よっす皆、俺、日向翔陽。バレーが大好きな中学3年生だ。
バレーが大好きと言ったが、俺がどれくらいバレーが好きなのかと言うと、生まれて間もない頃からバレーボールに触れて今の今までバレーボールに人生を捧げてきたと言っても過言ではないくらいだ。俺はもはやバレーボールを愛している。
だが、どうやらバレーボールの神様は結構意地が悪いみたいだ。俺の住む地域には、バレーボールのジュニアチームが無かった。つまり俺は、まともにバレーボールができる環境に無かったのだ。
しかし、その程度で折れるほど俺のバレー愛は脆くない。小学生を卒業するまで、ずっと一人で出来る練習をしてきた。
筋トレ、走り込み、体幹の強化、フォームの矯正、栄養管理。そして、毎週末は小学校の体育館開放に赴き、ひたすらに壁打ち。
今の自分にできることは何か模索しながら、中学こそはバレーボールをやるんだと意気込み、それをモチベーションとして
小学校の6年間を過ごした。
そしてきたる中学校入学の日、その時の俺は意気揚々、念願のバレーボール部の入部届けを職員室に持ち込んだ。
そして
「部員、君だけだよ」
そう告げられた。
衝撃の事実。おのれ雪が丘中学校騙しやがったな部員が俺一人なんて聞いてないぞ。
その瞬間こそ絶望したが、先生が次に紡いだ言葉に俺は一筋の光を見出した。
「女子は部員の人数いるんだけどねぇ」
ふーん……じゃあ───
「え、女子に混ざって練習するの?……いやまぁ、ダメではないけど……」
かくして俺は、バレーボール部に入部することになった。
◆
時は流れて、二年と数ヶ月後、現在中学3年生。市民体育館にて行われる全日本中学校バレーボール大会の地区予選、俺は今日、初の公式大会に出場する。
体育館の入口を駆け抜け、アリーナへと足を踏み入れる。
「人が多い!体育館でかい!そんで……」
大きく吸い込み、大きく吐く。これは……
「エアーサロンパスの匂い!」
「何言ってるの翔ちゃん」
「はしゃぎ過ぎだろ翔陽。お上りさんかよ」
「あいた」
初めての市民体育館に興奮を隠せずに居ると後ろから、ていっ、と後頭部にチョップをかまされた。
地味に痛む頭を撫でながらチョップをかまされた方を振り向くと、苦笑いをした赤みがかったベージュ色の髪の男と、呆れたような表情のウニみたいに棘々した頭の男がいた。
「なにすんだコージー」
「はしゃぐなって言ってんだ。ガキじゃあるめぇんだし」
「まぁまぁ、翔ちゃんにとっては初めての大会なんだし、ソワソワしちゃうのもしょうがないよ。でも、こんなにはしゃいでる翔ちゃんは初めて見たかも」
「イズミンの言う通り。俺は今、とても興奮しています」
ウニ頭の方がコージーで、赤ベージュ髪の方がイズミンだ。
「だって、やっと、大会に出られるんだ」
やっと、やっとだ。ここまで苦節約10年。夢にまで見た公式試合が、目の前まで迫ってきている。
自然と拳を握り、力が入る。
「翔ちゃん、ずーっとバレーひとすじだったもんね」
「ホント、折れずによく頑張ったよな」
「二人共、助っ人に来てくれてありがとう。……あと、一年生も。今年になって急に3人も入って来てくれるなんて、嬉しい誤算だ」
「あっ、はい。でもまだ素人同然ですけど」
女子バレー部に混ざって練習するのと並行して行っていた、一応作っておいた男子バレー愛好会への勧誘活動。それがようやく実を結び、4人に増えたバレー部員。それプラス助っ人のコージーとイズミンの二人で、合計6人。公式試合に出場できる最低人数にギリギリ足りる。奇跡の1年生、俺は彼ら3人のことを内心でそう呼んでいる。
