部屋に戻った花帆はさやかの練習動画を見て、自信があった訳では無いが、それでもできているんじゃないかと思っていた気持ちを打ち砕かれそうになっていた。
花帆「……さやかちゃん、ほんとすごい。で、でも、あたしだって……」
花帆は自分の動画を開いて見比べる。
花帆「……ごくり。……だ。…………だ。ダメダメだぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
花帆は自分のライブに"恥ずかしい"とまで感じてしまっていた。
花帆「えっ!?なにこれ!さやかちゃんとぜんぜん違う!隣で踊る梢センパイと、ぜんぜん合ってないし!歓迎会のときは合ってたって言われたけど、あれはマグレだったってこと!?知らなかった、あたし……こんなダメだったなんて……。あたし、こんな、あたし、こんな……ハッ」
花帆は何かに気付いた。
ふたば『ライブって、見れないの?』
みのり『見たい見たい』
花帆『あ、それじゃあ、スクールアイドルコネクトっていうアプリがあって――。』
花帆は羞恥で顔が真っ赤になった。
花帆「うわあああああああああああ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
翌日、スクールアイドルクラブの部室、
梢「どの紅茶にしようかしら?最近はまだ寒いから、みんなのためにも、体が温まるものを用意しましょうか」
淳平「なら生姜紅茶なんてどうだ?体を芯から温めてくれるぞ?」
梢「そうね。それにしましょうか」
するとそこへ、
花帆「梢センパぁぁぁぁぁイ〜〜…………………」
梢「ど、どうしたの!?花帆さん、泣いているの!?」
淳平「そこまでショック受けたか……」
花帆「あたし、あたし…………」
梢「花帆さん…………?」
花帆「あたし、ぜんぜんダメダメでした……………」
梢「え、ええと……」
梢は俺の方を睨み、「どうするのコレ!!」と、目で訴えかけて来る。
梢「とりあえず、お茶をいれてあげるから、座っててね……」
花帆「はい……」
そして、花帆が椅子に座ると、俺は部室のドアに立ち入り禁止の札を掛けておく。
淳平「これでよし」
そして部屋の中に戻り、俺と梢も花帆を挟んで椅子に座る。
梢「つまり、こういう事かしら。村野さんの配信を見て、自分のライブが気になってしまった、と」
花帆「はい。それなのにあたし、妹たちにもドヤ顔でライブ配信をオススメしちゃったんですよ……」
あらら……。
花帆「友達みんな、ほとんど毎日ライブに来てくれて……。あたし、全校生徒の前で一週間ずっとライブしてたんですよ……。こんなあたしが……。ううう……」
梢「なるほどねえ。とりあえず後で淳平はお仕置きね?」
淳平「何で?!」
梢「プライドを泣くまでへし折ってどうするの!!」
淳平「いや、さすがにここまでダメージ受けるとは……」
梢「あ"!?」
淳平「すみませんそのヤンキームーブやめてください恐いです……」
花帆「ううう〜……」
すると、梢は花帆に向き直り、
梢「あなたのライブ、私には素敵に見えたわ。頻度には、その、少しだけびっくりもしたけれど……」
花帆「でも、なんかこう、違うんです……。センパイ方や、さやかちゃんたちとは……」
梢「隣の家の芝は青い、と言うわ。それは誰でも同じ。私にもね、あなたのことを羨ましいと思うことはあるのよ?」
花帆「えっ?」
梢「花帆さん。私や綴理、それに村野さんが、あなたのライブを『魅力的』と言った言葉には、お世辞や社交辞令なんてものは無かった。心からそう思ったのよ。淳もそうでしょ?」
淳平「ああ。楽しそうにパフォーマンスするなぁ……って、思って、気がついたら笑顔になってたよ」
花帆「うっ、あたしたちのライブ……!」
梢「もちろん、あなたの配信を見てくれた人たちもね」
花帆「…………それは、どうしてなんでしょうか。だって、あたし、こんなに……」
梢「分からない?」
花帆「…………」
淳平「それはな、お前が本当に、心からスクールアイドルを楽しんでいることが伝わってくるからだよ。何にしてもそう。"好き"っていうのは、最強の感情なんだぜ?」
