世界を救って日本に帰って来たらお父さんになってました 作:こーーーーーー
まじで難産でした。
あと2話の時滅茶苦茶誤字脱字が多くて本当に申し訳ないです。
「ランサー!」
槍兵は高々に飛び穂先を鋭利に向ける。
「キャスター!」
魔術師は陣を顕現させて神代の魔術を行使する。
「ライダー!」
騎兵は神速で車輪を回し、豪雷を引き連れる。
「バーサーカー!」
狂兵はただひたすらに愚直に災害を巻き起こしていく。
「アサシン!」
暗殺者は誰にも気づかれず、誰にも悟られずに心臓を狙う。
だが、全て消し飛ばされた。
槍兵は吹き飛ばされ、魔術師は押し潰される。
その一閃の後に残るのは光る粒子だけだ。
「っ・・・まだだ!セイバー!アーチャー!宝具だ!」
右手の甲が赤く光り二画の令呪が消える。
剣士は七色の極光を束ねる剣先を向ける。
弓兵は一本の矢に全てを込め全力を用いて解き放つ。
「ーーー
「
極光が蜘蛛に向かって飛んでいく。
視界を極光と砂煙が埋め尽くす。
両者の宝具は共に山々すら吹き飛ばす威力だ。
もしかしたらこれがトドメだと、これで終わりだと考えさせる時間も与えられる事はなく、極光の間から、砂煙の中から一閃が飛んでくる。
「セイバー!ーーーっ!」
その一閃でセイバーは光の粒子に変わり、余波で身体が吹き飛ばされる。
身体が宙を舞い吹き飛ぶなか、盾兵が俺の身体をキャッチする。
「ありがとう!」
砂煙が晴れそこには先ほどまでと、何一つ変わらない姿の奴がいる。
「アヴェンジャー!」
右手に魔力を込めてまた令呪を二画消費する。目からドロっとする涙が流れてくる。
二人の復讐者が左右から攻撃する。
一人は槍を掲げ焔を用いて万象を焼き尽くす。
一人は炎を身に纏い超高速に用いて撃退する。
「ーーー
「ーーー
永遠と燃え続ける復讐の炎ですら、蜘蛛を燃やす事はできない。
一体何回令呪を使い、何回宝具を打ち、何回彼らが倒されていったのだろうか。
それでもーーー
「諦める訳にはいかない!」
南米に行く前、エルメロイ先生と通話した時にがこんな事を言っていた。
『本来あの蜘蛛の目覚めは何百、何千年も先だ。そうでなければ確実にカルデアスがあの蜘蛛の目覚めを捕えるだろう。ならば、なぜ目覚めたのか。眠りつく蜘蛛が覚醒するほど大きな出来事。私は日記を読む感覚でしか知らないが、当事者である君は違うだろう。蜘蛛は人理焼却と地球白紙化によって覚醒した。あれは5000年早く来た正真正銘のバケモノだぞ。そんなものに対して十数年なんて誤差ですらないだろう。だから・・・死ぬなよマスター』
だからこれは俺がするべき事なのだ。俺が終わらなせなければいけない事なのだ。
「これが!最後の
蜘蛛の一閃を盾兵が弾く。
世界を裂く音を狂戦士の雄叫びが塗り潰す。
侵食する世界を騎兵の幾千もの同胞との世界で止める。
一歩動くだけで全てを引き壊す巨体を槍兵が鎖で封じた。
「今だ!セイバー!アーチャー!ランサー!ーーーッ!」
右手を掲げ、再度令呪を三画消費する。その時、右腕に激痛が走る。
魔術回路が紅く光り、焼ける音と嗅げるた匂いがしてくる。その程度で止まる訳にはいかない。
剣士は黄金を構える。
弓兵は世界を壊す。
槍兵は太陽を顕現させる。
「ーーー
「ーーー
「
普通なら彼らの宝具一つで十分倒す事はできる。でも、相手は常識外のバケモノだ。
続けて令呪を二画消費する。
紅く光る令呪に呼応して二人の暗殺者が動く。
一人は暗殺者らしからぬ大剣を持ち死を纏わせる。
「ーーー
一人は神をも殺す瞳を用いて直死する。
「ーーー唯識・直死の魔眼」
大剣が死を与え、ナイフがバターを切るかの様に蜘蛛を殺す。
これで最後だとようやく決着がついた。そんな小さな希望をかき消すかの様に、世界を裂く音が今までよりも強く世界を壊していく。
鎖は壊れ、彼ら彼女らは消失していった。
絶望が今まで以上に強くなる。
