GATE 狩人 彼の地へと、 導かれし   作:虚無の魔術師

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永らくお待たせ致しました!続きを投稿させていただきます!


ドラクルの騎士と氷龍姫

「────やれ!侵入者は全員皆殺しだ!」

 

 

────監獄もとい城塞への侵入を遂げた自衛隊の一団。入り組んだ通路を進んでいた彼等を待ち受けていたのは、侵入に気付いたであろう兵士たちであった。

 

竜面の兵士たちの攻撃に的確に対応する自衛隊。ライフルを構え、ありったけの銃弾を浴びせていくが、全員に通用するわけではなかった。

 

 

「っ!ちまちまと、鬱陶しいんだよ!!」

 

兵士の一人が、勢いよく突貫する。突撃銃による射撃も両腕のシールドで受け止め、そのまま前方の自衛官の顔を蹴り飛ばした。吹き飛ばされた自衛官を受け止めた時には、防衛線は大きく崩れた。

 

 

「陣形が破られた!下がれ!」

 

「ハッ!イイ武器使えてるだけで、お前ら弱いんだよ!イキってるんじゃねぇ!猿がッ!!」

 

盾を構えた竜人兵が笑みを浮かべ、殺意のまま走り出す。銃弾をもろともせずそのまま自衛官達を殺そうと迫った兵士であったが────、

 

「でぇいッ!!」

 

「───ぐはあッ!!?」

 

フルスイングの銃身を叩き込まれ、仮面を砕かれて飛んでいく羽目になった。ライフルを握り直した栗林はそのまま此方を狙う竜面の兵士へ払うように銃弾を浴びせ、叫ぶ。

 

「今の内に陣形を立て直して!早く!」

 

「分かった!おい、早く治療を────」

 

直後、栗林を含めた自衛官達の動きが止まった。轟音を伴い、何者かが前に踏み込んできたのだ。先程、栗林が殴り飛ばした兵士を受け止めたその人物は兵士を地面に置くと、一言。

 

 

「────下がって、邪魔」

 

 

それは、幼さの残った少女であった。刺々しい装飾の目立つ民族衣装らしき様相。紫色に染めたその姿は毒々しさも含んだ、禍々しい殺意を宿した姿。

 

その少女に、竜面の兵士達は思わず足を止め、萎縮し始めた。ソレほどまでに、彼等を怯えさせるほどの実力差があったのだ。

 

 

「り、リピラ様!申し訳ありません!お力添えを、どうか!」

 

「………ホントにそう。貴方達が力不足だから、私達が動かなきゃいけない。でも、あの女だけは例外。面倒だから相手は代わってあげる」

 

そう言って、前に出る少女。顔の半分を隠し、隻眼だけを開いた少女は栗林たちを見つめ、ため息を漏らす。

 

 

「────アンタ達、自衛隊ってヤツね。この城に来るなんて、身の程知らずもいいところ」

 

「………栗林志乃」

 

「悪いけど、興味ないわ。貴方達は敵、私に殺されるだけの敵だから。見分けの付かない肉塊になるのを、覚える必要ないの。

 

 

…………けど、騎士だから名乗った相手には名乗り返さなきゃいけない。ホント、騎士って面倒」

 

 

そう言った瞬間、少女は両手を開く。すると片腕からは鋭い爪が展開されたかと思えば、もう片方の腕から鎖の繋がった棘が伸びる。

 

ジャラジャラ、と鎖を引き摺り少女は隻眼を輝かせる。殺意を宿した、ある種の狂気の籠もった眼をギラつかせ、無気力なまま名乗りを上げた。

 

 

「ドラクル騎士団 『凶天乱』のリピラ。ま、覚えなくていいよ。どうせ死ぬんだし、無駄でしょ」

 

 

◇◆◇

 

 

一方、別部隊。

 

 

「………ここは?」

 

自衛隊の一団と共に城塞内部に辿り着いたヤオは、開けた空間を前に困惑した。

 

その場所は、明らかに今までのような通路とはかけ離れた大きなホール。というより、周囲が水で覆われた一本道。中央の部分だけ広い円状の地面が用意されていることから、コロシアムのようなものを思い浮かべた自衛官も一部いた。

 

────それは、強ち間違いでは無かったのだろう。

 

 

「────よォこそ!不遜なる侵入者諸君!」

 

 

