蓮ノ空スクールアイドル録   作:松兄

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第85話:追いついたよ

さやかに背中を押され、綴理は沙知先輩と話すために生徒会室にやって来た。

 

コンコン

 

綴理「しつれいします……」

 

沙知「……来てくれたねい。綴理」

 

綴理「………中止?」

 

沙知「まぁ、そうだよ」

 

綴理「っ」

 

沙知「綴理。中止という言い方もよくない。実際、ここまで綴理のおかげで最高の催しになったと思うよ? 天候というものはどうしようもない。胸を張って、みんなを送ろう。帰りのバスの手配は、もう済ませてあるから」

 

沙知先輩の言葉に、俯く綴理。

 

綴理「今ならみんな、満足して帰れる?」

 

沙知「ああ、十分すぎるほどにね。でも今ライブを強行して雨足が強まったりしたら、せっかくの良い思い出は台無しだ。……説明会に使った体育館はステージができるような状況じゃないしさ。滑ったりしたら危ないのは、キミもそうだし、大事な後輩もだ。そうだろ?」

 

綴理「分かってる。分かってるよ……」

 

沙知「?」

 

綴理「生徒会長の言うことは、やっぱり正しいんだ。でもさ、ひとつ……聞かせてほしい。今までボクは怖くて、聞くこともできなかったけど」

 

沙知「綴理……?」

 

綴理「生徒会長はさ……」

 

ここで綴理は1度深呼吸して、気持ちを落ち着けてから続きを言う。

 

綴理「ライブができるなら、やりたいと思ってくれてる?」

 

沙知「なっ……」

 

綴理「ボクたちのこと、どうでもいいって思ってない? 正しければ、なんだって良いわけじゃ……ない? ボクたちを置いていった時、あっさりじゃなかった?」

 

綴理は、この1年間胸に燻っていた想いを、全部沙知先輩にぶつけた。

 

沙知「そっ、そんなの……。………バカだな、あたしは。そんな、機械みたいに思われていたのか。そのことに気付きもせずに……あたしは嫌われて当然、って、勝手に蓋をして……」

 

綴理「生徒会長?」

 

沙知「綴理、あたしは……ライブができるならやりたい。今までだって正しいことを、しなきゃいけないからやってた。スクールアイドルクラブのことは今でも大好きだ。……去年辞める時、部室で一人泣いてた。一年生には内緒だぞ?」

 

綴理「っ!」

 

沙知「まあ、泣いてたとき、たまたま戻ってきたジュンペイに見られてしまってな。アイツには……やむを得ず全部話したんだ。けど、あたしが口止めしてた……」

 

綴理「そっか。それでジュンは、さちへの態度が変わらなかったんだ。さちの気持ちも……全部、知ってたから」

 

沙知「ああ。あたしは今日だって、できることなら、みんなに最高の1日を届けたい。キミたちに…最高の1日を作ってほしい。キミたちの全てがうまく行ってほしいと、いつも思ってるよ」

 

綴理「………そっか」

 

一年越しに沙知先輩の本心を聞いた綴理の心は、春の雪解けのように温かく溶けていった。

 

沙知「ごめんねぇ……勝手に、いなくなったりして。置いて、いったりしてさ」

 

綴理「ううん。ボクはただ、わかんなかったんだ。さちがどんな気持ちだったのか」

 

沙知「いや、あたしがバカだったんだ。……あたしの気持ちなんて、言う資格ないと思ってたからさ。結局離れるのに、つらいなんて……ムカつくだろう?」

 

綴理「ううん。それが……それが聞きたかった。ボクはそんな簡単なことも、聞けなかったんだ」

 

沙知「……気付いてやれなくて、ごめんね」

 

綴理「それも、いい。ボクも気付けたのは、ついさっき。さやが、教えてくれたからだから。離れるのは、誰だってつらいことだって。今は、さちのことすごいと思う。ボクだったら、離れることを選べない……」

 

沙知「そっか……。ありがとう、綴理」

 

