ジャンプ転生記 in呪術   作:美野

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独自解釈+ふんわり描写予定のため、なんでも許してくれる人向けです。
※10/10誤字修正しました。報告ありがとうございます

それではどうぞ。




 

 やけに目立つ3人組が占い館に来店した。

 

「というわけで、占って」

 

 どういうわけだよ、と突っ込まなかった自分をほめてやりたい。

 入室して一言目にそう言った男は白髪(はくはつ)に青い瞳を持ち、右手でサングラスを弄んでいる。均整の取れた顔立ちだ。

 店長が見とれてもおかしくないほどだったが、彼女は慌てて三人目用の椅子を持ってくるところだった。

いつもは2人くらいしか同時に入らないので、客用の椅子は基本2脚しかないのだ。

 

 三人の客は、用意された椅子になんとなく座る。男2人と女1人の、おそらく高校生。体格はいいが大学生という感じでもない。

 黒い制服…制服だろうか?各々ちょっと違うので何とも判断しにくい。

 それぞれ、やけにブレのない歩き方だ。体幹が出来上がっているのか、厳しいスポーツ、あるいは武術でもやっているのかもしれない。

 

 俺が三人を観察している間に、店長が予約の枠が1枠だったこと、そのため30分での占いになること、全員占うと内容が浅くなるかもしれないことを説明してくれた。

 複数人の客を相手にするときの、トラブル回避のための対応だ。

 店長からは、「千里(せんり)くんは全員簡単に占えるかもしれないけど、タロット占いや数字占いの占い師だと1枠に何人も見る時間はないんだよ」と聞いている。

 ひととおり店長が話し終えると、黒髪の男が「わかりました」と答えたので、店長は定位置の出入り口付近に座った。

 

 ここからは俺が対応することになるが、三人が相手だと名前が分からないと不便だ。

 

「占いのお話をするにあたって、お名前を聞きたいと思います。本名でなくてもかまいません」

 

 そう言うと、彼らはそれぞれ視線を合わせてから、五条、夏油、家入と名乗った。

 念のため右手で指し示しながら復唱して確認する。

 白髪(はくはつ)の男が五条、黒髪で前髪を垂らしているのが夏油、紅一点が家入。

 

「ありがとうございます。ではさっそく、占いたいことはなんですか?」

 

 いつも通りの決まり文句を口にしたところ、「またまたーあ」と五条が笑う。

 

「当たりすぎる占いって聞いてるぜ?なんで来たかも分かるんだろー?」

「いや…占いをなんだと思ってるんですか…」

 

 脱力する。最近こういう面白半分の客も来ないわけではないものの、ここまであからさまだといっそ清々しい。

 ちょっと馴れ馴れしいしナメられている感じがするが、もはや気にならなかった。

 

「悟。このままじゃなにも分からないだろ」

「ちょっと五条うるさい」

 

 一緒に来た二人がたしなめると、五条は「えー?」とすねたような顔をする。

 表情がくるくる変わる。年齢を考えるとなかなか見ないレベルの素直さだ。

 

「でも私は気になるな。なんか占って。25までに恋人出来る?」

 

 背もたれに寄りかかった五条に代わって、家入が尋ねてきた。

 わかりましたと頷いて式盤に触れる。今日、ここへはどこから来たのか方角を聞いて、式盤を回した。

 ついでに色々探っておこう…と思って目を伏せたところ、3人の視線が突き刺さる。

 

「あの?」

「あ、なんでもないですよ。占うところが気になって」

 

 夏油が笑う。しかし視線が痛い。さっきまですねて視線を外していたはずの五条まで。頭の後ろで手を組んだまま、ほぼ見下ろすように見てくる。

 ため息をついた。店長が窘めるように俺を見た。すみません。

 

「わかりました、家入さん。今のままですと、25歳までに恋人はできないかもしれません。恋愛は急ぐものではないですが、どうしてもということなら心持ちを変えなくてはなりません」

「心持ち?」

「仕事関係者は嫌だけど、仕事のことを分かっている相手がいい、そう思っていませんか?」

 

「「「ああ~~~~」」」

 

 心当たりがあるらしい。三人とも似たような声を出すので、仲良しだな、とほほえましくなる。

 とはいえ本題は別にあるようだ。言われた通り占いをして問いに答えたものの、特に響くものはないらしい。

 

 先ほど式盤を通じて視たビジョンでは、幽霊か妖怪のようなものと戦う彼らがいた。

 ああ、と得心する。1週間ほど前に同じものを視た。余計な口出しをしてしまった、あの女性の関係者のようだった。

 

 知らないふりで通そうか。しかし30分間下手な探りを入れられるのも嫌だな。五条は見に来ただけだし家入はやる気なさそうだからいいが、妙に気合の入っている夏油が面倒だ。

