ギスギスフロンティア   作:イナロー

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Z組にシャンフロプレイヤーが召喚されたお話。


学校へ行こう!

1.シャンフロ学園-Z組

 

 

 

 もうすっかりお馴染みになってしまったこの教室への強制召喚だが、今回は少々様子がおかしい。

 

 ローテーションを組むようにして編成されている他のクラスとは違い、数多のゴミの中から更に厳選し尽くした産業廃棄物のようなゴミ共が集められたのがこのクラスだ。

 

 建前としては真面目にカリキュラムをこなしていけばZ組脱出の目もゼロではない…しかし、そんなことが出来る良い子ちゃんならば最初からこんなところに来る筈もなし。結果としてはクラスメイトの面々はほぼ固定される。まさに殺せんせーが来る前のE組状態だ。

 

 そんなわけでこのクラスの面々は既に全員が知り合いだ。それに加えて俺は目がいい。たとえ整形チケットで姿を変えていたとしても、動きの癖を見ればここに来るようなメンバーは全て判別出来る自信がある。

 

 しかし今日は明らかにこの教室で…否、そもそもこのゲーム内で出会った覚えのない顔が幾つもある。

 

 無論、単に俺がそいつと出会った事が無かっただけという可能性も十分あるだろう。そもそも俺は本来ならこんなこの世の悪意を煮詰めたようなクラスにくるような人間じゃないからな。俺はこんなクズ共とは住む世界が違う。掃き溜めに鶴、Z組にコタタマさんってな。

 

 俺がそうして内心で自らの場違いさを嘆いていると、見知らぬゴミ共の間からアンパンの野郎が飛び出してきた。

 

 

「あっ、旦那ー!よかった、なんか知らない人ばっかりで心細くってさぁ」

 

 

 ネトゲなんて基本的に知らない人と遊ぶもんだろ。そんなこと言ってたらろくに狩りにも行けやしねえ。まあ、最近はマゴット達や俺の可愛い暗たまみたいにリアルの友人グループで遊ぶパターンも増えては来てるようだが…

 

 

「そりゃ俺だってそれなりにオンゲはやってきたけどさ、なんか違うんだよー。ほら見てよ、あの半裸の人なんて絶対カタギには出せないオーラを醸し出してるし…」

 

 

 アンパンが指差した先を見る。そこには鳥の頭を模した被り物をしてパンツ一丁という見事な不審者スタイルのプレイヤーが立っていた。

 

 従来のゲーム程では無いにしろこのゲームにも一応ネタ装備のプレイヤーというものは存在しているが、あそこまで気合の入った変態というのは珍しい。

 

 あれだけ目立つ出で立ちだ。面識はなくともその噂くらいは耳にしていてもよさそうなものだが…まさか、新規プレイヤーか?

 

 

「でもゲームを始めたばかりでこのクラスに連れてこられたりするかなぁ?旦那じゃあるまいし」

 

 

 俺ならここに居ても当たり前のような言い方はヤメロ。俺がZ組にいるのはネフィリアに唆されたからであって、本来の俺は虫も殺せないような清廉潔白なピュアボーイだ。

 

 しかし自分で言っておいてなんだが俺はあの鳥頭が新規プレイヤーであるという線は薄いと思っている。というのも理由は単純で、そいつ個人だけであればまだしも今回召喚された新顔は一人ではないからだ。ざっと見渡したところクラスのおよそ半分が全く見たことも無いゴミに入れ替わっている。これはもう何らかの手違いか、或いは召喚条件そのものに変更が加えられたとみるべきだろう。

 

 なんにせよこのままでは埒が明かない。俺は背中にひっついているアンパンを引きずりながら移動して、両手をバッと広げて友好的な態度をアピールしながら斬新なファッションをしている鳥と人とのハイブリッドに話しかけた。

 

 

 よう、見ない顔だな。このクラスに喚ばれてる時点で恐らく訳ありだとは思うが…お前さん、一体何をやらかしたんだ?

 

 いやいや何も細かい事情を詮索しようってんじゃねーんだ。ゲームの遊び方なんて人それぞれ。外野からそれにケチをつける気はないさ。

 

 俺はコタタマ。別に廃人って訳じゃあないが、まあここらではちったあ名の知れたモンよ。お前は?

 

 

「お、おう…俺はサンラク。ところでこの教室はなんだ?何かのユニーク絡みか?」

 

 

 サンラクね。ここはZ組。校長先生に素行不良と判断されたプレイヤー達を寄せ集めた特別クラス…だったんだが、今回は少々勝手が違うようでな。悪いが俺からもいくつか質問いいかい?

 

 

「ああ、それは勿論。お互い情報交換といこうぜ」

 

 

 話が早くて助かる。それじゃお前の最後の質問に関してなんだが…ユニークってのは何のことだ?