張り上げられた大声と共に、周囲の水面から一つの影が飛び出してくる。そのまま彼等の前に飛び込んできたのは、半裸の男。水に濡れた青い髪をかけ上げたその男は、あまりにも堂々とした笑顔を向ける。突然のことに混乱したヤオは冷静になろうとしながらも、サーベルの柄に手を添えて声を荒らげた。

 

 

「っ!な、何者だ!貴様!」

 

「おっと、おっとおっと!待ちなアンタ!血気盛んな気持ちは分かるが、乙女を前にこの姿は不味いと思うんだオレは!だからちょっと着替えさせちゃくれねぇか!?」

 

「な、なんだコイツ………?」

 

 

ヤオを宥めるのようにそう抜かした男に更に困惑する自衛隊一同。慌てて近くの場所から上着を羽織った男はさっきまでの状況を無かったことにするように、続けた。

 

 

「────フゥン!相も変わらず優美な顔立ち!やはりオレ様、世界で二番目に美しくイケてる男!水も滴り、海も波立つイイ漢!今のオレも、最高にキラめいているッ!!」

 

「…………」

 

「さァて、こんなトコに来てくれた不遜なる侵入者と麗しきダークエルフの乙女よ。ここに来た幸運に感謝しよう!そして、ここに来てしまった不運に同情しよう!」

 

 

パチン!と指を鳴らした男に応じるように、後方の道が音を立てて崩落していく。完全に道を塞がされたことに自衛隊一同が互いの背中を庇うように並び、ヤオも彼等に背中を預ける。

 

 

広場を中心として渦巻く水面に無数の影が過ぎる。男は羽織ったコートを広げながら、高らかと告げた。、

 

 

「ここはオレの区画。麗しきセレーティア様より任されたエリアであり────最高にイケてるオレのブラザー達の寝床にして、餌場だ!」

 

「っ!周りに魔獣────!?」

 

「違う!これは、タスク殿の話していた────!」

 

水面を泳いでいる影、それは鮫に近しい両生種の生物。名を、スクアギル。タスク・アイアスの居た元の世界に生息する小型、中型モンスター。彼等を愛おしそうに見つめながら、男はコートへと手を伸ばす。

 

 

「オレの可愛いブラザーたち。少し待っていろ、今から最高にイカすオレ様が食事の用意をしてやる────そして、侵入者諸君も!刮目するがいい!最高にイカしたオレ様の、最ッ強に等しい戦士の姿を!

 

 

 

 

 

化け鮫(ザボアザギル)』ゥ!!」

 

 

コートを空へと投げ捨てた男の全身を、周囲の氷水が包み込む。嵐のような氷結の中、男はその姿を大きく変化させていた。手足や顔に氷の外殻を纏う男は自信満々といった様子で、髪をかき上げる。

 

「やっぱりコイツも竜人か………!?」

 

「────フッ、臆したようだな。無理もない。このオレ様の戦闘形態! 美しく! 優雅で! パーフェクトにイケてるフォーム!世界一美しきセレーティア様に次ぐオレ様の究極的な肉体美!恐れるのも無理はあるまいッ!」

 

酔いしれるように謳う男の様子に、ドン引きする自衛隊一同。ヤオだけはその様子を可笑しく思いながらも、一切警戒を緩めない。

 

それは、男から感じる一つの感覚が原因であった。

 

「そんな最高にイケてるオレ様のこの姿には、少し困った欠点がある…………」

 

「欠点………?」

 

「────血肉に、飢えるんだ。竜としての本能が、血肉を求めて仕方ない。────丁度、君達全員を殺せば、オレ様も少しは落ち着くだろうな」

 

ニタリと、舌を見せて笑う男。言葉通り血に飢えているかの如く血走った目を細め、男は本当による殺意を押し殺しながら、クルリと一礼してみせた。

 

 

「オレ様こそ、ドラクル騎士団 『氷海主』のバッシュ。ドラクル騎士団で最もイカした男!このオレ様と兄弟たちの餌に慣れること、喜びに悶えるのだな!!」

 

 

◇◆◇

 

その一方、別部隊。

 

「……………」

 

「……………」

 

自衛隊の一部隊と共に行動していたレレイと対峙するのは、彼女よりも明らかに幼い少年。ブツブツと何かを呟く少年を静かに見つめる彼女と自衛隊の様子に気付いた少年は、露骨に顔をしかめた。

 

「────で?」

 

「………で?」

 

「口で言わないと分からないクチ?ボクだって気は長く無いんだよ、言いたいことがあるならさっさとしたら?侵入者のクソども」

 

