スター団ひこう組のボスやってるけど質問ある?   作:かわたり

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掲示板要素は最後にあります。
今回及びそれ以降の展開に合わせて「勘違い」タグを追加しました。



7.鼻⭐︎塩⭐︎塩

 

「そんなわけで俺のこれからを考えよう!!の会始まりました〜いぇ〜い!ぱちぱちぱ…………はぁ……何やってんだろ俺…」

 

「「何があったの?!」」

 

スマホロトムに映るシンニの言動に、ビワとオルティガは驚愕する。

相談したいことがあるとシンニによって開かれたビデオ通話。

シンニとネモの盗撮動画が拡散されるという、いつぞやの騒動を彷彿とさせる導入だけでも衝撃であるにも関わらず、自業自得とは言えアジトが更地になっただとか「俺…マイルドな悪党になろうと思うんだ」「最近闘争に飢えててさあ…」などの意味深な発言が次々にぶち込まれていくのだ。

更には明るく振る舞っていると思いきや悩んだような表情に変わったり…かと思えばまた明るく豹変したりするので、参加していた5人のボス達もどうしたものかと困惑するしかない。

正直に言って精神不安定にしか見えず、一同はめちゃくちゃ心配した。

 

「シンニ殿といると色んな意味で退屈しないでござるが…今回ばかりは些か不憫でござるな」

 

「思い出のアジトが更地になっちゃったんだもんね。そりゃあ落ち込むよ」

 

「…というかシンニ、テメー何だかんだあそこに愛着あったのかよ」

 

ちなみに上から順にシュウメイ、ピーニャ、メロコの反応である。

彼らもまたシンニの口から発せられる経緯の説明に耳を傾け、ひこう組の面々に被害が無かったことに胸を撫で下ろしていた。

 

「その様子だと新しいアジトを作るのとか、ライバルを作って自ら悪役になる…???はちょっと何言ってるかわかんないけど迷ってる最中って感じ?」

 

恐る恐る尋ねてみたピーニャに、シンニは「理解力宇宙で助かる」という肯定から話を切り出す。

 

「あそこのアジトに皆集まってさ、ブルブル震えながらスター大作戦の準備したり暖を取ったりとかしたじゃん?

ピーニャはメンバーの防寒具とか集めてくれて、メロコはひこう組のメンバーの面倒見てくれて、シュウメイとオルティガには制服やスターモービルのことで俺が無茶振りして苦労させたし、ビワ姉は体が温まるエクササイズ伝授してくれたりとかさ。

そんなのを思い返すとさ、あんなクソ寒くて危ないような場所でも何だかんだ手放したく無いなあ…って思ったりもするんだよね。

それで…えーと……。

あん時俺とメロコがめっちゃ長い鼻水垂らしてたんだけどみんな覚えてる?」

 

「おい、爆ぜてえのかテメーおい、おい」

 

「シンニくん…絶対途中で回想飽きたよね」

 

「しょうがねえだろビワ姉。ほら、俺そういうしんみりした空気耐えられないから」

 

「えぇ…自分から始めといて身勝手過ぎる!」

 

過去に浸らせる気あんのかお前と言わんばかりの適当さ、失速ぶりに一同は呆れ返るが、シンニは気にせず話を続ける。

 

「それにこの前ネモと戦ってわかったのが、俺のポケモンバトル欲が抑えられなくなってきたってこと。

具体的には勝ち負け関係なく色んな奴と全力でぶつかり合いたいって感じかな?

まあ、スター団である以上軽々しく戦っていいのかって悩んでもいるけどね。負けたらボスやめなきゃだし!負ける気は無いけど!」

 

彼の言う考えのある部分にビワは反応する。

 

「勝ち負け関係なく全力でぶつかり合う…ああそれが最初に言ってたライバルって言葉に繋がるんだ。悪役?ってのは私よくわかんないけど…」

 

「ああやっぱわかりにくいよねそれ」

 

それは先日スレ内で受けたアドバイス。

結局のところライバルたり得る存在との交友関係を築くのがいいのでは?というもの。

そして悪役という言葉に関してはスター団の掟を守りながら挑戦者を募る為の方便。あるいは大義名分みたいなものである。実際やるとしても本当に悪事に働くわけではないことなどを説明する。

 

