BLUE×HIGHLIGHT   作:仮面ライダー四季鬼

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嚆矢I:先生、到来

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

 

夢を見た。

 

夕暮れに走る電車の中で、自らの血で腰掛ける座席を染める傷だらけの少女の夢を見た。

 

初めて顔を合わせた筈なのに

何処かで見たことがあるような気がしたのだけれど…

 

結局思い出すことはできなくて…

 

そもそも思い出すような記憶があるかも定かではなくて…

 

それでも…

 

とても大切ななにかを、託されたようだったから…

 

その少女の願いを、叶えてあげたいと…

 

その少女の願いに、報いてあげたいと…

 

どうしようもなく渇望した…

 

私はその時、己が魂の声を理解した。

 

それがきっと…

 

私の願いなのだろうと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「"ん、んっ~…"」

 

私はふと、目の前に気配があることを感じとり目を覚ます。

なんだか不思議な夢を見ていたような気がするが、上手く思い出せない。

どうやら現実に持ち出しを許された夢ではなかったようで、もはや輪郭すらポヤァとして不鮮明になってしまっていた。

 

寝惚けているのもあるだろう、自分が何故ここにいるかも分からなくて少し途方に暮れたので目の前の誰かに聞いてみようと思い、顔を上げる。

 

するとそこにいたのは…

 

「よう、どうやらお目覚めみたいだな。」

 

超至近距離でこちらを覗き込んでいる狐面を着けた長身の男だった。

 

「"わ、わぁっ!?…ぶべっ!!"」

 

いきなりのことでとても驚いた私は、大きく仰け反った拍子に座っていた椅子ごと引っくり返ってしまい腰を打ち据えてしまう。

その様子を見ていた狐面の男は、余りにすっとんきょうな私の姿が面白かったのか狐面の上から手で口元を押さえて笑いを堪えていた。

 

「ははっ、悪い悪い…ちょっと悪戯が過ぎたな。ほら、立てるか?」

 

「"あ、ありがとう…"」

 

そう言うと狐面の男は倒れた私に向かって手を差し伸べてくれたので、私はお礼を言いながらその手を取って起こして貰う。

白くて、産毛も生えていなくて、もう少しサイズが小さくて筋張っていなければ、女の子の手だと思っても不思議じゃないくらいとても綺麗でしなやかな手をしていた。

 

「先生、お待たせ致s…何をしているのですか、エース?」

 

私が立ち上がったと同時に部屋の扉が開けられ、大人びた黒髪ロングの女の子が入ってくる。

狐面の…エースと呼ばれた男のおかげで良くも悪くも眼が冴えていたので、直ぐに思い出すことができた。

そうだ、この女の子にここまで案内されたのだった。

七神リン、連邦生徒会の首席行政官にして連邦生徒会長代行だという彼女に。

 

「そんなに睨むなよ、リン。

寝惚けてたみたいだからな、ちょっと気付けに脅かしてみただけさ。」

 

カポッ

 

「初めましてだな、先生。

俺は浮世エース…これから長い付き合いになるだろうから、仲良くしてくれよ。」

 

「"うん、宜しくねエース。"」

 

エースは今まで着けていた狐面を外して素顔を見せる。

なんというか、とても艶かしい…色気のある美男子といった感じの容姿だった。エースは顕になった素顔でニヤリと笑い、狐の手を顔の横に据えながら私に言葉を投げる。

私の返事に満足したのかエースは少し笑みを深めると、用事があるからと言ってその場を後にしていった。

 

「"エースの用事かぁ…一体なんだろうね?"」

 

「恐らく雑誌の撮影かなにかでしょう。彼は芸能活動もしていますから…

ほら、ここからでもよく目立っていますよ。」

 

『世界よ、これがスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズだ!

 

浮世エェェース!』

 

リンは窓の外を指差し、その方向に目を向けてみればそこにはビルに設置された大型ディスプレイに先程まで同じ空間にいた青年のプロモーションビデオが表示されていた。

スラリと長い脚が活かされたカメラワーク、髪をかきあげながらの流し目、優雅にコーヒーを嗜むワンカットなどが流されていて10人中10人がカッコいいと評すだろうことが容易に想像できる仕上がりだ。

ただ…

 

("頭痛が痛すぎて痛いみたいな肩書きだな…")

 

ピロン

 

「"ん?"」

 

『今、頭痛が痛すぎて痛いみたいな肩書きだと思ったろ?』

 

携帯の通知音が鳴ったと思ったら、メッセージアプリのモモトークにエースからメッセージが届いていた。

心を読んだような内容も驚きだが、いつの間にアカウントの友だち登録をしたのだろうか。

 

『先生が眠ってる間にな。

因みにリンの予想は大外れ、ちょっと大勢の女の子とデートに行くもんでね。』

 

なんとエースは何人もの女の子とお出かけするのだと宣った、なんという女誑しだろうか。

一応芸能人なんだし、スキャンダルになるようなことを軽々しくやってはいけない。

今度会った時は注意しなくては。

 

「さぁ、先生。

こちらへ、先生にはやって頂きたいことが沢山ありますから…」

 

「"あ、うん。"」

 

その後、私はリンに着いていってミレニアムのユウカやトリニティのハスミやスズミ、ゲヘナのチナツと知り合ったり、私が所属する予定だというシャーレの部室が不良生徒達に占領されそうなので先の4人と協力して取り返しに行く事になったりと色々あったのだけれど、多分詳しく語る必要もないだろうからそこは割愛することにしよう。

 

.

