終末怪獣世界(短編)   作:断空我

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ひとまずこれにて完結。

続きをやるかどうかは未定。
もしやるとしても、展開は異なる可能性が高い。


光の巨人

「なんだ、あれは」

 

避難誘導をしている防衛軍の隊員達。

彼らは戦うジャイガーとアーストロン、少し離れた所に突如として現れた巨人に戸惑いを隠せない。

避難誘導をしていた防衛陸軍の将軍であるレイモンドも目を見開き、巨人を見ていた。

 

「ウルトラマン……か?」

 

ぽつりとレイモンドの傍で一人の防衛隊員が呟く。

 

「ウルトラマン?」

「友人が話していたんです。宇宙飛行士の間で存在が噂されている宇宙人、銀色の流星……コードネーム、ウルトラマン」

「バカな。宇宙人だと」

 

怪獣に続いて外からの来訪者。

その事実に冷静沈着な彼はどういう判断を下せばいいか悩んでしまう。

だが、二体の怪獣、そして宇宙人。

人類の敵に違いない。

レイモンドは顔を振りながら無線機を掴む。

そんな彼らの頭上を一機の戦闘機が飛翔する。

 

「あれは、科特隊か!」

 

翼の側面に流星マーク。

ジェットビートルは旋回しながら怪獣の様子を伺っていた。

 

「あんな連中に何ができる!すぐに地上部隊をかき集めろ!例の試作兵装は準備できるか!?」

「フルメタルミサイルですか!?は、はい、急いで!」

 

レイモンドの指示を受けて走り出す部下をみる。

 

「民間人の避難を急がせろ!」

 

武器の準備と避難誘導の指示をしながらレイモンドは車から少し離れた所でにらみ合う三体を睨む。

 

「暴れるならよその星で暴れて欲しいものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「じ、ジョー、今、ウルトラマンと?」

「あれ、俺、今、なんで?」

 

小型ジャイガーを叩き潰した光の巨人【ウルトラマン】の姿を見上げるボコ達。

 

「ウルトラマン、あれが?」

「貴方、あの巨人を知っているの?」

 

長峰が坂本へ尋ねる。

 

「あぁ、いや、前に宇宙関係の取材で宇宙飛行士から噂で聞いたことがあるんだよ。ウルトラマンと呼ばれる宇宙人がいるって、それは銀色の流星のような輝きを放つって」

「じゃあ、あれがウルトラマン」

 

ぽつりと呟いて米森はウルトラマンをみる。

 

「おい!ウルトラマンとやらの話をしている暇があるのか?」

 

桐野の言葉で米森達はハッとした表情になるとボコ達へ駆け寄る。

 

「ここは危険だ。安全なところまで避難するんだ!」

 

米森が先導してボコ達を守るようにして駆け出していく。

ちらりとジョーは後ろを振り返る。

彼らが去っていく姿をウルトラマンがみていた。

まるで安全圏まで行くことを見守ろうとしている。

そんな風にジョーは感じた。

だが、怪獣達は獲物が去っていく事を良しとしないらしい。

雄叫びをあげながら動き出したのはアーストロン。

遠くに逃げようとするボコ達を追いかける。

そのアーストロンの眼前にウルトラマンが立つ。

 

「!!」

 

いきなり目の前に現れた相手にアーストロンが驚き目を見開く。

驚いたアーストロンの口を片手で掴み、腹部にキックを入れる。

くるりと空中で回転しながら着地したウルトラマンの次の相手はジャイガー。

アーストロンとウルトラマンが争っている隙に獲物を狙おうとしていたジャイガーの動きを見逃していない。

掛け声と共にウルトラマンの手先から光線が発射される。

連続で発射された光線はジャイガーの体を傷つけていく。

 

「光が、細胞を破壊している?」

 