幼い少年が口にしたのは、あまりにも刺々しい敵意。此方を明確に拒絶するその言葉に自衛隊の面々の様子は苦々しい。そんな彼等を他所に、レレイは無表情のまま口を開く。

 

「日本人を助けに来た。貴方はそれを邪魔する竜人じゃないの?」

 

「邪魔する?侵入者の分際で、自分達を正義の味方とでも思ってる言い方じゃないか。やはり人間ってヤツはドイツもコイツも身勝手で、浅ましい奴等だね。自己を正当化することに於いては、アンタ達以上に相応しい生命体は存在しないよ。そこだけは誇ってもいいんじゃない?

 

 

けど、半分は正解だね。確かにボクは竜人(ドラグノート)だ。最も、生体的にも本来のオレは龍に近しい種族だけど」

 

 

そう言って少年は頭に被っていたローブを拭うと、彼の頭には竜のような角が二本伸びていた。そして背後からは二枚の翼と竜らしき尻尾が伸びていた。それを見て驚き、一部はファンタジー要素に興奮する者もいる中、レレイが淡々と呟いた。

 

 

「………『竜人族』、他に居たのね」

 

「ふーん、オレの種族のことを知り得ているか。もしや同族にでも会ったのかい?『竜人族』はほぼ絶滅したかと思ったけど、まぁどうでもいい話だ。今のボクにはね」

 

全能感に浸るように、少年は両腕を広げる。細められた瞳でレレイ達を見据えた少年は、手をひらひらと振るって馬鹿にしたように呟く。

 

 

「日本人を助ける、って言ったね。まず不可能だ。あの女は助けなんて求めてないし、帰るなんて以ての外だ。分かったなら大人しく帰るといいさ」

 

「ふざけるのも大概にしろ………彼女は我が国の人間だ!たとえ本人に意思がなくても、見殺しにすることは出来ない!」

 

「よく言うよ。あの女を今まで放ってたクセに、今更正義面して助けるつもり?ソレに一つだけ言うと、あの女は自分の意志でここにいるのさ。どうせ君達には分からないだろうけどね」

 

 

その一瞬だけ、嫌悪感を剥き出しにした少年は、ローブを掴む。そのまま脱ぎ捨てたローブを放り投げ、少年は身軽な姿な上で手を顔に置いた。

 

 

「────感謝しなよ。ボクの力を見れる上に、生かされることをね。それを理解した上で、ボクたちの持つ竜を滅ぼす力を見ろ。

 

 

 

 

鎧竜(グラビモス)!」

 

 

地面が胎動したかと思えば、無数の岩石が少年を包み込む。岩石の塊が破砕したその時、そこにあったのは岩石の鎧に身を包んだ竜人に変じた少年の姿であった。

 

 

「仮にも騎士団なんでね、名乗っておくよ。ボクは、ドラクル騎士団 『熔岩鎧』のガウロン。本気で相手はしてあげないから、喜ぶと良いよ」

 

 

◇◆◇

 

 

その一方、別働隊。

 

 

「────グアッ!?」

 

「退いて下さい。私達は貴方達を殺すつもりはありません、極力は」

 

 

開けた通路の先で、自衛官の一人が倒れ込む。特殊素材を使用した強化盾を保持していた自衛官は、腕に軽い切り傷を受けて倒れており、対面していたただ一人────スパロウは、腕から生やしたブレードを輝かせていた。

 

 

「っ!全員下がれ!シールドで壁を作って、その隙間から撃つんだ!」

 

「けどアイツ!銃弾効かないんだぞ!?撃っても斬られちまう!」

 

「馬鹿!それでもやるんだよ!このまま尻尾巻いて逃げる気か!?」

 

 

そう息巻く彼等は強化シールドを並べ、通路を塞ぐのように壁を作る。その隙間から銃口を覗かせて撃ち続けるが、スパロウの動きは誰よりも速かった。音速で壁を飛び回る影に翻弄される自衛官達の中で、唯一着いてこれたのはただ一人であった。

 

 

「………ッ!」

 

「貴方は…………成程、やるようですね」

 

 

辻斬りを行うスパロウに追いつく富田。対竜人用の強化シールドで突っ込む彼の動きは何とか追い縋れるものであるが、対応できない者に比べれば遥かに身軽だ。

 

 