「そこは大丈夫。

シンニくんは不本意にやらかしちゃった時意外はちゃんとしてるって私わかってるから」

 

「えっ」

 

「そもそも!シンニ殿に悪役は不相応でござるよ。

気性だけでござらぬ。

素知らぬ振る舞いや悪漢のように演じるなんてグダグダになって失敗する未来しか見えないでござる」

 

「なんにせよ、悪役らしく振る舞うのはやめとくべきだよ。相手の受け取り方次第では軽いちょっかいも凶器になり得るし。

迷ってるってことは少なからずシンニもそう考えてるからってことでしょ?てゆーか、絶対演技とか向いてないっしょ!」

 

「シンニって普段ポーカーフェイスも下手だからなー!ボードゲームとかそれで負けてばっかだもん」

 

「あの〜君たち事実陳列罪やめてくんない?」

 

皆がうんうんと同意しだしたことにショックを覚えたのはさておき。

皆はシンニが邪なことをするような奴なんて元より思っていない。

今は不登校とは言え、アカデミーに入学して以来友人として長く付き合ってきたわけだし、彼がどんな人間なのか理解しているつもりだ。

どちらかと言えば、彼の行動が思わぬトラブルに発展する方が遥かにありえそうだった。

前例があるわけだし。

 

「そうなると…俺は演技とかせずこれまで通りスター団として振る舞い関係を広める方向性でいいんだな」

 

「自然体でいいだろテメーは。

というか、その相手はオレたちじゃダメなのか?変に輪を広げるのも手間かかるだろ」

 

メロコが提案するも、「ボスは売られた喧嘩を必ず買わなくてはいけない。挑戦者に負ければボスを引退しなければならない」という掟に基づいて否定されてしまう。

 

「そうしたいのも山々だけど難しいよね。

だってさあ…俺たちがスター団のボスを名乗る限り掟に従い戦うことになる。

それで負けた方…例えば俺かメロコのどちらかがボスを降りることになるとかそんなの嫌でしょ」

 

「うっ…確かに」

 

メロコは痛いところを突かれたように短く呻き声を出す。「じゃあ動画のネモって奴はどうなんだよ」と彼女は代替案を出すも、それもダメと返されてしまう。

 

「ネモは今ポケモンリーグ挑戦に向けて自己研磨の期間に入ったらしいから呼ぶに呼べないかなあ。もちろん呼ばれたら飛んでいくけどね」

 

「ふーん…そうかよ」

 

「?」

 

彼女はどこか不満気に目線を逸らす一方、オルティガは「強い野生ポケモンじゃ解消出来ないのかよー」と不満を漏らした。

 

「うーん俺がそれをやり続けた結果が今のプルピケ山道だからねえ。いつのまにか平均値が高くなっちゃって俺としても誇らしいっていうか複雑っていうか…」

 

「嘘だろあの魔境お前が生み出したのかよ!なに特定外来生物みたいなことナチュラルにやってんだよシンニィ!!」

 

「流石に外来種呼ばわりは心に来るからやめて」

 

結局トレーナー相手じゃないと満たされないというシンニの重傷っぷりに皆が頭を抱える。

 

その最中、ピーニャは不意に声を上げた。

スター団のまとめ役であり、なおかつ頭も回る彼のことだ。何か名案が思いついた合図ではと試しに耳を向ける。

 

「シンニがまだバッジを持ってないならの話だけど、ジムリーダーに挑戦すればどうだろう?ちゃんと実力のあるトレーナーだし…なんてね?」

 

その言葉に一瞬場は静まり返る。

だってポケモントレーナーなら誰もが思いつく選択肢だし、ポケモンバトル大好きなシンニなら尚更挑戦してない訳がないと皆が思ったからだ。

 

しかし、皆は忘れていた。

このシンニという男はそんな常識から外れていることを。

 

 

 

「……あっ、完全に頭から抜けてた!まだここのは挑戦してなかったんだよな俺」

 

 

 

「「「「「え、ええええええ!?」」」」」

 

予想の斜め下を行く彼の答えに、思わずボス一同は驚愕の声を上げた。

(マジボスがこの場にいたら絶叫に混ざっていたに違いない)

この後にどうなるかは想像に容易い。

シンニはボス達から「もうそれでいいじゃねえか」「今まで私たちが悩んでた時間返して」「ズレすぎなのも大概にして」「その強さでジム挑戦0はPoketterなら炎上間違いなし」だの言われたという。

まぁ、"パルデア地方において"という点を強調するとそれ以上責められることも無かったが。

 

 

 

その後は何やかんやあって話し合いを終え、解散の流れになった。

ビデオ通話からはシンニとメロコを除く面々が退出した。お休みとお疲れさまでスターを交わし合ってから。

 

「…いや、本当にいいのかこれ??