綴理「……ねえ、さち。ボクは、このまま終わらせたくないよ」

 

沙知「その気持ちは、分かるけど……でも」

 

綴理「今はもっと強く思う。みんなに伝えたい。 雨は、止むものなんだって。……違うな。――止むまで待たない。ボクたちの気持ちで、どうにでもなるんだって!」

 

沙知「綴理?」

 

綴理「一緒に来て。さち」

 

沙知「うわわっ! 綴理!?」

 

そして、綴理は沙知先輩の腕を引っ張り、部室へと走った。

 

そして、部室の前で止まる。

 

沙知「この部屋も、久しぶりだねい……」

 

ガチャ!

 

さやか「あっ、綴理先輩。沙知先輩。待ってましたよ?」

 

綴理「ボク……追いつけた?」

 

さやか「はい。待ってました!」

 

花帆「綴理センパイ聞いてください! 色々考えたんです!」

 

瑠璃乃「名付けて――野外ステージにデカい傘計画!!」

 

綴理「生えるの?」

 

瑠璃乃「生やす! ほら、アンブレラスカイ!!」

 

慈「アンブレラスカイっていうのは、たしか晴れた日にやるものだったはずだけど、でも発想はそこから。花帆ちゃんがね」

 

花帆「はい! あたし、思ったんです! みんなの心に、大きなお花を咲かせるって約束したんだから――どうせなら、傘も大きな花みたいにしちゃおうって!」

 

さやか「たくさんの傘を繋ぎ合わせて、屋根みたいにしようというお話です」

 

花帆「お花ね、お花!」

 

淳平「花帆のアイディアには賛成だし、実現できるんなら、素晴らしいものができると思うんですけど……」

 

梢「沙知先輩は、どう思いますか?」

 

沙知「……当たり前みたいに聞くじゃないか。ふつう中止だよ、これ」

 

慈「だったら綴理と一緒に来ないでしょ?ま、それ以前に、「綴理先輩が必ず沙知先輩を説得してきます―」って、言って回ってた子が居たからなんだけど」

 

さやか「だ、誰でしょうね……?」

 

沙知「……大量の傘と、それを繋ぎ止める人手が欲しい。そうだね?」

 

花帆・さやか・瑠璃乃・梢・慈・淳平「「「「「「はい!!」」」」」」

 

沙知「あい分かった。実行委員会を動かそう。そして、学院事務に傘のストックは山ほどあったはずだ。それを使いたまえ! ……しっかし、すごいなあ。みんな……これじゃ1人中止考えてたあたしがバカみたいだねい」

 

綴理「ううん。スクールアイドルクラブのみんなのおかげ。……スクールアイドルクラブが、残ってたおかげ」

 

沙知「そっか。……そっか」

 

沙知先輩は、綴理の言葉を噛みしめる。

 

沙知「……行っておいで、綴理。キミたちの手で、最後まで……最高の日を作りに!」

 

綴理「ん!」

 

すると、沙知先輩はポケットから1枚のCDを取り出した。

 

沙知「それから、もしよかったらなんだけど。……これ、持って行って?」

 

綴理「これは?」

 

沙知「随分前に作ったんだけど、結局渡せなかった。あたしが、キミたちのために作った曲。あたしが好きな……雨が止むやつだ」

 

淳平「っ! あのとき歌ってた曲ですか?」

 

沙知「そうだよ……?」

 

綴理「! ありがとう、さち!!」

 

淳平「よし、みんなやるぞ!!」

 

花帆・さやか・瑠璃乃・梢・綴理・慈「「「「「「おおーー!!」」」」」」

 

そして、花帆のアンブレラスカイ計画は実施され、無事に中学生たちにスクールアイドルクラブはライブを披露することが出来た。

 

みんなが、沙知先輩が託してくれた曲を踊りきったとき、沙知先輩は涙を浮かべながら、幸せそうな顔で笑っていた。

 

そして、オープンキャンパスとライブは大成功で幕を閉じた。

 

 

ー つづく ー




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