「確か、富田と言いましたね。その動き方、少しだけ差異が見られます。我々との戦い方に、慣れておられるご様子」

 

「…………過去に竜人とは戦っているので」

 

「過去………ノワール様ですか。あの御仁と戦い、生き残っているのならば理解できる」

 

 

感心したように刃を納めたスパロウ。出方を伺っていた彼に、一息つけた富田はずっと胸に秘めていた疑問をぶつける。それが、相手にとって地雷にもなりうることを覚悟した上で。

 

 

「無礼を承知で聞く…………!何故、ハイルダインに従う!?」

 

「────あの御方に救われたから、それ以外の理由はありません」

 

「君は、きっと善人だ!ただ奴に利用されているだけじゃないのか!?奴は、人の命を無視して────君達を改造したんだろう!?そうまでして、彼等に与する理由はあるのか!?」

 

「─────貴方達は、知らないからそう言えるんだ」

 

 

途端、スパロウは俯いたまま呟いた。そんな彼の顔に宿っていたのは────恐怖による拒絶。冷静沈着で物腰の柔らかい態度とは裏腹な、怯えに身を震わせるスパロウはブツブツと呟きを漏らす。

 

 

「ハイルダインは間違っていない。龍は、滅びるべきなんです…………私の家族を、世界を喰らい尽くした奴等は、生きてちゃならない災害なんだ────復讐なんかじゃない。私達は、正義の為に、戦っている…………ッ!」

 

「私の、世界…………?」

 

「…………えぇ、その通り。私達は間違っていない。龍こそが、滅びるべき敵。…………お見苦しいところをお見せしました。今度は、このような不躾を見せはしません」

 

 

その姿は、PTSDであるかのようであった。何かに怯え、心の底から恐怖している自分を隠すために、騎士としての自分を纏っているかのような。そんな彼は二度と油断を見せないと宣言し、腕刃を展開し、静かに身構える。

 

 

「改めまして────ドラクル騎士団 『闇閃刃』のスパロウ。騎士としての本懐を、果たさせて頂きます。いざ、お覚悟を」

 

 

◇◆◇

 

 

(────戦闘の音、伊丹達が始めたな)

 

 

城内に招かれ、案内されていく中でタスクは仲間達が動いたことに勘づいていた。道案内する兵士は二人、どちらも竜人であるとタスクは即座に見抜いていたが、やはり敵意は感じられない。言葉の通り、セレーティアの元へ案内するのであろう。

 

 

(………工場は見つからない。やはり、俺をそんな場所に通すつもりはない訳か)

 

 

ハイルダイン達が画策している『竜我兵』の増産工場。それがこの監獄にあることは分かっていたが、一階にそれらしき設備は見られない。となると、伊丹たちが侵入している地下にあると見るべきだ。そう判断し険しい顔を浮かべていたタスクに、隣を歩いていた紀子は不安そうにしていた。

 

 

「………安心してくれ。必ず君の友達も助け出してみせる」

 

「…………ありがとう、ございます」

 

 

「────着いたぞ」

 

 

そう話した所で、兵士の二人が歩みを止めた。大きな階段に並ぶ扉の前で一歩下がった兵士は怪訝そうなタスクに淡々と語りかける。

 

 

「セレーティア様から、二人で入るように言われている。この先に、お前達の待つ者がいる、とも仰られていた」

 

「…………」

 

「先に進むがいい。我が主は、既に赦しを与えておられる」

 

 

そう言って距離を取る兵士達。どうやら、意地でも案内するつもりはないらしい。だが、嘘でないのなら進むしかない。紀子を背に庇いながら、タスクは共に階段を登っていく。大扉に手を当て、押し開けた瞬間────冷気が肌を突き刺した。

 

 

「…………ッ」

 

 

吐き出す息が、白い。

それほどの冷気が充満した、白銀の世界。雪景色とも呼べるその領域は、まるで物語のように幻想的であった。周りを見渡すタスクの視線は、玉座のような場所の前で立ち尽くしていた人影に気付き、咄嗟に身構えた。

 

その人影もタスク達に気付いたのか、振り返る。振り向いた顔を目の当たりにしたタスクの横で、紀子が思わずといった様子で呟く。

 

 

「────冷、花?」

 

「………紀子?」

 

 

真っ白な長髪の少女。ドレスのような衣装を着せられていた彼女は、どこか物怖じげに振り向いた途端、目を見開いて驚いていた。唐突に、紀子が駆け出す。ふらふらと駆け寄った彼女は、その女性の名を呼び、飛びつく。