みんながちゃんとアジト守ってる中、俺だけジム巡るとか…それもはやスター団ですらないと思うしみんなに申し訳ないんだけど」

 

「これまで通りスター団のボスとして振る舞いつつ、ジム巡りなどを通しポケモントレーナーとの交流を増やす」

シンニが未だ退出出来ないのは、皆が賛成したとは言えこの選択に納得がいっていないからだろう。その証拠に、気まずそうにメロコの顔色を伺う光景がそこにある。

普段の彼ならこんなことは絶対にしない。なんせ「スター団のボスがジム巡りする」なんて想像だにしていなかったからだ。

 

そんな様子のシンニにメロコも痺れを切らしたのか、あるいは場を和ませる為か。

「そもそもテメーは今守るアジトが無いだろうが」と上手いことツッコみ、話を切り出す。

シンニがそれを褒めようとするのを誤魔化すように、メロコは彼に語りかける。

どこか思い詰めているようなその表情は、普段の気丈な彼女からは想像のつかないものだ。

シンニは思わず見入ってしまった。

 

「テメーのあんなに楽しそうにポケモンバトルしてるのをみんなで見たらさ。

何か恥ずかしいような嬉しいような不思議な感じが込み上がってきて…とにかく、あそこに閉じ込めて腐らせるのは勿体ねえって思っちまったんだ」

 

「でもまあ気にすることねえよ。

スター団にとって思い出深い場所の一つだとしても、テメーがいつか狂っちまうようなら引っ張り出すべきだって俺は思う」

 

そういうもんか?と微妙に納得し切れない自分に、メロコは念押しする。

 

「マジボスだったとしてもそうする。

オレも、というかオレたちが保証する。

だから…まぁ、休暇みたいなもんだと割り切って楽しんでこいよ!」

 

マジボスの名を出してまで説得する彼女に、強引だなあと頭を掻く。

しかし、その言葉には彼女の優しさや思いやりが込められているのを感じた。

 

「ありがとうメロコ。

ジムリーダー全員ぶっ飛ばしてくるから楽しみにしてて」

 

背中をそっと押されるような感覚に励ませれ、シンニはこの選択を受け入れることにした。

大切な仲間がそこまで言うのなら、これ以上の杞憂は余計だろと割り切って。

 

「おう、その調子で負けんじゃねえぞ!」

 

「まあ、ひこう組のメンバーに今回の話し合いの内容報告したり、仮拠点の手配したりとか済ませてからになっちゃうけどね」

 

「………ハア?!この流れでお預けなことあるのかよ!!」

 

「そりゃそうでしょ!ボスである以上やんなきゃいけないこともあるし、あいつらの面倒ほったらかすわけにもいかないし!ほら、夏休みの宿題先に終わらせてから遊ぶタイプだから俺!」

 

「テ、テメーなあ…!」

 

尚、メロコはシンニの空気の読めなさによって出鼻をくじかれた模様。

直後、彼女がキレ気味に通話を切るのも当然な流れと言える。

 

 

⬜︎

 

 

あのビデオ通話をした時からそこそこの月日が経った。

その間、シンニはひこう組のボスとしての溜まった業務を終わらせるべく奔走した。アジトの修理、他の組への物資の運搬やら人員の移動、下っ端への指導、暴走する末端のスター団員への注意などである。

ちなみに例の動画の盗撮犯を見つけられなかったのは余談だ。

ネモがチャンピオンクラスになったことでお祝いのパーティーを催したりもしたが、それさえ除けば殆どの日は馬車馬が如く動いていたと形容できる。

 

「やっと終わったー!振り返ってみると長かったような短かったような…!」

 

こうして面倒事を終わらせて、待ちに待ったジム巡りの開始を控えたタイミング。

シンニは相棒であるウォーグルに乗り、息抜きがてらパルデアの上空を飛び回っていた。

その道中、彼はプラトタウンのポケモンセンターに寄ろうと町の近くに着陸する。

人とポケモン達が和やかに過ごす光景を背に進むが、不意に違和感を覚え立ち止まる。

 

