魔王城の下働き   作:双子烏丸

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シティ・デート

 

 ────

 

 アビスシティに来ていたムースとの再会。それからも僕の仕事、城のみんなへの買い物を続けたわけだけど、彼女も一緒に手伝ってくれて。そのおかげで……。

 

「……これで全部、と」

 

 メモに書いていた分の買い物。ようやく全部済ませて買った物を馬車に乗せる。

 

「トルテ、お疲れ様」

 

「ムースが一緒に手伝ってくれたおかげだよ。ありがとう、とても助かった」

 

「どういたしまして。トルテの助けになれて、私も嬉しい」

 

 おかげで僕の分の仕事は早くに終わった。街の時計台を見ると、半日近く時間の余裕がある。

 

(これくらい時間が余っているなら……ふふ!)

 

「ところトルテ? 仕事もこれで一段落したけれど、この後時間ってあったりする?」

 

 そう考えていた途端に、ムースからの呼びかけがあった。

 

「……うん。実は結構早めに終わったから時間が割とあってさ。もしかして……考えている事が同じだったり?」

 

 少し互いにドキドキする感触。彼女は僕に向かって、尋ねてきた。

 

「私はね、良かったらこれから二人で街を回ってみたいって思ったの。

 だってせっかくの大きな街で、今度はお仕事はなしで……一緒に見るのも楽しそうだから。トルテは?」

 

「──やっぱり! 僕もムースとそうしたいって、思っていた所だったんだ!」

 

「くすっ、良かった! 一緒の気持ちで」

 

 ムースはそう言うと僕に手を取り、引っ張って。

 

「なら早速行こう! 今日はトルテとたくさん、二人で過ごしたいしっ!」

 

 よほどそうしたかったみたいで、彼女は僕の手を引いて一緒にまた街に繰り出そうとする。ムースの勢いに思わず押されてしまう。

 

「分かった、分かったから。僕もちゃんと一緒に行くから」

 

 こんなにムースが積極的だなんて、驚きと言うか。

 ──でも、楽しみな気持ちは分かるな。僕も同じ気持ちだし。

 

 

 

 ────

 

「トルテ見てみて! この帽子、可愛いです」

 

「うん。ムースにとても似合ってるよ」

 

「ありがと! せっかくだからトルテも……このジャケットなんてどうかな?」

 

「ちょっと派手な気がするけれど、悪くないかも。僕も試着してみようかな」

 

「トルテならきっと似合うよ。だって意外と、格好もいいし」

 

「もう……意外は余計だよ」

 

 ムースと二人で街を巡って、洋服やファッションとかのお店にも立ち寄ったり。村にはお洒落な洋服屋なんてなかったから。……どっちも自分用に用意したお金は少ないから、数着くらいしか買う余裕はなかったけど、彼女は興味津々に見て回ったり、試着とかして楽しんでいたな。

 もちろんそれだけじゃなくて、他にも……。

 

 

 

「──うわわっ!」

 

 高い所からの猛スピードでの急降下。初めて乗るジェットコースター、こんなにスピードが出るものなんて。

 それだけじゃなくて……。

 

 

「ねぇねぇ……怖かったら、私に掴まってもいいんだよ」

 

「……別に、怖いだなんて。僕は全然…………ひいっ!!」

 

 お化け屋敷ではいきなりお化け役、半透明な幽人族がどこからともなく驚かせて来る。別に……全然、怖くなんてないけど、少しびっくりして声が出たくらいで。

 後、反射的にムースに抱きついてしまったり……とか。

 

「いきなり壁をすり抜けて驚かせるなんて、卑怯だろ」

 

「まぁまぁ、トルテ。そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」

 

「だから……その、怖いってわけじゃ。あと……つい抱きついちゃって、ごめん」

 

 一応男なのに、こんな恥ずかしい真似をしてしまうなんて気恥ずかしくて。それでもムースはいつものように微笑みかけてくれて。

 嬉しいけど……やっぱり複雑に思ったりで。

 

 

 遊びに来たアビスシティの遊園地、ジェットコースターやお化け屋敷とか以外にも、ちゃんとしたアトラクションだって楽しんだりもした。

 

「やっぱり遊園地はこうじゃないと。これなら僕でも全然楽しめるって言うか」

 

「ジェットコースターとかの刺激的なアトラクションも楽しいと思うんだけどなー。でも……観覧車もいいよね! 遊園地に来たならこれにも乗らないとって」

 

