GATE 狩人 彼の地へと、 導かれし   作:虚無の魔術師

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イタリカに潜む策謀

「まさか、あの『銀の英雄』と一緒に行動するなんて思いもよりませんでした」

 

「そう言って貰えて何よりだ。………けど、タスクって呼んでくれないか?一緒に動くんなら、せめて名前の方が心地いい」

 

 

装甲車内部で、向き合った自衛官の男性にタスクはそうやって笑いかける。自衛隊と合流したタスクは彼等に保護され、対応の話をされた。

 

どうやら、彼等の国で一波乱起きているらしい。それも、自分が関係しているとのこと。そう言われた以上、タスクとしては無視も出来ない。

 

国会、とやらで話して欲しいとのことだが、すぐではないらしい。彼等も準備が必要なようで、その間待っていて欲しいとのことだ。だからこそ、出来る限り近くで同行して欲しい、と。

 

 

あの竜とギルドナイトを追う、という目的は忘れていない。別行動が許されたなら、奴等の所在も探らなければいけない。それまでは、彼等と行動を共にしよう。

 

 

「それで、伊丹。俺達は何処に向かっているんだ?」

 

「イタリカっとこだ。あそこでなら、回収した『炎龍の鱗』を売れるみたいだし」

 

 

タスクや自衛隊の努力の結果、吹き飛ばした炎龍の腕。そこから採取した素材は金貨として売ることが出来るとのことだった。後、近くで仕留めた飛龍の素材も。

 

当初、彼等は少しでも分けてくれないかと話し掛けてきたが、タスクも伊丹たちも全部渡すことにした。伊丹たちは必要価値がないと、タスクはモンスターの素材が沢山あるため、無理に求めるつもりはないのだ。

 

そうして、集まった鱗を売り、資金に変えようと避難者たちの力になる為、自衛隊もイタリカという町へと同行することにした。タスクも、伊丹と同行することに文句はなかった。

 

 

そうして道ある道を通っていると、何人かがあることに気付く。

 

 

「伊丹隊長!前方に煙!」

 

「やだなー、この道あそこに向かってない?どう思う?」

 

「───レレイ、逆だよ」

 

 

伊丹に言われ、双眼鏡で遠くを見ようとした少女 レレイは戸惑いを見せていた。何故かよく見えないことに怪訝そうな彼女に、タスクは向きが逆だと指摘する。

 

慌てて構え直したレレイが双眼鏡を覗くと、コクリと頷いて答える。

 

 

「うん、あれは煙」

 

「いや、分かってるんだけど…………理由は?」

 

「分からない、畑を焼く季節でもない。タスクは、何か分かる?」

 

「いや、見るよりも分かりやすい方法がある」

 

 

告げると、タスクは車体から身を乗り出す。装甲車の上に座り、タスクは周囲の風の流れを確かめる。幸い、此方に向かって吹いて来ている。

 

スー、と周囲の空気を吸う。風に乗せられた煙の臭いを感じ取ったタスクは僅かに沈黙し────即座に気を引き締める。最近、何度も感じるようになったものが向こうで起きている。

 

 

「────嫌な臭いだ。気を付けろよ、皆」

 

「タスク………? 何か分かったのか?」

 

「アレはただの煙だ。それに乗って、他の臭いも混じってる。あまりにも濃すぎる、これは─────」

 

 

真剣な表情のタスクから、ふと視線を離した伊丹。暗黒の神に仕える亜神と名乗った少女 ロゥリィは向こうを見据え、クスリと笑う。心から待ち望んでいるものがあるのだろうか。

 

タスクとロゥリィ、二人の超人は視線の先で起きていることを既に理解していた。それを証明するように、二人の言葉がほぼ同時に響く。

 

 

「─────血の臭い」

 

 

◇◆◇

 

 

イタリカのフォルマル伯爵領。そこは大規模と言えずとも、少なくない部隊の盗賊団の襲撃を受けていた。まだ幼い現当主と協力した皇女 ピニャは彼等の襲撃を退け、何とか一休みすることが出来た。

 

しかし、熟睡していたピニャは冷や水を浴びせられ叩き起こされる。起きないようなら水を掛けろと言っていた彼女は実践されるとは思わず混乱していたが、どうやら敵襲とは言えない様子だとすぐに気付いた。

 

 