「ん?なんだアレ…?」

 

彼は視界に映った物体に興味を寄せる。近寄って観察してみると、それが大地に突き刺さる杭であることがわかった。

鮮やかに発光する杭は見ていると吸い寄せらそうになる。まるでマスキッパの唾液に誘われる虫ポケモンになった感覚。

というかそれ抜きにしても、シンニの好奇心旺盛な性分故に興味を持たないなんてことはありえなかった。

 

ずっと前からここにあったのか。

何故こんなにも目立つものを今まで気にも留めなかったのか。

これに関わるとどうなってしまうのか。

そういった考えは既に蚊帳の外だった。

 

「触るくらいならいいでしょ」

 

気づけば軽い気持ちで杭に手を伸ばしていたのだが、彼は知らなかった。

 

この思いがけない行動が、自身に運命的な出会いをもたらす転機になることを。

 

 

________________________

 

スター団ひこう組ボスのジム巡り待機スレ

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21:特性ふみんの匿名さん

イッチがジム巡りすることになったのは喜ばしいけどさ…当初言ってたライバル誘い受け作戦が実行されなくて俺悲しいよ…

 

23:特性ふみんの匿名さん

≫21

そんな闇深い作戦実行されなくていいから…(良心)

でもイッチにライバルが出来たらどうなるかってのは確かに気になった

 

25:特性ふみんの匿名さん

ジム巡りでは元の手持ちで戦うのかな?

本気出したイッチとジムリの試合はよはよ

一からポケモン育てるパターンも見たい

 

26:特性ふみんの匿名さん

てか今になっても件の動画の盗撮犯が未だにわからんの笑うけどこわひ

流石に動画は消えたっぽいけど

 

28:スレ主

みんなお待たせ〜

どんな感じでジム回るかの説明の前に報告したいことがあるんだけどいい?

 

29:特性ふみんの匿名さん

ジムのこと先に話してくれよ こっちは全裸待機してたんだぞ

 

30:特性ふみんの匿名さん

どうせ大したことない内容でしょ?

 

31:特性ふみんの匿名さん

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!

 

32:特性ふみんの匿名さん

今度はなんだ?

 

 

33:スレ主

ひょんなことから駆け出しトレーナーにライバル認定された

連絡先も交換した

ここまではいいんだけど

 

その子は俺のことを悪の手先なのではないかと誤解釈しているらしい

 

また俺なんかやっちゃいました???

 

 

34:特性ふみんの匿名さん

????????

 

36:特性ふみんの匿名さん

お おお なんかおもれーじゃん

 

37:特性ふみんの匿名さん

どういうことだってばよ!?

 

39:特性ふみんの匿名さん

BGM:Unwelcome School

 

40:特性ふみんの匿名さん

嘘乙

って言いたいけど流石に嘘だよな?

お前のことだからマジであり得るのか?

 

41:特性ふみんの匿名さん

アンタ…その意味わかって言ってるのか?

 

44:特性ふみんの匿名さん

何もわからん どうしてそうなった

グ○ードアイランドみてえに説明しろ

 

45:特性ふみんの匿名さん

とんでもねえ奴と

同じ時代にうまれちまったもんだぜ

 

 

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シンニ

ネモ同様に別地方出身なことが今回判明した男。

ジムバッジをいくつか獲得しているらしいが、本人はそれを含む過去を語りたがらない。

悪役らしく振る舞うのは無理でも、悪気なくヤバいことをしでかすのでナチュラルテロリストという不名誉な称号を持っている。

 

パルデア全土にいくつも存在する不思議な杭。

漏れ出る禍々しい光によって素質ある者は魅了され、つい引き抜きたくなるとかならないとか。




次回から原作突入です。駆け足気味だけどやっとここまで書けた!

「オリ主の手持ちにDLCで解禁されたポケモンは居てもいいのか否か」のアンケートを締切ります。結果は賛成が217、反対が7という結果に。
投票してくださった皆様に感謝を。
ついでに新しいアンケートを実施します。
多分やらない展開だと思いますが参考として聞いてみたいので。
感想・評価気軽にどうぞ。
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