 本当に無害な一般客は、こんなに占い師の一挙一動に注意を払わない。もっと自分のことを話して、アドバイスをもらおうとする。

 それに、気配が張り詰めすぎだ。そんな薄っぺらい笑いでごまかされると思っているなら大間違い、出直してこい。

 …などと思ってしまい困る。元マフィアの諜報経験が、あまりにお粗末な“できるつもり”に口を出しそうになる。

 

 さっさと結論を出して帰ってもらおう。

 

「では、あなた。五条さん。これは占いではないですが、あなたには、占ってほしいことが本当にないらしい」

「すげーな。分かってんじゃん」

「悟…」

 

 呆れたように五条の名前を呼ぶ夏油に、こちらから視線を合わせる。

 

「そしてあなた。夏油さん。あなたは、占いでどこまでわかるのか知りたい、そうですね。あわせてその方法を知りたい」

 

 へえ、と夏油が笑う。高校生がするには、少し違和感のある笑い方だ。

 余裕があるというよりは、品定めするような。調査に来たのなら、その通りなのかもしれない。

 だめだぞ、バレバレじゃないか。

 口をついて出そうになる苦言を飲み込んで、式盤に触れた。

 

「でも困りましたね、これは式占(しきせん)といって、方法は結構複雑なんです」

 

 そういいながら、念のため深めに視る。探る。

 数秒間をおいてから、口を開いた。もう一度ため息をつくのをこらえる。

 

「…あまり、回りくどいことは好きではないんですが…」

「占いなんかしてるのに?」

 

 五条が横やりを入れてくる。たしかに?と家入が半分首をかしげながら頷く。

 占いを迂遠なものだと思っているのだろう。基本的には間違っていないが。

 

「占いをしているからですよ。ある程度までは人より先に分かるので、結論を急いでしまう癖があります。

 それでも占いでは分からないことのほうが多いですけどね」

「そうなんですか?」

「もちろんですよ。基本的に一つの事柄について一日一回しか占えないし、未来は変わるし、人の心はもっと見えない。自分のことはぼやけてしまうし。

 だから、あなたたちの目的が調査だとわかっていても、それで自分がどうなるのかはよくわからないんですよね」

 

 夏油は「なるほど」と頷いたあと、ほかの二人に「どこまで言っていいと思う?」と問いかけた。

 

「全部言っていいんじゃねえの?サラッと調査とか言ってるし、大体分かってる感じだぞ、コイツ」

「賛成。時間かけるのも面倒」

「全員一致だね。すみません、そちらの女性には席を外してもらえますか」

 

 そちらの女性、とは店長のことか。突然水を向けられて戸惑っているようだった。

 仕方がない。立ち上がって、店長のほうへ向かう。

 

「すみません。面倒に巻き込むことになるかもしれないので、裏で待っていてもらえませんか?」

「ちょっと付いていけないんだけど、面倒ごとならむしろここにいるよ」

 

 大人らしく責任感のあることを言って、店長が仁王立ちした。抜けているところはあるが、大人らしい大人なのだ、彼女は。

 しかし今回は、席を外してもらったほうがいいだろう。

 

「ありがたいんですが、こう、オカルト的な話になりそうなので。困ったら呼びますから」

「本当に?三人と一人じゃあ危ないかもしれないじゃない。呼べなかったらどうするの」

「そういう危険はなさそうなんですが…分かりました。15分したら戻ってきてください」

 

 むむ、と渋ったが、やがて「仕方ないなあ、わかった」と折れてくれた。

 

 

 

 店長がいなくなってから、さて、と三人に向き直る。

 

「こっちの都合で悪いんですが、15分で済ませてください。2人体制で営業しているのには、それなりに理由があるので」

「わかりました」

 

 対するのは夏油だ。後の二人はなんとなく携帯をいじりはじめた。

 こちらとしても、三人いっぺんに話すよりは気が楽だった。

 

「時間短縮のために、どこまで分かっているのか聞いても?」

「あなた方は、以前ここに来た女性の関係者ですね。俺が伝えた内容が具体的過ぎたので、占いの方法が、あなた方の知っている力に関係するのか確かめに来た」

「げ。ほぼ分かってんじゃん」

 

 聞く姿勢が皆無に見えた五条が、嫌そうな顔をした。ついでに手に持ったままだったサングラスをかける。

 暗い部屋だからだろうか、やけに真っ黒なサングラスだった。

 

「悟。もういいのかい」

「もういいもなにも、見ごたえ全然なし。呪術じゃねえよ。机の上のやつも呪具じゃない」

「えー。じゃあ、単にめちゃくちゃ当たる占いってこと?」

 

 家入が、五条に視線だけ向けながら問いかける。五条は「そうなんじゃね?」と気のない返事をした。

 なるほど、彼らの力は「呪術」というらしい。

 

「占いの精度を上げている方法は企業秘密ですが、あなた方の思っているやり方ではないのは確かです。他に何か、こちらから言ったほうがいいことは?」

「どこまで分かるか知りたい。私たちは明日も任務でね。それについて分かることはありますか?」

「やってみましょう」

 

 式盤に神通力(じんつうりき)を通す。

 鮮明なビジョン。先日の女性と同じで、いや、もっと前線に、高校生の彼らは立つらしい。

 たしかに強いようだが、それにしたって高校生だ。あまり危険に直面しすぎるのも良くないのではないか。

 部外者なので完全に余計なお世話だろうが。

 

「…明日は浅草に行って、仕事をするようですね。すみません、名称はわかりませんが、妖怪のようなものと戦うのですね?

