GATE 狩人 彼の地へと、 導かれし   作:虚無の魔術師

14 / 34
滅尽強襲

旅館襲撃から数日後。

アルヌスへと帰還する道中に、特段大変なことはなかった。強いて言えば、タスクやロゥリィ達が銀座事件の犠牲者に献花するという名聞で堂々と銀座を通ったことだろう。

 

その行動の意図は、三国の工作員に手出しが出来ないようにすること。世間に広まった情報に多くの人々が見に集まったことで、彼等も強引な手段が取れなかったのだ。

 

途中、栗林がニュースキャスターの姉妹に情報提供(他国の人間から襲撃にあった旨)をしたことで、三つの大国が軽く荒れることになった。その件にアメリカの大統領は怒り狂い、中国の首席は舌打ちを吐き捨て、ロシアの大統領は感心していたとここに記しておく。

 

────因みに献花の方はちゃんと行った。丁寧に花を供え、祈りを示すタスクたち一行に世間の評価がうなぎ登りとなったのは彼等も知らぬ話。

 

 

それから何日か経過した頃。

アルヌス駐屯地周域は大きく発展した。避難民の大半が日本語を覚え始め、イタリカの街の中間地点ともなる場所にキャンプに開設した『PX』。最初は小さな店程度のものだったが、大勢の人や自衛官たちが出入りしたことで度重なる発展をしていき─────結果的に、町と呼べる程の拠点が一つ出来てしまった。亜人も人間も問わない、活気に満ちたキャンプ郡へと。

 

 

そして、夜中。大勢の人々の行き交う酒屋は、一段と賑わっていた。

 

 

「そんじゃ、乾杯ーーっ!!」

 

「「「「乾杯ーーーッ!!」」」」

 

 

仕事を終えた男たちと、タスクが豪快に酒を交わし合う。一気に飲み干した男たちが顔を赤くしながらも、口にしたビールの味に舌を唸らせる。

 

 

「────っかー!仕事終わりのビールは最高だ!!」

 

「…………良い呑みっぷりだな、オレル。俺も負けてられないか」

 

「ハッハッ!既に六杯も呑んでるのに、負けもクソもねぇでしょ!タスクの旦那!」

 

 

口に付けた泡を拭い、楽しそうに笑いながら対談するタスクと男たち。日本で産み出された酒 ビールは誰もが好き好む程の味であった。タスク自身も、一番とは言い難いが、好きな酒の一種に入る。

 

 

「それにしても、アルヌスでは自衛隊と戦ったが………イタリカに行かなくて良かったぜ。死神に英雄、あの二人が揃ったとこに突っ込んでったんだ。殺された奴等には同情するぜ」

 

「そらそうだ。俺も半信半疑だったが、あの炎龍の手を落とした化物が目の前の兄ちゃんとは思えねぇよ。────空飛んでた飛竜を跳んでブッた斬るのを見たら、信じるしかねぇわ」

 

「ホントに失礼だな、俺のどこが化物なんだ」

 

「「「「全部だろ」」」」

 

「─────いやー、聞こえないなー。都合の悪いことは何一つ聞こえないなー」

 

 

ドッ!! 、と周囲が笑いに満ちる。なははー、と同じように笑い飛ばすタスク。元々、親しくなった者たちに対しては彼も気安く接する。一度でも力を貸せば戦友と言い切る程に豪胆かつ人情に満ちたのがハンターだ。少しでも一緒に働けば、冗談を許し酒を酌み交わす仲間なのだ。

 

 

「はいはい、タスクの旦那。ご注文の追加のビールに焼き鳥ですよー!」

 

「────ありがとう、デリラ。仕事頑張ってくれよ」

 

 

亜人の女性 デリラが笑顔で食事とビールを届けてくる。軽く会釈するタスクにニカッ と笑顔で応える彼女の姿を、同席していた男たちがニヤニヤと見つめるだけに留まっていた。

 

確かに、彼女は魅力的な女性だ。しかし安易に手出しは出来ない。前に尻を触った客の一人が彼女に蹴り飛ばされて失神したのを見れば、誰だって理解するだろう。

 

ビールと焼き鳥を頬張ったタスクは気分が高揚し、最近よくする自分の体験した話────死闘を繰り広げたモンスターについて語ることにした。

 

 

「それで?今日は何の話をしようか」

 

「ほら、旦那が前に話した『重甲虫』の話はどうだい?」

 

「そうだな。それにしよう─────『重甲虫』ゲネル・セルタス。前に話した『徹甲虫』アルセルタスの(つがい)、所謂メスだ」

 

