やさしい世界への転生 作:作蓋
くださいという
乞食です
私の癒やしの百合百合ニャンニャン空間が台無しになって早二年、超スーパーウルトラすごい金髪美少女である私は今、十三歳だ。
今日は流石にそろそろ出ないとイケナイかなと思い初め、出発の準備を整えることになった。
正直ずっとここに住んでも良いんじゃないかとも思ったが、このままでは延々と百合百合ニャンニャンは出来ないのではないか? と思い直して出ていくことにした。
「とにかくしょくりゅおうを集めなければ」
こころなしだがこの幼女ぼでーは滑舌が悪いような気がする。いまは比較対象も指摘してくれる人もいないから断言はできないけれど。
「そもそも二年も人と話してないし、よく喋れている方だりょう」
……話を戻そう、えーとなんの話だったか……? そうだ、今私が何をしようとして何故それをするかだったかな。
私は今、保管庫から旅立つために食料を集めようとしている。その集める食料は木の実が狙い目だ。
「できれば肉も……ぐふふ」
というわけで探検だ。二年もこの森に居た(建物に引き籠もってただけ)のだから探検といっても何も危険はないだろう。
見渡す限りは緑と幹色、それと植物特有のツンとした匂いが鼻をつつく。葉と葉がざわめき合う音、虫の鳴き声も聞こえてくる。
よく耳を澄ましてみれば私が歩を進めるたびに布と肌が擦れる音、土と葉を踏む音。他にも色々な音が聴こえる。
解ってはいるが一体の生物にも思える壮大さを目の前の森は持っていて、雑多としていながらも協調性のある音のせいで、私もこの森の一部だと思えてしまう。
そんな森に圧倒され間抜けにも、すげーなどと声に出しながらもしっかりと通った道に目印として木々に傷を付けていく。
「はぁ……はぁ……」
数分と歩いただけだが、疲れてしまい、先程まで傷を付けていた木の影で休むことにした。
「ん? あれは……食べられそう♪」
休むついでに周りを見渡すと木の実、食料を見つけ、私は年相応にも上機嫌になり……
「あったっ♪」
と叫んだ。このゆるゆるなお口は思ったことを直ぐにこぼしてしまう。
前世で
我慢する前に口に出るのだ、最初はびっくりしたが慣れてしまい、ついには我慢しようとも思わなくなってしまった。(慣れってこわいブルブル)
ともあれあの木の実を取る必要がある。方法としては二つ、木を登り取りに行く、木を揺らして落とす。
「あれを取るにはー……のぼるかっ!!」
私がとったのは前者の木登り、いや木登りは特に得意ではないがこの体で木を揺らすなどできないだろう。
だが石でも投げれば良いじゃないか、と思えるかもしれないが、そんなことをしたら木の実が潰れて仕舞うだろう。あと私の筋力じゃ届かないし。
だから登るしかないのだ。二年の勉強漬けは伊達ではなく頭はすこし良くなったが体力は更に落ちたのだ。かなしい。
言い訳はもういいとして木の前に立ち、軽く見上げ掴める場所を探す。
「よっ、ほっ、んしょっ、と。…………上手に登れましたー♪」
褒めてー♪ と続けそうになったが、流石に恥ずかしいく思い、止めることに成功した。
木の実は手を伸ばせば届く距離に来て、手を伸ばす。
プチッと気持ちの良いヘタを捩じ切る音と少し硬い表面、匂いは特にしないし食っても良いだろう。
「じゃあ早速、いただきまー――」
がさがさと音がする。私は余り気にしな――音デカくない?
何事かと視線を落とし確認する。草木を掻き分け寄ってくる音、状況的にも大型動物の足音だった。
犬の様な姿をしているが口の位置も目の位置もおかしい、何ならリスみたいな尻尾まで生えている。
きもちわるっ、やさしい世界と言うならグロ系のは出して来んなよ!! …………ん? こっちみてる?
「って、来ないで来ないで!」
衝突音、謎生物が私が乗っている木に突進をした。
木は揺れ私は振り落とされかける。現に葉の何枚かが落ちていく。
「KIiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii」
見た目からは予想出来ない高音での咆哮。私は遂に(あからさまな化け物の)恐怖に耐えられなくなり手元にあったものを投げた。
だがそれは謎生物には当たらず、謎生物の近く(主に口の近く)にポトッ、と可愛らしい落下音で着地を決める。
その絶望感ゆえか落ち着いた。なにを投げたのか手元を確認する。印を付ける為に使っていたナゾノテツノボウはある。先程取った木の実はない。
「しょくりょが……」
ま、まあ良い後で取りに行けばいい話だ。そう安心したのが悪いのか謎生物は木の実を食べてしまった。
「あー! 私の食料ー!」
一、二時間後。
日の沈み始める時刻。光が差し込み神々しかった森は今や暗く薄気味悪い、オバケでも出そうな森に豹変した。……が。
「助かったー……」
助かりました、無事帰還です。どうもあの木の実、毒だったようでそれを食べたナブちゃん*1はピクリとも動かなくなった。
ナブちゃん……君のことは忘れないよ…………(怖かったから)
ともあれ、これからするべきことは……
「帰ること!」
気持ちが昂ってしまいつい大きな声を出してしまった。はじゅかしい……
その後は特に何もなく帰ることが出来ました。冒険に危険は付きものだよね!
「マスター……情報入ってる?」
日が沈みかけた頃、私は傭兵の仕事を片付けて傭兵紹介所に戻った。
こちらの顔を見るなり嫌そうな雰囲気を漂わせるマスターにターゲットの情報が入ってないかを聴いた。
「嬢ちゃんか、残念ながらな……」
「そう……」
結果は、まだあるそうだ、明日の準備をしないといけないし機体に戻ろう。
機体に戻り、コックピットの中で眠る。もう慣れた行為だ。彼女に貰った宝物を手に取り、抱きしめる。
「疲れた…………けど、貴方が居れば…………まだ……」
彼女と約束を交わし、別れてからもう二年の年月が経った。あの約二週間の夢の様な時間は過ぎ去ってしまった。今やその残滓はこの銀色で中が空洞の少し大きい板ぐらいしかない。
私は森を出た後、一年間のあいだ、身勝手な理由で人を傷つける機体乗りを殺して回った。そうやっておとうさんの仇を探した。
だけど一年かけても仇は見つからなかった。だから、私は私が産まれるすこし前出来たっていう“国”というコミュニティの雇われの傭兵になった。
そこで仕事を受けて、殺す。マスターに頼んで情報を流してもらい、殺す。自主的なパトロールで、殺す。クズどもに情報を吐かせて、殺す。私に寄ってくる害獣を締め上げて、殺す。
殺す。
殺す。
殺す。
殺す。
殺す。
そうやって日々を……この一年を過ごして私はもうボロボロで、笑顔ですら彼女に向ける権利を失ったかもしれないけれど。間違いなく今の私は彼女の存在が支えで…………
「もう、むりだよ……もう私には耐えられないよ…………貴方の声が聴きたいよ……クーラちゃん……」
こうやって泣くのもいつものこと……もう慣れ始めた頃合い、日課ではそろそろ寝ないといけない。
宝物を抱きしめて寝る。明日にはまたクズを殺さなければならないのだ。
「ひっ、み、見逃してくれよ〜!」
機体式固形エネルギー弾がクズの機体を削り取る。機体の破片が飛び散り、さっきまでクズの巣だったものを潰す。
「うるさい」
今日もまた、殺した。
「マスター」
マスターにクズの情報を聴く。
「う、うぅ……」
寝る前に泣いた。
抱きしめて寝る。
私の休日はそうして終わる。
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