魔王城の下働き   作:双子烏丸

29 / 31
最終決戦

 

 ────

 ──

 

 娘が破壊神の半身、トルテを連れて城を出た事。それを知った時にはもう手遅れだった。

 私は水晶に映る向こうの様子を見ていた。……私の娘シフォンと、トルテ。二人が破壊神を相手に激戦を繰り広げている光景を。

 

「……」

 

「念のため、周囲には大軍を待機させていますが……これで宜しかったのでしょうか? もし破壊神の力を宿すあの子供、トルテが敗れた時には──」

 

 カータードの言わんとする事は分かっている。娘のした事は魔界を危機に陥れる行為だ、トルテを取り込み全盛期の力を取り込めば……一万年前のように大勢の犠牲が出る。

 

「魔王さま、もし必要であれば今からでも討伐に動く事も出来ますが?」

 

 彼の言葉に、私は首を横に振る。

 

「いや。未だアビスシティ上空には例の爆弾魔獣が存在している。もし手出しをして爆発した場合、街一つが犠牲になるのだから」

 

「今後の被害を防ぐためにはその犠牲も止む終えないと、会議で決定したはずでは?」

 

 確かにその通りだ。しかし──。

 

「私の娘──シフォンは奔放な子だが、決して愚かではない。彼女がトルテに賭けると言うのなら私も……見届けたいと思う」

 

「……」

 

「心配するな。いざとなれば私も覚悟を決める。それでも──」

 

 私は戦いの様子を移す水晶を、眺める。

 

 

(頼む。無事に全てを救ってみせてくれ、シフォン──そして、トルテ)

 

 ────

 ──

 

 

 

 ────

 

 破壊神の繰り出す圧倒的なエネルギー。

 まるで黒い渦、荒野全体を包み込み……その中央で僕とシフォンは、破壊神と戦っていた。

 

「ふふふっ……防ぎきれるかな?」

 

 破壊神は異形の手を向け漆黒のエネルギー弾を無数に繰り出す。

 

「気をつけて! 弾は小さくても威力は絶大よ!」

 

「分かっているよ。シフォンは下がって──僕に任せて」

 

 迫るエネルギー弾の雨。僕は破壊神同様、竜のように変質した腕を横に振るう。

 放つのは──自分でも信じられないくらいの衝撃波。それは破壊神のエネルギー弾を全て吹き飛ばし、

 花火のような連鎖爆発が広がる。

 

「どうかなトルテ? 僕の……破壊神の圧倒的な力は」

 

 そう話しながら破壊神の幾つもの左翼がバッと開いて、無数の黒い羽根を幾つも散らす。

 

「──飛んで、切り裂け」

 

 瞬間、散らした羽根に闇のオーラが宿り、その一つ一つが自在な動きで高速で飛び交い迫る。

 

「くっ!」

 

 羽根の一枚が頬を掠る。まるでナイフのように、掠った所が避けて血がにじむ。

 

「厄介な攻撃をするじゃないの! ──三日月飛斬」

 

 シフォンも魔力の翼を展開して空中を飛び、追尾する羽根を剣撃をエネルギーとして放って撃ち落とす。僕の方も、さっき破壊神がやったように魔力を弾丸のようにして放ち、撃墜する。

 

(自分の凄まじい力も、何とか使えてはいる。……これなら!)

 

 そう、自分自身の力に過信したその時──。真横から直接、破壊神が迫る姿が見えた。

 

「何っ!?」

 

 腕先から魔力を剣状にしての斬撃。一撃目は避ける、けれど続けて二撃目が迫り……。僕も腕から魔力の刃を形成して防ぐ。

 互いに鍔迫り合い、力は互角かと思っていた……けれど、破壊神の方が徐々に圧している。

 

「……そんな」

 

「当然だよ。確かに魂と力は半分に分かれてはいるけれど、完全じゃない。

 本来の破壊神としての意思は僕の方にある。つまり……よりオリジナルの破壊神に近いのは、こっちだ!」

 

「くっ……」

 

 このままだと、やられる。そんな中、破壊神の背後に剣を向けるシフォンの姿が。

 

「──半月一閃斬!」

 

 必殺の一直線の斬り下ろし。剣に最高の魔力をまとわせた渾身の一撃。破壊神は背に直撃を受けて翼の内一枚が切断される。

 

「がぁ……っ!」

 

 いくら破壊神でも無傷では済まなかった。翼を失った痛みでよろめく、この隙に僕は魔力の刃で奴の身体を突貫こうとした。

 後わずかの所──けれど。

 

「!!」

 

 僕が放った刃の突きを、破壊神は手で握り受け止めた。

 

「あまり調子に……乗らないでよ」

 

 鋭い目で睨み、ぐっと力を込めて魔力で形成した刃を砕く。そしてシフォンの方を見ると──。

 

「ヒトの分際で神に歯向かおうなどと、身の程を知れ!」

 

 狙うのはシフォン。破壊神は手の平に魔力の塊を生み出し、至近距離で撃ち込んだ!