希望は次々と消えていく。
それでも止まる訳にはいかないから。
俺は再び彼ら彼女らを召喚し、令呪を下す。
あたり一面に生い茂っていた木々は根本から消し飛ばされた。
高々に大きな山々が、それらを形成していた肥沃な大地の全てが塵にされて吹き飛ばされた。
大量に水が流れていた川が湖が一閃で蒸発していた。
最後まで俺のことを守り、支えてくれた盾兵の彼が光の粒子となっていく。
そして、気がつくと土がすぐ目の前にある。
身体がどこまで残っているのかわからない。
下半身はあるのだろうか、上半身はあるのだろうか、首から下はあるのだろうか。何もわからない。唯一わかることといえば右腕を未だに虚空えと伸ばしていることだけ。
赤い視界の先には今まで以上に世界を侵す蜘蛛が音を鳴らす。それは弱ってるからなのか、怒っているのかわからない。
そもそも俺はどれだけの傷を与えられただろうか。後一歩のところまで追い込んだだろうか。それとも全然傷つけられずに終わったのだろうか。
人々みんなの力を借りるために未来を対価に払いバックアップを受けた。
世界すらも俺の味方をしてくれた。
それでも倒す事はできなかった。
意識がどんどんと消えていく。
赤い視界がどんどん霞んでいく。
「ーーー」
言葉を発しようとしても喉が動かない。のんなら、何を声に出そうと思ったのかわからない。
そんな、何もかもが不鮮明な中に足音が入ってきた。
白いシャツに青のジーパンのカジュアルな服装の赤い髪の女性が前に現れた。
「お疲れ様。君の仕事はここまで、あとは私達の仕事だから」
「・・・よくやった。良くぞ一歩を埋めた」
そしてもう一人、杖を鳴らしマントを羽織るいかにも魔術師らしい老人が現れた。
その老人の顔にはどこか見覚えがあるが、よく思い出せない。
老人は右手に杖を持ち、左手には宝石そのものと説明できる短剣が握られている。
「それ故に儂らが貴様の足りなかったあと数歩を埋めよう」
老人はその短剣を空に掲げる。
短剣には光が集まり極光を形作る。
「故にORTよ。貴様の目覚めは数百、数千年先だ。来るべき鋼の大地まで永久に眠れ」
極光という表現すら生ぬいほど光が、白そのものが短剣に集まり、世界を覆い隠した。
「あーーー、」
掠れた意識の中視界が真っ白に光り輝く。
それでもう終わりだと本能がささやいてくる。
だから帰らなくてはいけない。
自分の家に帰らなくてはいけない。
彼女が待つ家に辿り着かなければいけない。
「あーーーいーーー」
擦り切れた意識の中、もう何もかもが消え去ったなかで。その言葉だけは残り続けた。
未だに私はあの10年前を思い出す。
その日私は宣戦布告を受けた。
「初めまして。マシュ・キリエライトと申します。星野アイさんでお間違いないですよね」
インターホンを鳴らされて玄関をでると薄紫色の髪をした女性が立っていた。
「うん、そうだけど・・・」
誰だろうこの人?少なくとも芸能人ではない。人の事を覚えてるのは苦手だけど、こんな可愛い人なら忘れないし、星野の苗字はB小町のメンバーでも知らない。
「せんぱ・・・藤丸立香さんの事でお話をしにきました」
彼女の瞳には微かに赤く充血した跡があった。
「とりあえず、お茶にしよっか」
「お兄ちゃんお兄ちゃん!大変だよ大変!家庭の危機だよ!」
「わかったから、わかったから。落ち着け。二人に聞こえるから」
隣の部屋から二人の声が聞こえてくる。
私は心の中で笑いながら目の前に座る少女をみる。
「私は今日せんぱ、藤丸立香さんを」
「いちいちめんどくさいからいつも通りに呼べばいいよ」
少女はお礼を告げて再度言葉を始めた。
「私は今日先輩を連れ戻しに来ました」
「連れ戻すってどうして?」
その目尻は微かに赤く、私を睨みつけるかの様に鋭い決心が瞳の奥に見えてくる。
「先輩は少なくとも、ここにいるべきではありませんから。ここにいたら先輩は必ず不幸になります」