避難しながら戦いを見ていた長峰はジャイガーの体にうっすらと残った光が細胞を破壊していることに気付く。

防衛軍の攻撃を受けても平然としていたジャイガーは光線を受けて苦悶の声を上げた。

かなりのダメージを今の光線で受けたのだろう。

先程より動きが鈍くなる。

ウルトラマンは動きが鈍ったジャイガーに駆け寄り長い尾を掴む。

尾を脇に抱えるようにしながらジャイガーの巨体を持ち上げようと試みる。

そんな彼の背中にミサイルが降り注いだ。

 

「あぁ!?」

「防衛軍です!」

 

悲鳴を上げるボコ。

ジュンイチはミサイルが飛来した方向を指すと防衛軍の戦闘ヘリやミサイルランチャーを搭載した装甲車がウルトラマンを標的にしていた。

ミサイルの攻撃でジャイガーの尾を離してしまった。

その隙を突くようにジャイガーの尾がウルトラマンの首に巻き付く。

首をへし折ろうとする力を止めようとするように尻尾を剥がそうとするウルトラマン。

起き上がったアーストロンがそんなウルトラマンへマグマ光線を放つ。

尻尾で締め上げながらくるりと向きを反転するジャイガー。

そのまま四足歩行の速度を上げていく。

締めあげていた尾を開放するとともにウルトラマンの腹部にジャイガーは突進する。

怪獣の疾走による突進を受けたウルトラマンはそのまま吹き飛び、民家の上に倒れこんでしまう。

痛みで動けないウルトラマンを見てアーストロンとジャイガーは近くの避難民の方へ近づいていく。

縄張りの侵害する相手よりも体のダメージ回復を優先したのだろう。

二体の怪獣は避難民を襲い始める。

 

「違う……」

「あぁ、そうだ」

 

ボコとジョーは叫ぶ。

 

「違う!狙う相手が違うよ!」

「明らかに人を襲おうとしているアイツらの方がヤバイだろ!?」

「そ、それはそうかもしれないが、そんなもん防衛軍に連絡しないと」

「できる」

 

戸惑う坂本の傍でぽつりと桐野が呟く。

 

「コミュニケータだ」

 

桐野の言葉で思い出したようにボコ達はコミュニケータを取り出す。

そして、ブロディへ視線を向ける。

 

「お願い!ブロディ!」

「え?」

「父親が防衛軍のお偉いさんなんだよね?だったら伝えてよ!ウルトラマンじゃない、狙うのは二体の怪獣だって!」

 

ボコの訴えにブロディは戸惑う。

父親へ伝えればもしかしたらという気持ちもある。

だが、それ以上にあの父親へ自分が伝えるという事にどうして震えて言葉が紡げない。

 

「あ、で、でも」

 

そんなブロディの姿をみて、ジョーはウルトラマンが倒れた方向をみる。

 

「こんなビビリ野郎……無駄だよ」

「なっ、テメェ!」

 

突然の罵倒にブロディの表情が険しくなる。

 

「おい、こんなところで」

 

止めようとした米森だが、何かに気付いた長峰と坂本が止める。

胸倉を掴み、ジョーがブロディに詰め寄る。

 

「何だよ、ムカツクのかよ?てめぇの意見一つも言えねぇ。良い子の振りもしねぇ、悔しいんだったら、俺にじゃなくて――」

 

ブロディへ告げる言葉。

 

「親父に楯突いてみろよ!」

 

不思議とその言葉はブロディと向けられていないというのに桐野の心を揺らしていく。

自分がどうしたいかなんて、考えたこともなかった。

ブロディはそんなことを頭の片隅に思いながらポケットからコミュニケータを取り出す。

 

「父さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダグラス!?お前、どうやって軍の無線を!」

 

車で移動をしていたレイモンドは無線機から聞こえてきた息子の声に驚きを隠せない。

 

『今、財団の人と一緒にいる』

「なに!?今すぐ財団の人間と代われ!」

 

