GATE 狩人 彼の地へと、 導かれし   作:虚無の魔術師

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※此方の作品はモンスターハンターとゲート自衛官の小説ですが、物語の舞台がゲート自衛官の世界であり、主人公がハンターなので、モンスターハンターの要素は現時点では極少と思われるかもしれません。


それでも構わないのでしたら、この小説の愛読をお願い致します。


イタリカ防衛戦(後編)

「─────ッ!!」

 

 

咆哮を放つ角竜 ディアブロスがタスクへと突撃を繰り返す。巨体から想像できない速さで押し潰そうと迫る。タスクは転がるように回避しながら、ディアブロスに生まれた隙を狙い、攻撃を続ける。

 

大剣の打撃、ヘビィボウガンの砲撃。執拗なハンターの反撃に、ディアブロスは即座に怒り状態と化す。同じように興奮しているといえど、その速度と動きの切り替えが凄まじく短縮されていく。

 

地中に潜り、不可視の地面からタスクを襲おうとするディアブロス。しかし、何度も苦戦させられた相手。タスクもその対処法は手早い。

 

 

「っ!」

 

 

周囲に高音を撒き散らす音爆弾を投げ、破裂させる。空中に炸裂した耳をつんざくような音によって、地上の音で敵を判別しようとしていたディアブロスは耐えかねて飛び出す。ディアブロスに追撃を行おうとして、彼は思わず目を剥いてしまう。

 

 

「な、なんだコイツ!?」

 

「ドラゴンか!?見たことないぞ……!」

 

 

近くにいた盗賊団が、ディアブロスへと意識を向ける。武器を構えながら、悶える角竜に近付こうとする彼等を目の当たりにしたタスクは、敵だと言うのも忘れて叫んだ。

 

 

「─────近付くな!!ソイツから離れろォ!!」

 

 

忠告も間に合わず、彼等がその言葉を聞いた直後、起き上がったディアブロスが彼等に向けて突進した。グシャ、と幾つもの人だったものが周囲に撒き散らされる。岩石すら容易く砕くディアブロスの突進を人間が受ければ、無傷では済まない。ハンターでもない者が受ければ、良くても瀕死、最悪跡形もなく潰れることになる。

 

 

「ヴィエ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ェェェェェッッ!!!」

 

 

最悪なことに、ディアブロスは盗賊団を敵と認識したらしい。大勢で群れる彼等を、角竜は己の巨体を以て叩き潰す。凶暴性だけで上位のトップクラスに匹敵する化け物だ。ヤツにとって、目の前にある動くものは全て、己の敵としか思えない。

 

縦横無尽に、人間を轢き飛ばしていく暴竜。壁や柵の上を駆け抜けながら、動きを止めようとするタスクの視線の先に、今も戦闘をしている自衛官の一人が見えた。

 

 

 

「─────クリバヤシ!!」

 

 

野盗の一人を銃剣で仕留めている小柄な女性自衛官。彼女は自分と周囲の盗賊団に狙いを定めたディアブロスの存在を視認すると、意識が硬直する。見たこともない敵に、思考の反応が遅れてしまう。

 

逃げ切れない。そう判断したタスクは全力で走り抜けていく。呼吸すら忘れ、一時的にディアブロスを追い抜く速度で前に出たタスクは硬直した栗林を抱き抱え、一緒にその場から離れる。

 

 

ディアブロスはその場から逃げようとした野盗をグシャグシャに爆散させながら、近くの建物へと激突する。耐えきれず破壊された建物の残骸を尻目に、タスクは自分が抱き抱えた栗林に声をかける。

 

 

「大丈夫か、クリバヤシ」

 

「え、あ?………だ、大丈夫」

 

「そうか、なら良かった」

 

 

ホッ、と安心するタスク。自衛官として鍛えられた栗林だとしても、ディアブロスの突進を受ければ致命傷は免れなかっただろう。かすっただけでも骨折の可能性もあった以上、無傷であったことに心から安堵した。

 

心配されたことと、男に抱き抱えられてることに栗林は素直に戸惑うしかなかった。端正と呼ぶべきか、俗に言う美形なタスクの顔を近くで見た彼女は思わず顔を赤らめる。

 

それがただ恥ずかしいだけだと自分に言い聞かせていた彼女は、とにかく自分の顔を見られないように反らすことしか出来ない。

 

 

「あ、あの…………そろそろ離して欲しいんですけど」

 

