BLUE×HIGHLIGHT   作:仮面ライダー四季鬼

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旧世F:プロローグ

 

 

 

 

 

 

人の願いとは多種多様千差万別色とりどり…

 

 

 

 

 

 

 

 

人の数だけ願いがあり、そこに同一の願いというのはあまり存在していない…

 

 

 

 

 

 

 

 

というのは俺の持論なわけだけど、結構的を得てるんじゃないかと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

たとえ誰もが持っているようなありふれていると思われている願いでも、それを願うに至る経験や足跡は決して同一しているとは限らない。

 

 

 

 

 

 

 

願いの根底が異なっているのなら、その願いがもたらすものも違う。

 

 

 

 

 

 

 

それはつまりこの世に完全に同一の願いは存在していないと言えるのではないだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

第二次世界大戦後のヨーロッパを代表するフランスの哲学者、エマニュエル・レヴィナス曰く…

 

 

 

 

 

 

 

自らを満たし得る欲というのは「欲求」(besoin)であり

いくら満たそうとしても消えることはなく、むしろ自らの欲を更に掻き立てるものこそ「欲望」(Désir)なのであるという…

 

 

 

 

 

 

 

人と言う生き物は、つくづく欲望に振り回される生き物だ。

 

ある者は巨万の富を夢見て賭場で無謀な賭けをしてしまい、なけなしの手元にある財産さえなくしてしまったり…

 

またある者は不治の病に侵された自分の子の命を救うために、また別のところにいる知らぬ子の死を願ってしまったり…

 

またある者は他者から何もかもを奪われ続けた末に、自身が味わってきた奪われる苦しみを忘れて今度は奪う側に回ってしまったり…

 

そんな風に、人々の願いというものはこの世界に大きな縺れを生み出し続けているようにも思える。

 

ここまでを振り返って見てみるとなんだか人の欲望を扱き下ろしているように見えるので誤解ないように伝えておくが俺は人間の欲望を嫌っている訳じゃない、むしろ好んでいる部類だ。

 

人の願いっていうのにはその人間の大体の本質が裏に隠されている、俺はそれを見つけることを面白く感じているっていうのが理由の一つ。

 

もう一つ、そんな風に強く本質が浮かび上がる願いを持つ者こそ俺になにか見たこともないものを見せてくれるような気がするからだ。

 

決して満たされる筈のない底無しのデザイアがもしも叶うとするならば、人はきっとその心の輝きをより一層ギラギラと煌めかせることだろう。

 

 

 

 

 

 

だから俺はきっと…人の願いが好きなんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ここはある郊外の廃工場…

そこではブラックマーケットを根城にして暗躍するあるギャングの一派が、取引を行なう為に集まった…

数人の構成員を引き連れたギャングのボスに対して、相手の男はただ一人で相対していた。

黒いフード付きのコートに身を包み、その表情は影となって窺いしれない。

しかしその奥に隠されたその相貌ではニヒルな笑みを静かに浮かべているのだった。

 

「おい、テメェが"A"…ということで良いんだな?」

 

先頭に立つギャングのボスが対面の男に向かって問いを投げる。Aとは恐らく男のコードネームのようなものだろう。

質問を受けた男はそれに直ぐに答えるようなことはせず、手元に光るコインのようなものを手慰みにしている。

それを一種の挑発と受け取ったか、構成員の一人が前に出ようとするがボスはそれを手で制すると、今度は男の方が質問への回答をする。

 

「ああ、その通りだ…と言ったら、お前は信じるか?」

 

「ほう…それなら話は早い。早速本題に入ろう…

 

例の"ブツ"は用意できてんだろうな?」

 

その言葉を聞いたAは傍らに置かれていたアタッシュケースを持ち上げ、中身が見えるように開けてみせる。

その中に入っていたのは紅く煌めくブースターの装飾が施されたハンドルのようなガジェットだった。

詳しい説明は省くがこのアイテムがもたらす恩恵は凄まじいものとなる、文字通りの切り札に成り得る存在である。

それ故にこれを手に入れるために躍起になる連中が後を断たない、このギャングのボスもその一人なのだ。

 

「これがブーストレイズバックル…

 

ハハハハッ!ようやく手に入れたぜ…

これでアイツを、あの女狐をぶっ殺せるぞ!!