 

端から見れば、同種のオスメスとは思えないくらい変化した虫。重量のある体格をしたサソリのような甲虫、それこそがゲネル・セルタスというモンスターであった。

 

 

「大きさはアルセルタスと違って俺達の何倍も大きくて重い。突進だけで並みの人間はペシャンコだ。動きも愚鈍で大抵の奴は何とか出来る────問題は、奴はアルセルタスを呼び出して、一緒に戦うのさ」

 

「ほーっ、オスもメスと一緒に戦うか!やっぱり夫婦愛があるんだなー!虫にも!」

 

「───────ソウカモネ」

 

「………あれ、旦那?どうした、あたいなんか悪いこと言った?」

 

 

こういうのではオス単独で戦ったりするのもあり、夫婦として意識し合ってると感心したデリラだったが、彼女の言葉を聞いたタスクは遠い目で外を見つめていた。

 

半ば不安そうなデリラや男たちの前で、タスクは串に並ぶ肉を歯で引っ掛け、口で咥える。そうして、彼等が抱く勘違いを訂正した。

 

 

「…………一緒に戦うって言ったけど、少し間違ってるな」

 

「間違ってるって何が?」

 

「二体同時じゃない。二体が一緒になるんだ。ゲネル・セルタスは特殊なフェロモンでアルセルタスを誘い出して────尻尾で捕まえて直接フェロモンをぶちこむ。そして支配する」

 

「支配ってマジか………夫婦だろ?」

 

「まぁ、虫だしな…………仕方ねぇよ」

 

 

仕事を終え、同じく酒屋でゆったりしていた自衛官たちが呟く。此方の世界の虫もオスに厳しい生態もある。なんとか納得しようとした彼等だが、まだまだ恐ろしい事実が隠されていることは知らなかった。

 

 

「でも、これが意外と厄介でな。アルセルタスは凄まじく強くなってるんだよ。ゲネル・セルタスの上で切りかかってきたり、ゲネルを運んで少しだけ飛んだりとか」

 

「ま、まぁ流石夫婦!連携したら何倍も強いってもんだね!」

 

「─────これは俺の体験談だが、俺はゲネル・セルタスとアルセルタスを何とか追い込んだ。合体した二体は厄介だが、ゲネル・セルタスを空腹で弱らせることが出来た。その時、奴はとんでもないことをし始めた────何をしたと思う?」

 

「うーん。旦那がとんでもないって言うんだから………もしかして、そのまま飛んで遠くに逃げたりとか?」

 

「殺した」

 

 

─────え?

全員が静止した。なんでそんな物騒な単語が唐突に出てきたのか。改めて考えて、誰もが理解できなかった。空腹で弱ったら何故自分のつがいを殺すのか。その行動の意味を、タスクはかつての自分の心境を思い出しながら語った。

 

 

「上に乗ったアルセルタスを掴んで、地面に叩きつけて殺した。────死ぬまで何度も。そうやって死んだアルセルタスを食べて、空腹を満たしてた。流石の俺も引いた」

 

 

空腹の隙を見逃さず徹底的に攻撃を繰り出してきたタスクだったが、初見でそれを見た瞬間唖然とするしかなかった。今まで見てきたモンスターの中でも、あまりにも酷すぎたからだ。

 

 

「その後すぐに別のアルセルタスが来た時は憐れみすら覚えたな。コイツ、自分が使われてるって思ってないのか、って」

 

「………か、カマキリみたいだな。ホント」

 

「いや、カマキリでもしないだろ。自分の旦那を小腹を満たす為だけに殺して喰うなんて」

 

 

この後、ゲネル・セルタスの亜種について話したら殆どがアルセルタスへの同情を寄せた。まぁ、地中から引きずり出されて操られたかと思えば餌にされたり、砲弾として飛ばされて爆散するなど、モンスターと言えど限度がある。

 

誰もが思った。生まれ変わるとしても、アルセルタスだけは御免だ、と。少なくとも、タスクも同感である。

 

 

軽く話を終え、酒や食事も半分まで手を付けた頃だった。突如、賑わっていた店内が静寂に包まれる。店の中へと立ち入ってきた人物が、その理由だった。

 

布に身を包んだ謎の人物。目や前髪を少し覗かせただけで、己の姿を隠し通したその者は────声からして女性である。

 

 

「────『銀の英雄』タスク・アイアスだな。話がある」

 

「………席に着けよ。飯屋に来て食事を頼まないのはマナー違反だ」

 