 

 

「冷花………っ、冷花!良かった、良かったぁ!生きてて、生きててくれてぇ!」

 

「………紀子、無事で良かった………私も、もう会えないかと、思って……………」

 

 

氷に見える雰囲気の少女、冷花も心の底から嬉しそうに紀子を抱き締める。奴隷という扱いを受け、恋人に先立たれた彼女は親友が無事であったことに、安心しきったのか抱擁しながらポロポロと大量の涙を零して、泣きじゃくっていた。

 

帝国に攫われていた二人の再会、それはきっと素晴らしいものであろう。だが、それを目にしたタスクは素直に喜べずにいた。最強のハンターは険しい表情を浮かべ、救出対象の女性を見据えていたのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

「────なんだよ、これ」

 

「………言ったろ?これが『工場』だ」

 

 

地下四階層、最下層へ向かう為に『工場』へと立ち入った伊丹達。その光景に絶句する伊丹とテュカに、ミラは淡々と吐き捨てる。

 

 

────その先にあったのは、巨大な装置に繋げられたナニカであった。数メートルの屈強な肉体、身体に埋め込まれた金属の数々。鎧を纏うように装甲に包まれたそのヒト型の頭部は、竜のソレ。拘束具の鎧に身を包まれたその存在が、『竜我兵』であることは間違いなかった。

 

────問題はその数。数百、数千、数万の『竜我兵』が佇んでいた。巨大な装置に繋げられたソレは生命活動を続けながらも、眠らされており、全ての個体が息をしている様子であった。

 

 

「アレが『竜我兵』、ハイルダインの奴等の戦力さ。悍ましいだろう?一ヶ月もあれば、あれだけの数を用意できるんだから…………おっ、見ろよ。面白いのが見られるぜ」

 

 

肩を竦めるミラが何かに気付き、物陰に隠れる。静かに覗き込んでみると、騎士団の兵士達が近くにあった未知の装置の前に歩いてきたのだ。────帝国の貴族らしい男を無理矢理引きずった上で。

 

 

「今日はこれで最後だったな、他はあと何人だっけ?」

 

「三人って話じゃなかったか?上も忙しいみたいだし、さっさと終わらせろうぜ」

 

「き、貴様ら!私を誰だと思っている!モルト皇帝に永らく仕えてきた、レゾン家の子爵であるのだぞ!?こんなことをしてどうなるか分かって────」

 

「うっせーぞ!ジジイ!ツベコベ言わずに黙って入りやがれ!」

 

 

装置の扉を開け、その中に押し込む兵士達。男が抵抗するよりも先に扉を閉め、装置の近くにある端末を操作し始める。次の瞬間、装置が大きな轟音を響かせて揺れ動き始めた。その様子に青褪めていたテュカが口元を押さえ、蹲る。

 

 

「なに、これ………っ、気持ち悪い………!」

 

「どうした!?テュカ!」

 

「何か、嫌なのが………流れてる………地下から、あの変なのに………っ!」

 

 

戸惑う伊丹を他所に、テュカは気付いていた。地下から引っ張られるように流れる不気味なエネルギーの存在を。それが装置に流し込まれ、中にいる命を無理矢理作り替えていることに。異世界の住人である彼女だからこそ、その変化に気づけたのだろう。

 

そんな彼等を他所に、装置が音を立てて開く。中から現れたのは、男ではなかった。そもそも、人ですらなくなっていた。

 

 

『────ッ』

 

 

人ではない、竜のようなナニカ。竜とも断言できないソレは、地面を這いずり、悶えている。人間と竜を織り交ぜたキメラのような生物の肉体が蠢く中、巨大な装置が無数の触手を伸ばしていく。

 

その存在の背中に触手を突き立て、意識を無理矢理落とす。そのまま引っ張り上げた存在を、別の場所へと移す。そこで、作業は行われていく。全身に金属の装甲を取り付け、完成した『竜我兵』は同じように装置に繋げられたまま吊るされる。

 

 

「ああやって、奴等は作ってるのさ。人間を素材にして、兵として作り替える。だからこそ帝国は奴等にとって必要なんだ。なんせ土地と、人を沢山用意できるんだから」

 

「………じゃあアレが、全部人間なの………?酷い………!」

 

「龍に勝つ為に、ハイルダインは手段を選んでられないんだろ。相手が相手だ。災厄に勝つには、それなりの非道を………ってな。ククク、正しい選択だ。奴等もそうしたからな」