この俺に歯向かったことを後悔させてやるっ…!!!」

 

「…おいおい、報酬の支払いがまだ済んでないってのにせっかちだな?」

 

アタッシュケースの中のアイテム、ブーストレイズバックルを目の前にして既に手に入れた気になっていたボスにAは水を差すように報酬の支払いを要求する。すると我に返ったボスはゆっくりと男を見据えると形容するのも憚られるような気味の悪い笑みを浮かべ…

 

「ああ、報酬か…もちろん払ってやるよ?

 

ただし…」

 

ガチャッ ガチャッ ガチャッ

 

「報酬分の鉛弾をその身体に直接な?」

 

ボスがその手を上げると後ろで待機していた構成員達がAの周りを取り囲み、手に持っていたアサルトライフルの照準をAに定める。

さほど珍しいことでもないだろう、ただ度しがたい精神性の小狡い悪党が払う代償を減らして最大限の利益を得るために約束を反故にしようと言っているのだ。

しかしAは特段慌てる様子も見せず、相変わらず口元に笑みを浮かべるだけだ。

 

「なるほど、俺は騙されたって訳か、こりゃ年貢の納め時だな。」

 

「にしては随分と余裕そうだな、この状況を打開する手段でもあんのか?」

 

「いやいや、絶望的すぎて逆に諦めがついただけの話さ。

 

なぁ、どうせなら冥土の土産に教えてくれよ。

そこまでアンタが執着してる"女狐"ってのは一体誰なんだ?」

 

時間稼ぎでもしようというのか、Aはそんな他愛のない質問を投げ掛けてくる。普段ならば、無視してさっさと始末するところだろうが今のギャングのボスはブーストレイズバックルを手に入れて気分が高揚しているのか、その質問に答えを返す。

 

「ハッ、お前も知ってるだろう?

このキヴォトスで一、二を争う問題児にして、その残虐性から『災厄の狐』と呼ばれ恐れられてる女のことをよぉ…」

 

「…狐坂ワカモ、だな?」

 

Aはその名前を呟いた時、銃を突き付けられても崩すことのなかった笑みが消え去り、代わりに苦虫を噛み潰したような表情に変わる。

どうやらこの男もあの災厄の狐と何かしら一悶着あったクチらしい。

自分の死の寸前にすら薄ら笑いを浮かべていた男がこんな表情を浮かべる程とは一体どんな因縁なのやら…

 

「だが今、狐坂ワカモは連邦矯正局に収監されてる筈だ。

簡単に外から手出しが出来ると思うか?」

 

「だからこそのソイツだろ?

そのブーストバックルさえあれば、邪魔するヴァルキューレの監視役だろうが災厄の狐だろうが簡単にぶっ潰せる…

 

それだけの力がソイツの中には眠っているんだ。だったらどんな手を使っても手に入れようと思うのは当然の帰結だろ?」

 

しかし、つくづく不運な男だろうとギャングのボスは一種の憐れみすら覚える。災厄の狐に辛酸を舐めさせられた上に、今度は顧客に騙されて殺されるのだから。

だがそれだけだ、これから死ぬ奴の事情など知ったところでどうするでもない。さっさとこいつには消えてもらうとしよう。

 

「まぁ安心しろよ、災厄の狐は後で同じところに送ってやるからな。

お前の因縁は地獄で片付けるこった。

 

 

お前ら、撃てっ…!!」

 

ギャングのボスが構成員達に指示を出し、それによって放たれた凶弾がAの胸を貫く…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことはなかった。

 

「おい、どうしたお前ら…?

早くコイツを始末しろ!!

ヘッドの命令が聞けねぇってのか、あぁ!?」

 

命令を受けた筈の構成員達はその銃をAに向けたまま微動だにしていなかった。ボスの恫喝が廃工場の中に響いてもその様子が変わることはなく、ギャングのボスは状況が静かに変化していくのを感じ取っていた。

そうしていると、突如廃工場の中にカランコロンという謎の音が響く。

その音は構成員の一人の懐から落ちた何かが転がる音だった。

 

「FOXTROT…」

 

「?………!!!???」

 

カッ!!