花帆「"好き"は、最強の感情……」
梢 フフッ「なかなか良いこと言うじゃない?」
淳平「まあな……。花帆、お前のその真っ直ぐな感情は、誰でも持ってる物じゃない。お前の笑顔が、弾む声が、内から湧き出てくる情熱が、見ている人の心を打つから。だから、みんながお前に温かな声援をくれるんだよ」
花帆「それは、でも……、」
梢「だから、あなたには、あなたの魅力が。あるから、……気にすることはないわ、って言いたい所だけれども、それじゃあ納得できないみたいね」
花帆「はい……。言いましたよね、梢センパイは。大変なことも多いけど、でも楽しんでスクールアイドルをやっている、って」
梢「ええ。でも、それは私のやり方で」
花帆「自分の上達を感じられるのが、嬉しいことだ、って」
梢「……ええ。そう言ったわ。私は、努力することが好きなの。いいえ、そうするべきだと思っているわ。私は、花帆さんみたいな愛嬌があるわけじゃないから。スクールアイドルとして見せられるのは、自分の歩んできた軌跡だけなの」
花帆「軌跡……」
梢「私の努力は、きっと他の誰かに伝わると信じている。私が他の誰かに誇れるものがあるとしたら、それだけだから」
花帆「……頑張る姿、ってこと、ですか……?」
梢「ええ。私はね、スクールアイドルコネクトって半分はそのためにあるんじゃないかって思うの。ライブやイベントでみんなを楽しませる以外に、毎日努力している姿を配信するのはね、それを受け取った人の心にきっと、芽生えるものがあるからだわ」
花帆「スクールアイドルの、頑張る姿を見て、自分も頑張りたいって……。そっか、だからあたし、さやかちゃんの練習風景が……すごく、きれいだって思って……」
淳平「花帆……?」
花帆「あたし、わかった気がします!そうだったんですね!だからあたし、梢センパイのライブを見て、すっごく胸が熱くなって……!」
梢「そう思ってくれたのなら、嬉しいわ」
花帆「はい、梢センパイのライブ、ステキでした。だからあたしも、あんな風に、人の心を花咲かせるようなライブがしたいんです!そのためには、今のままじゃあダメなんです!」
梢「そう。そうなのね。わかったわ、花帆さん。あなたがそこまで言うなら、もう、私に断る理由は無いわね。」
花帆「ありがとうございます!センパイ!」
梢「でも、やるからには本気でみっちりやるわよ?着いてこれる?」
花帆「臨むところです!!あたし、雨にも風にも負けないような、そんな立派なお花になるつもりですから!」
梢「そう……。あら、いけない、もうこんな時間だわ」
花帆「一週間のライブ、最終日ですね!うっ……。でもあたし、こんなにダメダメなのにライブを……」
淳平「それは仕方ないさ。誰だって急に上手になったりはしないんだよ。少なくとも、お前の笑顔は一級品なんだから、今はそれを見てもらおうぜ?」
花帆「ッ!?/// ……もう。淳兄ぃってば……///」
梢「それには同意だけど、お仕置き追加ね?」
淳平「なんで?!」
梢「自分で考えなさい……」
花帆「……分かりました。でもあたし、いつか全部一級品になって見せますから!!」
梢「その意気よ。さあ、背筋を伸ばしていきましょう」
花帆「はい!!」
そして花帆のライブも終盤に差し掛かり、
花帆「みんな! 今日も来てくれてありがとうね!次はもっともっと上手になって、みんなをもーっと楽しませるから!楽しみにしててね!あたし!誰よりもみんなを楽しませちゃうような、『世界でいちばんのスクールアイドル』になるからねー!」
えな「世界で!?」
びわこ「いちばんの!?」
しいな「花帆ちゃんが!?」
さやか「花帆さん、すごい……!」
綴理「うん。すごいね」
梢「もしかしたら、本当になれるかもしれないわね、花帆さんなら。"ラブライブ!"優勝だって――」
花帆「見ててね!みんな!あたし、頑張るからねー!」
ー つづく ー
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