我は天使であり詩人である   作:草加スマイル

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 この街、オラリオはとても奇妙な場所だ。アメリカのことを人種の坩堝と表す言葉があるがオラリオは人種どころではない。僕みたいな人間でない人たちがゴロゴロいる。例えば猫や犬の耳が生えていたり、牛のような角があって乳がデカかったりするんだ。

 加えて街の地下にはダンジョンとか言われる深穴があり、そこにはモンスターとかいう化物がいる。こいつらは僕の同族の基本的な性格の奴みたい感じで、他人を見ると襲わずにはいられないらしい。そいつらが地上に出てきたら危ないから冒険者っていう職業の人たちを送り出してるんだと。

 

「だからね、僕が落とし穴にハマって下の階層まで落っこちて、それでクラネルくんとははぐれちゃったんですよ」

「ええ!? 五層で落とし穴!?」

 褐色ねーちゃんズから逃げた僕は地上に出てギルドというお役所みたいなところに報告に来た。結局ツレとは合流できなかった。おかしいな、帰り道は一緒のはずなのに。死んだか? 骨くらいは探しに行こうかな、明日。

 

「怪我はない? 大丈夫?」

「打ちどころが良かったのかなぁ、ピンピンですわ」

 この人はエイナ・チュールさん。茶髪の眼鏡っ子で美人さん。なんか耳が尖っているが同じような耳の人を街中でたくさん見かけるんでそう言う人種なんだろう。

 ダンジョンに潜るにあたって情報を教えてくれたりクエストの斡旋をしてくれたりする担当者がつくんだが、僕と今は亡き先輩(推定)の担当者がこの人。美人だし割とパイオツあるからファックしたい。でもナンパした時に笑顔で断られたから諦めた。残念。

 

「それで多分下の階層だと思うんですけど、頭が牛のキン肉マンに襲われたんです」

「下って六層? 頭が牛って……それミノタウロスじゃない! なんで六層に!?」

 どうやらあの階層にいちゃいけない奴だったらしい。ぶっ殺したことは、黙っておこうかな。根掘り葉掘り聞かれたらオルフェノクだってバレそうだし。

「なんか襲ってきたんですけど、なんとかなりました。よかったです」

 逃げたとも戦ったとも言っていないよ。

「良くない! 後で調査クエスト発注しておかないと……」

 あーだこーだとエイナさんと話している時だった。聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「うう、見つからなかった……」

「力になれなくて、ごめんなさい……」

 後ろを見てみると死んだと思われていたツレが入口から入ってくるところだった。あの綺麗な若白髪は間違いない。だが一緒に凄い美人さんを連れているのはどう言うことだ? 金髪で凄い薄着に申し訳程度の鎧をつけている。うん、エロい。ファックしたい。

「クラネルくーん! こっちですよー!」

「え? マ、マサシ!?」

 僕の姿を見るなり先輩は駆け寄ってきた。途中こけたが立ち上がって僕のそばにくると身体中を触り始める。

 

「だ、大丈夫だった!? 怪我はない!? 穴に落ちた時は本当にびっくりしたよ」

「くすぐったいよクラネルくん」

「ああ! ごめんっ! でも、よかった〜〜〜」

 パイセンは脱力して床にへたり込んだ。顔もふにゃふにゃだ。

「お互い生きているようで何より」

「そう、そうだ! マサシはミノタウロスに襲われなかった!?」

「ミノさんね。襲われたけどなんとかなったよ」

 うん、なんとかね、なったんだよ。

 

「よ、よかった。僕も襲われたんだけど、あの、アイ、アイ、ア、ア、ア」

 クラネルくんがエッチな美人さんを手で示しながらプルプルと震え出す。顔も真っ赤だ。

「アイ、アイ、アイズ・ヴァレンシュタインさんが……助けてくれて……」

「よかったね」

 チラリとこちらへ歩いてくる美人さんを見る。心象良くしておくためにお礼言っておこうかな。

 

「ツレがお世話になりました。僕たちはヘスティア・ファミリアの者で、僕がマサシ・鎌堂です」

「いい……それに、あのミノタウロスは私たちの責任ですから……」

 どう言うことだと聞いてみると、どうやら帰る途中に遭遇した群れと戦ったら何体か逃げ出して上の階層へ登ってしまったらしい。

 

(A、それでもとお礼を言う。B、なんだこら死にかけたぞこら詫びにファックさせろこら)

 究極の選択。だがこの美人さんはパイオツがそれなりにあるだけでなく相当に強そうだし、この街において強いはイコール権力者ってことだ。うん、Bはやめておくか。

「いえいえ。それでもキチンと対処してくれたおかげでツレが死なずに済みました。どうもありがとうございます」

 まあ恭しくしておけば負い目を感じさせられるかもしれないし、ここは寧ろ頭を下げるのが正解かな。

 

「ああ、そんな……」

「僕からもお礼を言わせてください! 本当にありがとうございます!」

 すっ飛んできたクラネルくんが腰を90度に曲げてお礼を言った。

「本当に気にしなくていいので……。それじゃあ、失礼しますね」

 美人さんは会釈して離れていった。うーん、いいお尻だあ。

「はぁ〜……」

 クラネル君は未だ夢心地だ。

 

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