ジャンプ転生記 in呪術   作:美野

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※このへんから独自設定が目立ちます。なにかと許せる方向けです。

これまでのあらすじ

転生を繰り返している宮前千里は現在高校一年生。バイトを始めたら、店長のすすめで占い師として働くことに。当たりすぎる占い師として呪術界から探りを入れられるも、術式の行使がなく見逃された。と思いきや、調査を担当した五条悟たちは常連になり、なんやかんや仲良くなり、ついつい呪霊を祓ってしまった。しかし祓ったときの感覚がなんだかイマイチで…。


5

 

 

 目の前の解答用紙をぺらりと裏返して、窓のほうへ視線を投げた。

 くじ引きで勝ち取った、窓際かつ一番後ろの特等席。誓って何の力も使っていない。本当に。

 

 7月中旬。定期考査の二日目。今は日本史のテストの時間だ。

 何度も生を繰り返す俺にとって、歴史は一番難しいテストである。

 自分が知っているのと少しずつ異なる歴史が、出題者の意図しない引っ掛け問題になって難易度をあげてくるのだ。

 

 それでも今回見直しもできたし、と思ってから、一番上だけ小さくめくって名前を確認した。

 宮前(みやまえ) 千里(せんり)。間違いない。うっかり前の名前でも書いてしまったら、どんな言い訳なら切り抜けられるのだろう。何か失う気がする。

 違う世界での自分の名前です、なんていってみろ。どんな扱いをされるか分かったものじゃない。

 

 前回と違う世界に生まれたことは、初めのうちに分かっていた。

 年号が同じだったからだ。俺はいままで、同じ世界の同じ時点に生まれなおしたことはない。

 そのため当然世界を渡ったのだろうと思ったし、その判断は間違いではなかった。生者の呪力からなる呪霊など、これまでの世界で見たことも聞いたこともなかった。

 

 しかしその他のことは、今までいた世界とあまり変わりがないようだ。

 なじみのある言語、機械化が進む文明。学校、電車に車、舗装された道路。画一化されたビルや店舗などの街並み。歴史もほとんど同じだ。

 だからある意味安心して、それ以上他の世界との差異を探すことなく、新しい生を送っていた。

 大した確認もせずに陰陽術を使ったのは、その安心ゆえか。反省すべきだ。

 先日は特に問題なく祓えたからよかったようなものの―――、

 

(まさか、晴明神社がないとは)

 

 京都で神社巡りをしようと思い立って、行くべきところの場所やバスなどを調べようとしたのだ。

 すると、晴明神社がないことが判明した。

 

 この世界には寺もあれば神社もある。

 有名どころの神仏は祀られており、信仰もされてきたのだろう。これまでなにも不思議に感じなかった。

 しかし晴明神社がなかった。これは看過できないことだ。

 

 安倍晴明は影響力がすさまじい人物だったからか、たいていの現代日本の世界では歴史上に確認できる。

 俺が共に生きたあの安倍晴明とは異なるとしても、一定の共通点を持つ最高の陰陽師、そして彼を祀る神社が存在する。

 それがこの世界にはなかった。似て非なる人物でもいるのかと調べてはみたが、それもない。

 一応陰陽道自体は存在していたようで雑学的な書籍はあった、その程度だ。

 

 この世界には、なにか陰陽道が広まらなかった要因があるのかもしれない。あるいは安倍晴明のような人物が出なかったことが影響して、神仏が力を貸す構造がうまくできていないのか。

 友人の家族にでも会いに行く気分だったのだが、これは真面目に様子を探る必要があるらしい。

 だが他にも挨拶に行かなくては。大日如来と不動明王はそれぞれ行ったほうがいい、泰山府君は外せない……。

 

 自然と眉が寄ってしまって、人差し指の関節をぐりと押し当てる。

 このひと月調べものばかりしていて、肝心の旅行のことを考えていなかった。

 現状通りのバイトのシフトだと日曜日の夜に行って、水曜日の午後までに帰ってくればなんとか大丈夫だろう。

 

(いや、ギリギリの予定はよくない。火曜に帰ってくるのは忙しいか?)