「────ごめん、それは無理だ」

 

 

え? と唖然とする彼女を抱き抱えたタスクの視線の先で、ディアブロスが此方をロックオンしていた。他の盗賊も慌てて離れたらしく、角竜はタスクだけしか見ておらず、今度こそ全身を深く落として、突進の構えを取る。

 

 

「─────少し走る。舌を噛まないようにしてくれ」

 

 

それだけ言い、タスクは勢いよく走り出した。ディアブロスは怒り状態に身を任せ、全力の突進を繰り出していく。タスクは直進せず、横に飛んだり、障害物の影に隠れたりして、ディアブロスの突進を悉く回避する。

 

そうやって避けていくタスクは、ふと周りにいる盗賊団に目掛けて叫ぶ。

 

 

「ここから離れろ!投降さえすれば、これ以上危害は加えない!」

 

 

盗賊達も最初は従うつもりはなかったらしいが、彼を追いかけて来たディアブロスの存在に気付き、慌てて城塞の奥に逃げていく。あれで投降するなら、それで構わない。これ以上、イタリカの人々に危害を加えるなら、その時はその時だ。

 

栗林を連れ、タスクはディアブロスから逃げながら周りの人を敵味方問わず避難させる。途中に出会ったセイレーンの女性も、同じように投降を促して退かせた。

 

 

「…………よし、ここならいいか」

 

 

そうやって逃避行を繰り返した先、一際広い大広場へと辿り着く。周囲の建物も強固なものばかりで、タスクとしてはやりやすい。何より、ディアブロスももう限界だろう。

 

 

「────失礼した、クリバヤシ。後は俺に任せて、皆と合流してくれ」

 

「…………いえ、こっちこそ。助けてくれてありがとうございます」

 

 

顔も向けず、そっぽを向いたように走り去っていく栗林。なんか嫌われるようなことしたかなぁ、とタスクは首を傾げる。まぁ後で謝ればいいな、と考えた彼は目の前に歩いていたディアブロスを見据えた。

 

 

疲弊しきった様子の角竜。無理もない。一心不乱に暴れまわり、食事も出来ていないのだ。疲れたりもするはずだ。今すぐにでも休みたいだろうが、城塞都市に入る以上、ディアブロスは何処に逃げるかも分かってはいない。

 

 

奴等に連れてこられただけのモンスター。というのは理解しているが、タスクもハンターだ。自分の世界のモンスターを、他の世界に放置しておくわけにはいかない。何人も人を襲った以上、他の人間も襲う可能性すら有り得る。狂暴すぎるディアブロスを狩猟する以外の選択肢は、彼にはなかった。

 

 

「─────悪いな」

 

謝罪を口にし、弱りきったディアブロスと一戦を交える。G級ほどの強さを持たぬ角竜は数回の攻撃を受け、あっさりとその命を散らした。息絶えた角竜に軽く一礼をしたタスクは、次の戦場へと向かっていく。

 

 

 

◇◆◇

 

 

「………アイツ、姿が変わった」

 

 

伊丹は信じられないものを見るような目で、翼と尾を生やしたディーンを見つめる。その変化は、まるで伊丹がよく読み漁る漫画やアニメに出てくる『変身』のようなのものだった。

 

それと同時に、もう一つの事実を理解する。

あのバイザー、明らかにこの世界の技術では作れないものだ。金属にコーティングされたバイザーのデザインや見た目からしても、間違いなく技術としては─────伊丹たちの世界の技術と同一だ。

 

 

(まさか、俺達以外にもこの世界に干渉してる国がいるのか?)

 

その可能性が、伊丹の脳裏に浮かぶ。当然だ。なんせあんなものが、この世界の代物だと思えない。それならば、帝国がそれを独占していない道理がない。銀座を襲った時の軍勢に見られなかったのが、その証拠だ。

 

つまり、『門』を管理している自分達以外に、異世界に技術提供している奴等がいるのだ。何らかの方法で、自分達とは違う『門』を使って。

 

 

「─────ふむ、早速俺も反撃に出るとしよう」

 

 

ふと、ディーンが動いた。翼を大きく振るうと、周囲に何かを撒き散らした。それが鱗だと気付いた自衛隊含める兵士達も、全員が物陰に隠れて回避する。

 

 

「全員無事か!?」

 

「は、はい、何とか………しかし鱗を飛ばすだけなんて、原始的な攻撃ですね」

 