 

「──そんなっ!?」

 

 とっさに剣で防御したみたいだけれど、その威力は凄まじくシフォンを……ずっと真下の地表にまで吹き飛ばした。

 

「シフォンっ!!」

 

 まるで爆発したかのように煙を上げ……クレーターのようになった地面の中央で、シフォンは倒れ、動かなくなっていた。

 

「僕の、せいで────かはっ!」

 

 倒れた彼女を僕は呆然と眺めていた。破壊神は拳を繰り出して腹部めがけて殴り飛ばす。

 絶大なパンチで僕は遠くに吹き飛ばされ……奴は呟く。

 

「その程度じゃないだろう、トルテ。もっと、自分の持つ力に忠実になるといい。でないと──」

 

 そう言いながら彼は右手を僕に向けてかざす。漆黒に渦巻く魔力を溜めて……。

 

「僕には──勝てない」

 

 

 一段と威力の強い魔力エネルギーを、撃ち放つ。

 ……こんなのは桁違いだ。いくら同じ力を受け継いだ僕でも、あんな物を喰らえば間違いなくひとたまりもない。

 

(もっと自分の力に、忠実に……だって。けれど──やるしか)

 

 空中を吹き飛ばされたまま……自分の力を思いのままに、力のままに引き出すイメージで。僕は両手で構えて魔力エネルギーを充填する。

 

「……!!」

 

 ……凄い! まるで無限に力が湧き出るような感覚。エネルギーの強さもさっきまで振るっていた力以上だ。

 僕はその強烈な魔力エネルギーを破壊神めがけて──撃ち返す。

 破壊神の放ったエネルギーと真正面からぶつかり、そして……粉砕。破壊神は周囲の地面もろともに消し飛んだ。

 

 

 

「僕の持っていた力が、まさか……こんなに」

 

 目の前に広がっているのは、山よりも大きな、あまりに大きな穴。僕も、そしてシフォンも唖然としていた。

 自分でも恐ろしいほどの力、けれど同時にゾクッとするような、別の感情。それは──

 

「実にいい。素晴らしいよ」

 

 声がした。消し飛んだと思った破壊神……爆心地の中心にいたはずなのに、まだ無事な姿をしていた。

 

(けれど、幾らかはボロボロで。ダメージは入ってはいる……はず)

 

 僕の力が、やっと効いた。破壊神は片方しかない翼を開き、ゆっくり上昇して僕の目の前にまで来る。

 

「おめでとう、ようやく本当の力を引き出せたようだね」

 

「まだ、倒せていないのか! ──けれど!!」

 

 僕は自分の力のままに、破壊神に突撃した。

 両腕に魔力を集中! 魔力の刃を形成してそのまま……あいつに斬りかかる!

 

「このまま僕の力で倒して見せる!」

 

 破壊神も魔力の刃で応戦、僕たち二人は空中で高速移動しながら戦いを行う。

 目にも止まらない程のスピードで飛行して、刃と刃がぶつかり合う高速戦闘。そんな中で破壊神は言う。

 

「素晴らしいものだろう? 自分自身が持つ……この圧倒的力は!」

 

 距離を離して、破壊神はをビームとして放つ。けれどそんな攻撃も僕は弾き飛ばし、それ以上の魔力で、幾つものエネルギー弾を形成して撃ち込む。

 攻撃は真下の地面にまで次々と直撃して……大爆発。さっきまで平坦だった地面はあっと言う間に、クレーターだらけになる。

 

(……ふっ)

 

 確かにこれだけの力、何だって出来る。もしかして……魔王さますら超えられるかもしれない。 心に湧く全能感。

 

「──はあっ!」

 

 破壊神はなおも迫って攻撃を仕掛ける。見れば翼の一部が折れて傷も出来ている。やはり僕が優位だ……ふふふっ。

 

「ははははっ!」

 

 力のままに、僕も応戦する。

 圧倒的な破壊神の持つ力と、力の対峙。

 

 

「お前をここで倒すっ! 破壊神!」

 

 僕は魔力の奔流を放ち辺りを包む。それに気をとられた破壊神にゼロ距離にまで迫り、エネルギーの塊をぶつけて地表にまで吹き飛ばす。

 

「うっ……く」

 

「まだまだだっ!」

 

 立ち上がろうとした破壊神に、さらに魔力で形成した剣を手に斬撃を繰り出す。

 

「ちいっ!」

 

 破壊神も同じく剣を生み出して受け止める。けれど、近接での力も僕が上だ!

 放つ斬撃の一撃、一撃を容赦なく破壊神に叩きつける。向こうはただ……受け止めるしかない。破壊神の魔力で形成された刃も、僕の力に耐えきれずに次第にひび割れてゆく。──そして!

 

「!!」

 

 ついにその刃も、粉砕した。僕の刃は破壊神の身体を深々と切り裂き……そして奴は、地に膝をつく。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。