.

.

.

 

そして私は初めての指揮を執った戦闘を終えて、シャーレの部室に近付くために全員で歩を進めていた。

ぶっつけ本番ということもあり、若干の不安はあったもののリンの助言や何故か頭の中に生徒一人一人の出来ることや役割なんかが浮かんできたのもあり、その心配は杞憂に終わったのだった。

 

「シャーレの部室は目の前よ!」

 

『今、この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました。』

 

一段の先頭を走っていたユウカが言葉を発すると同時にリンから通信が入る。どうやら不良生徒達を統率するリーダーが誰か分かったらしい。

 

『狐坂ワカモ。

百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。

似たような前科がいくつもある危険な人物なので、気を付けてください。』

 

リンはそう言うと恐らくその生徒であろう人物の写真を送信してくれた。

写真に写っていたのは黒い制服に長い銃を持った狐面の少女だった。

その時、私は違和感を持った…狐面が少し気になったのだ。

別にお面を着けていることが可笑しいと言っている訳じゃない、そう言うおしゃれなのだろうと思う。

だが、問題は狐面のデザインの事だ。

何故この少女は…

 

『…あぁ、それと皆さん。

どうやらここから先は武装を解除して下さっても問題ないようです。』

 

「はぁ!?何よそれ!

私たちに蜂の巣になれとでも言うつもり!?」

 

「それに私達が武装を解除してしまえば、直ぐ後ろにいる先生にも危害が及ぶかもしれません。

要人警護の観点から考えても容認できかねます。」

 

突然おかしなことを言い出すリンに対してユウカとハスミが食って掛かる。

私としても生徒達が必要以上に危険に晒される状況になってほしくはないが、聡明なリンが意味もなくそんなことを言い出すとは思えない。

憤慨している2人を宥めつつ、リンにそれは何故かを聞いてみる。

 

『何故もなにも言葉通りの意味です。

武装を解除しても問題ありません。

何故ならその先にはもう敵はいませんから。』

 

「敵はいないって…そんな筈はないわ。だって私達以外にこの暴動を止めようと動いてる人なんていないんだから。」

 

『ごちゃごちゃうるさいですよユウカさん。

そんなに疑うなら御自分の眼で確かめてみればいいでしょう。

そんなだから頭も足も大きくて太いんですよ。』

 

「な!?

私は頭でっかちなんかじゃないし、足は今関係ないでしょ!?」

 

「"ま、まぁまぁ落ち着いてユウカ。とにかく先に行けば分かるよ。"」

 

リンに煽られて怒り心頭の様子だったユウカだが、私の仲裁もあってか直ぐに矛を納めてくれた。

しかし、リンは意外とこういうことはズバズバ言うタイプだったみたいだ。

もしかしすると日々の激務でストレスが貯まっていたりするのかもしれない。

事態が一区切り付けられた後には何とかして労ってあげようと心に決めた。

 

そして私達は敵がいなくなったというリンの言葉を信じてシャーレの部室があるビルの近くまで急いで向かう。

やはりリンの言う通り、道中は幾つもの戦闘の痕跡が見つかるものの破壊音や銃声といったものは響いておらず戦闘自体は終結しているようだった。

 

そして遂にシャーレのビルの直ぐ目の前に辿り着くと、そこには驚きの光景が広がっていた。

 

「……ぐっ…うぅ……」

 

「は、あぁ……」

 

無力化された不良生徒達が何人も横たわっている。全員傷らしい傷が見当たらないところからこの子達を相手にした人物の高い実力が伺えてしまう。

そしてその実力者の正体は恐らく、一番目立つ大穴が空いて横倒しになった戦車の上で佇んでいる謎の人影なのだろうと直感した。

白い狐のフルフェイスに白い装甲を身に纏い、マフラーをたなびかせている。

 

「あれは、仮面ライダー…」

 

「"仮面ライダー?なにそれ?"」

 

「仮面ライダー…

このキヴォトスに存在する住民の中でも突出した能力を持つ存在です。

下手をすれば私達以上の戦力となり得るでしょう。」

 

スズミが呟いた呼称に私が疑問を投げると、チナツが代わりに返答する。ここまで来る間に彼女達の能力や実力はよく理解したつもりだ。そんな生徒達以上の脅威になり得るとされた仮面ライダーという存在に感嘆していると、渦中にいる仮面ライダーがなんと声をかけてきた。

 

「案外速かったな、先生。

やはり連邦生徒会長に選ばれるだけはあるってことか。」

 

その仮面ライダーは初めて会った筈なのにとても気安い態度で私に声をかけた。というかなんだかどこかで聴いたことがある気がする声だ。

 

「"えっと、どこかで話したことあったっけ?"」

 

「おいおい、さっき知り合ったばかりなのにもう忘れたのか?」

 

…!