砦から外を覗き込んだ彼女は、複数の鉄の塊────自衛隊の装甲車を目の当たりにする。敵かどうか図りかねている彼女の前で、突如装甲車から何人かが姿を現す。それがエルフと魔導士の少女だと知り、拍子抜けだと肩の力を緩める。敵ならば追い払おうと指示を掛けようとしたその時、真後ろから姿を見せた二人の姿に、ピニャの顔は蒼白に変わり果てる。

 

 

「あ、アレは────ロゥリィ・マーキュリー!?」

 

 

死と狂気と戦争を司る暗黒神 エムロイの使徒。人の身でありながら神の力を有した亜神と称される彼女は、この世界では『死神』と恐れられている。戦慄するピニャであったが、彼女が更に絶望したのはもう一人の男の存在にあった。

 

 

「銀色の鎧、まさか奴が─────タスク・アイアス!?」

 

「………? ご存知ですかな、姫様」

 

「ハイルダインが話した男だ。奴のいた世界では最強と呼ばれるハンター、らしい」

 

 

彼女の側近である男 グレイが………ほお、と感心する。彼の装備、身に付ける白銀の鎧に感動を覚えたらしい。少なくとも、ピニャも同じだ。あれだけの鎧は、帝国の技術力を以てしても数年は掛かるやもしれない。

 

 

「若いですな。しかし、あんな重装備ではマトモに動けますまい」

 

「………侮るなよ。報告が正しければ、奴は帝国の派遣した軍勢を退けた男だ。たった一人で、かつ無傷でな」

 

 

笑い飛ばそうとしたグレイを含む、周囲の兵士が立ち尽くす。ヒュッ と、空気が掠れるような声が、彼等に伝う恐怖を体現している。

 

最悪だ、とピニャは頭を抱える。何故、よりによってあの化物二人が一緒にいるのか? あの二人も盗賊団の一員か? いや、それなら正面から来るのは可笑しい─────

 

皇女であり、現当主の代わりにこの町を守護しているピニャは兎に角必死に頭を回す。考えに考え抜いた結果、彼女はよく分からない相手と対面することにした。

 

 

(悔しいが、今の妾たちでは盗賊にも勝てぬ。奴等が何の目的で来たかは知らぬが、こうなったら強引に仲間に引き入れるまで!)

 

「────よ、よく来てくれたっ!!」

 

 

バン!! と扉を開け放ったピニャは、扉の前まで来ていた四人の様子に気付く。彼等は目の前のピニャを見ることなく、彼女の足元近くを見てる。タスクに関しては「あらら」と嘆息しているくらいだ。

 

ギギギ、と視線を下げた先には─────扉の激突を受け、気絶した伊丹。軽い脳震盪を起こしたのか身動きもしない彼を見たピニャは唖然としながらも、目の前の四人に確認した。

 

「もしかして、妾が?」

 

 

お前以外誰がいる、と四人が無言で頷く。味方に引き入れようと考えたのも束の間、自分のやらかしを理解したピニャは真っ青に震え上がるのだった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

気を失った伊丹を介抱するタスクたち。直撃を受けた顔を冷水で冷やしているエルフの少女 ティカが、「あなたどういうつもり!? 扉の前に人がいるかもと思わないの!?ドワーフだってホビットだって気を付けるわ! なのにあんなことをしてっ、ゴブリン以下よ!」と激昂している。自分達を保護してくれた大恩ある伊丹に手を出されて感情的になっているのだ。

 

まぁまぁ、とタスクもティカを宥める。ピニャ本人はあまりの事態に混乱と戸惑いのあまり、激しい錯乱を見せている。気を失った伊丹の顔にクーラードリンクの瓶を押し当て、軽く冷やしておく。

 

目覚めた伊丹は特段気にしている様子はなく、話し合いを求めることにした。その際、分かりやすく現状の問題を聞くことができた。

 

 

────イタリカのフォルマル領では先代当主が早くして亡くなり、まだ幼い実子の末妹が跡を継ぐことになった。それ自体に大した問題はない。強いて言えば────他の家に嫁いだ長女と次女が、末妹の『後継者』を争い合っていた。

 

 

ここから問題だ。その二人が争っていたのもつい最近。混乱に満ちたフォルマル領に新たな脅威が現れる。謎の怪物が、町を破壊し尽くしたのだ。現当主は決まっていても、家の内情で争っていたフォルマル家には対応もできず、そそくさと逃げ出した長女も次女も─────恐らく、その怪物に巻き込まれて死んだと思われている。

 

