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娘が破壊神の半身、トルテを連れて城を出た事。それを知った時にはもう手遅れだった。
私は水晶に映る向こうの様子を見ていた。……私の娘シフォンと、トルテ。二人が破壊神を相手に激戦を繰り広げている光景を。
「……」
「念のため、周囲には大軍を待機させていますが……これで宜しかったのでしょうか? もし破壊神の力を宿すあの子供、トルテが敗れた時には──」
カータードの言わんとする事は分かっている。娘のした事は魔界を危機に陥れる行為だ、トルテを取り込み全盛期の力を取り込めば……一万年前のように大勢の犠牲が出る。
「魔王さま、もし必要であれば今からでも討伐に動く事も出来ますが?」
彼の言葉に、私は首を横に振る。
「いや。未だアビスシティ上空には例の爆弾魔獣が存在している。もし手出しをして爆発した場合、街一つが犠牲になるのだから」
「今後の被害を防ぐためにはその犠牲も止む終えないと、会議で決定したはずでは?」
確かにその通りだ。しかし──。
「私の娘──シフォンは奔放な子だが、決して愚かではない。彼女がトルテに賭けると言うのなら私も……見届けたいと思う」
「……」
「心配するな。いざとなれば私も覚悟を決める。それでも──」
私は戦いの様子を移す水晶を、眺める。
(頼む。無事に全てを救ってみせてくれ、シフォン──そして、トルテ)
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破壊神の繰り出す圧倒的なエネルギー。
まるで黒い渦、荒野全体を包み込み……その中央で僕とシフォンは、破壊神と戦っていた。
「ふふふっ……防ぎきれるかな?」
破壊神は異形の手を向け漆黒のエネルギー弾を無数に繰り出す。
「気をつけて! 弾は小さくても威力は絶大よ!」
「分かっているよ。シフォンは下がって──僕に任せて」
迫るエネルギー弾の雨。僕は破壊神同様、竜のように変質した腕を横に振るう。
放つのは──自分でも信じられないくらいの衝撃波。それは破壊神のエネルギー弾を全て吹き飛ばし、
花火のような連鎖爆発が広がる。
「どうかなトルテ? 僕の……破壊神の圧倒的な力は」
そう話しながら破壊神の幾つもの左翼がバッと開いて、無数の黒い羽根を幾つも散らす。
「──飛んで、切り裂け」
瞬間、散らした羽根に闇のオーラが宿り、その一つ一つが自在な動きで高速で飛び交い迫る。
「くっ!」
羽根の一枚が頬を掠る。まるでナイフのように、掠った所が避けて血がにじむ。
「厄介な攻撃をするじゃないの! ──三日月飛斬」
シフォンも魔力の翼を展開して空中を飛び、追尾する羽根を剣撃をエネルギーとして放って撃ち落とす。僕の方も、さっき破壊神がやったように魔力を弾丸のようにして放ち、撃墜する。
(自分の凄まじい力も、何とか使えてはいる。……これなら!)
そう、自分自身の力に過信したその時──。真横から直接、破壊神が迫る姿が見えた。
「何っ!?」
腕先から魔力を剣状にしての斬撃。一撃目は避ける、けれど続けて二撃目が迫り……。僕も腕から魔力の刃を形成して防ぐ。
互いに鍔迫り合い、力は互角かと思っていた……けれど、破壊神の方が徐々に圧している。
「……そんな」
「当然だよ。確かに魂と力は半分に分かれてはいるけれど、完全じゃない。
本来の破壊神としての意思は僕の方にある。つまり……よりオリジナルの破壊神に近いのは、こっちだ!」
「くっ……」
このままだと、やられる。そんな中、破壊神の背後に剣を向けるシフォンの姿が。
「──半月一閃斬!」
必殺の一直線の斬り下ろし。剣に最高の魔力をまとわせた渾身の一撃。破壊神は背に直撃を受けて翼の内一枚が切断される。
「がぁ……っ!」
いくら破壊神でも無傷では済まなかった。翼を失った痛みでよろめく、この隙に僕は魔力の刃で奴の身体を突貫こうとした。
後わずかの所──けれど。
「!!」
僕が放った刃の突きを、破壊神は手で握り受け止めた。
「あまり調子に……乗らないでよ」
鋭い目で睨み、ぐっと力を込めて魔力で形成した刃を砕く。そしてシフォンの方を見ると──。
「ヒトの分際で神に歯向かおうなどと、身の程を知れ!」
狙うのはシフォン。破壊神は手の平に魔力の塊を生み出し、至近距離で撃ち込んだ!