 

険しい目で見下ろしてくる女性に、タスクはそう告げた。話なら、注文してからでもしろ、と。その言葉に、彼女は静かに沈黙した後に納得したらしい。静かに対面の席に座り始める。

 

タスクは周囲で一緒に呑んでいた男たちやデリラに「此方の話だ。外してくれ」と言い、二人だけの状況にする。実際には、周囲からジロジロと興味深そうに集まっているので、意味はないのだが。

 

二人だけとなった机に対面して座る二人。顔を覆っていた布を下げ、褐色の肌を露にしたその姿は────ダークエルフのものだった。そこまで驚くこともなく酒を呑むタスクに、エルフの女性は短く、端的に名乗る。

 

 

「我が名はヤオ・ハー・ディッシ。シュワルツの森のディッシ氏族、デハンの娘」

 

「自己紹介したが、タスク・アイアスだ。それで?用件は?」

 

「此度は貴殿と『緑の人』に用がある次第…………鎧を着けていると聞いたが、外しているのか?」

 

「………ま、非番だからな。それに、鎧もずっと使うわけにはいかない。今日は鍛冶屋の人たちに調整して貰ってるんだ────何日か掛かるみたいだが」

 

 

串に刺さった皮を口の中で租借しながら、タスクは冷静に話を聞き出していく。

 

 

「その用件ってのは?俺や自衛隊に用があるってことは、何かに力が必要なのか?」

 

「ああ、その通りだ。…………無論、ただでとは言わん」

 

 

報酬の話かと思っていた彼の目の前に、大きな鉱石の塊が突き出される。包んだ袋には何らかの護符が備えられているが、タスクは静かに視線を据えながら話を聞き入った。

 

 

「金剛石の原石だ。これで足りぬと言うのなら、我が身を捧げることを厭わぬ。………既に親類縁者とも別離は済ませた」

 

「頭サイズの原石!?爵位が領地付きで買えるぜ!」

 

「それに自分の身体まで─────スゲェ!」

 

 

興奮に満ちた外野の喧騒。それはダンッ! と、タスクが飲み終えたビールのジョッキを叩きつけたことで静寂へと変わる。酒を呑んだとは思えない、冷たく不機嫌な雰囲気を宿したタスクは頬杖をかきながら問い掛ける。

 

 

「…………自分を身売りするのは感心しないな。お前がそこまでする程の依頼か?」

 

「無論。それだけの価値はあると認識している。………貴殿のような実力者や『緑の人』以外では不可能だろうからな」

 

「依頼の内容は?」

 

「─────手負いの炎龍討伐だ」

 

 

何? と怪訝そうに反応したタスクに、ヤオは事の経緯を話し始める。

 

一ヶ月前、ダークエルフたちの村を隻眼の炎龍が襲撃した。森を捨て、渓谷や山へと逃げていくダークエルフであったが、炎龍は追い立てるように探し回り、隠れたダークエルフたちをしらみ潰しに喰らっていった。

 

必死の抵抗を繰り返したダークエルフたちであったが、誰も炎龍に傷一つ与えられず喰われていった。諦念に染まっていた一族であったが、彼等はある噂を耳にする。

 

 

────炎龍に立ち向かった剣士と緑の服の人間がいた。

 

特に彼等の期待を深めたのは、剣士の方であった。炎龍の業火の如く息吹を剣で吹き飛ばし、炎龍の巨体を切り裂いていった、と。挙げ句には緑の人の扱う『鉄の逸物』という魔杖を扱い、炎龍の片腕を奪ったのだ、と。

 

それらの話は、彼等に希望を抱かせるには充分だった。ダークエルフの老人たちからその実力と真面目さを買われ、ヤオはタスクと緑の人の力を借りるように頼まれた。そうして彼女は長い旅路をかけて、タスクと出会ったのだ。

 

 

「あの炎龍に一矢を報いた貴殿に折り入って頼みたい!炎龍から、我が一族を救って欲しい!!」

 

「…………」

 

「望むのなら我が身すら好きにすればいい!それで皆が救われるのなら本望だ!」

 

 

必死に、涙すら浮かべてまで頼み込むヤオ。彼女の頼みを受けるだろうと確信していた外野の者たちはタスクの顔を見て冷や汗を滲ませた。

 

そして────彼等が見たこともないような、怒りに満ちた顔でタスクは吐き捨てた。

 

 

「─────断る」

 

「…………は?」

 

「その頼みは断るって言っているんだ」

 

 