 

 スケジュールに答えが出ないまま、学校のチャイムが鳴って手元の回答用紙は回収された。

 何となく先生が教室を出るまで目で追っていると、横の席の男にばしっと背中をたたかれる。

 阿部だ。今度の球技大会で卓球に出る予定のバスケ部。練習でアウトを連発して、頭を抱えていたのが印象的だった。

 俺も卓球に出るので、そこそこ仲良くなったのだ。

 

「お疲れ!なに、いまいちだったのか?」

「ばか、お前と違って宮前は頭いいんだよ」

「馬場に聞いてないだろー!」

 

 同じく卓球に出る予定の馬場が絡んでくる。彼とは入学当初からの仲だ。出席番号が前後だったのですぐに馴染んだ。

 運動が不得意らしく、球技大会のことは好きになれないとぼやいていた。

 馬場は黒縁の眼鏡に触れながら、「聞かれてなくてもわかるから言ってる」とニヤつく。ちなみに勉強のことも好きになれないらしい。

 彼はロボット部だ。夏休みは忙しいようなことを言っていた。

 

「夏休みに旅行にいこうと思ってさ、」

 

 頬杖をついて口を開くと、二人はやれやれと肩をすくめた。

 

「明日もテストなのに余裕だな。お疲れとか言って損した」

「夏休みの直前に球技大会もあるんだぞ。まさか忘れてるとか?」

「ただ日程が難しくて、」

「「スルーかよ」」

 

 悪い悪い、と笑えば阿部と馬場も笑った。

 そういえば、占いによく来る3人は、夏休みはちゃんと休めるのだろうか。

 

-----------------------------

 

 

「夏休みはあるけど、鍛錬と任務が主になりそうかな」

 

 傑は何の抵抗もなさそうに言った。

 少し首を傾けて言うので、彼の前髪が揺れていて視線をやってしまった。気に障っていたら面倒だ、と様子を窺うがセーフらしい。

 

「ま!強くなれんのは楽しいしね。俺達はもう最強だけど」

「とはいえ日々精進だ。手数(てかず)もなるべくほしい」

「がんばれー」

 

 ゆるい硝子の応援に、指をそろえた手をピッと上げて応える悟と傑。揃った角度がなんだかコミカルな感じだ。俺もなんとなく拍手を送る。

 気をよくした悟がずいと身を乗り出した。

 

「千里はどうすんの?占いも修行とかあるわけ?」

「修行らしい修行は特にしないが、京都の神社や寺院に挨拶回りしようと思っているところだ」

「アイサツ?京都に?」

「一応神頼みに近いからな」

「ふーん?俺も実家にとりあえず顔出すし、そういう感じ?」

 

 よくわかりませんという表情のまま、悟は背もたれに寄りかかる。

 彼らはもうすっかり勝手知ったる様子でくつろぐようになった。いや、この3人は初めからこんな風だったかもしれない。

 

「でもそれ、仏教?」

 

 硝子が式盤を指さした。

 なんて言おうか。「うーん、」と一度唸ってから「違うけど、神様はわりと一緒」と答えた。

 陰陽道は仏教とも神道とも違うのだが、どちらからも影響を受けている。ついでに道教も影響している。説明すると長くなりそうだったのでやめた。

 とりあえずきちんと祀られている場所に行けば、神仏に声を届けることはできるだろう。この適当さが神に気に入られた理由のひとつでもあった。

 

「それで、本当に今日はなにも占わなくていいのか?」

「遊びに来ただけだからな。なんかいい情報あったら教えて」

「もうちょっと知りたいことを絞ってくれればやってもいい」

 

 今日は任務についての占いは不要らしい。三人で遊ぶついでに来てくれたのだ。

 彼らの先生が言った通り、7月になって次第に任務が減ったと話していた。休みがちゃんと取れるようになって何よりである。

 

