第97話:スクールアイドルクラブの危機
スキー合宿から帰ってきて2日後。ラブライブ!北陸地区予選に向けて、今日も練習を続ける蓮ノ空スクールアイドルクラブ。
今は体幹を鍛えるためにプランクをしていた。
淳平「ほら、あと10秒! みんながんばれ!」
瑠璃乃「きゅう……はち……!」
淳平「ルリちゃん腰が高い!! 肩から足まで一直線に! そんなフォームじゃ効かないぞ!! 花帆は腰が下がってる!!」
綴理「なな、ろく」
慈「ごー! よんー!」
さやか「さん! にい!」
花帆「いーち………! ぜろお〜! はぁ……終わったぁ〜……はぁ、はぁ………」
花帆は終了と同時に床に倒れ込んだ。
梢「ふう……みんな、お疲れ様。練習メニューを増やしたばかりなのに、よくがんばってくれているわ」
慈「そりゃ、いよいよラブライブ!北陸大会だからね! ここでがんばらなきゃ、いつがんばるのって話だよ!!」
綴理「さや、動ける?」
さやか「あ、はい。わたしは問題なく」
続々と立ち上がっていくメンバーたち。しかし花帆は中々立ち上がれなかった。
梢「じゃあ、全体練習はここまで。あとはユニットごとの練習にしましょう」
慈「よっしゃ! るりちゃんいくよー!」
瑠璃乃「お、おっしゃー! みらくらぱーく魂一!!」
慈「おー!」
そして2人はユニット練習に向かって行った。
さやか「おふたりとも、気合入ってますね……」
綴理「? ボクだって、さやと一緒に出るのは今年が初めてだよ?」
さやか「……そうですね。わたしたちも精一杯、がんばりましょう! DOLLCHESTRA魂です!!」
綴理「どるたま一」
そしてさやかちゃんと綴理の2人も練習に向かっていった。
さて、花帆は……
梢「花帆さん」
花帆「す、すみません、センパイ……。息が落ち着くまで、もう少し……。はぁ……、あたしだけまだこんなんで……ごめんなさい」
梢「なに言っているの」
淳平「そうだよ」
花帆「へ……?」
梢「今回のメニューをぜんぶやり切るなんて、昔のあなたじゃ考えられなかったわ。ちゃんと、成長しているのよ」
淳平「オマケにお前は身体弱くて小さいときから激しい運動なんかしてこなかったんだから。それ考えたらすごい進歩してるよ!!」
俺と梢の言葉を聞いた花帆は少し安堵の表情を浮かべると、また少し曇ってしまった。
花帆「……あの、梢センパイ!淳兄ぃ!」
梢・淳平「「うん?」」
花帆「北陸大会って、その、予選大会と同じように、 3ユニットそれぞれで出るんですよね?」
梢「だから、ユニット練習もみんな、いつも以上に張り切っているでしょう」
花帆「……でも、北陸大会から全国大会に進めるのは、 たった1ユニットだけで……」
梢「それは……そうね」
花帆「た、例えばなんですけど! 今から変更して、6人で出る、っていうのは……ほら、あたしたちも、たまに6人でイベントに出たりしていますよね?」
淳平「………………」
花帆「北陸大会まで時間がないのはわかってます。でも、あたしもがんばりますから!」
梢「あなたの言いたいこともわかるわ。けれどね、肝心なときにばかり全体で出場をしていたら。私たちがユニットを組んで切磋琢磨している理由が、なくなってしまうの」
淳平「花帆の気持ちは分かるよ。同じスクールアイドルクラブの仲間なのに、友達なのに、自分たちのだけのためにその仲間を蹴落とすような真似をするのが嫌だったんだよな?」
花帆「……それは、その、はい」
申し訳無さそうに顔をうつむかせる花帆を、俺は撫でてやる。
淳平「優しいな、花帆は。でも、これが勝負なんだ」
花帆「………うん」
梢「少し、厳しいことを言ってしまうけれど……。私たちはみんな、それぞれにやりたいことがあってユニットを組んでいる。グループで出るというのは、その色を無くしてしまうことだわ。私はあなたと、スリーズブーケで出場したい。スリーズブーケだからこそ、表現できること、伝えられることがあると思っているの」
花帆「梢センパイ……。すみません、あたし……余計なことを言っちゃって……」
梢「……ううん。淳の言う通り、花帆さんは本当に優しいのね。……ねえ、花帆さん――」
梢が言いかけたその時、突然トレーニングルームの部屋の扉が勢い良く開いた。
沙知「た、た、大変だ!」
花帆「えっ、生徒会長?」
梢「沙知先輩…………? どうしたんですか?」
なんかただ事じゃなさそうな雰囲気だぞ……?
沙知「く、詳しいことは部室で話すよ。大変なことになっちゃったんだ。このままだと、来年度以降スクールアイドルクラブが活動できなくなる!」
花帆「えっ、――えええええっ!?」
なんだと!?
そして、俺と梢は二手に分かれて綴理たちとめぐたちを呼びに行き、部室に集まった。
ー 部室 ー
沙知「本当に、申し訳ない。今回の件は、あたしの力不足だ……」
綴理「さち……」
淳平「先輩、頭を上げてください。どういうことなのかを説明してくれないと」
さやか「はい、どういうことなんでしょうか……? 来年以降、活動できなくなるって………」
沙知「そうだね、順を追って話そう。蓮ノ空学院には、女学院だった頃からひとつの議題があがっていたんだ。 それが"ネット禁止令"。校内や寮での、ネットの使用を禁止する校則だ」
瑠璃乃「ネット……禁止!?」
っ!! そこまでやるか……!!