ギャオス襲来の際に息子を引き取りに来た際にユースタス財団の人間と出会っている。

あの時の科学者とレイモンドは考えていた。

 

『巨人の方じゃない、でかいトカゲ達、怪獣の方を狙ってくれ!』

 

いつもなら大人しく引き下がる筈の息子、しかし、今は何か違う。

 

「なに?」

「トカゲ達は人を食うんだ!人を守らないといけない防衛軍ならどっちを攻撃しなきゃいけないかわかる筈だ」

「お前……子供が親に、軍の指揮官に意見をするつもりか!」

 

レイモンドの叫びに一瞬、怯みそうになるブロディ。

だが、胸倉を掴んだジョーの言葉が彼の頭から離れない。

 

「あぁ、そうだよ」

 

周りを見る。

彼らを信じている訳でもない、言いなりになっている訳でもない。

 

「こんな俺を助けてくれた奴がいる。そいつらが必死になって、俺を頼ってくれたんだ。だから」

 

ブロディは声を震わせる。

 

「だから、一度くらい、俺の話を聞いてくれよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

ブロディの訴えに沈黙するコミュニケータ。

彼の訴えが通じたのか、わからないまま。

頭上でジャイガーが唸り声をあげていた。

 

「お、おい」

 

桐野が指をさす。

坂本が、長峰が、米森が、ボコが、ジュンイチが、ジョーが、そしてブロディが音の方を見る。

人を襲っていたジャイガーとアーストロン。

二体の怪獣に科特隊と防衛軍の攻撃が降り注いでいる。

 

「父さん……!」

 

ブロディは自分の言葉が届いたという事実に目を丸くする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェットビートルを操縦する早田、嵐。

彼らは村松キャップからの指示を受けてアーストロンへ攻撃を仕掛けていた。

 

「くそっ、固い表皮だな。攻撃が通らないぞ」

「こんなこともあろうかと!」

 

後ろから井出が顔を出す。

 

「試作で作っておいたQXガンをビートルに搭載しておきました!これならどんな怪獣だってイチコロですとも!」

「おい、井出!そんなものがあるなら早く出せよな!」

 

叫ぶ嵐の傍で早田が取りつけられていたQXガンを構える。

ビートルから放たれたQXガンがアーストロンの頭部に直撃。

頭の角が一撃によって吹き飛ぶが未だ健在。

 

「ひゃああああ!?なんて固い皮膚なんだ!」

 

驚く井出。

 

「早田、どうする?」

「まぁ、待て。僕に考えがある」

 

早田の指示を受けて嵐はビートルを急上昇させた後、アーストロンに向けて急降下する。

接近してくるビートルに気付いたアーストロン。

自らの体を傷つけた相手に狙いを定めて口からマグマ光線を発射しようとする。

 

「今だ!」

 

トリガーを押す。

放たれたQXガンの攻撃はアーストロンの口内に入り込む。

アーストロンは目を白黒させた後、ゴバァ!と口から血を吐いた。

びくびくと痙攣しながら地面に崩れ落ちる。

 

「やったぁ!」

「早田!」

「確かに相手は強固な皮膚だが、内側は脆いってね」

 

三人はビートル内でハイタッチをする。

 

 

 

 

 

 

 

一方のジャイガー。

レイモンド将軍の指示で用意された試作兵装フルメタルミサイルが次々とジャイガーに向けて発射される。

 

「破壊よりも貫通を目的に作られた兵装。効果がある筈だ」

 

彼の予想通り放たれたミサイルはバリアーを貫通して次々とジャイガーの体にダメージを与えていく。

痛みに苦悶の声をあげながらジャイガーは視線を動かす。

そして、見つける。

自分の体に傷をつけようとしている相手を。

とても小さな存在。

だが、そんな奴が自分を傷つけたという事がジャイガーの怒りに火をつける。

ジャイガーは向きを変えると真っすぐにレイモンドに迫る。

地面を蹴り、尾をレイモンドに叩きつけようとした時。

 