「へー、そうなんだー。それは大変だね」
私の言葉に彼女は飛び出そうになった言葉を止めていた。
「・・・はい、ですからこれは宣戦布告です。私は絶対先輩を連れ戻します」
彼女のマシュさんの言葉に私は驚きを隠さなかった。違う言葉が飛んでくると、考えていたからだ。
「マシュさんだったよね。立香は私は絶対に渡さないよ。私がようやく手に入れたものだからね」
私もマシュさんもお互いクスリと笑う。
「とりあえず立香の所に行こっか」
こうして私とマシュさんの最初で最後の宣戦布告は終わった。
もう10年も前の話だが懐かしさはない。
その時コトンと棚から煙草が落ちた。この煙草は立香が仕事に行く前、アクアに渡していったものだ。アクアは要らねと切り捨ててリビングの棚に置かれ続けていた。
私は煙龍とかかれた煙草を取り、もともと置いてあった場所にもどす。
「あーあ、早く帰って来ないかなー」
立香が仕事に出掛けてかれこれ1年が経過している。
私の言葉は夕日が差し込む部屋に溶け込んでいった。
背筋を伸ばして空港から出る。
聞こえてくる喧騒が、通り過ぎていく人々の声と髪の色から故郷である日本に帰ってきたのだと実感する。
「一年ぶりの日本だー」
タクシー乗り場へと行き、運転手に自宅の住所を教える。
「どちらの方に行かれていたんですか?」
揺られていると運転手が話しかけてきた。
「仕事でロンドンの方に一年ほど」
「おお、イギリスですか。いいですね」
「といっても諸事情でずっと入院していたのですけれど」
俺の言葉に運転手がミラー越しで垂れ下がる右腕を一瞥した。
「そうですか」
運転手はその言葉を最後にして口を閉じた。
俺は今では当たり前に垂れ下がる右腕を見る。そこに令呪はもうない。
ORTと戦い一年以上が過ぎた。
あの戦いによりORTは再度休止期間に入ったらしく、とりあえず数百年ほどは覚醒することはないらしい。
その結果の代償として俺は左目を失明し両足を義足になり右腕を動かすことは出来なくなった。
「着きましたよ」
「ありがとうございました」
タクシーから降りて走りゆく車体を見送る。
「久しぶりの我が家だな」
一年ぶりの我が家が目の前にある。
何とか玄関の鍵を開けて家の中に入る。
「ただいまー」
分かっていたことだが返事は帰ってこない。
帰る前に連絡した時に誰もいないと知らされている。アクアとルビーが高校でアイが仕事の様だ。
リビングに着くがそこは一年前となにも変わっておらず、自宅なのだと実感が湧いてくる。
「だーれだっ!」
目の前が急に暗くなり、ぶつかってきた衝撃と共に床に倒れてしまった。
「あっアイ。なんで仕事は?」
「あれは嘘だよ。驚かせようと思ってね」
そこには一年ぶりのアイの姿があった。
陽光が差し込む部屋の中、アイは尻もちを付いている俺に左手を伸ばしてきた。
「おかえり、立香」
「ただいま、アイ」
アイの手を取り立ち上がる。
「パパ帰ってきたのー」
どたどたと足音が二階から降りてくる。
視線を向けるとルビーがアクアを連れてきていた。
「あれ二人とも学校は?」
「学校?今日休みだけど」
アイに視線を向けるとてへっとしている。
「とりあえずパパおかえり」
「おかえり、父さん」
「ああ、ただいま」
隣にいるアイはニッコリと笑っている。
ふと見てみるとアイが俺の右手を掴んでいた。
この手が温もりを感じることはない。
この手が何かを掴むことはない。
それでも彼女が笑ってくれるのなら、この右手にも十二分の価値があったと言えるだろう。
「ただいま」
再び言った俺の言葉にアイは何事もなく言葉を漏らした。
「うん、おかえり。愛しているよ」
ようやくすべてが終わった。
俺はこうして帰路に着いた。
読んでくれてありがとうございました。
最近、推しの子の原作読んでいると一つ考えてしまうんですよね。
もしかしてこれ、カミキヒカルじゃないんじゃねって。