その怪物が姿を消した今、町の住人が恐怖に怯えて逃げ出す者もいる中、盗賊団が此方を襲い始めたのだ。盗賊といえど、明らかに兵士で統率された野党の軍勢。

 

伊丹たちは知らぬことが、彼等はエルベ藩を含む諸外国の兵士たちだった。祖国を何か襲われ、絶望のままに逃げ出した彼等は、殺して奪うことでしか生きることが出来なかった。

 

故に彼等は野盗として、現状最も追い込まれたイタリカの地を略奪することにしたのだ。────イタリカを襲った怪物の存在がいない、という確証でもあるのか。

 

 

伊丹とタスクは参加した協議の結果、皇女ピニャと共に野盗の撃退、イタリカを護るために戦うことになった。最も、貿易都市であるイタリカを陥落させない為でもある。

 

 

問題は、その配置である。

 

 

「…………伊丹たちは南か。あれだけの数でいいのか?」

 

 

中央部、現場の指揮を行うピニャにタスクは疑問を投げ掛ける。イタリカには東西南北、四つの門が存在する。伊丹たちは南門を、少数で防衛するとのことだ。

 

因みに、タスクは中央に配置されている。切り札でもあり、いつでもどの門の防衛に向かえるようにと。

 

 

「うむ。問題はない。彼等も理解できているはずだ。重要なのは南門の奥であるとな」

 

「────そうか。伊丹たちは囮か」

 

 

悪い意味ではないと、タスクも理解している。恐らく敵が少数だと油断し攻め込み────門の後ろに配備された第二の防衛戦で殲滅する、という作戦なのだ。一度突破された南門だからこそ、敵も油断して戦力を投入するはず、と。

 

 

(…………そう簡単にいくか?)

 

 

そう思っていたタスクは考えを押し込み、一休みつく。もし姫様の作戦に敵が食いつけば、所詮はただの盗賊という話だ。もし、奴等が別の動きに出れば────ただの盗賊ではない何かが絡んでいると思える。

 

 

そして、真夜中の三時。彼は自分の考えが当たっていたことを、ピニャの叫び声と共に理解した。

 

 

「────東門だと!? 南門ではないのか!?」

 

 

◇◆◇

 

 

「一度突破された南門を即座に塞ぎ、少数の兵で立て直したように見せる。しかし数は少数、あまりにも脆い。恐らくは全戦力で突破してきた所を、包囲陣によって殲滅するつもりなのでしょう」

 

 

盗賊団の本陣。イタリカの地図の上で指をなぞらせる眼鏡の男 セルドラが思案する。斥候から得た情報も含めて、彼は南門が一番手薄だと理解していた。だからこそ、敢えて別の門を狙った。

 

 

「────見え透いた戦術ですね。中々優れた指揮の才能を有しているようだが、あらゆる叡智を持つ私には程遠い」

 

 

盗賊団を味方に引き入れたセルドラは、その指揮で彼等を動かしていた。最初は普通に攻め込ませ、手薄となった門を狙うように相手に考え込ませた後に、別門を襲う。

 

これだけで、相手の指揮は揺らぐことだろう。いつまで指揮が持つか、セルドラは今もあの砦で防衛をしている皇女の余裕を視野に入れる。

 

 

「へへ、流石はセルドラの旦那。連中、本当に油断してたぜぇ」

 

「…………何の用です。次の命令でも必要ですか?」

 

「なぁ、旦那。嘘じゃねぇんだよな? 帝国の姫様以外は好きにしていいって話は」

 

「────二言はない。それだけを聞きに来たのか? ならばさっさと奴等を攻め落としてこい。野蛮な猿が」

 

 

嫌悪と侮蔑を隠すことなく、罵倒を吐き捨てるセルドラに、野盗の男は「怖い怖い」と身震いして前線へと戻っていく。ふん、と鼻を鳴らしたセルドラは機嫌を悪くしたのか、近くにあった木製のコップを地面に叩きつける。

 

物に当たったことで、幾分か冷静になれた。怒りも冷め始めたセルドラは深呼吸をして、すぐ近くにある巨大な檻────それを何度も揺らし、唸り声を轟かせるものに肩を竦める。

 

 

(もし、例のハンターがいるなら『コイツ』を使う予定でしたが…………)

 

「無駄骨ですね。緑の軍団が動くよりも前に、本陣を潰してやりましょう」

 

 

セルドラたちは、斥候の存在から緑の軍団────自衛隊がいることを把握していた。彼等の戦力はよく理解している。あの『炎龍』に対抗した彼等の武器は、この野盗たちでは対応もできないだろう。