 

キーーーン!!!

 

その瞬間、月明かりだけが屋内を照らしていた廃工場に突如として強烈な光と耳鳴りのような大きな音が広がる。

それによってギャングのボスの視界は一瞬、辺り一面の真っ白い世界に染め上げられ、聴覚も完全に封じられた。

なにもできなくなったギャングのボスはそれから何度か衝撃を受けたのを感じた後、目と耳が機能を取り戻した時には、既に構成員の一人に地面に組み伏せられ拘束されていた。

 

「なっ、なんのつもりだテメェら…!!

こんなことしてただで済むとでも…」

 

「そんな台詞、コイツら相手じゃ脅しにもなりゃしないぜ?」

 

「どっ…どういうことだ!?」

 

「そりゃそうだろ、何せコイツらは…」

 

動けないギャングのボスに近づき、楽しげに言い放つA。

それはまるで仕込んでおいた仕掛けがこれ以上ない程巧くいったことが心底嬉しく思っているようなそんな言い方だった。

Aはそこで一旦言葉を区切り、立っている構成員の一人に目配せをする。

すると構成員は全員顔を隠すオレンジ色のスカーフとサングラスを外しその素顔を露にする。

そこにあったのはいつも眼にする部下の素顔ではなくもっと恐ろしい存在だった。

 

「アンタが恨んでる狐坂ワカモの捕縛に成功したキヴォトス有数の精鋭部隊…

 

FOX小隊なんだからな。」

 

「な、なんだと…っ!!?」

 

そこにあったのはかつてカイザーコーポレーションの不正を暴いたことをクロノスに取り沙汰され、一躍SRT特殊学園の名をキヴォトス中に轟かせた伝説の精鋭部隊、FOX小隊。

立っていたのは小隊長である七度ユキノ、副小隊長のニコ、ギャングのボスを拘束しているのはポイントマンのクルミだ。

 

「FOX3、対象の無力化に成功。

 

やっぱり簡単な仕事だったわね…

こんな雑魚相手なら、態々アタシ達が出張らなくてもアンタ一人で良かったんじゃない、エース?」

 

「確かにな。けど俺一人で全部終わらせたんじゃ面白みに欠けるだろ?」

 

「私語を慎むように、FOX3。」

 

「そうだよ、作戦は継続中。

遠足と一緒。

全部終わらせて帰るまでが任務だよ。」

 

ギャングのボスはここまで来てようやく理解した。

騙されていたのはAことエースではなく自分だったということを。

ここに来るまでの時点で部下になり代わられ、そうとも知らずに自分は意気揚々と声を張り上げていた。

全てはこの男の手のひらの上だったというのに…

ここまで虚仮にされたのは、あの日…

狐坂ワカモの暇潰しの為に目をつけられ組織を半壊させられ、挙句の果てには、

 

『あらあら、なんて脆さなのでしょう…

これでは退屈しのぎにもなりませんね、もっと壊しがいのある玩具を探した方が良さそうです…』

 

などと宣って去っていく背中を瓦礫に埋もれながら睨み付けることしかできなかったあの日以来のことだろう。

あの日から自分はただ復讐のために死力を尽くし、その喉元まで喰い付けるほどの力をもう少しのところで手に入れる筈だったのに今度はこんな奴らに邪魔されて…

これではなにも、なにもできなかったあの頃と変わっていないじゃないか…

 

「!…違う!違う違う違う!!!

俺は変わったんだ!