「……ところで、一回戦の北川第一ってどんなとこなんだ?」
「いい質問ですね、コージーくん。初戦でぶつかることになる北川第一中学校はなんと……優勝候補の強豪でーす」
「マジ?」
「マジ」
俺の言葉を聞いた途端に青い顔になるコージーとイズミン。1年生達に至っては顔面蒼白だ。
いや、そんなにビビることないでしょ。
「……いや、なんというかほんと、翔ちゃんつくづくついてないよね……ようやく試合に出られたと思ったら一回戦から強豪相手って……」
イズミンがそう言って、肩を落とした。
俺には、彼の言葉が全く理解できなかった。
「ついてない?なんで?」
「え?だ、だって……」
「───1発目からちょーつえー奴らと戦えるんだ。むしろ、超ラッキーじゃん」
俺にとっては、一回のゲームですらとても貴重なんだ。そんな中で掴んだ初めての公式戦への切符は、圧倒的な格上と戦えるチャンスでもあった。これがついてないなんて、そんな訳無い。
とんでもウルトラハイパーラッキーマンだぜ俺は。
「……そ、そっか」
「翔陽って……時々めっちゃ怖くなるよな」
「んで、北川第一がどんなチームなのかって話なんだけど……うっ」
「翔ちゃん?」
なんか急に腹痛くなってきた……!あ、すっげぇ痛い!ヤバい!
「ごめんちょっとトイレ……!先アップ取っといて……!」
そう言い残して便所に向かって駆け出す。やっべぇまじいてぇ……!
「え、ちょっと翔ちゃん!?アップって何すればいい……の、行っちゃった」
「なんつーか、なんて言えば良いんだろうな。アイツ」
「いや、うん。言わんとしてること分かるよ」
◆
「ふー、すっとしたぜ」
快便も快便。大快便だった。とてもスッキリした。これなら、試合にもスッキリとした気分で集中出来そうだ。
洗った手を拭いたハンカチの面を内側にして畳んで仕舞い、便所を出る。
さて、皆のところに早いところ戻らなくては。
皆が待つ体育館の方へ駆け出そうとしたその瞬間、目の前でスポドリを粉から作っている三人組から聞き捨てならない会話が聞こえてきた。
「なぁ、雪が丘中ってどこ?聞いたこと無いんだけど」
「つーか人数少なくなかった!?リベロも居ねぇの!」
「それに半分小学生だったよな」
「はぁ!?1年だろ」
「小学生とほぼ変わんねーって。
こいつら、北川第一の人間か。俺達のことを随分と馬鹿にしているみたいだ。
今のは相当頭に来た。ここは一発、ガツンと言ってやろうじゃないか。
「おいお前ら」
自分にできる最大限の怖い声を作りながら、声を掛けると、北川第一の3人衆は、肩をビクリと震わせるこちらを振り向いた。
「……やっぱなんでもない」
「あ……う、うす」
なんて言えばいいか普通に思い付きませんでした。変に脅かしちゃってごめん。
「な、なんなんだアイツ……」
「よくわかんねぇけど……なんか「おい2年」───!!」
「公式ウォームアップ始まるぞ。早くしろ」
「は、はい!すみませんすぐ戻ります!」
こそこそと話しているところ、めちゃくちゃ怖い声の男の人に呼ばれる3人衆。
なんだこいつ。こえー。
3人衆と同じ北川第一のジャージを纏ったこの男の名は、影山飛雄。北川第一のスタメンで、初戦の相手の中で俺が最も警戒している選手だ。
まぁ、とりあえず今は皆の下へ戻るのが最優先事項だ。
急げ急げ。
◆
「整列!!」
アップも早々に終わり、とうとう試合の開始時刻がやって来た。
主審の呼びかけによって俺達雪ヶ丘中学と対戦相手の北川第一が向かい合って横並びになる。
おねがいしアース!