ぶっきらぼうに告げたタスクに、ヤオは何を言っているのか分からず呆然としている様子だった。ふん、と不機嫌そうに顔を歪めた彼はビールを呑みながら、淡々とした態度を貫く。

 

絶望に染まったように硬直していたヤオは、必死に食い下がる。絶対に、諦めることはで出来ない。そんな風に彼女はタスクへと言葉を投げ掛けた。

 

 

「な、何故だ!貴殿なら炎龍を倒せるはずだ!これ以上の報酬を求めるというのなら、幾らでも─────」

 

「勘違いするな、報酬のことじゃない。俺がその頼みを断ったのはもっと根本的なところだ」

 

「な、なら何が駄目なのだ!!此の身を捧げる覚悟も───」

 

「────それだよ」

 

 

戸惑うしかないダークエルフに、タスクは指を突き付けた。その言葉の意味も分からず、疑問符を浮かべそうな彼女に、タスクは自分が気に入らなかったところを指摘した。

 

 

「自分を大切にしないところが、俺は気に入らないんだ。そういうのが、一番不愉快だ」

 

「………なっ、何故だ?」

 

「世の中には自分すら守れない人間だっている。お前の言う炎龍に喰われた同族だってそうだ。彼等みたいに、何も出来ずに死んだヤツがいるのに、お前は自分を守れる力があるのに、仲間のために自分の身体すら捨てようとしている────そこが気に入らない、ムカつく」

 

 

タスクは、弱肉強食を信条としているが、それでも気に入らないことが一つある。俗に言う奴隷という制度だ。人によれば弱肉強食の在り方の一つと言われるかもしれないが、全然違うとタスクは確信している。

 

殺し、殺されるというのは命の循環に伴った行為である。故に獣が人を食い殺す行為はそこまで忌避されていない。危険なものとして狩られることも含め、生きるために必要な行為の過程に『弱肉強食』という言葉が出来た。

 

 

────奴隷は、それを侮辱している。命を、人を、物として扱い、自分の利益のため、道具のように酷使する。何より、それは生きるための行為ではない。当人にとって利益を出すための行為だ。

 

奴隷は弱いから、強い自分が従えて何が悪い。そう喚いた辺境の領主を、タスクは怒り任せに斬り伏せたことがある。それ程までに、彼は『奴隷』というシステムを、ハンターとしても、普通の人間としても嫌悪し、憎悪している。

 

だからこそ、彼は自分を大切にしようとしない者に、自分の身体を物として対価とする者に、怒りを覚える。自分の身体すら他者に奪われ、自由すら与えられない者すらいるのに、自分の意思もなく、ただ誰かのためといって思考することなく身体を献上しようとする者を、誰よりも毛嫌いしている。

 

 

「だから、俺は断わった。自分を大事にしない奴の為に、命を賭けるつもりはない」

 

「─────そう、か」

 

 

茫然自失と、彼女は笑うしかなかった。必要ならば自分の身体を捧げると、しかし一族の頼りであった英雄はそんなことを求めておらず、むしろ嫌悪するような人だった。それも知らず、自分の勝手な言葉のせいで、一族を救える手段を失ったのだと。

 

静かに涙するしかないヤオ。絶望に身を震わせることしか出来なかった彼女に、タスクは次の言葉を放った。

 

 

「─────その上で、此方から頼み込ませて貰う」

 

「…………はっ?」

 

「炎龍退治、俺たちに任せてくれ。その代わり、二度とそんなことを言うな。自分を安売りするヤツは嫌いだが、アンタの覚悟は本物だ。────そんな覚悟のある奴を見捨てる程、人を捨てたつもりはない」

 

「ほ、本当に…………助けてくれるのか!?」

 

「ハンターに二言はない。………助けたいから助ける、それだけだ。むしろ、俺に助けさせてくれるか?」

 

「っ! ああ! 是非とも頼む!」

 

 

凍りついた空気も、一瞬で氷解する。ワッ!! と誰もが抱き合い、力を抜いて安堵するしかなかった。外野ですら、この状況に緊張していたのだ。タスクが冷たく断らなくて良かったと、皆が心から安心して一息つく。

 

 

「だが、すぐは無理だ。俺も装備の調整がある。………自衛隊の皆にも確認して応援を頼んでみるが─────無理だったら、俺一人で行く。 それで構わないか?」

 

「────問題ない!一族を救ってくれると約束されたのだ!これ以上求めるものは他にない!」

 

「そうか、じゃあ二日後昼に、この座席で待ち合わせをしよう。君の仲間のいる場所のところに案内してくれ」

 