こんなところで終わる人間じゃねぇえええええ!!!!」

 

『ENTRY』

 

「え、ちょっ…きゃっ!」

 

その時、ギャングのボスの腰に巻かれていたなにかが大きな光を放つとその光がボスを包み込み、拘束していたクルミを吹き飛ばす。

復讐を望むボスの執念が火事場の馬鹿力を発揮した訳ではなく、これはボスが常に所持する兵器、ドライバーによるものだった。

 

「ほう、予めドライバーを装着してたってわけか。

変身させずに片付くならそれに越したことはなかったがそう上手くはいかないみたいだな…」

 

光が収まるとギャングのボスの姿は今までとは打って変わって、全身をシンプルな黒いバトルスーツで包んだ姿、エントリーフォームへと変わっていた。

黒づくめのなかで唯一顔を覆うマスクは口元を除いて茶色い猪の意匠を象ったデザインとなっている。

仮面ライダーターボン…それがギャングのボスが変身した姿の名前だ。

このキヴォトスでは獣人、ロボの住民や学園に通う生徒の他にも、仮面ライダーという人種が存在している。人種というよりも役職に近いだろう…

選ばれた者のみが使用できる兵器、デザイアドライバーの適性を有していることが仮面ライダーになる条件であり、原則としてヘイローを持たない普通の身体を持っていることが前提とされている。

彼等の大体は学園に所属し、生徒達と同じく青春を謳歌しているが所属していた学園を脱走し、私欲のために仮面ライダーの力を行使する者も存在している。

ターボンもその一人だ。

 

『SET』

 

ARMED CHAIN ARRAY

 

『READY FIGHT』

 

「最初からこうすりゃ良かったんだ…この力でお前らをぶっ殺してからブーストバックルを奪ってやる!」

 

ターボンはデザイアドライバーにオレンジ色のチェーンアレイがデザインされた小型アイテム、『チェーンアレイレイズバックル』を装着して起動するとターボンの姿が少し変化して、右肩にショルダーアーマー、胸に小型の装甲が追加される。

そして手には鎖で繋がったトゲ付の鉄球(以下チェーンアレイ)が握られており、それがどのような意図で使われるものなのかは容易に想像が付いた。

 

「頭に血が上ったか、こりゃ血抜きが楽になって良いかもな。」

 

「このバカ!変な冗談言ってる場合じゃないわ!!

早くアンタも"変身"しないと危ないじゃない!

ライダー相手だったらアタシ達だって気が抜けないんだから!」

 

「はいはい、分かったよお姫様。」

 

「な!?///」

 

『DESIRE DRIVER』

 

吹っ飛ばされても直ぐ様体勢を立て直したクルミからの叱咤を受けてエースはフードを取り、コートを翻すとその腰に巻かれたデザイアドライバーが姿を現す。

ターボンのドライバーには中心に茶色の猪を象った丸い紋章が嵌め込まれていたがエースが装着したものには白をベースに赤い狐を象った紋章が嵌め込まれていた。

エースは懐からサイズ感にして先のブーストレイズバックルと同程度、白い円状のパーツが付いた銃のグリップのようなガジェットを取り出す。

彼はそのガジェット、『マグナムレイズバックル』を勢い良くデザイアドライバーにセットする。

 

『SET』

 

~♪ ~♪

 

すると、『MAGNUM』という文字がエフェクトと一緒にエースの右側に現れる。

そしてエースは手を大きく回しながら狐手を作り、それと向き合うように持っていく。

そしてそのまま狐手を真っ直ぐ突き出しながらフィンガースナップし、声高らかに宣言する。

 

「変身!」

 

キリリリリ…バァン!

 

『~♪ MAGNUM

 

『READY FIGHT』

 

白い円状のパーツ、リボルバーの弾倉を回転させてから引き金を引くとマグナムバックルから放たれた銃弾が無数に分裂し、右側に現れていたMAGNUMの文字を撃ち抜き、破壊された文字はそのまま白い装甲に変化。

エントリーフォームになったエースの背後に現れた半透明の機械腕がその装甲を引き寄せ、同時に白に赤の差し色が入った狐の仮面が装着されることでエースの変身が完了する。

 

「さぁ、ここからが…ハイライトだ!」

 

マグナムシューター40X

 

仮面ライダーギーツ、それがエースの変身した姿の名前だ。ギーツは装甲の装着と同時に手元に出現した銃型の武装、マグナムシューターを向けながら挑発の台詞を吐く。

 

「っ!…食らいやがれ!」

 

「ふっ…!はっ…!」 バァン カン!

