世界を救って日本に帰って来たらお父さんになってました   作:こーーーーーー

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世界を救って日本に帰って来たらお父さんになってました

「ただいまー日本!」

 

 背筋を伸ばして空港から出る。

 聞こえてくる喧騒が、通り過ぎていく人々の声と髪の色から故郷である日本に帰ってきたのだと実感する。

 タクシー乗り場へと行き、運転手に教えてもらった住所を教える。

 

「旅行に行かれていたんですか?」

 

 揺られていると運転手が話しかけてきた。

 

「まあー、旅行というか仕事というか勉強というか、色々ですね」

「色々ですか。どちらの方に行かれていたんですか?」

「国は色々行きましたけど、この数年は主にロンドンでしたね」

 

 そこから運転者と会話をしていると目的地に着いた。

 タクシー運転手にお礼を言い、目の前のマンションをみる。

 

「おおー、スゲー」

 

 東京の一等地の高層マンションに住んでいるとは。

 エントランスを抜け、エレベーターに乗る。

 上へ上へとエレベーターが上がっていき、しばらくすると目的の階についた。

 

「えーとここが5号室だからあっちか。・・・あそこって・・・」

 

 廊下を歩いていると1人の男性が玄関に立っている。

 黒いパーカーを深く被り、花束を持っている。

 その時、花束の中からキランと何かが光った。

 

「ガンド!あっ・・・」

 

 反射で指先から放たれた魔弾は男性に直撃し、綺麗な大の字で倒れた。

 男性が持っていた花束は綺麗に宙に舞い、カラカラと音を立てて花束から現れたナイフが滑る。

 倒れた男性が立っていた玄関から一人の女性が顔を出した。

 

「立香!」

「久しぶりアイ」

 

 俺は久しぶりに彼女、星野アイと再会した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり立香!」

「ああ、久しぶりアイ。これお土産ね」

 

 俺はソファで身体を寄せてくるアイにお土産を渡した。

 アイはすぐお土産に飛びついた。

 

「なあ・・・俺の話をしていいか・・・」

 

 そう言って来たのは目の前に座る30代くらいの男性だ。髪はくすんだ金髪でサングラスを掛け、スーツを身に纏っているいかにもヤクザやチンピラといった風貌の男性がソファに座っている。

 

「俺の名前は斎藤壱護だ。まずはアイを助けてくれて礼を言う。君のお陰でウチのアイドルが無事だった。ありがとう」

「いえいえ、たまたまなので」

「それでだな・・・アイとの関係性を教えてくれるか」

「はい、まず名前は藤丸立香といいます。関係性は俺もアイと同じ孤児院出身なんですよ」

「そうか。それで何で今日そんな大荷物を持ってこの家に?」

「今日空港に着いて。前もって日本に帰ってくるとアイに伝えていたらウチに来なよって言われたので」

 

 俺の言葉に斎藤さんは納得したのか言葉を辞めた。

 

「今度は俺が聞いても良いですか?」

「あーあれはな・・・」

 

 斎藤さん気まずそうな顔でアイの後ろに隠れる二人の子供を見ている。二人の顔がよく似ているので双子なのだろう。

 

「私の子供だよ。こっちがアクアでこっちがルビーだよ」

「こ、子供!・・・え、嘘。アイ結婚したの⁉︎え、いつ?てかお父さんは誰?」

 

 アイの衝撃発言に驚き、そのまま斎藤さんに視線を向けると、斎藤さんは物凄い勢いで頭を左右に動かした。

 

「お、お父さんって誰なんですか?」

「いや、俺じゃないぞ!俺はミヤコと結婚しているからな。それがアイの奴が教えてくれないんだよ・・・」

 

 俺は次にアイの方を向いてみると、子供達と何かを話しているようだ。

 アイは俺の視線に気付き、双子を俺の方に寄らせた。

 双子はアイのところから俺のところまで来た。

 男の子が前に出てその後ろに女の子が寄り添うようにしている。

 確か、男の子がアクアで女の子がルビーだっけ?

 

「初めまして。星野愛久愛海です」

「・・・初めまして、星野瑠美衣です」

「ああ、初めまして。藤丸立香です。よろしくね」

 

 二人と自己紹介をし終えると不思議そうな顔をしてアイが入って来た。

 

「もー、アクアもルビーもそんな硬くならないで。ほら、パパだよー。ねぇー、パパ」

「は?」

 

 アイのその言葉に世界が止まった。

 俺は勿論、前に座る斎藤さんも、その後ろにいる女性も、アクアとルビーまでアイの言葉に唖然とすることしかできなかった。

 

 世界を救って日本に帰って来たらお父さんになってました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイの爆弾発言があったが、今日はドームでのライブらしく、話を中断してドームに向かった。

 

「わざわざ、急なのにありがとうございます。ミヤコさん」

「いえ、別にこれくらい」

 

 俺もライブに招待され、アクアとルビー、ミヤコさんと共にドームにある関係者席に座っている。

 こうして、アイのライブを観るのは2度目になるだろう。初ライブ以来だ。

 あの時は地下に100人入れるかわからないような所で、観客が二桁いってるからいってないかのようなところでやっていたな。

 それがこんな、大きなところで何万人の前やっていると考えると本当に凄い。

 だから、ついつい俺も気分が高揚してしまう。

 横にいるルビーは興奮して今か今かと前のめりになり、アクアは興奮しているが落ち着いていて、俺に対して警戒しているのがよくわかる。

 まあ、それはそうだよね。急に現れた男が貴方の父親ですって言われても困るよね。

 だから、ついつい口を動かしてしまう。

 ルビーは手すりに捕まり、今かと今かとステージを見ている。ミヤコさんは他の人と話しているようでこちらを向いていない。

 アクアだけが俺の呼び掛けに反応してくれた。

 俺はアクアと視線を合わせてその言葉を口にした。

 

 

 

 ドームでのライブを控えた今日、アイが襲われたが、何とか助けられた。

 そのアイを助けた人、藤丸立香さんがどうやら俺達の父親らしい。その藤丸さんも驚いていたがアイがそう言っていた。

 詳しくは知らないが数年海外に住んでいて、今日帰国したらしい。

 歳は20代前半で体格がよく細身だが鍛えられているのが見て取れる。

 数時間一緒にいって分かるのは性格は温厚で俺やルビーに話しかける時は必ずしゃがんで話してくる。

 そんな、はっきり言って良い人だと言いけるような藤丸さんが話しかけて来た。

 ルビーはステージに夢中で気づいておらず、ミヤコさんは他の人と話している。

 藤丸さんはしゃがみ目線を合わせて来た。

 

「実はねお父さんは魔法使いなんだ」

 

 舞台の幕は静かに上がっていった。

 




読んでいただきありがとうございました。
もしかしたら続き書くかも。
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