試合開始前の挨拶。相手の声量に負けないくらいの気持ちで腹から声を出す。
いきなり大声を出したせいで少し喉が痛い。
各々の選手がポジションにつく。
北川第一中学校
─────────────
WS*7 MB WS
S MB WS
雪ヶ丘中学校
両チームのスタートの配置はこんな感じだ。この配置だと俺は、影山とマッチアップすることになる。というか、マッチアップするようにした。やるなら一番つえーやつがいい。
深く息を吸って、大きく吐く。試合開始直前の息が詰まるようなヒリついたこの空気、心地がよい。
気が抜けない程度の緊張感。腹の調子。頭からつま先までの鮮明な感覚。
コンディションは上々だ。
対戦相手は強豪北川第一。初陣の相手としては、願ってもいないくらいに最高だ。
試したい。試してみたい。今の俺が、優勝候補相手にどれだけ通用するのか。どれだけ食らいついて行けるのか。
とても、楽しみだ。
『ピッ!』
ホイッスルの音が響いた試合開始の合図だ。
ホイッスルが鳴ってからすぐ、相手のサーバーがサーブを打つ。
相手が打ったボールはネットを超え、コージーの守備範囲内の方に落下していく。
「コージー!」
「い゛っ!」
「上がった。ナイスレシーブ!」
取り方は不細工だったが、ちゃんと上に上がっている。ナイスレセプションだ。
上がったボールをセッターのイズミンが追う。俺はその間に十分な距離を確保し、助走の体勢に入る。
「翔ちゃん!」
「ナイス…トス!」
イズミンがトスを上げたのを確認し、助走に入る。トスを上げる際、ぼこっ、と変な音がしたが反則は取られていない。
バレー特有の四歩助走。タン、タン、タタンのリズムで飛ぶんだ。バレーボールを始めて、一番最初に覚えたことだった。
高く上がったボール目掛けて、力の限りにジャンプする。
────ドン!
タイミング、完璧。後は最高到達点でボールを思いっきり打ち下ろすだけ……とはいかないのがバレーボールだ。
「せーのっ!」
俺のジャンプに合わせて相手のブロッカーもジャンプをしてくる。そして、俺のスパイクを叩き落とすべく、俺の視界を阻んでくる。ブロッカーが三人揃ったきれいな三枚ブロックだ。
おっけー、予想通り。
狙うは、相手の指先。相手のブロッカーに標準を合わせて、ボールに手の平を叩きこむ。
────ドパァン!!
ボールは狙い通り相手の指先に当たり、相手コートの方へ大きく弾かれ、落下していく。ボールの落下地点に一番近かった選手がボールを追うが、間に合わない。
「っし!」
ボールと地面が接触したのを確認し、ガッツポーズを決める。一ポイント目、ゲトッたり。
「喜びたまえ。先制点だ」
「おぉぉ!ナイス!翔ちゃん!」
「うえーい」
点が決まってから、真っ先にこちらへ来たイズミンとハイタッチを交わす。それに続いて、コージーや一年生たちともうえーいをしていく。
「一本目からラッキーじゃねぇか!翔陽!」
コージーがそう言いながら肩を組んできた。
コージーは今の得点はたまたまブロックの当たり所が悪くて取れたものだと思ってるみたいだが、ちょっと何言ってるか分かんない。だが、今のは偶然じゃないってわざわざ説明する時間も無さそうなので、何も言わずにポジションに戻る。
「よっしゃーお前ら。次もとるぞー!」
「「「おお!」」」
一点目を取って、こちらの士気は上々だ。
……戦える。俺の持つ技術は強豪相手にも通用する。
今一度、大きく深呼吸をする。
この試合、負ける気は更々ない。
ぜってー勝つ。
雪ヶ丘中学校 V S 北川第一中学校
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続きかくのでどうかお気に入りと評価と感想お願いします生きる糧になります。
追記:アンケートについて
アリサさんの苗字は灰原じゃなくて灰羽です。誤字りました。アンケートには編集機能がついていないのでここで訂正しておきます。
ところで、ヒロインは誰がいい?
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皆のアイドル、潔子サン。
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すごくかわいい、谷地ちゃん。
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普通に犯罪、田中冴子。
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意識外からの刺客、灰原アリサ。