我は天使であり詩人である 作:草加スマイル
おじさん達と少し楽しんだ僕はようやく愛しの女神様が住まう愛しの我が家に着いた。相変わらずのボロ教会。いつかリフォームしたいね。祭壇にはもちろんヘスティア様の像を配置する。
将来の計画を頭の中でほわほわと考えながら階段を下り、扉を開ける。そこには不満そうな顔のヘスティア様。可愛い。
「おかえり。随分遅かったね」
「ただいま戻りました。ええ、ちょっと絡まれてしまって。抜け出すのが大変でしたよ」
ついでに変態なおじさんたちにも。
「全くもー! 心配させて! まあでもこうして帰ってきてくれたことだしヨシとしよう」
フンッ! と怒ってますアピールをするヘスティア様も可愛い。ああ、クラネル君さえいなければなぁ。この可愛い神様を独り占めにできたのに。
「そういやクラネル君どこにいますか? もう寝ちゃってます?」
でもまあ一応は同居人で同僚だ。いつまでもメソメソされたら空気が湿っぽくなるし、早いところ元気になってもらわないと困る。
リビングを見回したけど彼の姿はない。ヘスティア様がベッドを貸したのかな? 羨ましすぎる。
「え? ベル君と一緒じゃなかったの?」
しかしヘスティア様の返答は予想外のものだった。
「いいえ。酒場で一悶着あってクラネル君は先に帰りました。帰った………筈なんですけどね」
支払いを全て僕に丸投げしたことは……………黙っておくか。いや言ってしまえばヘスティア様からクラネル君の好感度を下げることができるかもしれないが、なんか愚痴っぽくて嫌だ。
「いや、まだ帰っていないけど………」
「うーん」
あれかなぁ。ヘスティア様に泣いている姿見られるのが嫌でどっか人気のないところでうずくまっているのかな? それか、うん、クラネル君も大概可愛い顔しているからなぁ。僕と違って変態さんたちにアーレーされたのかも。
「はあ。ちょっと探してきます」
「僕も!」
外に出ようとするとヘスティア様が付いてこようとした。
「いやいやいやいや。今日のこの辺ちょっと危ない感じですよ。もしヘスティア様に何かあったら…………僕も死にます」
「なんて事言うんだよ!」
正直ヘスティア様がいなくなったら生きている意味が見いだせないくらい辛くなると思う。我ながら一人の人物にここまで入れ込むとは。神様とはいえね。
「ですから、僕が見つけておくのでヘスティア様はドアを施錠して待っていてください。もし甲高い声や白い手足が見えてもドアを開けてはいけませんよ」
「僕はヤギじゃないんだぞ! でもマサシ君も気をつけて。危なくなったらすぐに帰ってくるんだぞ」
戻ってきたばかりの我が家から出て僕は軽く街を走って壁を蹴って跳び上がり、そこそこ高い建物の屋根の尖塔に掴まる。うわ、雨が降ってきた。早く見つけないとずぶ濡れになって風邪をひくぞ。
「クーラーネールーくーん。どーこーだー」
目を瞑り耳を澄ませる。バカっぽく見えるだろうけど人を探すのはこれで十分だ。オルフェノクは五感が超人的に強化されている。数キロ先の家の中の会話を正確に聞くことができる類の奴もいた。
僕はもかなり耳がいい方だ。聴覚に集中すれば探し物が立てている音など容易く聞くことができる。
「ん〜〜〜?」
なんか、戦っている音が聞こえる。それと………雄叫び? いや、やけっぱちな絶叫って感じだ。これは、ダンジョンの中か?
夜中にダンジョンに潜る冒険者は珍しいらしいけど一応いるらしい。だからクラネル君とは限らないんだけど、クラネル君じゃないとも言えない。
「一応確認するかぁ」
あの店から飛び出てダンジョンに直行したとしたら防具なんてつけていないし、武器も護身用のナイフ程度か? 無茶するねー。
ゆっくり行ってもいいけどさっさと連れ帰ってヘスティア様を早く寝かせてあげたい。急足で向かうかぁ。雨も降っているし。