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半蔵学院の優等生にしてクラス委員長を務める少女、斑鳩は現在進行系で難儀していた。
この半蔵学院に在学する生徒の一人であり、それでいて彼女の後輩である飛鳥の幼馴染み(言わせてもらうなら腐れ縁)―――猿山という少年に。
つまる所の俺に、あの硬い委員長は難儀していたのだ。ドンマイ、委員長。その悩みが晴れる事を願ってます。
「願うのではなく協力してください! というか、貴方が犯人なんですよ!?」
「そんな事を言われましても。私の様な将来有望な男が、貴方の様なバカみたいに頭の硬い真面目さんを困らせる様な事した覚えないですけど」
「悪口ですよね? 言い訳のしようがない悪口ですよねそれ、斬り捨てますよ?」
「うわぁぁ!!! 助けてー、大人の人ー! 不良少女に斬り捨てられるー!」
「なっ、不良少女とは何ですか! 冗談、冗談ですから! ですからそんな本気の悲鳴を上げないでください!」
「勝ったぜ」
「はっ…! ま、また乗せられてしまいました……」
チョロいぜ(悪い顔)。
やっぱりこの先輩はいじり甲斐があるなー。まぁ、いじり過ぎると後から飛鳥に何を言われるか分からないので、程々にはしておきますけど。
で、何に難儀してんすか? わりとマジで分からないんすけど。
「あぁ、そうでした。貴方、また飛鳥さんを誑かしましたね?」
「誑かしたって言うの止めましょ? 言い方が悪いっす。良いじゃないすかー、別に。なんかアイツ疲れてるぽかったし」
「だから困っているんです…」
「はい?」
「飛鳥さんを遅らせたのは悪い事です。ですが、それが飛鳥さんを想っての事ですから、叱ろうにも叱れなくて…」
「あー……くっっっそどうでも良いっすね!」
「どうでも良いって何ですか! 私はこれでも、本気で悩んでるんですよ!」
「だってそれ殆どパイセンが俺を叱りたいだけじゃないっすか。この場合、俺は別に悪くないっしょ」
「いえ、全く悪くないという訳ではありません。どんな理由があれ、貴方が飛鳥さんを誑かして私達との約束を遅れさせたのは事実ですから」
「だーかーらー、誑かしたって言い方止めてくださいって。さっきも言いましたけど、アイツここ最近、結構疲れてたんすよ。笑顔もぎこちないし、明らか無理してるって雰囲気出てたしで。多分あのままだったらぶっ倒れてましたよ、アイツ」
「それは…確かに、そうかもしれませんが…」
「目覚めが悪りぃんすよ、アイツがぶっ倒れたとなると。…昔から、自分の身の程を全く弁えない奴ですから。無茶ばっかりする」
これには溜め息を吐かずにはいられない。思い出すだけでも、俺が疲れてくる。
お前は人だ。たった一人の人間だ。それなのに、自分ではなく見知らぬ誰かの事をよく考えて動く。
「身の程を弁えないって…そんな言い方をしなくても」
「…じゃあ、パイセン。難しい話ししますけど、実力が生半可な奴が誰も彼もを支えます、なんてヒーローみたいな台詞を言ったとして、貴方はそれをはいそうですか、なら全部任せますって言えます?」
「それは……」
「それが大人数ならいざしらず、たった一人となれば身の程知らずも良い所。一人の人間なら、自分の事を最優先で考えて生きれば良いのに…あのバカは、皆の笑顔があーだこーだ、恵方巻があーだこーだしか言わない。自分への褒美なんて欠片も考えてない奴には、こっちから無理に踏み込んだ方が早いんすよ」
「……」
「だから、屁理屈でも良い。屁理屈で押し通らせるなら、喜んで舌回しますよ。とにかく、アイツはもっと楽しむべきなんすよ、人生を。学生としての生活を。サボるのも、友達と遊ぶのも、もっともっと増やすべきなんだ」
なんか夢があるのかは知らないが、夢があるからと言ってアイツの人生が色とりどりにならなくなってはならない。
人生は楽しくあるべきだ。学生はもっと自由にあるべきだ。
遊び、笑い、楽しむ。時には喧嘩や悲しい事もあるだろうが、それでこそ青春というものだろう。
「……ふふっ」
「えぇ…? 今の話し、笑う要素ありました?」
「いえ…葛城さんから聞いていた通り、飛鳥さんの事が大好きなのだなと思いまして」
「…………………はい?」
何を言い出すんだろう、この人。
大好きって…えぇ? いやまぁ、決して嫌いという訳ではないが。飛鳥の性格は俺に言わせてみればバカバカしいが、それが悪だとは思ってない。
誰かを助けたい、笑顔を守りたい。そんな望み、願いは好ましいものである筈だ。多分。
ただ、その中に自分を入れてないし今の自分でそれをやろうとしてるからバカだと思ってるだけだ。
それを考慮したって…えぇ?
なに、もしかしてヒロインって俺でした?
「幾ら幼馴染みとは、そこまで入れ込むものではないでしょう。それは、貴方が飛鳥さんを想っているからではないんですか?」
「そりゃあ、まぁ…無関心ではないっすけど。でも、大好きっていうのはちょっと違うような気がしますがねぇ…」
「照れてるんですか?」
「気持ち悪い事言わんでくださいよ…。照れとかじゃなくて、マジですよ、マジ。俺のこれは、単なる世話焼き。それも要らない世話で…くっそ迷惑なお節介を働いてるだけっすよ」
知った様に腐れ縁を心配する後方彼氏面。それが俺だ。
自分でも思うが、中々に気持ち悪いな。
よし、後でまた悪戯をしよう。そう決意した俺であった。
その後、やろうとした所を飛鳥に捕まった話しはまた今度。