前回投稿時に書いていた新作を半ばもったいない精神で投稿します。
雪宮春夏です。
今回は一度に四話分まとめて投稿するのでどうぞご注意下さい。
一話、二話と前書きを少しずつ書き足しています。
さて三話目は何を書きたそう……。
リトル・プリンス・エンディミオン。
それが嘗て自分が呼ばれていた通り名であった。
本名は
そんなことを打ち明けられたアルテミスがどんな表情をしていたのか、視力がない俺には分かりようもない。
(あれ?……というか、俺、無いの視力だけか?)
アルテミスの声が聞こえるのだから聴力はあるのだろう。
だが、それ以外の触覚、嗅覚、味覚……三つ目に至っては何も食べていないのでいまいち確証はないが、どうもそれも無いような気がするのだ。
いやそれ以前に。
(俺……体の自由がきいてないような)
もしや、寝たきりにでもなっているのではないだろうか。
「聞いてますか?」
モヤモヤと考えていると、心ここに非ずな事に気づいたアルテミスが声をかけてくる。
それに応えながらも、俺は彼から渡された情報を頭の中で整理しつつ、途方に暮れた。
「つまりエーギルと俺はメタリアとは別の何者かとの戦いに巻き込まれて……エーギルが俺を連れて逃げた先にアルテミスがいた、と?」
「まぁ、有り体に言えばそうですね」
「それで、そいつに関する情報は何もなし、と?」
「その通りです」
「……打つ手無くないか?」
思わず零してしまった意見に同意するようにアルテミスの乾いた笑いが聞こえる。
しかし、我が守護戦士ながらもかなり追い詰められていたのだろうか。ここまで来ると踏んだり蹴ったりなアルテミスには同情したい位だ。
だいたい、たとえこの星にメタリア以外の悪意が紛れ込んでいたとしても、月の住人である彼らには、月の王女すら関わらなければ全く関係の無い……とは言えなくもないが、それでも優先順位は高くないだろうに。
「……よし、じゃあ、とりあえずほっとくか」
我ながらさらりと出た言葉に、何故かアルテミスが驚愕した。
「いやだってなぁ……メタリアの危険もある今、優先すべきはあっちだろう? アルテミス的には」
「いやでも、あんた襲われているんでしょう!? 危険なんじゃないんですか?!」
考え直せと言い募るアルテミスに、俺は体の自由が効いていたら肩を竦めていただろう。
「そういうが、現に襲われていないだろう? 結果論になっているが、エーギルが水脈を使ったんならそれは目眩ましにもなるんだ。星全体に広がる脈流の類は一度力を流し込むと、良くも悪くも星の全域まで力を拡散するからな。だいたいその後アルテミスだって移動している。目立つような動きをしなきゃ、見つからないさ」
言葉にしながらも、再び頭を掠めた疑問を思う。
(そうだよな……俺を連れて移動しているって事は、荷車かなんかに俺の体を乗せて移動しているのか……本当に、アルテミスには苦労しかかけてないよなぁ)
この時の俺には知る由もなかったが、アルテミスが俺の体の状態を誤魔化した事で、とんでもないレベルの思い違いをしていたのだ。
「つまり、潜伏すると? ですが根本的な解決にはならないのでは?」
「そりゃそうだけどさ」
なおも言い寄るアルテミスの表情を想像しながら、俺はどこか確信めいた思いで前世の守護戦士達を思い出した。
「カークス、エーギル、ダフニス、アドニス」
俺の守護戦士に選ばれた事で、日の目を見ることは無かったのかも知れないが、彼らが強いことを俺は知っている。
「俺の守護戦士達なら、多分大丈夫だよ」
だからこそ、俺は安全地帯にいるべきだ。
その見た目は宝石でしかないこの御方の姿を、アルテミスは見たことがない。
それがこんなにも惜しいとは思いもしなかった。
アルテミスが仕えるべきは、愛の女神の化身であり、金星の守護を持つ戦士、ヴィーナス、ひいては彼女が護る、月の王女である。
そのことに変わりは無いけれど、今目の前にあるこの御方の言葉に滲んだそれは、確かに王者たる気配だった。
(まさか……この方は)
知らず、アルテミスは息をのむ。
対面したエーギルは、彼を地球国の王族と言った。
彼はその上で自分を知っていて、かつエンディミオン王子では無いという。
(……地球国の)
その言葉からアルテミスが辿り着いた彼の身元を確信すべく、改めて言葉に変えた。
「あなたは何者ですか?」
僅かな間。
名前なら名乗っただろうと、問う声はどこか不審げで、再度彼が告げた通り名に、違うと頭を振り、声に出した。
「俺は、あなたを地球国の王族としか聞いていません。あなたの王族としての立場を伺いたいのです」
名乗った名が通り名であった違和感は既に無い。
侭ならない事情があったとは言え、一度は敵国となった間柄故、本来の立場を隠すために敢えてそう名乗ったのなら想像がつくのだ。
(守護戦士の名に聞き覚えが無いのも、彼らが既に一線を退いていたのならば納得できる。俺達が地球国に深く関わるようになったのは王女のお転婆が原因であったのだからな……おそらくは間違いなく、この御方は……
そう、エンディミオンの父に当たる、当代国王であったならばと、アルテミスは思った。
否、それ以外考えられなかったと言っても良い。
しかしそれは、あっけらかんと否定された。
「そうだったのか。じゃあ、改めて名乗るよ……俺は」
悠然と、エンディミオンと似て非なる風格を声に乗せて、彼は名乗った。
「第二王子。 第二位王位継承者だ……そちらのクイーンにはかなり世話になったよ」
予想外の正体にアルテミスは一瞬頭の中が真っ白になった。
最後の文脈が何故か頭の中に浮かびました。
現状殆どアルテミスとこいつの掛け合いで終わっているが、果たしてこいつの現代の素性を明らかにする日は来るのだろうか……(苦笑)
それでは次回もお楽しみに!
尚、次回は僅か一分後に投稿予定です。