 

任せてくれ! と嬉しそうに答え、食事を終えたヤオが一礼して席を離れる。最初から彼女たちを助けるつもりでいたタスクは、少し心配させ過ぎたな、と反省した。

 

そうやって食事を続けようとしたタスクだったが、今度は真後ろから声を掛けられた。

 

 

「─────よぉ、お前がタスク・アイアスだな」

 

 

一瞬で、タスクは戦闘態勢に入る。その声には粘りついたような殺意が籠められていた。幾つもの命を奪ってきた、凄まじくトゲトゲとした殺気を感じ取ったからこそ、即座に反応を示す。

 

 

顔半分を隠すほどの大きな布を被った男。垂れ下がった黒髪とギザギザの歯が特徴的な、殺気を隠さないその威圧感。只者ではないと、タスクは警戒心を最大限に高めた。

 

 

「…………誰だお前は」

 

「ノワール。『竜人(ドラグノート)』、『不倶戴天』のノワールだ」

 

 

竜人(ドラグノート)』、あのセルドラやディーンと同じ存在だと理解した。だからこそ、彼は周囲へと意識を向ける。ここでは戦えない、人が多すぎる。これでは何人も巻き込んでしまう。

 

 

「ハイルダインがよ、お前のこと邪魔だって言うんで────殺しに来たぜ」

 

「そうか─────なら場所を変えようか」

 

「………あ?─────」

 

 

何を言っているのか、と首を傾けたノワールは一瞬で店の外─────キャンプの町中から少し離れた場所まで吹き飛ばされた。着地と共に宙返りで衝撃を受け止めたノワールの前に、遠くから跳躍してきたタスクが『THE オリジン』を手に着地してきた。

 

 

「へッ!他の奴等を巻き込まねぇ為に離れたってか!見え透いてるぜ、最強のハンター!」

 

「それもあるが─────邪魔もなく、お前を叩き潰すためだ」

 

「────カハッ! 良いぜ!その余裕に満ちた顔、今すぐ苦痛に歪めて、なぶり殺しにしてやるよォ!!」

 

 

手を前にかざし、自身の顔を掴むように構えるノワール。ビキビキ、と彼の全身に赤黒い光が伝わっていく。周囲の空気が震え始めたかと思えば、

 

 

 

 

 

 

「──────『滅尽龍(ネルギガンテ)』ェッ!!」

 

 

彼の姿が黒に染まる。漆黒に包まれたノワールは、異形のようなヒト型へと変貌していた。

 

竜の力を宿したと明言することから分かる、背中から生えた二つの翼。腰から伸びた竜の尾。これだけでも充分異形であるが、彼の姿はそれよりも禍々しく変化していた。

 

 

まず、特徴的なのが────全身に生えた無数のトゲ。ハリネズミのように、鋭利な凶器と呼べるものが無数に連なっている。

 

そして、ノワールの顔を覆い隠すように展開されたバイザー。反り返るように捻れた双角、睨み見据えるようにギロリとした敵意を体現した鋭い眼光。その全てを伴ったノワールの姿は、竜というよりも悪魔のような異形に成っていた。

 

バイザーの下から覗く歯を剥き出しに、ノワールは悦楽に浸るように嗤う。

 

 

「───────さァ、楽しい楽シイ、殺しの時間だァ」

 

「─────ッ!!」

 

 

今まで感じたこともない殺意と敵意に凝り固まった狂気の気迫。瞬時に臨戦態勢に入ったタスクに、ノワールは地面を蹴り飛ばして襲い掛かる。虹色の剣と、膨張した竜の腕が衝突し、周囲に凄まじい衝撃波を発生させた。

 




前回のを含めてタスクの考えを分かりやすく纏めますと、

『一般人を守るために戦うけど、彼等に害をもたらす悪人も人殺しをする奴等もモンスターのように平等に殺す』

『モンスターや竜が人を襲う行為は許されないけど悪とは言えない。此方も彼等を討伐するから、そこを理解して生きるしかない』

『だけど、奴隷はクソ。弱肉強食とか言いながら、命を物扱いする奴等はクソ。自分の立場を言い訳にして、同じ人間を道具のように使っていいはずがない。そんなヤツは殺す』

というもの。割りと冷静沈着なところもあるけど感情的だし、優しく振る舞うけど命に関してはドライだったり、矛盾してるけど、芯のあるタイプと認識してます。

なのでこの先、某帝国にはぶちギレるんだろうな。きっと(遠い目)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。