 

違う、と伊丹は直感的に感じた。空から此方を見上げるディーンの笑みが、それを物語っている。何か企んでいるのか、と思っているとテュカが伊丹に何かを伝えようとしていた。

 

 

「?どうしたん─────」

 

 

彼女の指差すものを見た伊丹は、それにようやく気付いた。ディーンが撒き散らした鱗。地面に刺さったそれは、少しずつ熱を帯びたようにオレンジ色に染まり始めていた。

 

 

「ッ!総員避けろ!爆発するぞ─────!」

 

 

伊丹の叫びに全員が理解を覚えた瞬間、鱗が一斉に爆裂する。誘爆を引き起こした鱗の起爆に、周囲が火に染まっていく。

 

 

「あ、あの鱗!爆発するのか!?」

 

「ということは────鱗に衝撃を与えるな!爆発されたら、無事じゃすまないぞ!」

 

「────対応も早い!やはり只者ではないな!」

 

 

満足そうに笑い、ディーンは再び鱗を飛ばし続ける。ボバババババ!!! と落下した鱗が誘爆を繰り返し、周囲が火花と爆炎によって包み込まれていく。

 

慌てて逃げ出す伊丹達。アレでは建物に隠れても意味はない。壁や障害物を吹き飛ばすような敵を相手にするとしたら、逃げるしかないだろう。

 

 

「ヘリは下げろ!ヤツの鱗を受けたら一撃で墜落するぞ!」

 

「ですが!ヘリの援護もなければヤツに傷を与えられませんよ!?」

 

「戦力を失うよりかは遥かにマシだろ!」

 

 

あの鱗の爆発をヘリが受けたら、間違いなく簡単に破壊されてしまう。そう判断した伊丹の指示は正しかっただろう。もしヘリがディーンを攻撃し、彼の意識を引いてしまえば、即座に狙われて落とされていたはずだ。

 

 

「逃げるのを追うばかりではつまらんな────よし、少し攻め方を変えようか!」

 

 

翼を広げ、伊丹達を追い越そうとするディーン。彼等の逃げ場を塞ぎ、無理矢理戦わせようと画策してのことだろう。鱗を飛ばそうとしたディーンだったが、彼が爆発を起こそうとすした瞬間──────

 

 

 

────跳躍してきたロゥリィが、ディーンの背後からハルバードを振り上げていた。咄嗟に気付いたディーンは翼を払い、ロゥリィに鱗を何個も飛ばしていく。

 

彼女はそれを防ぐこともせず、爆発を直に受ける。身体を抉られながらも彼女は顔を歪めることすらしない。傷口を一瞬で塞いだ彼女は、ハルバードの一閃でディーンの片腕を切り落とした。

 

 

「─────ッ!!?」

 

 

初めて、ディーンの顔が歪む。痛みを感じて傷口を押さえるディーンに、ロゥリィは追撃を行おうとして────気付く。

 

 

切断した彼の腕は宙を舞い─────突如、鱗が無数に生え始める。ボボボボボ!! と、鱗に包まれた彼の腕は一気に赤熱し、ロゥリィを至近距離で吹き飛ばした。

 

 

ドチャッ! と、ロゥリィが地面に落下する。爆煙に包まれた彼女は全身を爆発で引き裂かれ、焼き焦がされていた。その光景に顔をしかめる伊丹が駆け寄った時には、全身の傷を再生させたであろうロゥリィが立っていた。

 

 

「………見覚えのある姿ねぇ。知り合いを思い出すわぁ」

 

「────嬉しい限りだな、死神 ロゥリィ・マーキュリー。お前のような亜神と戦えたのだ。片腕で済んだのは幸運と言うべきか!」

 

 

ディーンも、ロゥリィの恐ろしさを理解しているらしい。この世界の住人と思われる彼からすれば、亜神の恐ろしさを知らぬはずがないのだろう。しかし、その笑みからして、心にあるのは恐怖だけでは無さそうだ。

 

 

「怖いなら逃げてもいいのよぉ?逃げれるなら、だけどぉ」

 

「─────逃げる?このような戦いから?それは無理な話だ!亜神との戦いなぞ滅多に出来ないものだ!それから逃げることなど有り得ないだろう!!」

 

 