「──そんなっ!?」
とっさに剣で防御したみたいだけれど、その威力は凄まじくシフォンを……ずっと真下の地表にまで吹き飛ばした。
「シフォンっ!!」
まるで爆発したかのように煙を上げ……クレーターのようになった地面の中央で、シフォンは倒れ、動かなくなっていた。
「僕の、せいで────かはっ!」
倒れた彼女を僕は呆然と眺めていた。破壊神は拳を繰り出して腹部めがけて殴り飛ばす。
絶大なパンチで僕は遠くに吹き飛ばされ……奴は呟く。
「その程度じゃないだろう、トルテ。もっと、自分の持つ力に忠実になるといい。でないと──」
そう言いながら彼は右手を僕に向けてかざす。漆黒に渦巻く魔力を溜めて……。
「僕には──勝てない」
一段と威力の強い魔力エネルギーを、撃ち放つ。
……こんなのは桁違いだ。いくら同じ力を受け継いだ僕でも、あんな物を喰らえば間違いなくひとたまりもない。
(もっと自分の力に、忠実に……だって。けれど──やるしか)
空中を吹き飛ばされたまま……自分の力を思いのままに、力のままに引き出すイメージで。僕は両手で構えて魔力エネルギーを充填する。
「……!!」
……凄い! まるで無限に力が湧き出るような感覚。エネルギーの強さもさっきまで振るっていた力以上だ。
僕はその強烈な魔力エネルギーを破壊神めがけて──撃ち返す。
破壊神の放ったエネルギーと真正面からぶつかり、そして……粉砕。破壊神は周囲の地面もろともに消し飛んだ。
「僕の持っていた力が、まさか……こんなに」
目の前に広がっているのは、山よりも大きな、あまりに大きな穴。僕も、そしてシフォンも唖然としていた。
自分でも恐ろしいほどの力、けれど同時にゾクッとするような、別の感情。それは──
「実にいい。素晴らしいよ」
声がした。消し飛んだと思った破壊神……爆心地の中心にいたはずなのに、まだ無事な姿をしていた。
(けれど、幾らかはボロボロで。ダメージは入ってはいる……はず)
僕の力が、やっと効いた。破壊神は片方しかない翼を開き、ゆっくり上昇して僕の目の前にまで来る。
「おめでとう、ようやく本当の力を引き出せたようだね」
「まだ、倒せていないのか! ──けれど!!」
僕は自分の力のままに、破壊神に突撃した。
両腕に魔力を集中! 魔力の刃を形成してそのまま……あいつに斬りかかる!
「このまま僕の力で倒して見せる!」
破壊神も魔力の刃で応戦、僕たち二人は空中で高速移動しながら戦いを行う。
目にも止まらない程のスピードで飛行して、刃と刃がぶつかり合う高速戦闘。そんな中で破壊神は言う。
「素晴らしいものだろう? 自分自身が持つ……この圧倒的力は!」
距離を離して、破壊神はをビームとして放つ。けれどそんな攻撃も僕は弾き飛ばし、それ以上の魔力で、幾つものエネルギー弾を形成して撃ち込む。
攻撃は真下の地面にまで次々と直撃して……大爆発。さっきまで平坦だった地面はあっと言う間に、クレーターだらけになる。
(……ふっ)
確かにこれだけの力、何だって出来る。もしかして……魔王さますら超えられるかもしれない。 心に湧く全能感。
「──はあっ!」
破壊神はなおも迫って攻撃を仕掛ける。見れば翼の一部が折れて傷も出来ている。やはり僕が優位だ……ふふふっ。
「ははははっ!」
力のままに、僕も応戦する。
圧倒的な破壊神の持つ力と、力の対峙。
「お前をここで倒すっ! 破壊神!」
僕は魔力の奔流を放ち辺りを包む。それに気をとられた破壊神にゼロ距離にまで迫り、エネルギーの塊をぶつけて地表にまで吹き飛ばす。
「うっ……く」
「まだまだだっ!」
立ち上がろうとした破壊神に、さらに魔力で形成した剣を手に斬撃を繰り出す。
「ちいっ!」
破壊神も同じく剣を生み出して受け止める。けれど、近接での力も僕が上だ!
放つ斬撃の一撃、一撃を容赦なく破壊神に叩きつける。向こうはただ……受け止めるしかない。破壊神の魔力で形成された刃も、僕の力に耐えきれずに次第にひび割れてゆく。──そして!
「!!」
ついにその刃も、粉砕した。僕の刃は破壊神の身体を深々と切り裂き……そして奴は、地に膝をつく。