魔王城の下働き   作:双子烏丸

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里帰り

 

 魔王城の寮母で、上司の一人でもあるエクレさんは呟く。

 

「なるほどね、私からの外出の許可が欲しいのね」

 

「こんな状況で危ないかもしれないと思うけど、前から申請しているし……どうかなって、思ってさ」

 

 目の前で椅子に腰掛けて考え込んでいる彼女。実は僕は、前々から城からの外出許可を出していたんだ。魔王城で働き出してもうしばらく経って、ようやく申請ができるようになったから。

 でも、申請してしばらくしてから起こった破壊神の出現。各地で厳戒態勢が敷かれていると言う話だった。けれど……もし大丈夫なら良いなと思って、こうして責任者でもあるエクレさんに聞きに来た。けれど……。

 

「……トルテくん。分かっていると思うけど破壊神が現れている今の状況だと、許可は出せないの。

 前から申請していて楽しみにしていたのは分かってはいるけど……」

 

「……そっか」

 

 でもやっぱり無理そうみたい。多分無理だと分かってはいたけれど……残念だな。

 

 

 

「本当に、ごめんなさいね。でもこの状況が収まったらすぐに許可を出せるようにするから、だから──」

 

「──外出くらい構わないじゃない」

 

 そんな時にもう一人の声。いつの間にか来ていたのは、友達のシフォンだった。

 

「シフォンさま、まさか来られていたなんて。

 しかし、外出許可は今の状況では……許可出来なくて」

 

「ふふん! 私は魔王さまの娘なんですから、それくらい代わりに出すわ」

 

「ですが……」

 

「安心しなさい。トルテには私が同行するわ、何が起こっても守るから……ね!」

 

 シフォンは自信たっぷりに、そう言って笑顔を見せた。

 

 

 

 ────

 

 シフォンのワイバーン、プディングは城を飛び立って魔界の空を飛ぶ。

 僕とシフォンはその背に乗りながら話をしていた。

 

「良かったじゃない、何とか外出の許可が出て。ねっ! トルテ!」

 

「と言うか、ほぼ無理やり押し切った感じだろ? いくら魔王さまの娘だって言っても……大丈夫なわけ?」

 

「ふふふっ! さあね! とにかくお父様に知られる前にさっさと出かけましょう」

 

 ……本当に大丈夫かな。

 でも、せっかく外に出られたんだし、とりあえずはそれで良いかも。

 

「行く先はトルテ、あの場所で良いんだよね」

 

 シフォンからの言葉に、僕はこたえる。

 

「うん。僕が育った故郷の村……ココア村に!」

 

「オーケー! じゃあ案内をよろしくね、トルテ。……プディングも!」

 

「グルルン!」

 

 プディングの力強い翼の羽ばたきと速さ。これならあっと言う間……かも。

 

 ────

 

 僕は空を飛びながら案内して村へと向かった。

 空中から地形を見下ろしてシフォンに伝えて、そして彼女がプディングに伝えて飛ばす。少し自身がない所もあったけれど、それでも数時間くらいでようやく、向こう側に見えてきた。

 

「へぇ、あれがトルテが育った村なんだ!」

 

 いくつもの山々の真上を飛んで、ちょうど山間にあると小高い台地。そこにココア村があった。

 

「なかなか良い村じゃない? ……あれ、村のほうからちらほらこっちが見られている気がするわね」

 

「平和と言うか、平穏な村で変わった事なんか殆どないから。だから空を飛ぶワイバーンは物珍しいんだよ、きっと」

 

「へーぇ」

 

 ……ようやく村に里帰りする事が出来た。上空から眺める故郷の眺め。何だか嬉しい気持ちになる。

 

 

 プディングは村の少し外れた場所に着陸し、僕とシフォンも地上に降りる。

 

「ただいま、ココア村」

 

 一人僕は呟いた。そんなときに、一人の子供がこっちに駆け寄って来た。

 

「……あれ、トルテお兄ちゃん?」

 

 くりっとした丸い瞳で、長い銀髪の男の子──シュマロ。この子も村で育った子で、小さい村では弟みたいな存在だった。

 

「ただいまシュマロ、久しぶりに戻って来たよ」

 

「おかえりなさい! トルテお兄ちゃんが帰って来たって事、早くムースお姉ちゃんに教えないと。

 きっと、とっても喜ぶと思うから」

 

 シュマロはにっこりと笑顔で言った。それから、今度はきょとんとした表情でシフォンとプディングを見て……。

 

「それと……あれはワイバーン? 傍にいる女の子は……」

 

「グルル!」

 

「うわわっ!」

 

 いきなりプディングが鳴いた声に、驚いて彼は尻もちをついた。

 

「こらっ、プディング! 子どもを驚かせないの。

 ……ごめんなさいね。この子はプディング、私のワイバーンなの。そして私はシフォン。トルテのお友達よ」

 

 シフォンはそう自己紹介する。シュマロの方もようやく驚きから立ち直ったみたいで挨拶にこたえてくれた。

 

「よろしく──シフォンお姉ちゃん。トルテお兄ちゃんの友達なら大歓迎だよ。僕ももちろん、村のみんなも!」

 

「私もこの村に来たのは初めてだから。ふふっ、色々と教えてくれると、とっても嬉しいわ」

 

 

 こうして、僕とシフォンはシュマロに連れられて村の中へと。

 

「おかえりなさい、トルテ!」

 

「魔王城での調子はどうだい?」

 

「あら? 女の子と一緒なんて、ちょっと驚きね」

 

 村の全員とは昔からの顔なじみ。僕はみんなに挨拶をして、一人にこう尋ねる。

 

「ムースはどこにいるか、知ってる? 会いに行きたいんだ」

 

「彼女なら牧場の手伝いに行ってるよ。今だと休憩に入っている頃だろうから、丁度良いんじゃないか」

 

 牧場……僕とシフォンが来た方向とは別の村外れ、少し向こう側に見える丘がその敷地だ。

 

「ありがとう。早速向かってみるよ……シフォンも、ほら一緒に」

 

「ああっ、ちょっと待って……今手が離せなくて」

 

 シフォンはシュマロを含めた村の子供達に注目されて、話をせがまれているみたいだった。

 

「シフォンさん、良かったら村の外のお話とか、色々聞かせて欲しいです!」

 

「……と言うことだから、トルテは先に行っていてくれないかしら。大切な人との水入らずの再会も邪魔しちゃ悪いでしょ?」

 

 ここでシフォンとは一旦別行動だ。僕は牧場に行って、ムースと再会することにする。

 以前アビスシティで会ってから時間が長く経っているわけではないけれど、会えるのはやっぱり嬉しいし……村に来た大きな目的の一つだから。

 

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