「"うわぁぁぁぁ~ん!
見づげでぐれでありがど~う!
君達ば命の恩人だよ~~!"」
「そ、そんな!
お気になさらないで下さい!」
「目を離した俺が言うのもなんだが…
アンタ、俺が居なかったらガチで数日は彷徨ってただろうな…」
問1.
窮地を救いに来てくれた恩人に命の恩人だと泣いて感謝された時の女子高校生の心情を述べよ。
A.
どうすればいいかわからなくてすごくこんわくします。
先生がアビドスの面々に土下座しながら感謝し、アヤネが慌てて取り成している様を見てエースはそう確信する。
そして、ゆくゆくはロードバイクで様々なライディングコースを周っているシロコに保護される結果になっただろう。
どちらにせよ、アビドスとのファーストコンタクトは大層情けないものになるというあり得る想像にエースは失笑してしまった。
「ほ、ほら!
私達まだ自己紹介もしてませんよ!
ですから顔を上げて下さい先生!」
「"うぅ、それもそうだ…よっこいしょ…
皆はもう知ってると思うけど…
シャーレの顧問先生です、よろしくね。
それでこっちが…"」
「そっちの方が尚更知ってるわよ。
浮世エースなんてビッグネーム、キヴォトスで知らない人なんていないんだから。」
「ほう、にしてはそこの二人は俺のことを知らなかったみたいだが…」
流石に大の大人が女子高校生に土下座している絵面が続くのを自重したのか、先生は涙を引っ込めて立ち上がりそして自己紹介を始める。
先生が自分の紹介から流れるようにエースのことを手で示しながら紹介しようとするとツインテールの少女、黒見セリカに止めたが、その言葉を聞いたエースは近くに立っている二人のライダーを顎で指しながら疑問を口にする。
「え?そうなの二人とも?」
「まぁ、私もカナトもテレビはあまり見ないから。それに…」
(もし知ってたら、バックルもなしに現最強のライダーに挑もうなんて思わないしね…)
一応、エースを襲ったことは秘密なのでサエは心の中で呟いた。
そう、それが二人がエースを襲撃してしまった理由だった。
浮世エースというキヴォトス有数のスターにして、全ライダーの頂点に位置する実力者であることをアビドスの問題に直面したことで俗世に疎くなった二人は知らなかったのである。
「それでは、改めてご挨拶させていただきますね。
私達はアビドス対策委員会です。
私は委員会で書記とオペレーターを担当している一年のアヤネ…
こちらは同じく一年のセリカ…」
「どうも。」
「二年のノノミ先輩とシロコ先輩…」
「よろしくお願いします、先生にエースさ~ん☆」
「さっき道端で最初に会ったのが私。
…あ、別にマウントをとってるわけじゃない。」
「そしてこちらは委員長、三年のホシノ先輩…」
「いやぁよろしく、二人とも~。」
「最後にアビドスに所属する仮面ライダーのお二人…
仮面ライダーロポのサエさんに、仮面ライダーダパーンのカナトくんです。」
「よろしく。
先生、アンタにも感謝してる。
けど、もしもこの子達を裏切るような真似をしたら…分かってるわよね。」
「………」
アビドスの自己紹介が一通り終了したが、比較して好意的に迎えてくれたアヤネ達に比べるとライダーの二人とセリカからはまだ警戒の色が感じられ、特にカナトは今まで一度も会話をせずにシャーレの二人を睨み付けており、心は一切開いていない様子だった。
前途多難を予感させる扱いに先生は苦笑しつつも、これからの行動で信頼を勝ち取ろうと先生は心に決めたのだった。
その後はアビドス対策委員会の目的や現在遭遇している問題等についての話を聞かせて貰った。
「"カタカタヘルメット団…まずはそこから来る襲撃をなんとかしようか。"」
「ああ、そうだな。
厄介な芽はさっさと摘んで忘れるに限る。」
「あっ、だったらおじさんに良い考えがあるんだけど~。」
「うそっ…!?」
「ホシノ先輩が…?