 観覧車のゴンドラ、その中で僕とムースは二人で向かい合わせで座っている。

 今、この場所には僕達だけ。雰囲気もさっきまでとは違う中で彼女は少し頬を赤くしながら、上目遣いでこっちを見つめて、そして話した。

 

「こうしてトルテと遊園地に来れるなんて……本当に嬉しい」

 

 ついドキッとする。けれど僕も、彼女の言葉に応える。

 

「……僕は、こうしてムースと会えたことが嬉しいんだ。だってずっと直接会えなかったから。

 

 そう、ムースと会えるなんて久しぶりだった。

 魔王城にいる間はいつも遠識の鏡を使っていて、鏡越しではちょくちょく話してはいたけれど、ずっと直接会えていなかった。

 こうして目の前にいるムース。その仕草とはにかんだ顔。

 

「やっぱり、直接会って話せる方がいいな」

 

「うん……そうだね」

 

 やや照れている感じの彼女。それから僕に聞いてきた。

 

「ところでトルテ、魔王城でのお仕事は順調?」

 

 仕事についての事。僕はもちろんと応える。

 

「ちゃんと順調だよ。仕事もしっかりやれているし、僕も村にいる時より成長出来てるって感じだよ」

 

「それなら良かった。……だけど」

 

 途端、彼女はしゅんとなって、こんな事を。

 

「トルテは、その……いつまでこうしている感じなの?」

 

「いつまでって?」

 

「……急に魔王城に働きに行きたいって、村から出て行って、今も下働きで働いているの。

 私も、トルテも成長はしているけど……まだ子供だよ? お城で頑張っているのは分かるけど、何だか無理に背伸びをしているみたいって思えて」

 

 思いも寄らないムースからの告白。言葉には切実な……それに一抹の寂しさが感じられた。

 

「……ムース」

 

「ごめんね、こんな事言っちゃって。

 でもこうしてトルテに会って、それにお城に行ってから一緒にいられなくなって……寂しいんだ」

 

 彼女にそんな思いをさせていた。もしかしてとは思っていたけれど……直接言われると苦しいものがある。

 

(彼女に寂しい思いをさせたのは、僕のせいで。悪い事をしているのも分かっている)

 

 けど──。僕はムースに伝える。

 

「僕の方こそごめん、ムースにそんな思いをさせてしまって。

 でも僕は……まだ君の元には戻れそうにない」

 

「トルテ……」

 

「──だけど、ずっと寂しい思いなんてさせないから。

 あともう少し、魔王城で一人前だって認めてもらえるまで待っていて欲しい。

 確かにまだ子供で、背伸びしているかもしれないけど……少しでも早く一人前に、立派な大人になりたくて。

 そしたらちゃんと──君と」

 

 僕は僕の思いと気持ち。途中までだったけど、ムースは表情が和らいだようで……。

 

「そうだね。こう言う時、トルテは真面目だって言うのは分かるから」

 

 彼女の穏やかな笑み。ちょっと、ホッとした。

 

「ありがとう……僕のワガママ、許してくれて」

 

「ううん、私こそ。トルテを困らせちゃって。

 ……トルテが早く一人前だって認められるように、私も応援しているから」

 

 ムースからの応援は僕にとって一番の励みだ。

 

「嬉しいよ。僕ももっと、頑張るからさ」

 

 

 

 ムースと二人で店を回ったり、こうして遊園地を満喫したりと。幸せな時間だった。

 けど……もうそろそろ時間が迫っている。

 

(集合時間まであと少しだ。せっかくムースと一緒にいられたのに……)

 

 残念で寂しい気持ちになる。けど、まだあと少し時間があるのなら。

 

「あのさ、ムース」

 

「うん?」

 

「もうすぐ仕事に戻らないといけない時間だけど……良かったら最後にあそこに行ってみないか?

 この観覧車よりもずっと高くて、いい眺めが見られそうだし」

 

 観覧車のゴンドラから、僕はこの街で一番に目立つ建物。アビスシティの中央にそびえる時計台を指し示した。確かに時間は残り少ないけれど、あそこに寄って行くくらいなら余裕がある。

 

「時計塔……良いね! なら観覧車を降りたら早速行こうか。観光名所みたいだし、私も気になっていたから」

 

 これで決まりだ。せっかくのムースとの時間、最後まで思い出を作りたい。

 

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