 

だが、セルドラも軍師のようなものだ。当然、手は打ってある。

 

 

「そちらは任せましたよ、ディーン」

 

 

◇◆◇

 

 

「なんでぇ────こっちに攻めて来るんじゃなかったのぉ!?」

 

 

来る戦いに高揚していたロゥリィは、自分達とは別の方が攻められてる事実に、そう叫ぶしかなかった。伊丹も彼女の様子に困りながら、可能性としてあった敵の動きに周囲に指示を送ろうとする。

 

東門も戦力はあるが、それでも気が緩んでいるはずだ。此方が攻めこまれることはないという油断は、士気に繋がる。今すぐにでも増援を送らなければ、そう考えていた直後。

 

 

「────そうか。お前たちも待ちわびていたか!残念だったな!」

 

 

真夜中の夜に、活発的な声が響き渡る。暗視ゴーグルで周囲を見渡すが、声の主は見えない。するとテュカが「上!」と伊丹たちに叫んだ。

 

彼等が上を見た瞬間、空中に浮かぶ男の姿が辛うじて見えた。しかし男の姿は─────周囲から降り注いだ光の雨によって覆い尽くされる。

 

ロゥリィに抱えられ、その場から離れることが出来た伊丹は、自分達のいた砦が光の雨によって削り飛ばされるのが見えた。無数の爆発が炸裂し、城塞が一気に崩壊していく。

 

 

他の兵士たちが駆け寄ってくる中、伊丹たち自衛隊は即座に臨戦体勢を整える。目の前に、黒い外套に身体を覆った男が降りてきたからだ。

 

 

「─────おおっ!全員生きてるとは!それは喜ばしいことだ!」

 

 

不意打ちを行った男は無傷の自衛隊の様子に、それはそれは嬉しそうだった。十人以上から銃口を向けられているにも関わらず、男は自信に満ちた様子を崩さない。

 

 

「今ので死んでしまっては歯応えがない! あの『炎龍』を相手に生き残ったのだ!少しはお手並みを拝見させて欲しかったからな!」

 

「────誰だ!貴様はッ!」

 

 

自衛隊の一人が、男の名を問い詰める。張り詰めた空気の中、男は満足そうに笑った後に、外套を振り払う。

 

 

「『親衛隊』が一人、ディーンだ!セルドラの作戦のため、お前達を足止めすることになった!」

 

「足止め、だって!?」

 

「そうだ!今セルドラが本陣を攻め落とそうとしている頃だ。不確定因子、だったか?お前たちに好き勝手されると困るのでな、邪魔させてもらうつもりだ」

 

 

ディーンが堂々と語った瞬間、ロゥリィはその場から飛び去っていく。凄まじい速度で東門へと向かう彼女を呼び止めるのは無駄だった。頭を抱えた伊丹は、近くにいた女性隊員に声をかける。

 

 

「栗林!ロゥリィを追え!彼女の援護を!」

 

「っ!分かりました!」

 

 

いつものような態度も鳴りを潜め、文句も言わずに走り出す栗林。彼女のことを呼び止めようとしたディーンだったが、すぐに諦めたらしい。彼は考え事をしながら、周囲にいる伊丹たちを指で数えていく。

 

 

「────んー…………一人、二人、三人、四人、五人。ざっと十人くらい。後は雑魚が数十か。まぁ悪くはない。二人逃してしまったが、後で追えば問題ないだろう」

 

 

ディーンには余裕しかない────嘗めるな、と怒鳴ろうとした隊員もいたが、出来なかった。目の前の男は普通ではない。明らかにあの『炎龍』に近しい強敵だ。

 

油断していれば、此方がやられる。そんな風な悪寒を感じ取った全員が気を引き締め、銃の引き金に掛けた指に力を入れる。

 

 

 

「さぁ────誰から俺を楽しませてくれる?」

 

 

両手から光の玉を浮かばせるディーン。チリチリと、張り詰めた空気の中で、男は笑うことを止めない。待ち望んでいた戦いに心を震わせているか。

 

直後、男は両手の光玉を破裂させ─────爆発を引き起こす。それを合図として、伊丹たちは一斉に銃を撃ち始める。

 

イタリカ防衛戦、その戦いが一気に苛烈なものへと化す。

 

 

 




オリジナルの敵キャラ ディーンとセルドラは一応モンハン要素のある敵です。次回くらいに、それが明かされると考えてます。
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