「なっ」

 

ダメージから回復したウルトラマンが振り下ろされた尾をその身で受け止めた。

 

「守った、というのか!?」

 

驚きを隠せないレイモンド。

邪魔者が復活した事にジャイガーはより苛立ち、尾を振り上げる。

先端に隠している尾棘がウルトラマンを貫こうと迫った。

 

「あぁ!」

 

ジョーが声を上げる。

ウルトラマンの腕、そこに伸びている刃が金色に輝く。

掛け声と共に繰り出された光の刃がジャイガーの尾を斬り落とした。

悲鳴を上げてのたうつジャイガー。

ジャイガー目掛けて、ウルトラマンは両腕を十字に交差させる。

 

――クロスレイ・シュトローム。

 

光線がジャイガーのシールドを貫き、体に直撃する。

ジャイガーの体が大爆発を起こす。

爆風と衝撃に米森達がボコ達を庇う。

 

「あちちちち!?ガメラの時と同じくらいあつぃ!」

 

ガメラの火焔弾に匹敵する熱量。

衝撃と熱風が収まって全員が顔を上げる。

ジャイガーのいた場所に亡骸の欠片すら残っていなかった。

腕の十字を解除するウルトラマン。

彼とジョーの目が一瞬、交差した……気がした。

ウルトラマンは視線を外すと地面を蹴り、瞬く間に音速を超えて空の彼方に消える。

 

「すっげぇ」

 

ぽつりと誰かが呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、八幡!」

「そっちは大丈夫ですか?」

 

首元をさすりながら転倒した車を戻していた八幡。

すぐ傍で気絶していたエミコの姿がある。

 

「彼女、どうしたんだ?」

「横転のショックで」

 

手短に説明したところで八幡は彼の後ろを見る。

 

「大所帯になりますね。車が必要だ」

「その必要はないんじゃないかな?」

 

坂本が指さす方をみる。

防衛軍の車両が数台、こちらへやってくる。

先頭にいるのはブロディの父親であるレイモンド将軍。

よくみれば、科特隊の車もある。

八幡が眺めていると車両が停車してレイモンド達がやってきた。

 

「キミ達、巨人がどこへ行ったかみたかね?」

「あ~、空じゃないっすか?あっという間に消えたみたいですし」

「そうか……」

 

会釈して彼はそのままボコ達のいるところへ歩んでいく。

 

「うわぁ」

 

レイモンド将軍は歩いていくとそのまま息子の頬を叩く。

その光景に坂本が顔を顰めた。

 

「親ってあんな感じなのか?」

「さぁ?俺もわかんないっすね。でも」

 

坂本の言葉に八幡は首を振る。

叩かれたブロディにジョーが話しかけていた。

 

「友達はできたんじゃないですか?知らないですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボコ君達が無事で本当に良かった」

「米森さん、心配かけてごめんなさい」

 

米森に謝罪をするボコ。

自分の無謀な行動で迷惑をかけたのは事実。

隣でジョーやジュンイチ、ブロディも謝っている。

 

「冒険心ってもんがでてくることは仕方ないさ。でも、命の危険に繋がることは気を付けないといけない。今回は運が良かった」

 

ボコと目線を合わせて話す米森に何度も頷く。

 

「キミが無事でよかったよ」

 

そういって米森は優しく抱きしめる。

桐野はその光景を見てなんともいえない表情をしていた。

血のつながりはなくとも親子のような関係。

不思議とその光景に羨ましいと感じる。

汚れたメガネを吹きながら背を向ける桐野。

とにかく、疲れた。

帰ってゆっくり眠りたい。

そう考えていたのだが。

科特隊の人間がやってきて告げる。

 

「申し訳ありませんが事情聴取にご協力を」

「ハハッ」

 

告げられた言葉に桐野は乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

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