やさしい世界への転生 作:作蓋
「じゃあ、ここでサヨナラだね……」
シュンとしているアン、初めましてから五日か一週間程度たったころに出て行くと言い始めさらに日が過ぎた。
「やっぱり一緒に行こu」
「いかない」
「………………無慈悲」
うーむ……不機嫌だ。どうしたものかと妥協案を探すために思考を巡らせていると。
「じゃあ、それちょうだい」
「ん? これ?」
アンが指さし示したのは私がデバイスを組む際についでで作ったスキットル。こんなものがほしいのか? 随分と喉が渇いてるんだな。
「うん、これくらいなら全然いいよ」
「やった♪」
ルンルンしてる、かわいい。やっぱりご機嫌な美少女はかわいいな、まあ超スーパーウルトラ金髪美少女である私の方が神秘的かつかわいいさらに荘厳(意味をわからずに言っている)*1に決まっているが。
私、アンは悩み事が一つあった。それは最近できた友達クーラちゃんが私の旅に付いてきてくれないらしいのだ。
付いてきてくれない理由が勉強したいからとかいうなんともふざけたものだったから尚更どうにかしなきゃいけない。
勉強のためだと言って一部が光る板をずっと見てる、彼女しかもなんか頭に輪っかを半分にしたようなものをつけてるし?
そも勉強なんてしなくても八から十の間に文字なんか読めるようになるのに、私のときだってそうだし。常識知らずにも程がある。
「それナニしてるのー?」
「べんきょー」
「そんな板で? 変なの」
「……………………」
明らかに落ち込み始めた彼女、私と彼女の間の空気が悪くなっていってるような気さえする。
「じゃあここでサヨナラだね……」
数日が経ったがまだ彼女の勉強は終わる気がしない私もここにずっといる訳にもいかない、とても口惜しいことだけれどサヨナラをしなければならない。
やっぱり気が変わっていたりしないだろうか? うんそうだ、多分変わっているはず。
「やっぱり一緒に行こu」
「いかない」
「………………無慈悲」
彼女は無慈悲だ、慈悲のカケラもない、私がこんなにもアピールしているのに全く反応しない。
そんな無慈悲な彼女に目を向けてみれば私のアピールを分かってはいるのか申し訳無さそうな顔をしている。*2その姿は初めて目にしたときのような天使そのものだった。
「じゃあ、それちょうだい」
「ん? これ?」
そうだ、それを貰おうと指を指し言う。見たこともないものだから貴重なものだろう、つまりあれを貰えたら彼女を貰えたらと同義だろう。
「うん、これくらいなら全然いいよ」
「やった♪」
やった♪ やった♪ これは彼女とのつながりだ、これさえあればいつでも彼女を感じられる。それはとても幸せなことだ。
アンはスキットルを持って旅立つ、もし、目的が変わっていないのならばアンの旅は辛くて、心をすり減らすものになることだろう。
「がんばって」
アンの旅にせめてもの救いがあることを、そんなものもなかったらとてもつらいし、何より私には救われなかった“それ”は本当にアンなのかが分からない。
私がいつかの日に再開したいのはアンなのだ、アンだった抜け殻などではないのだ。
「また会えるよね」
だがそれだけの理由ならば離さなければいい、旅になど行かせなければいい…………けれど、それだとアンにはずっと空虚がついて回る。
それだけは絶対にだめだ、そんなものが純粋な混じり気のない少女について回っていたら私は楽しく百合百合も癒やしも堪能出来はしない。
私のためにも、アンのためにもどうか、平穏無事なやり直しのための激情的な復讐の旅を…………
それはそれとして私の方も自身の小目標を達成せねばならない。文字も読めないどころか実は意味の分からない単語まである始末。
例えば偶にアンが言っていたクオンルクロエンとかいうあれが分からない。一体何を意味するんだ。
まあそれも勉強すれば解決だ。勉強して書物(デバイス)を読んで知識を獲得する、完璧だな。完璧過ぎて私は私の脳がこわい!