朝の早起きの件といい、今のことといい…
本格的に本物か疑わしくなってきたわね…」
目下の課題はカタカタヘルメット団の襲撃を止めることだと定めたシャーレ組にホシノは提案を投げ掛ける。
その言葉を聞いたセリカとアヤネの両名は驚きの表情を見せていた。
なんとなくデジャブを感じる光景である。
「二人とも驚きすぎ。
ホシノだっていつも昼行灯ってわけじゃないんだから、やる時はやるわよ。」
「うへぇ…サエさんそれあまりフォローになってないよ~。」
「…それで、結局どんな作戦なわけ?」
サエがホシノのことをフォローしようとするが、普段が普段なだけにあまりフォローになっておらず苦言を呈するホシノだったが、その様子を見兼ねたのか今まで一言も発していなかったカナトが苛立ち紛れに先を促す。
ホシノはそんなカナトにごめんごめんと軽く謝罪をすると、計画の内容を説明し始めた。
「今までのサイクルに則れば、次の攻撃が来るのは明日か明後日位だよね~?
潤沢な補給が整ってる今なら、特に苦もなく対応できると思うんだ~。
だからおじさん達が対応してる内に、別動隊が襲撃に人員を割いて手薄になった前哨基地を攻撃しちゃえば、最小限の消耗であのヘルメット団を撃退できちゃうって寸法なのさ~。
こっちはおじさん達と先生で守るから、エースくん達ライダー組は別動隊として動いてくれるかな~?
バックルも貸してくれたみたいだし、なんとかなるんじゃな~い?」
ホシノが提案した作戦は作戦というには少し大雑把でシンプルなものだったが、現状を打破する最も分かりやすい策でもあった。
なによりここに集まっているのは雑多な生徒では相手にもならない実力者ばかりなのだから、相手が相手なだけに複雑な策を弄する必要もないと考えれば良案と言って良いだろう。
「ん、こっちに襲撃してきた連中も帰る場所がなくなったとなれば混乱して無力になる。
やる価値はあるよ。」
「私も良いと思います。
あちらも私達が補給を受けたことや、戦力増強ができたことをすぐには察知できないと思いますし。」
「な、なるほど。
先生方はどう思われますか?」
ホシノの提案に二年の二人も賛成の意を示した。アヤネも特に代案があるわけでもなく、反対する理由もなかったので確認として先生やライダー達に了解を得ることにした。
「"私からは特に異論はないよ。"」
「同じく。」
「私も。」
「…まぁ、良いんじゃないの。」
「よっしゃ、皆からのお墨付きも貰ったことだし、早速迎え撃つ準備をしちゃお~う。」
『おー!』
アビドスの生徒達と先生は作戦の立案者であるホシノの号令に合わせて、手を上げながら高らかに声を出す。
その様子をライダー達は、或いは面白そうに、或いは微笑ましそうに、或いは興味なさげに見つめているのだった。
.
.
.
.
翌日、やはりホシノの予想通りヘルメット団達は襲撃を仕掛けてきた。
その総数は今までと変わらない規模で、残弾を気にしながら戦うには骨が折れるといった手合いだったが補給を受けられるようになった今となっては、アビドスにとってはただの烏合の衆でしかない。
特に心配する必要もないので、エース達別動隊は気兼ねなく敵の前線基地に向けて移動した。
サエとカナトはエースから借り受けたブーストバックルで呼び出したブーストライカーに二人乗り、エースは取り付けられたサイドカーに乗りながらの移動だ。
「な、なんだアイツらは!?」
「まさかアビドスの…迎撃の準備をしろ!
ここを落とさせるな!」
前線基地に残されていたヘルメット団達は近付いてくるライダー達に気が付いたようで、一斉に迎撃準備を始める。
しかし、ほとんどのメンバーがアビドス襲撃に駆り出されている都合上その護りは非常に手薄だ。
『SET』 「変身…」キリリリリ…バァン!
『~♪ MAGNUM』
『READY FIGHT』
ガチャン!『RIFLE』バァン!バァン!
まずは先制攻撃に、サエの後ろにいたカナトがマグナムバックルを装填して変身。
仮面ライダーダパーンとなって、マグナムシューターのライフルモードで見えているヘルメット団を狙撃する。
命中したヘルメット団は気を失ってしまい、無力化に成功する。
マグナムバックルを渡したのはついさっきだというのにもうある程度使いこなしているようだ。
その隙にサエはある程度まで近付いたところでブーストライカーを停車させる。
「やるな、ダパーン。」
「うざ。」
それを素直に称賛したエースだったが、ダパーンはそれを皮肉と受け取ったのか素っ気ない態度をとる。
思春期の男子高校生ならこんなもんだとエースは特に腹を立てることもなく、停車したブーストライカーから降りながら懐からバックルを取り出す。
そのバックルはいつかのシャーレビル奪還戦でも陽の目を浴びた小型のバックル、スピアレイズバックルだった。
『SET』
「変身!」
『ARMED SPEAR』
『READY FIGHT』
「ふっ!はっ!」ブンブン!
