蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第77話:夕霧綴理編

ルリちゃんと一緒に早朝のグラウンドを走って、寮に戻り朝ご飯をいただいたあと、俺はスクールアイドルクラブの朝練の準備で部室に早めに来て準備していた。

 

淳平「うし、これで良いかな」

 

今日の練習で使う機材を用意する。あとはこれをレッスン室に持っていくだけだ。

 

そこへ、

 

梢「おはよう淳」

 

淳平「おう、梢おはよう。やっぱり一番乗りは梢か……」

 

さすが部長というべきか、梢が一番に入って来た。

 

梢「何言ってるの。一番は淳じゃない」

 

俺と梢が笑い合う。するとまた部室の扉が開き、

 

慈「おはよー!」

 

瑠璃乃「おっはよー!!」

 

めぐとルリちゃんが入って来た。

 

梢「慈、瑠璃乃さん、おはよう」

 

淳平「おはよう。みらくらぱーく!が一番に揃ったか」

 

慈「おっ、ホントだ……ってDOLLCHESTRA1人も来てないじゃん!!まったくもうアイツらはー!!」

 

慈がプンスカと頬を膨らませる。すると、

 

花帆「おはようございます!」

 

花帆が息を切らしながら入って来た。

 

梢「おはよう花帆さん。間に合ったわよ?」

 

花帆「ふ〜良かったです……ってあれ? さやかちゃんと綴理センパイは?」

 

慈「まったくもう…たるんでるよ!」

 

淳平「いや、間違いなく原因は綴理だろ……ん?」

 

すると、俺のスマホにさやかちゃんから着信が。

 

淳平「もしもし?」

 

さやか『あっ、もしもし淳平先輩!綴理先輩が!!』

 

聞くだけで慌ててると分かる声。何かあったのか?

 

淳平「!! 落ち着いてさやかちゃん! 何があった!!」

 

さやか『今日、綴理先輩の部屋に起こしに行ったら、綴理先輩の顔が真っ赤で、具合悪そうで……熱を測ったら40℃近くあって……!!』

 

淳平「なに!?」

 

それヤバくないか!?

 

さやか『わたし、どうすれば……』

 

淳平「取り敢えず急いでその部屋から出て!!口と鼻を抑えながら自分の部屋に戻って、マスクがあったらして待ってて!! すぐに行くから!!」

 

さやか『は、はい!!』

 

そして俺は電話を切る。

 

淳平「悪い、聞いたとおりだ。行ってくる!!」

 

慈「まったく綴理のヤツ! こんな大事な時期に熱だすなんて!!」

 

梢「急いで行ってあげて!!」

 

淳平「ああ、分かった!」

 

そして俺は女子寮に向かって走った。途中寮監に止められそうになったが、一刻を争うので無視してさやかちゃんの部屋に。

 

寮監は慌てて追いかけてきたが、

 

淳平「さやかちゃん!!」バンッ!!

 

俺がさやかちゃんの部屋の扉を開けると、言われた通りマスクをしたさやかちゃんが出てきた。

 

さやか「淳平先輩……っ! 綴理先輩が!」

 

淳平「分かってる。さやかちゃんは今日は念の為に学校は休むこと。今日何もなかったら、明日から来ていいから。綴理は俺に任せてくれ」

 

さやか「はい……」

 

そして部屋の外で話を聞いていた寮監に小言を言われながら綴理の部屋に向かい、部屋の扉を開ける。

 

淳平「綴理……?」

 

綴理「っ!…………ハァハァ。うぁ…」

 

見るからにうなされて苦しそうだ。これは起こしたほうが良いな。

 

淳平「綴理!綴理起きろ!!」

 

綴理「っ!! あれ…夢……? ハァハァ」

 

淳平「怖い夢でも見てたか?」

 

俺の顔を見た綴理は、突然目に涙を浮かべて抱きついてきた。まるで、もう絶対に離さないと言わんばかりに。

 

淳平「ちょっ!綴理!? どうした……?」

 

綴理「ジュン……ここにいるよね?」

 

淳平「どうした? 俺はここにいるよ……」

 

綴理「ああ、本当だ……幽霊じゃない……」

 

は? 幽霊? ひょっとして……

 

淳平「俺が死んだ夢でも見たか?」

 

綴理「っ!!」

 

綴理の額に……熱の影響もあるだろうが、一目見ただけで分かるほどの汗が浮かぶ。

 

淳平「図星か…。俺は生きてるし、ここにいるよ……」

 

綴理「……ハァ」

 

淳平「ん?顔色が良くなってきたような……? 綴理、熱測れるか?」

 

綴理「……うん」

 

そして熱を測ると、熱は37.9℃まで下がっていた。綴理の体調にこんな影響与えるほどなのか俺って……

 

淳平「取り敢えず今日は休め。今日は俺も休んで一緒に居てやるから……。取り敢えず何か食べたいものあるか?」

 

綴理「………あれ」

 

淳平「あれ?」

 

あれってなんだ?