 家入さんが建物の外に立ち、夏油さんと五条さんを送り出すようです。

 あまり苦戦はしませんね。お二人は強いようだ。相手は初め、姿を隠しているようですが、夏油さんの…式?使い魔?が見つけることができます。

 ただ、建物を壊しすぎると先生から注意されますよ。気を付けてくださいね」

 

 

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 翌日、任務から戻った三人は、夜蛾にこってり絞られていた。

 先の任務で、呪霊を攻撃するときに建物を半壊。隣の建物の窓もちょっと割れたらしい。大体五条のせいだった。

 

「昨日の占い通りになったわけだな。せっかく事前に分かってたのに」

「硝子、でも仕方なくない?あそこで接近されたらとりあえずぶっぱなすって」

「悟は反省したほうがいい。確かに先に分かっていたのだから、今回の説教は避けられたはずだ」

「傑まで」

 

「…しかし、例の占いが本当に当たることは証明されてしまったな」

「報告書どうする?呪術じゃないのは確かだ。呪力ぜんぜん動かなかった」

 

 五条が改めて、呪力の動きがなかったことを言う。

 例の占い師は、呪力を操作して占いをする素振りはなかった。

 可能性は低いものの、占い通りになるよう呪霊を操っている呪詛師という疑いもあった。

 しかし五条の目によれば、今回の任務に占い師に関係するような呪力の流れはなかったらしい。

 

「ありのまま書くしかないだろう。呪術じゃない、呪力も使っていない。呪霊との関係もない。上もこれなら彼を放っておくだろう」

 

 夏油が報告書の内容をおおよそ考えたところで、家入が「でもさあ、」と呟く。

 

「あんなに当たるんなら、任務の前になるべく占ってほしい。呪霊探すタイプのときとか、人に聞き込み必要な任務、簡単になりそう」

「「たしかに」」

 

 

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「というわけで、また来ました」

 

 目の前にはにっこり笑う夏油。そのとなりに五条と家入。

 わりと全員マイペースな感じなのに、一緒に来るとは仲がいいことだ。というのは現実逃避だろうか。

 また「というわけで」で始まるの、やめない?と言わなかった俺を誰か褒めてほしい。

 

「どういうわけですか?まさか何かの疑いがかかっているとか?」

「そういうわけではないですよ。ただ、得だなと思って」

「得?」

「こんなに当たる占いは、占いというよりは信頼できる情報源です」

 

 それは、そうかもしれない。調べなくてはわからないことが、もしかしたらここで聞くだけで分かるかもしれないのだから。

 

「そうはいっても、当たるも八卦当たらぬも八卦、ですよ。もちろんわざわざ間違った占いをするつもりはありませんが、信じすぎるのはよくないことです」

「わかりました。参考程度にさせてもらいますよ」

 

 そういうなら、と姿勢を直す。ついつい少し前傾姿勢になっていた。

 心の中でだけため息をついて、三人に改めて相対する。

 彼らも席に座って、こちらを見返した。

 家入は前回と同じく携帯をいじっているが、他の2人は楽しげだった。好奇心というべきか。

 

「今日は、なにか占ってほしいことでも?」

「明日遠出するんだけど、お得な情報ない?」

「…ここはそういう場所じゃないんですが、まあいいでしょう」

 

 五条がわくわくした様子で聞いてくる。

 そういうのはチラシか情報屋では?と思うが、キラキラした子供っぽい期待を裏切れない。

 

「今回も、大して苦労はしないですね。早く済ませたいなら、五条さんが先頭だといいですよ。

 あとは、…今回は泊まりですか?いま泊まろうとしているところより、北に少し行ったところのほうがいいです。料理がおいしいし、値段の割に部屋もサービスもいい」

「へえ!変えられるかな」

 

 嬉しそうに五条が他の二人に尋ねる。

 すると、家入がちらと視線を上げた。

 

「厳しいんじゃない?明日のことだし、泊まるとこなんてもともと私たちが口出しできる感じじゃないから」

「たしかに、いつも補助監督の人が取っておいてくれるからね」

 

 難しいという意見に、夏油も同意する。

 五条が残念そうに「ええー」と頬杖をついた。

 

「では、今のところに泊まるということなら注意してください。ちょうど同じ日に泊まる人の中に、盗みの経験がある人がいます。

 露天風呂で荷物を適当にしていると、鍵を盗られて地味に大変ですよ」

「地味に?」

「意外と盗まれるものは少ないけど、部屋に戻るまでに時間がかかります。3時間くらい」

「めんど」

 

 

 

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