スピアバックルをベルトに装填して、ポーズをした後にバックルを操作して簡単な外装と深緑色の槍を携えた形態に変身。
ヘルメット団達の射撃を回して弾きながら近付いていく。
そして万が一のことを考えて槍の鎬の部分や石突きを相手の腹やうなじに当てて気絶させる。
『SET』
「変身!」ブォオォーン!
『~♪ BOOST』
『READY FIGHT』
「はぁっ!」ドカッ!バキッ!
ブーストバックルをベルトに装填し、運動のステップとストレッチのような仕草をした後にバックルのハンドルを捻り、屈み込んで走り出す体勢になった瞬間に変身が完了。
サエが変身する仮面ライダーロポは装甲を纏った瞬間に走り出し、ヘルメット団達を超スピードで一気に懐まで入って殴り付ける。
ブーストのブースターで上乗せされた拳の威力は凄まじく、拳撃を受けたヘルメット団は総じて吹っ飛ばされた後に気を失う。
圧倒的。
この状況にはその言葉が一番当て嵌めるだろう。
ただのチンピラが叶う相手ではなく、幾人もの構成員達がちぎっては投げ、ちぎっては投げられていく。
ダパーンは近くの高台に登り、高所を確保すると下のヘルメット団達を一人一人狙撃する。
簡単に倒すことができて、少し調子に乗ったのか、ダパーンは嘲るような言葉を口にする。
「…ははっ、雑魚ばっかだな。」
「はっ!隙有りだパンダ野郎!」
「なにっ!?う、うわぁあっ…!!」
しかし、油断したダパーンの背後から忍び寄る影が一つ。
気付かれないように高台まで登ってきたヘルメット団員がいたのだ。ヘルメット団員はダパーンに覆い被さるようにしてその身体を押さえ付ける。
「くそっ…!このっ…!!」
本来、仮面ライダーの膂力なら生徒一人の身体を張った拘束程度、簡単に振りほどくことができるはずなのだが背後からの突然の襲撃に動揺したダパーンは上手く振りほどくことができなかった。
「ん?……ふっ!」
ダッ ガッ ダーンッ!
その様子に気付いたギーツは槍を前に向けながら疾走し、穂先を地面に突き刺して棒高跳びの要領で高台に向けて跳び上がる。
パシッ 『HAND GUN』
「ふっ!」バンッ!
「ぎゃっ…!」ドサッ
その最中に踠いているダパーンからマグナムシューターをひったくり、着地と同時にダパーンに組み付いている団員の後頭部に一撃を見舞う。
脳天に直撃を喰らった団員が気絶、無力化されるとダパーンは項垂れもたれ掛かった団員を退かす。
「人は勝利を確信した時が一番足下を掬われやすい。気を付けろよ?」
「っ……チッ!」『RIFLE』
エースは忠告をしながらマグナムシューターをダパーンに差し出すと、ダパーンは図星を突かれ苛ついたのかマグナムシューターを乱暴に受け取り、ライフルモードにして再度狙撃の体勢に戻る。
それを見届けたギーツは高台から飛び降りて戦闘に戻る。
『REVOLVE ON』
「はぁっ!たぁっ!」ドカッ!バシッ!
一方、少し離れたところで戦闘していたロポはリボルブオンを発動してブーストの装甲を下半身に移動させる。
ロポは得意の足業をブーストで上乗せしながら駆使していく。
怖じ気付いて逃げ出そうとする団員もいたが、ロポの突出したスピードにブーストの加速が加わった追跡から逃げられるわけもなく即座に捕まって無力化されていった。
「ふぅ…エース、カナト。
こっちは片付いた、そっちは?」
「あぁ、こっちも終わった。」
「……これで仕上げだ。」
ガチャン!『CHARGE』
ダパーンはマグナムシューターの打鉄を模したレバーを引き、弾薬や武器が収められているヘルメット団の火薬庫に狙いを定める。
もしかしたら使えるバックルを隠し持っているかもしれないことを踏まえて、予め中を検分してみたが、特にめぼしい物はなかったので遠慮はしない。ダパーンは迷わず引鉄を引いた。
『TACTICAL SHOOT』バァン!
ドォォォンッッ!!