「このところ任務が続いていたから、予約を取っていたんだけどね。来週は無いようなんだ」

「そうか。キャンセルしてくれてもよかったのに」

「もう来るつもりになってたし。千里この後ヒマ?俺たちとゲーセンかカラオケ行かね?」

「五条ー、すごいテンプレなナンパだぞ」

 

 けだるげに指摘する硝子は、しかし口元がいたずらに笑っている。

 悟は今気づいたと言わんばかりに、「お?マジだ」とケラケラ笑った。

 

「悪い、まだ仕事なんだ。三人で行ってきな」

「それは残念」

「ちぇー。じゃあなんかゲームしようぜ。なんかない?」

「トランプ占いやる先生がいるから、トランプならあるぞ。それでもいいか?」

 

 トランプね、久しぶりにやってもいいかな、と男二人が乗り気になったところで、硝子が「でもさあ」と水を差す。

 彼女はくるりと人差し指を回して、もう一度式盤を指さした。

 

「宮前はトランプ、誰が何持ってるか分かっちゃうんじゃない?」

「あ!ずりー!」

「それじゃ勝負にならないじゃないか」

 

 途端に抗議する二人に思わず笑ってしまう。

 ころころ変わる態度が面白かった。三人はいいバランスで仲良しだった。

 微笑ましくて笑ったのだが、悟と傑はかえって警戒を強めた。顔を寄せて小声で言いあう。

 

「笑ったぞ」

「確信犯だ」

「違う違う。基本的には俺は占わない。占おうと思わないと、別に何にも視えないよ」

「本当かー?」

「ほんとほんと。本気でやろう。本気で―――、七並べだ」

 

 真面目な顔で言ったら、ちょっとした笑いが起こった。

 

「千里、その、占いするスタイルで……」

「超かっこよく七並べって言った、ウケる」

「なんで七並べなんだよ!大富豪とかじゃねーの!」

 

 金髪のウイッグに黒いマスクの怪しい人間が、真剣に七並べと言ったのがミスマッチだったらしい。

 性格悪いやつがいると面白いと思ったんだけどな、と悟を見て、ついでに頭が回るとなお楽しいだろうに、と傑を見た。序盤のカードを持ったまま出し抜くのも醍醐味、と硝子も見る。

 もちろん口には出さない。沈黙は金だ。

 トランプを棚から手に取って、「じゃあ大富豪か?」と聞きながらシャッフルする。

 

「千里、トランプさばき早すぎじゃないか…?」

「シャーってやった!ぱららっ、シャーッて!」

「私もできるけどね」

「硝子……!」

「トランプ貸せ千里!俺それやりたい!」

 

 

「君たち、あと10分だからね?」

 店長の声は遠かった。

 

 

-----------------------------

 

 

 バイト後、店長にスケジュールの相談をした。

 

「なるほど。もともと夏休みはいっぱい入ってくれるって聞いてたし、多少ずらしてもいいよ」

「ありがとうございます」

「こっちこそ、ありがとうね。千里くんが来てからお客さんの入りもいいし、レビューもいいしで助かってるんだ」

 

 占い関係のレビューサイトでは、ずいぶん高評価がついているらしい。

 検索エンジンで探さないとたどり着けないサイトではあるが、夏休みはこれを見て来店する客も増えるだろうと店長は嬉しそうだった。

 

 バイトの日程を組みなおして、旅行に行く週は土日のみのシフトにしてもらった。

 これならあまり急がずに回れそうだ。

 諦めていた場所にも立ち寄ってみようか。

 晴明神社があるべき場所。この世界では、そこに立派な日本家屋が建っているらしい。

 多少通りかかるくらいならいいだろう、と軽い気持ちで旅程に入れることにした。

 

 

 




わりと書き進めたのですが、脳内の夜蛾先生が「これは許せん」と言って聞かず、話が進まなくなったので2万字ほど没になりました。
うそだろまさみち

更新ゆっくりめでお届けすることになりそうです。

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