 

ターボンはそれに触発されたかチェーンアレイを振り回して襲い掛かる。しかし大きく振りかぶられた鉄球にギーツは冷静に対処しながら近づく。

回避に余裕がある場合は攻撃を避け、当たりそうになる攻撃にはマグナムシューターの弾丸を撃ち込むことで軌道を反らす。

そうしてターボンに近づき、懐に入り込んだギーツはがら空きの胴に拳を打ち込み、怯んだ隙にマグナムシューターを連射しダメージを与える。

 

ガッ!ガッ!ダダダダーン!!

 

「ぐぅうっ…がはっ…!!」

 

「チェーンアレイバックル…

その破壊力には目を見張るが、その取回しのせいで懐に入られればどうしても対応が遅れる、扱いが難しいバックルだ。

慣れない内は近接に対応するバックルと併用するのをオススメするよ。」

 

「て、テメェ…!!余計なお世話だ!」

 

ギーツはターボンの余りにもお粗末な動きに思うところがあったのか、敵にも関わらずアドバイスを送るがターボンはそれを無視して再度攻撃を始める。しかし明らかに冷静さを欠いた動きをギーツが見切れない訳もなく難なく回避される。

 

「危なくなるようなら援護しなきゃと思ってたけど、その必要はなさそうだね?」

 

「あれがエースの、仮面ライダーギーツの実力ってわけね…」

 

「………」

 

仮面ライダー同士の戦闘に発展した場合は後方で待機し、指示を待つようにという命令に従いギーツとターボンの戦闘を傍観しているFOX小隊はエースの実力を垣間見て震撼する。

FOX小隊はSRT特殊学園の中でも卓越した実力の持ち主、数々の任務をこなしてきたその経験は決して並大抵のものではない。

しかし殆ど年齢が変わらない筈のエースの戦闘を見ているとその実力は底が知れない。

全力を出していないということが分かるからこそ全容が見えてこない、それがFOX小隊のそれを有に越える経験に裏打ちされたものであるということしか分からなかった。

 

カラン…

 

「お、これは丁度良い…」

 

「余所見してんじゃねぇ!」

 

「ふっ!」ダダダダーン!

 

戦闘の最中に何かに気を取られたギーツに向かってターボンがチェーンアレイを投擲するが、ギーツはまるで後ろにも眼があるかのように向かってくるチェーンアレイを回って回避し、マグナムシューターを撃ち込む。

 

「ぐはっ…このっ……!『グッ』あ、あれ?」

 

「おっと、余所見するなよ?」

ガッガッダッ!

 

「ぐぅうあっ…!」

 

反撃されたターボンは攻撃を続けようと鎖を引っ張りチェーンアレイを手元に引き寄せようとした時、何故か鎖がピンと張って戻ってくる筈のチェーンアレイが戻ってこない。

変だと思いチェーンアレイが有る方に眼を向けようとした瞬間、その隙をついてきたギーツの拳撃をもろに喰らわせられる。

 

「な、何が…な!?」

 

転がされたターボンは今度こそチェーンアレイに眼を向けるとそこには鎖の隙間に刺さるようにしてチェーンアレイを固定している鉄パイプの姿があった。

どうやら先程気を取られてたのは鉄パイプで、それを鎖の隙間に突き刺すことでチェーンアレイを固定し隙を作ったのだろう。

 

「ふざけたことを…ふっ!あ"あ"!」

 

だがターボンが力をしっかりと込めて引けば鉄パイプは簡単に引き抜かれ、チェーンアレイは戻っていく。しかしギーツはターボンにチェーンアレイが戻っていくのも気にせず、それどころか…

 

「…ふっ…ここだな!」バァン!