 

「……………『奴等』?」

 

 

背を向けて、その場から離れるミラの言葉に、訝しむ伊丹。そんな彼の疑問にミラは見向きもせず「独り言だ」とだけ言って笑う。それでも尚、疑心が拭い切れぬ伊丹の様子を知ってか知らず、ミラは話題を変え始めた。

 

 

「それよりもだ。お前等の目的はなんだ?こんな場所に来るからには工場の破壊だけかと思ったが、それだけじゃなさそうだが」

 

「………民間人の救出に来ている。ここに居る、と言われていたからな」

 

「民間人、ねぇ…………どんな奴だ?俺はここに長くいるから、もしかしたら知ってるかもしれん。教えてやってもいいぞ?」

 

 

互いに顔を見合わせた伊丹とテュカ。

疑わしい部分はあるが、可能性にかけてみるのも悪くはないのかもしれない。そう判断した伊丹は姿を映した写真を取り出し、確認させることにした。

 

 

「この写真の女性を探している。緋室冷花という女性で、帝国に奴隷にされているんだ。見覚えがあるなら────」

 

「────おい、マジかよ」

 

 

写真を見つめたミラは、驚愕したように言葉を失っていた。その姿を知っているのか、食い入るように写真を睨むミラ。飄々とした軽薄な態度を取り戻したミラは深い溜息を吐き出し、ハッキリと断言した。

 

 

「この女を連れて帰るのが目的なら、諦めたほうがいい。無理だな、間違いなく」

 

「…………何でそう言い切れる?」

 

そんなミラの様子に、伊丹は険しい顔で睨み返す。淡々とした様子を崩さず、肩を竦めたミラから告げられた言葉は、信じられないものであった。

 

 

◇◆◇

 

 

(…………可笑しい。セレーティアは何処だ?)

 

 

再会を喜ぶ紀子を視界に入れながら、タスクは周囲を見渡す。この領域、玉座の主は何処にも見られない。セレーティアが待っている、と奴等は言っていたはずだ。その主が居ないのはどういうことか。

 

何より、目の前の状況への疑心の方が強かった。

 

 

(奴等は何故、俺達をここまで招き入れただけじゃなく、彼女まで引き渡した?俺達を呼び寄せる、人質に使えたはずだ。それもせず、何を目論んでいる?…………いや、まさか)

 

 

ふと、ある可能性が脳裏に過った。

ハイルダインに従う龍の力を宿す超人、『竜人(ドラグノート)』。かつて対峙した竜人のこと思い出したタスクは、彼等の本当の狙いに勘づいたのだ。

 

────それ故に、彼の動きは誰よりも早かった。

 

 

「…………紀子、離れるんだ」

 

「タスクさん………?何を、してるんですか?」

 

「離れろ!今すぐ!彼女も『竜人(ドラグノート)』だ!」

 

 

ヘビィボウガンを構えるタスクの怒声に、紀子は理解できないように立ち尽くす。舌打ちを噛み殺すタスク、これでは近くにいる彼女を巻き込みかねない。空いた片手で大剣を握るタスクに、お淑やかな様子の冷花が不思議そうに微笑む。

 

 

「………聡い人ですね。どうして分かったのですか?」

 

「────それだけの冷気を放つ人間が、いるはずがない。ましてや、こんな空間で白い息すら出ないことは………有り得ない」

 

「成程、流石は最強のハンター────ハイルダイン様が警戒されるのも頷けますわ」

 

 

次の瞬間、クスリと笑った冷花の全身から白い吹雪が吹き荒れる。クシャルダオラ以上の氷風に晒されたタスクが思わず腕で顔を覆う。渦巻く凍風の嵐から姿を見せたのは、銀白の長髪から龍の角を生やした竜人の姫君の姿であった。

 

 

「改めてまして、自己紹介を。

 

 

緋室冷花の名を改め、『絶界凍冰』のセレーティア。ハイルダイン様に尽くす、親衛隊の一人ですわ。何卒、お見知り置きを」

 

 

「────その冷花って女がこの監獄の主、セレーティア本人って話だ。理解できたか?」




ドラクル騎士団総動員、そしてセレーティア本人とのご対面です。竜我兵のとこからしても相当冒涜的な訳ですが、正直ワイルズの内容を進めた身としては複雑な身…………古代文明の奴等もホントにやってんな()
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