やさしい世界への転生   作:作蓋

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未だ視えぬ“やさしさ”の始まり
一話


『残念ですが、貴方は死んでしまいました……』

「ハァそうですか、では一つ聞いてもよろしいでしょうか? 今日私を全力で殺しにかかってきたのは貴方ですか?」

 

 謎の空間で素っ頓狂にも思える質問をするのが私、前野 迅 24歳。何故こんなことになっているのかというと――

 

 ――私は恥ずかしながらこの年になって就職も出来ないままの成人男性だった。

 今日も頑張るぞ! と自分を鼓舞し就活に繰り出すいつもの朝、後ろでパチパチやらゴーゴーやらその様な音が聞こえ振り返ってみると、なんとびっくりアパートが燃えているではありませんか。

 

 トラック、通り魔、鉄骨 etc.その後もあらゆる残念死を紙一重で回避し生き残ったかと思えば最後の最後にマンホールに落ちてやっぱり残念な死に方をした、という訳だ。

 

 

 

 時を戻して神とか名乗る不審者に絡まれている現在。

 

『…………す、すみませんでしたあぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 私はその神を泣かせてしまっていた……昔からよく人相が悪いと言われたがそんなに怖いのか……

 

「だっ大丈夫ですか!?」

 

 ちょっそんなに泣かれても困るんですが……少し待って事情を聴くことにした。

 

『実は……とある世界が貴方のことをすごく気に入りまして、それで…………連れてこいと言われ、私が貴方を連れてきました…………』

 

 節々から疲れを感じさせながらも笑顔を崩さない神様、中間管理職みたいなものか、働くって大変そう……お疲れ様です。

 

『で、でも転生ですよっ! 転生っ! しかもあのやさしい世界への転生なんですっ! さらにさらにその世界からの恩寵付きですよっ!!』

 

 勢いで丸め込もうという意思を感じる、だがやさしい世界か……女の子になるのは可能なのだろうか?

 

『可能ですよ』

「ッ!?」

『でも何故女の子に?』

 

 いきなり思考を読まないでほしい、心臓に悪いからそれと女の子になりたいのはな、私が癒やし系のものが好きだからというのが大きい。

 せっかくやさしい世界とやらに行けるというのだ、女の子になって百合百合して癒やされたい。

 

『では決定ですね、それではお幸せに――――』

 

 

 

 

 肌越しに先程まで感じなかった圧を感じる、まぶた越しに光を感じ目を開く。まだ赤子のため首をあまり回せないからそのまま目に見えるものを把握する。

 母が一人に父は見当たらない、周りは窓が割れている。

 おっと泣かないと息もできずに死んでしまう。

 

「おんぎゃーおん――」

「しーー」

 

 いきなり赤ん坊に静かにすることを要求する母が居る。

 ん? そういえばなにかおかしいぞ。そう感想を抱いたのは産まれて初めて見た景色があまりにも廃墟感溢れるものだったからだ。

 やさしい世界? やさしい世界ってなんだ? 廃墟、静かにすることを要求する母、それでやさしい世界? いや、まだ分からないぞ産まれて2分では何も分からないさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて思ってた時期がありました、金髪美少女5歳です名前はまだ貰えていない。最近思い出したが私には恩寵やらがあると説明を受けていたし確認したい。どうやって確認するのだろうか?

 

 ステータスオープンとでも声に出せばいいのだろうか? 

 

「ステータスオープン」

 

 しかし何も起こらなかった。何故だ、えっ頼む感じだったりするのか?

 

「えーと世界さん、恩寵とはどういったものなんですか?」

『君を運命レベルで死なない様にするものだよ、それと君を幸せにするものさ! by世界』

 

 思ったよりも良いものだった……死なないし絶対に幸せになれるという効果、最高ありがとう世界様!

 もう一回聴いてみようかな?