 

 

「何の事って…そりゃユニークシナリオとかユニークモンスターとか、色々あるだろ?」

 

 

 何でそんな基礎的なことを?とでも言いたげなサンラクの様子を見て俺はますます現状への疑問を深めた。俺の知る限りではこのゲームにユニークの名を冠したシナリオやモンスターは存在しない。廃人のサトゥ氏やおコアラ様を始めとした検証チームの面々ならば知っているのかもしれないが、それならそれでこんな気軽な会話で出てくるような単語ではない。

 

 ユニーク。その言葉はネトゲーにおいてはしばしば特別な意味を持つ。『唯一の』『特異の』などといった額面の通り、限られた人間にのみ関わる機会の与えられるその言葉はいつだって憧憬と侮蔑の対象だ。

 

 誰だって特別な力には憧れる。しかし本当にそんなものがあったとして、それを手にすることが出来るのはほんの一握りの人間だ。キリトくんの二刀流は確かに格好いいが、それを使えるのは一人だけなんて言われた日にはキバオウさんじゃなくてもチート扱いしたくもなるだろう。しかしSAOはその辺の理由付けは上手かったな。どんなにゲームとして理不尽でも全部茅場のせいだから納得せざるを得ない。それにログアウト不可だからゲームから脱落する以外でユーザーが減ることはないっつー寸法よ。

 

 まあ本当にVRなんてものが生まれた日にはゲーム性なんて二の次にしてユーザーが殺到するってことは、今こうしてこのクソゲーで遊んでいる俺達自身が図らずも証明してしまっているわけだがね。

 俺はオーバーに肩を竦めながら散々文句を言いつつそれでもプレイを辞めないゲーマーの悲しい性を説いた。

 

 

「クソゲー?いや、確かにこのゲームはちょっと世界観を優先しすぎてバランス的にどうかと思うことはあるけどクソゲーには程遠いだろ。リアルと何の遜色もなくここまで自由に動けるだけでも十分過ぎるくらいだ」

 

 

 まあな。俺は同意した。確かにこいつの言う通りこのゲームはモンスター共が些か殺意満点すぎるのが難点ではあるが、それはプログラムによって精緻に定められた殺意だ。当たり判定がバグって避けた筈の攻撃を食らうようなこともない。

 

 

「だろ?ところであんたの言ってたSAOってのはクソゲーなのか?俺もクソゲーに関してはそれなりに詳しいつもりでいたんだが、その名前は聞いたことが無くてな…」

 

 

 何?SAOを知らない?おいおい冗談…って訳でも無さそうだな。今どきのゲーマーは意外とラノベやアニメは見ないのか?いや、それにしたってわざわざこんな怪しいVRMMOに手を出すような物好きがSAOの名前すら聞いたことが無いっていうのはちと不自然だ。

 

 

 見覚えのないプレイヤー達、ユニークシナリオやユニークモンスター等といった耳慣れない語句、SAOを知らないゲーマー…なんだ?いったい今何が起こって……

 

 

「お前たち、無駄話はそこまでにしておけ。タイムアップだ、奴が来るぞ」

 

 

 いつの間にかクラスにやって来ていたネフィリアが教室のドアへ視線を向けながら俺達の会話に割り込んできた。もうHRの時間か。仕方ない、話の続きは無事この時間をやり過ごしてからだ。

 

 

「HR?それに奴って…?」

 

「詳しいことはあとで話してやる。死にたくなければ今はお利口な優等生を演じておけ」

 

 

 それだけを告げてネフィリアが自分の席へ腰を下ろす。丁度そのタイミングで目の前にいつものアナウンスが走った。

 

 

【警告! レイド級ボスモンスター接近!】

 

 

 しかし教室のドアを開けて現れたのは我らが担任のマールマール先生ではなかった。

 

 全身を白を基調とした甲冑で覆ったそれは、一見すると日本の武士のようだ。しかしその体は全体的に機械で構築されており生命の灯は感じられない。

 

 予想外の展開に困惑するクラスメイト達。そんな中、幾人かの見慣れないゴミ共がロボ武者を見た途端に劇的な反応を示した。

 

 

「ウェ、ウェザエモンだと!?何で奴がここに…?」

 

「ひとまず逃げましょう!前準備も無しにあんなの相手にしてら…」

 

「断風」

 

 

 マールマール先生で無くとも教師の許可なしの離席はやはり厳禁らしい。

 リーダー格らしき左目の下にタトゥーを入れて髪を派手に逆立てたゴミの一声をきっかけに、その周囲に居た何人かのプレイヤーが慌てて教室を出ようとするが、新任教師(仮)の放った神速の居合により瞬く間に頭が胴体と別れを告げた。

 

 

 

 

 これは、とあるVRMMOの物語。

 

 新任教師、ウェザエモン。

 

 

 GunS Guilds Online

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