俺は以前、沙知先輩から、みんなのためにいずれ戦わないといけなくなるものについて聞いていた。いざそのときになってみると、怒りが湧いてくる。
慈「ちょ、ちょっと待ってよ! そんな校則ができちゃったら、配信どころか、動画投稿だって!」
沙知「そう。そもそもスクールアイドルコネクト――スクコネに繋げられなくなってしまう。 学院に携わっている運営の中には、派閥がいくつかあって、その派閥もそれぞれ主義主張が違っていてね……」
沙知先輩は相手の主張について話してくれた。
沙知「蓮ノ空学院は全寮制の学校だ。それなのにネットが使えたら勉学の妨げになる、っていう陣営もある。実際、それについては一理あるとは思う。特に2年生全体がテスト期間、淳平に頼り切りになってしまっているよね?」
梢・綴理・慈「「「うぐっ!!」」」
慈「……私ひとりが勉強がんばればどうにかなるんだったら、学校1位だって取ってやるのに!! ほら、私ジュンがいなきゃ間違いなく赤点常連だから……」
沙知「はは……それはぜひこれから頑張って欲しいねい」
みんなの間に少し笑いが産まれる。すると梢が、
梢「学校側では、『ネットを禁止するべきだ』 という論調がずっとあったんですよね? この時期にまたそれが問題として持ち上がってきたのは、やっぱり、スクールアイドルクラブが原因ですか?」
花帆「えっ!? なんであたしたちが?」
沙知「それはさすがに考えすぎだよ、梢。 確かにこの学校のネット活動として。いちばん目立っているのはスクールアイドルクラブだけど、キミたちが特別やり玉にあげられているわけじゃない。強いて言えば、時代の流れってやつだろうねい。環境的に、蓮ノ空にとって "ネット禁止令"はいつかどこかで浮上する問題だったんだ」
慈「ええい、こんなときに!」
淳平「………沙知先輩」
沙知「ん?」
淳平「その派閥は、勉学を第一にしてるということで、間違い無いですか?」
沙知「う、うん。まあそうだけど……」
なら……。
梢「淳? 何か……変な事考えてないわよね?」
淳平「大丈夫。どうすればこの部を守れるか考えてただけだよ」
いけないいけない。怖い顔にでもなってただろうか……。
慈「変な事だけは、考えないでね?」
綴理「ジュン……」
淳平 フッ「分かってるよ……」
俺は3人の頭に順番に手をポンと置く。
すると、今度はさやかちゃんが口を開く。
さやか「来年度のこととはいえ、どうするんですか? どうすれば……」
沙知「あたしが生徒会長の間は、毅然とした態度で反対の意を示すつもりだ。ただ、悔しいことに時計の針はいつだって前に進んでいてね。12月の末で任期が切れてしまった後、あたしには打てる手がなくなってしまう」
淳平「……………」
沙知「反対勢力を止められるのは、現職の生徒会長だけだ」
瑠璃乃「つまり、来年にはネットが禁止されちゃう……!?」
梢「あるいは……。スクールアイドルクラブが今と同じ活動を続けたかったら。誰かが生徒会長になって、学校側と正面から戦い続けるしかない。ってことですよね? その人が、沙知先輩のようにスクールアイドルクラブを辞めて……」
花帆「そんな! 辞めなくたって……!」
慈「蓮ノ空では、生徒会長になったら部活には所属できない。そういうルールなんだよ」
さやか「先輩方………」
綴理「……………」
慈「……でもそれは、最後の手段でしょ?」
沙知「うん、もちろん。まだ任期の満了までは時間があるからね。あたしも、やれるだけのことはやってみるつもりだよ。どうせなら、刺し違えてでも、ってねい!」
梢「……無茶はほどほどにですよ。今度こそ」
淳平「そうですよ……」
沙知「ごめんごめん」
すると、
花帆「ね、さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん」
瑠璃乃「うん!」
さやか「はい、わかっています!」
ん?
花帆「あの、生徒会長! だったらあたしたちも、お手伝いさせてください!」
沙知「キミたちが……? でも、もうすぐラブライブ!北陸大会じゃ……」
花帆「練習の時間は、削りません! ちゃんとやります!でも、スクールアイドルクラブのピンチを、黙って見過ごすなんてできません!」
花帆……
淳平「ああ! そのとおりだ!!」
慈「手伝えることあったら、なんでも言ってください!!」
みんなが大きく頷く。心は1つだ。
沙知「……そっか。だったら、みんなもいろいろと考えてみてほしい。ごめん、クラブを辞めた後も迷惑をかけてしまって……」
綴理「ううん。ありがと。そうやって、真っ先に話してくれて。それだけでもボクは……すごく嬉しい。このあいだのボクには、できなかったことだから!」
沙知「綴理……、そうだね。なんでもすぐに話し合えばよかったんだ。まさかこんなに簡単なことだったなんて……。わかんなかったよ、あたし」
自分はひとりじゃない。仲間の頼もしさに、涙を見せた沙知先輩。
慈「……せんぱい」
梢「ふふっ」
淳平「絶対になんとかします……("勉学に支障が出る"。それだけに重点を置いてる派閥が相手だったら……。今の蓮ノ空どころか、全国でも上位の学力を持つやつが学校辞めるなんて言ったら……その派閥にとっては大損だ。……俺しかいない。俺の首を賭けてでも、みんなの居場所を守ってやる!)」
花帆「よっし、それじゃ。練習外の時間を使って、早速やってみましょう!」
俺が、心の中でそんな事を考えていたことを、みんなは知らずにいたのだった……。
ー つづく ー
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