「さて勉強勉強」
よくわからないものといえば、アンは私に絶対に近づいてはいけない、もちろん入ることなど許さないと珍しく脅すような形で行ってきた部屋がある。
「アンがあそこまで言うなんて…………気になる!!」
私は今その部屋の前にいる、なんか臭い、確かにここには近づきたくない、けれど進む。
迷いはすれど私は踏み込む未知を既知とするために、幸せを掴むために。
その部屋に入ってみてまず見えたのは、緑、そして吹き抜けなのか、葉の間から光が漏れている癒やしの空間、そのなかにラックがいくつか。火薬庫の隣に木植えるな。
「ほぇー、セラピー?」
すこしチグハグな印象を受けたが、これがあれば容易に癒やしの百合百合ニャンニャン
私の必殺空間だ、入ってきた
そうして癒やしに晒された私は夢想する、アンが戻ってきてその他色んな人と知り合ってここで百合百合…………
「ぐふふ」
美少女のぐふふはもう癒やしそのものだ、これを前世の自分が見ていれば卒倒していたことだろう。
一瞬それかけた思考を戻し妄想に戻る。気分を出すためにも口にも出しておこう。
「ホワンホワンホワン」
「おねーさまたちっ、中庭へ共にまいりましょうっ」*3
アンが旅立ってからすこししてこの娘は空から降ってきた。*4
親方! 空から女の子が! (親方いないけど)
復讐を果たしたアンは私がいるかもと思いここに戻ってきた、以来三人で暮らしている。
「そうね……私達もいきましょう、ね? クーラ」*5
アンは最初に出逢ったときの雰囲気を残しながらもすこし大人の雰囲気を醸し出す美女へとなっていた。
…………そうだな、美人大学生と言った感じだ。
「そうだね、アン♪」*6
私は誰の追従すら許さない程の正統派美少女へと成長した。
「おねーさまたち遅いですよー、おばさまが中庭でまっていますよー」
「おばさまなんて言ったらまた母に怒られるよ」
アンが言うには旅の途中に無理矢理ヤラれそうになっていたところを助け出して、そのまま連れてきたらしい。
その助け出された人がたまたま母だった。なんていう都合のイイ偶然だ…………
心地の良い夢に浸かっていた私の足元に
「イイィィィィヤア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァァァァァァア」
出たっ! 虫! ヤダ! 思考が纏まらない、どうしようどうしようどうしよう…………そうだっ!? 焼き払ってしまえっ!?
即部屋から飛び出し扉を閉める。そして再加速二、三週間前に発電機があった場所まで走る。急がなければ奴らが逃げる、それだけはまずい。
そこから三十分から一時間程度経ち、ついに完成した。火炎放射器、あの罪の生き物を焼き尽くすのだ――――
――――燃やしてやった……燃やした……私が、すべて燃やした……なんだろう…………凄く虚しい。無駄に良い耳はしっかりと、カサカサと虫が逃げ回る音まで拾ってくる。
トラウマになりそう。
シュウ、と虫が焼けごうごうと木々が燃えていく、視界はもはや黒に紅のみ、それを綺麗だという人もいるかもしれないが私には、とても醜いものに見えた。
「あ」
私はふと思い出す。ここ、火薬庫の隣だ……
「あー! やらかしたっ!」
私は慌てて機体を操り砂を集める、消火器というのはなんか粉だとか聞いたことがある。あと昔花火でボヤ起こしかけたとき砂でなんとかなった。(大量の砂で押しつぶしただけ)
「ふぅー、助かった」
なんとか大事にならず済んだことに安心し砂だらけの中庭の掃除で一週間が潰れたのは言わずもがな。
私の癒やしの百合百合ニャンニャン空間が台無しだ。
建物を放棄する際にはナマものはしっかりと捨てておきましょう。建物ごと焼くことになります。
でもおかげで火炎放射ロリが見れました。ヤター
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