放たれた紅い光弾が真っ直ぐ着弾したことで、中の弾薬等が連鎖的に誘爆して大爆発を起こしたことで火薬庫は跡形もなく消え去ってしまい、跡地からは大きく砲煙が立ち昇っていた。
ダパーンはドライバーのマグナムバックルを外して変身を解除する。
「これであっちの連中に前哨基地を潰したことが伝わるだろ。
精々、右往左往して無様を晒してくれれば溜飲が下がるってもんさ。」
「はぁ…
戦闘員の数がとても少なかった、やっぱり殆ど出張ってたみたいね…」
~♪~♪
カナトのあまりの言い草にサエは呆れて溜め息を吐きながら、ブーストバックルを外して変身を解除すると、突然彼女のスパイダーフォンに着信が入る。名前を確認してみるとそこにはアヤネと表示されていた。
サエは特に迷うことなく電話をとる。
「もしもしアヤネ?そっちはど…
『サエさん大変です!早急に帰投して下さいっ!
このままじゃホシノ先輩達がっ…!』
ど、どういうこと!?
一体なにがあったの!?」
『仮面ライダーです!
どうやらカタカタヘルメット団ははぐれライダーを傭兵として雇っていたみたいなんです!』
「なっ…!?」
その時、サエの脳内に浮かんできたのは自分のバックルを無理矢理奪っていった紫色の牛のライダーの姿だった。
あのライダーはなにも装備していないエントリーフォームのままだったのに、バックルを使っていたロポを圧倒する程の実力者だった。
もし、ヘルメット団が雇った傭兵が牛のライダーだったなら本気でホシノ達が危ないだろう。
「分かった…!
すぐに戻るからホシノ達にはもう少し持ち堪えるように伝えて!」
『は、はいっ!』ピッ
カチャッ『BOOSTRIKER』
ブゥゥゥゥン!
「ん?…あっ…」
「ちょ、おいっ!
僕らを置いていくなよっ!」
サエは電話を切ると、すぐさまブーストバックルを操作してブーストライカーを呼び出し、ヘルメットを着けて跨がる。焦って他の二人のことが頭から離れてしまったのだろう…
そのままエンジンを始動させ走り去ってしまった。
結局エースとカナトの二人はその場にとり残され、二人は棒立ちで茫然としてしまった。
「な、なんなんだよ…突然?
ちょっと毒づいただけで置いていくことないだろ…」
「いや、そのつもりだったなら置いていかれるのはお前だけだ。
恐らく学園の方でなにかあったみたいだな…
あの焦りよう、相当ヤバい状況のようだ。」
「はぁっ!?
だったらなに落ち着いてんだよ!
早く僕らも戻らなきゃじゃんか!!」
「心配するな。
帰るための脚が必要なら心当たりがある。」
そう言うとエースは自分のスパイダーフォンを操作してある人物に電話をかける。
最近連絡先を交換したあの男なら、恐らくはすぐさま駆け付けてくれるに違いないと考えたのだ。
数コール続いた後に件の人物は電話をとったようで電話口からは相変わらずお人好しそうな声が聞こえてきた。
『もしもし?エース君どうしたの?』
エースが電話をかけたのは知る人は知る、与太郎タヌキこと仮面ライダータイクーン。
またの名を桜井ケイワであった。
エースはカナトにも会話が聞こえるようにスピーカーをオンにして話を続ける。
「突然悪いな、タイクーン…
詳しい事情は後で話す。
位置情報を送るから急いでそこまで来てくれないか?」
『うぇっ!?い、今から!?
うぅ~ん…いくらなんでもそれは…
俺だってこれから予定があるし…』
「頼む、一刻を争う事態なんだ。
急いで脚を確保しないとコイツの家族が危ない。」
『…え?
ど、どういうこと?』
エースはカナトに向かって目配せをすると、カナトはエースの携帯の向こう側の誰かに対して助けを請う。
いつものひねくれた彼なら絶対にそんなことはしない、弱みを見せる隙を作らないようにしていただろうが、今は形振り構っていられない状況なのもあったのだろう。
「た、助けてくれっ…!
このままじゃアビドスの皆が…!
セリカがっ…!」
彼が捻り出した言葉は変に捻った言い方でもなんでもない、まるで泣き出した子供のような飾り気のない、救いを求める声だった。
その言葉を聞いたであろう電話の向こうのケイワの雰囲気が変わったことをエースは直感で感じ取っていた。
『…分かった。今から向かうからちょっと待ってて。』