくださいよ。確かに、そんな簡単に言うなとは思いましたよ?けど、あの時わたしは、お姉ちゃんにも綴理先輩にも要らないって言われたと思い込んでて……眼の前が真っ暗になって……、それでも…淳平先輩はわたしをスクールアイドルに必要としてくれた。あんなに、自分を責めていたわたしを……自身を否定していたわたしを、肯定してくれた。それが、どんなに嬉しかったか……」
さやかちゃん………。あの時は、俺も心の内を曝け出して言わないと絶対に伝わらないと思ったから、俺もあんなこと言ったけど、さやかちゃんには伝わってくれた。
結果的に良かったんだと思えた。
さやか「こんなわたしでも……恋に落ちるには、十分すぎたんです……」
淳平「さやかちゃん……」
さやか「わたし、今までに恋とかしたことなくて……その時のちょっと前から、「なんか最近気がついたら淳平先輩を目で追ってるな……」とは感じてたんですが、それが恋だとは思っても見ませんでした。それに、あれが恋なら、わたしは今までに同じ感情を抱いた男性は1人も居ません」
淳平「つまり、俺が……初恋だったってこと?」
さやか「はい! わたしは、できることなら、ずっと淳平先輩の隣に居たい。花帆さんにも、慈先輩にも、それこそ綴理先輩にだって、渡したくないんです!!」
淳平「なんでそんなに……、俺なんかを……」
さやか「俺なんか、なんて言わないでください!! わたしにとって、淳平先輩は本当に大きい存在なんです。共にステージに立つわけではないけれど、ステージの上でも、確かに背中を支えられてると感じられる。そんな人が、「なんか」のはず無いじゃないですか!!」
俺は、ちゃんとみんなの支えになれてたんだな……。
一年前、部がばらばらになって行くのを止められずに……無力感を味わってたけど……。
さやか「淳平先輩はもしかしたら、慈先輩が怪我した時に何もできなかった事で無力感を感じてるかもしれませんけど、今こうして慈先輩も、梢先輩も、綴理先輩も、在るべき姿に戻って一緒に活動できてるのは、瑠璃乃さんと……淳平先輩がいたからだと思いますよ?」
淳平「そっか………。なら、嬉しいな…」
さやか「はい!!」
俺の瞳から、涙が溢れる。
淳平「ありがとう。さやかちゃん……」
さやか「いえ、わたしは…淳平先輩が、わたしを選んでくれるのを待ってますから! でも、これからもガンガンアピールしますけど。わたし、意外と恋は攻めるタイプだったみたいで」
さやかちゃんがクスッと笑う。
淳平「分かった。どうなるかは分からないけど、答えを出すときを待ってて」
さやか「はい!!」
そして片付けを終えた俺とさやかちゃんは部室に戻り、さやかちゃんは荷物を持って先に帰り、俺は部活の活動日誌を書いてから帰った。
淳平「俺、気づかない間にスゲェことやってたんだな………」
そう思うと同時に、尚更なぜ気付かなかったんだろうと自分が信じられずに自己嫌悪に陥っていた。
ー つづく ー
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