翼を広げ、切り落とされた腕から手を離したディーンは笑う。快活過ぎる性格を上回るほどの戦闘狂気質。不利と理解しても尚、ディーンはロゥリィや自衛隊を含めた全員を相手取るつもりでいるらしい。

 

 

「──────俺を忘れては困るな」

 

 

ズンッ!! と、勢いよく跳躍してきたタスクが、臨戦態勢の空気に割り込む。大剣とヘビィボウガンを構えた彼は、ディーンを次の敵へと今でも斬りかかれるように警戒をしていた。

 

しかし、ディーンの身体を覆う布が外れる。ロゥリィによって切り裂かれた布の一枚が剥がれたことで、彼の胸部が露呈し─────そこにあるものを見たタスクを含めた全員が驚愕するしかなかった。

 

 

「な、なんだあれ……」

 

「珠…………何かの力が込められてる?」

 

「胸に、埋め込まれている───!?」

 

 

ディーンの胸には、外部に露出した白と赤の二色を有した宝玉があった。無理矢理埋め込んだかのようなその形相に、何人かがあまりの不気味さに狼狽えた。

 

ただ一人、タスクだけは信じられないと言わんばかり絶句していた。それが何なのか、彼はよく理解していた。

 

 

「モンスターの宝玉────なんで、それを」

 

 

モンスターの体内から生成されるという不思議な宝玉。特殊なレア素材とされているそれは、モンスターの持つ力の源ではないかと言われていた。それと同一のものを肉体に埋め込んだ男────竜のように変化したその姿に、タスクは嫌な予感を脳裏に思い浮かべる。

 

 

「モンスターの素材を対内に埋め込んで、その力を得たのか!?」

 

「────正ッ解!まぁ、俺はよく知らんが、そういうことだろうな!」

 

 

それは、タスクの世界でも禁忌とされている技術だ。竜の力を有した兵士の研究。竜の臓器や角などの素材で、人間にもその力が使えるようにするという、とある国の計画。

 

竜大戦以前に栄えていた王国の計画は、既に潰えたはずのものだ。ギルドもその研究データを闇の中に葬り、誰も再現できないと────彼は大長老によって聞かされたことを思い出した。

 

それを、その技術を何故彼が有しているのか。

 

 

「───答えろ!お前達はその技術を何処で手に入れた!その力を使い、お前達を何を企んでいる!?」

 

「……………答える必要はありませんね」

 

 

ディーンの言葉を遮り、緑色の飛竜『リオレイア』に乗ったセルドラが告げる。突如現れた彼の存在に気付いたディーンが快活の声で呼び掛ける。

 

 

「セルドラぁ!作戦はどうしたんだぁ?」

 

「…………失敗です。盗賊団はほぼ壊滅。虎の子の切り札もあのハンターに狩られてしまいました。これでは作戦を果たせませんね」

 

「─────ああ、そうだった。俺達の目的は姫様の暗殺だったな!忘れていたぞ!」

 

 

その事を聞いた皆が驚いている中、セルドラは青筋を立てて苛立っている。「余計なことを言わないでください」と震えた声で呟く彼に謝罪したディーンはまた話し始める。

 

 

「そういうわけだ!俺達は大人しく撤退する!悪いが、今回はこれまでだ!」

 

「待て!話は終わってない!何を企んでいると聞いているんだ!」

 

「強いて言えば偉大な計画だ!龍の力を再現し、我等は究極の兵器を作るためのな!」

 

 

感情的に叫ぶタスクに、ディーンが笑い飛ばしながら答える。「また余計なことを………!!」と怒りに震えるセルドラ。これ以上怒られるのは困る、と肩を竦めたディーンは指を鳴らす。

 

 

すると、赤い飛竜が夜空から飛び出してきた。リオレイアとほぼそっくりの飛竜、『火竜』リオレウスの背に乗り、ディーンが飛び乗った。

 

 

「ではな!ジエイタイ!ロゥリィ・マーキュリー!タスク・アイアス!次こそは、戦いを楽しもうか!」

 

「────いいえ、次こそが貴方達の最後です。次合間見えた時は、貴方達全員仕留めます。この私の知力で」

 

 

二体の火竜に乗った二人はそれだけ言い残すと、夜空の向こうへと飛び去っていく。跡を追おうとヘリを操る自衛官を呼び止めた伊丹。

 

 

こうして、イタリカで起きた争乱は一段落した。ようやく落ち着けると思った彼等だが、新たな混乱が近付いていることは知る由もなかった。

 

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