もしかして…

 

「"もしかして、エース?"」

 

「お、やっと気付いてくれたな。」

 

そう言うと仮面ライダーは腰のベルトに装着されていた白いガジェットを外す。

すると一瞬何かイメージマークのようなものが浮かぶと同時に淡い光に包まれ、その光が収まった時、そこに立っていたのは先程喋っていた時となんら変わらない姿のエースだった。

 

「浮世エース…?

ということは…」

 

「ええ、恐らくあの姿が連邦生徒会所属のライダーにして現ランカー1位…仮面ライダーギーツでしょう。

実物を見るのは私も初めてです。」

 

変身を解いたエースを見て、ハスミとチナツが何か気になることを言っている。仮面ライダーがエースだったことは驚きだが、彼が大勢の女の子とデートだと言っていたのはまさかこの事だったのだろうか。

 

『彼が先行してシャーレの近くの不良生徒を無力化、ワカモも追い払ってくれていました。

だからもう安心しても大丈夫ですとお伝えしたのです。』

 

「それならそうと早く言えばいいじゃない…まあ良いわ。

それより!

貴方程の実力者が動いてるなら、道中で私たちが相手をした連中も先に無力化してくれてても良かったんじゃない?

どうしてそうしなかったの?」

 

「先生がこれからキヴォトスで暮らしていくなら、遅かれ早かれここの空気には慣れておく必要がある。

耳聞は目見に如かずって言うだろ?」

 

それは確かにそうだろう。

これから沢山の生徒を受け持っていくに当たって、出来る限りの経験はしておくべきというのはこちらも望むところではあった。

しかしだからといっていきなり戦場で指揮を実践させるとは、案外エースはスパルタタイプなのかもしれない。

 

『取り敢えず、皆さんお疲れ様でした。

先生、私ももうすぐそちらへ到着します。

先に建物の地下でお待ち頂けますか?』

 

「"うん、分かった。皆はどうする?一緒に中で待つ?"」

 

「いえ、私達はここで見張りを。

彼が追い払ったとはいえ、どこに不良生徒が隠れてるか分かりませんから。」

 

「貴方も残って手伝いなさいよ、浮世エース。」

 

「ふっ、人使いが荒いな。流石は冷酷な算術使いだ。」

 

「なんでアンタが知って…!?

ね、ねぇ!

その呼び名ってまさか他所にまで広がってるってことはないわよね!?」

 

「さぁ、どうだったかな?」

 

「ちょっと!!ちゃんと答えなさいよ!も~う!!」

 

先程は警戒していたこともあり、上手く打ち解けられるか心配だったがあの様子なら大丈夫だろう。リンには皆に、特にエースには内緒で聞いておきたいことがあったからちょうど良かった。

私はユウカ達と談笑するエースを改めて確認した後、建物の地下へと潜っていくのだった。

.

.

.

.

「それではごゆっくり。

必要な時にはまたご連絡いたします。」

 

「"あ~リン、ちょっと待って貰って良いかな?

少し聞きたいことがあるんだ。"」

 

建物の地下でリンからシッテムの箱を受け取り、アロナとの邂逅や交流を通じてサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に戻すことに成功したり、連邦捜査部シャーレに関する説明を聞いたりと色々あった出来事が終息を迎えてリンが戻ろうとした時、私は彼女を呼び止めた。

気になったことを聞いてみることにしたからだ。

 

「?…はい、ある程度の事ならお答えできると思いますが…」

 

「"ここに向かって移動してた時、不良生徒達のリーダーの写真を送ってくれたでしょ?

その時から気になってたことがあるんだ。

どうしてこのワカモって子は…"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エースと同じ狐のお面を着けているの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「"…普通に同じデザインのお面を持ってるだけなら良いんだけど、私は何故かそれだけじゃないように思うんだよ。"」

 

「"聞き方を変えようか。

エースとワカモは一体どういう関係なの?"」

 

リンの表情は崩れない。

ここまで私を案内してきた時と同じで無表情のままだ。真っ直ぐ私を見据えているので私も眼を逸らさず見詰め返す。

やがて折れてくれたのか、少し溜め息を溢すと同時に語り始めてくれた。

 

「これに関しては聞かれるまで言うつもりはなかったのですが、まさかこんなに早く先生がお気付きになるとは思いませんでした。

 

分かりました、お答えしましょう…」

 

その時、彼女の口から紡がれた真実はここに来てから何度も驚いてきた事象の中でも恐らく一番の驚愕だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浮世エースというのは芸名です。

 

彼の本当の名前は、狐坂エース。

ここ、シャーレを襲った狐坂ワカモとは義理の姉弟ということになります。」

 

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