 

綴理「去年、ボクが体調を崩した時にジュンが作ってくれたおかゆが食べたい。すごく優しい味だったから……」

 

淳平「了解、分かったよ。食堂で材料貰ってくるから待ってろ……。寮監さん、ちょっと綴理を見ててもらえます?」

 

寮監「しょうがないわね……。分かったわ」

 

淳平「あざっす!」

 

数分後、女子寮の食堂のオバちゃんに事情を説明して必要な食材を貰ってきた俺。綴理の部屋に備え付けられたキッチンで調理を始める。蓮ノ空の学生寮、全生徒の部屋にキッチンが設置されてるから凄いよな……。

 

そしておかゆを作り、綴理に出してやる。綴理はゆっくり食べ始めると、よほど美味しいのかすごい満面の笑みになる。

 

淳平「綴理。俺……たとえ夢でもなにかあると、お前の体調にそんな影響あるのか?」

 

綴理「今回のは特に最悪だった。まさかジュンが死ぬなんて……しかも、ボクを庇って。夢で良かった……」

 

淳平「壮絶な最期迎えたんだな、俺……。まあ、自分のせいで好きな人が死んだなんて言ったら、そうもなるか……」

 

しばらく無言になる両者。

 

淳平「なあ?」

 

綴理「なに?」

 

淳平「綴理はさ、なんでそんなに俺が好きになったんだ?」

 

綴理「それは……、ボクね…?去年の春はジュンのことは嫌いではなかったけど、好きでもなかった。なんとも思ってなかったんだ」

 

淳平「うん……」

 

俺は優しく頷く。

 

綴理「ジュンが正式に認められて仲間になってからは、ボクも少しずつ話そうと思って頑張って会話もして、そしたらジュン、凄く面白いこと言ったり、ボクを気遣ってくれて、「あっ、この人いい……」って思ったな……」

 

淳平「そっか……」

 

綴理「そしたらさ、去年ボクとジュン同じクラスだったでしょ? 蓮空祭の時に2人で買い出し頼まれたよね?」

 

淳平「ああ。覚えてるよ」

 

あの頃、綴理もやっとスクールアイドルとして人気が出てきた頃だったよな……あっ、そう言えば

 

淳平「そう言えば……あの買い出しの時、俺が離れた隙に綴理が厄介ファンに囲まれたときがあったっけ?」

 

綴理「覚えてたんだ。そうだよ。あのときジュンはボクを助けてくれたよね?」

 

淳平「あ〜……それ考えたらそれがきっかけでもおかしくなさそう」

 

綴理「まさにその通りだ……」

 

そっか……

 

淳平「それがキッカケだったんだ」

 

綴理「うん、それから今日まで、ずっとジュンを見てた。どんどん良いところが見つかって、どんどん好きになっていった。……鈍感すぎるのが減点対象だったけど」

 

淳平「うぐっ?!」

 

心にグサッとくるなやっぱり……。

 

綴理「でも、気付いてくれたから……それはもう良いんだ。あとはボクも、みんなに負けないようにアピールするだけだ」

 

綴理……。

 

淳平「分かった。みんなにも言ったけど、真剣に考えて、ちゃんと向き合って答えを出す」

 

綴理「うん。ありがとう」

 

見ると、綴理の顔は嘘みたいに良くなっていた。

 

淳平「おい、もう一度熱測ってみろ」

 

そして熱を測ると……

 

淳平「36.2℃?! どうなってんだお前の身体!!」

 

綴理「……学校、行っていい?」

 

淳平「今日は休め!! たぶん疲れてたのもあるんだろ!? じゃなきゃ説明がつかん!!」

 

さやかちゃんのときは40℃近く、それがこの数時間で薬もなしに平熱まで下がるなんて、そうでもなければ考えられん!!

 

綴理「むう、分かった。ジュン、今日一緒に居てくれるんだよね?」

 

淳平「……約束したからな。男に二言は無い!!」

 

綴理「わー、さすがジュン!!」パチパチパチ

 

俺と綴理は笑い合う。

 

 

寮監「………あたしが居ること忘れてない?」

 

綴理・淳平「「「あ!!/////」」」

 

二人して、真っ赤になる俺達だった。

 

 

ー つづく ー




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