 

いきなり見当違いの方向に銃を放っていた。何をやっているのか怪訝に思うターボンだったがその数秒後にその意味を知ることになった。

 

「へっ!どこに撃ってやが…『ドカァァァア!!』グベェェッ!!」

 

突如ターボンの頭に大きな衝撃が走り、ターボンはそれによって大きく吹っ飛ばされる。何度も何度も起こる不可解な現象にうんざりしつつも何が起こったか回りを見渡せばチェーンアレイがまた転がっている。もしかしてキャッチをミスしたのかと思うが自分は確かに鎖を掴まえてキャッチに成功した筈だと手元を見れば…

 

「く、鎖が切れて…!?」

 

「その武器は重い鉄球を振り回して遠心力で攻撃するものだ。

鎖に掛かる負荷は相当だ、あんな乱暴な使い方をしてれば尚更な…

後は特に負荷が蓄積された部分を見極めて狙撃すればこの通りさ。」

 

ターボンが力を込めて引き戻した勢いでチェーンアレイの鎖を破壊したことで、ターボンの自滅と実質的な無力化に成功した。この手腕にギーツの実力がどれ程のものかもう分かりきったことだろう。

 

「あ、あぁ……」

 

武器を破壊され、丸腰になってしまったターボンは実力の差を骨の髄まで叩き込まれ絶望し、その心に諦念の思いが広がり始める。

 

バァン!

 

「まぁ、俺に出会ったのが運の尽きだったな。

そう気を落とすなよ、諦めなければいずれアンタの願いは叶う…かもな♪」

 

マグナムシューターの銃弾はターボンの腰に直撃し、ドライバーを器用に弾き飛ばして変身を解除させた。

これでもう、ギャングのボスはなにもできない。

 

「ユキノ、直ぐにこいつを拘束。

ヴァルキューレに通報したら俺達は帰るぞ。」

 

「…了解。」

 

後はユキノ達FOX小隊に諸々を任せてエースは今回の協力者、というよりほぼ同僚に電話を掛ける。

特段、何かしら報告する義務はないが今回は優秀な私兵を貸し出して貰ったお礼も兼ねて少し礼を言う位はしようと思い至ったのだった。

 

プルルルル…ガチャ

 

『まったくこんな時間にどこの誰ですか!!

私の睡眠時間の侵害がキヴォトス全体にどれ程の損失か…』

 

「寝起きから元気なんだな、カヤは。」

 

『…え、エース様!?///

し、失礼いたしました!』

 

エースが電話を掛けた相手、それはこのキヴォトスにおいて全行政を担う中央組織『連邦生徒会』で治安維持の責任者である防衛室の室長を勤める不知火カヤである。

カヤは深夜の電話に怒りを滲ませた小言を放つも、電話の相手がエースだと知るや否や態度を急変させる。

 

「この時間に俺達が動くのは知ってただろ?」

 

『え?………あ、あぁ!

はい!勿論覚えていましたよ!』

 

嘘である。

この不知火カヤという女、今の今まで忘れていたのである。

 

「お前の優秀な私兵のおかげでスムーズに事が進んだんだ。

礼くらい言っとかないとと思ってな。」

 

『あ…い、いえ…♡

貴方のお役に立てたなら本望ですから♡…』

 

「今度、礼代わりに二人で食事でもどうだ?

旨い鮨屋を見つけてさ、お前と行きたいと思ってたんだ。」

 

『………うえぇ!!?!?

あ、あの~…それってつまり、そのぉ~…///』

 

「デート、楽しみにしてるよ♪

それじゃまたな。」

 

『は、はいぃ~…///』

 

ピッ

 

「さてと…」

 

電話を切った後、エースは想いを馳せる。

最近、七神リン行政官が何かしら動いているらしい。どうやらこのキヴォトスの外から誰かを引き入れようとしているようだ。

いや、引き入れようとしているのは失踪した連邦生徒会長でリン行政官はその準備をしていると言った方が正しいだろう。

ライダーとして派遣されてくるなら特段珍しいことでもないが、そうではない、しかも連邦生徒会長が直々に招待している人物…一体その人物に何があるというのだろうか。

まぁなんにせよ、これからキヴォトスが大きく変わっていくことになるのは確かだ。

それが吉と出るか、凶と出るかは分からないがこれから俺達のもとに訪れる新しい世界に対してエースは祝詞をあげる。

 

「さぁ、始まるぞ…新しい世界が。」

 

夜明けの光が辺りを満たし始めたその時、何処かで鐘が鳴る音がした。

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