 

「世界さん、私の恩寵を教えてください!」

『君を運命レベルで死なない様にするものだよ、それと君を幸せにするものさ! by世界 追記これは事前に設定したものだから何度聴いても同じだよ』

 

 私はちょっとした反抗心を抱いてしまいこの後何度も聴きまくった。

 

 これが1年前だ今年の誕生日に名前をくれるんだって。やっとだよ、今まで娘やら我が子やらどんな上位存在だよって呼び方しかされなかったし結構きつかったんだ。

 

「逃げるよっ!」

「んえ?」

 

 いきなりの逃げるよ、母に手を取られ半ば強制的にその場から飛び出す。

 

 逃げる途中で何から逃げているのかが気になり振り返ってみると、巨大ロボ同士が戦っていた。

 やはり男の子巨大ロボに興奮している自分がいる、そんな自分を諌めながら母とともに逃げる。

 あれに巻き込まれたら絶対に死ぬ、そう本能が訴えかけてくる。

 

 瓦礫の飛び散る音それらが背後からする恐怖は凄く、震え上がってしまう。

 

 かなり長い時間逃げていたと思うがそこまで経っていなかったようだ、ロボットが真後ろに居る……

 

 母も立ち止まっている、ロボットから人が降りてきた。

 

「んー? お!? いいオンナはっけーん」

 

 そういった男は母の腕を掴んで無理矢理連れて行こうとする、それに抵抗する母、取り敢えず文句を言い殴りかかる私。

 男はそんな私を鬱陶しく思ったのか母を掴むのを辞めこちらに向かってくる。

 この体に産まれてもう6年そんな(少女)が自分より大きい男を怖がらないはずもなく漏らしそうになる。

 

「この世はなぁ、弱肉強食なんだよっ!!」

「う、あぁぁ」

「プッアハハハハハハハ」

 

 目の前の男は私を蹴り上げ呻く私を笑っている、叫ぶ母、笑う男の声が混ざって聞こえとてもきもちわるい。

 ただ一度蹴っただけでは飽き足らないのか更に蹴ってくる男、母はもう辞めてくれと懇願しだした……辞めてくれこんなクズに頭を下げないでくれ…………

 

 だめだ……音が遠い、意識を失う寸でのところで耐えている現状、幼子には打つ手など最初からなかったということか。

 

 お母さんの声が聞こえる、遺言か何かだろうか? 沈みかけていた意識を維持で引き戻し、言葉を聴く。

 

「ごめん、ごめん……そうだ誕生日プレゼントだったね、おまえの名前はクーラだよ。さよなら最愛の私のクーラ…………」

 

 そこまで聴いて無念にも私の意識は暗く深い所に沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 起きれば周りには瓦礫以外は何もないいつもの景色。日常の景色、その景色に巨大なロボの残骸が一つ、その残骸だけが先程の出来事を夢ではないと訴えかけてくる。

 

 その日は泣いた、泣きに泣きまくった。もう何もする気が起きないと思える程に……だが嫌が上にも腹が減る。適当に拾ってこよう…………

 

 食料を集め食べていると男の言葉が頭の中で反響する、『この世はなぁ、弱肉強食なんだよっ!!』…………弱肉強食、強ければ何も奪われないのだろうか、私は何も奪われなくてもいいのだろうか。

 

 私にだって解っている、これから私の抱えるものは年を追うごとに増えて行くのだろう。

 そんなに多くのものを守るなんてもちろん一人では無理だろう、だがいい人だっているはずだここはやさしい世界だし母という前例がいるし。

 

 ひとまずあのロボットを修理出来たらいいな、こう見えても私機械とかそういうの得意だったんだ。

 考えてみたらこっち系の仕事の面接を受けるべきだったのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 壊れたロボットを調べてみたが少なくとも電気では動いてなかった。液体に太陽光を貯められる仕組みらしい。取り敢えずコアを引っ張り出してみたら分ったことだ。

 

「光ってるし、夜にちょうどいいや」

 

 独り言をポロリと零す、思っていたよりも人が居ないことは心にくるらしい。

 

 ここにももう用はないし、出るか………………

 

 

 

 

 私は(巨大ロボ)を求めて食料とメインコア、雑誌を持ち、出発する、雑誌は文字を覚えるためだ。

 

「これは……りんごか、こっちは…………コア」

 

 声に出しながら少しでも私が寂しくない様に、もう泣かなくても良くなるように。




 絶望から目を逸らして元気になる系TSっ娘……いい(≧∇≦)b

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