GATE 狩人 彼の地へと、 導かれし   作:虚無の魔術師

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やりたいように

イタリカでの波乱を終えた後、合流した自衛隊とピニャの話し合いはあっさりと終わり、協定を結ぶことに成功した。回収した鱗を売り捌いた後に、伊丹たちは拠点のあるアルヌスへと帰還すべく装甲車で走っていた。

 

────後方のトラックに、角竜ディアブロスの死骸を輸送させながら。

 

 

「─────アレは、ディアブロス。呼び名は角竜。草食でサボテンとかを食っているが、性格は狂暴そのもの。自身が縄張りと定めた区域にいるものを敵と判別して襲いかかる。危険度は上位でもトップクラスのモンスターだ」

 

「草食で狂暴って………そんなにか?」

 

(つがい)ですら排除する程だ。場合によっては死ぬまで荒れ狂う個体もいたりもする」

 

「───それでよく絶滅しない」

 

無表情ながら、呆れたように呟くレレイに多くの面々も同感だ。草食でも強い動物はいると聞くが、タスクの世界のモンスターはどれもこれも苛烈なのが多い。よく人類が生き残れるな、と感心する者も多かった。

 

 

そうやって道先を歩いていると、向こう側から大人数の一団が見えた。双眼鏡で望んでいた隊員の一人が「金髪!縦髪ロールッ!」とはしゃいでいたので、タスクも何事かと顔を出す。

 

 

騎士鎧に身を包んだ騎馬隊の姿が騎士団のようだと、タスクは遠からず感じていた。そう言えば、ピニャ皇女が自分の騎士団が援軍に来ていると言っていたのを思い出す。まぁ、時間が掛かるのは分かっていたが、彼女たちもイタリカでのことが終わっているとは思うまい。

 

 

「────総員警戒!」

 

「待ったおやっさん!全員敵対行動と取られる行動は控えろ、協定違反になるぞ。特に栗林(クリ)!」

 

 

釘を刺された小柄な女性隊員は何を! と息巻いていたが、他の隊員に宥められていた。しかし、タスクは静かに警戒体勢に入る。彼女たちの雰囲気は鋭く、ピリピリとしている。

 

彼女たちが話の通じる相手ならばまだしも、下手したら此方を敵と認識する可能性すらある。そうなったら、彼女たちは自分達の敵と成り得るだろう。

 

 

「────貴様達、何処から来た」

 

「………我々はイタリカから帰る所だ」

 

「何処に?」

 

「アルヌスに────」

 

 

その瞬間、『アルヌス』と聞いた騎士団が一気に殺気走る。

 

 

「アルヌスだと!?」

 

「貴様ら、異世界の敵か!!」

 

(────クソ!やはりか!)

 

 

あからさまに戦闘態勢に入った彼女たちに、タスクも武器を構えようとする。ここまで近付かれては、自衛隊の戦力があっても無事ではすまない。何より、皇女の配下に手を出せば、協定が無意味と化してしまう。

 

既に敵と認識しているのか、隊員に掴みかかる金髪縦髪ロールの女騎士たちに、慌てて説得するように車から降りる伊丹。直後、もう一人の女騎士が伊丹の首に剣を添える。

 

 

「─────降伏なさい」

 

「あー………落ち着いて、此方の話を聞いてくれます?」

 

「聞く耳持たぬ!」

 

「話せば分かってもらえますから!俺達は敵じゃあ───」

 

「ええい!黙りなさい!!」

 

 

説得を試みようとする伊丹に、女騎士の一人が平手打ちをかます。その瞬間、全員が臨戦態勢を取る。

 

 

「お前らッ!!」

 

「───っ!」

 

 

怒りながら武器を構え、飛び出そうとするタスク。即座に一斉に銃を向ける自衛隊一同だったが、伊丹と同行していた健軍一等陸佐の制止によって踏みとどまる。その瞬間、伊丹は全員に向けて叫んだ。

 

 

「逃げろ!今は逃げろ!行け!」

 

「伊丹!?何を─────」

 

 

戸惑ったタスクとは裏腹に、自衛隊は即座に動く。装甲車全てが彼の指示に従うように、その場から離脱していく。咄嗟のことに対応が遅れた女騎士の集団、『薔薇騎士団』は険しい顔つきで、伊丹を取り囲むのだった。

 

 

◇◆◇

 

 

「────何をしてるんですか!?戻ってください!伊丹が!」

 

「そうはいかん!彼本人の命令だ!それに、彼女たちと争えば、折角の協定も台無しになってしまう!」

 

 

必死に呼び掛けるタスクだが、健軍一佐は揺るがなかった。クソ! と壁を殴り付けるタスクは他の隊員たちにも宥められる。健軍一佐も、感情に揺らぐタスクを諭すように言った。

 

 

「…………引き留めてすまない。だが、耐えてくれ。我々が自分の意思で講和を台無しにすることは出来ないのだ。部外者である君に押し付けるのは申し訳無いと思うが、理解してくれ」

 

「………………っ」

 

 

彼等の事情は理解している。勝手に動けば、国に迷惑をかけてしまう。他の自衛隊の仲間も、迷惑を被ってしまう。耐えるしかないのか、と噛み締めていたタスクは─────ふと、ある記憶を思い浮かべていた。

 

 

 

それはまだまだタスクがルーキーハンターであり、とある一団のハンターとして活動していた頃。

 

 

『……………』

 

『ん?タスクか、依頼書を読んでどうかしたのか?』

 

 

思い詰めた様子で、依頼書を読んでいたタスクの元に現れたのは団長。彼が所属する組織『我らの団』を率いるトップであり、タスクを『我らの団』に誘ってくれた人。

 

慌てて依頼書を隠そうとするタスクだったが、団長は気にするなと笑いながら依頼書を覗き込む。

 

 

『ほぉ、バサルモスの狩猟か!手強い敵だが、お前さんならやれるだろう!』

 

『………いや、受けるつもりはないです』

 

『?さっきから見ていたじゃないか。お前さんなら行ける難易度だ。慎重にならなくてもいいはずだぞ?』

 

最初は口ごもっていたタスクだったが、静かに語り出した。

 

 

『でも、これは受ける必要のないクエストです。やらなくても、他の難易度のクエストを受ければいい。ただ、少し素材が欲しいだけなんです』

 

『…………』

 

『寄り道なんて、時間をかけるだけですし………団長の旅の邪魔をするわけにもいかない。それに、ここから移動しなきなゃいけないから、皆の迷惑にもなるはずです』

 

 

誰かが被害を受けてるわけでもなく、ただバサルモスの素材が必要という依頼。誰かが困っているわけでもなく、依頼主も無理なら諦めると言っている。それだけのクエストの為に、わざわざ時間を労してもいいのか。まだ新人だった彼はそんな風な不安を覚えていた。

 

団長の目指す旅に力を貸すと明言したのだから、団長の足を引っ張る訳にもいかない。徐々にハンターとして戦い続けた彼は、多くの重圧を受けて責任感も理解していた。

 

最近、ハンターとしての責任の有無を問われた。彼等を守るのが君の役目だと、厳しく言われたことで、自分の立場というものを再確認した。自分の我が儘で、皆に迷惑をかける訳にはいかない。

 

 

そう考えていたタスクだったが、突如背中を張り倒された。景気付けに一発、団長に軽く叩かれたタスクは突然のことに思わず過剰に反応してしまう。

 

 

『痛ッ!?』

 

『本当に真面目だな、タスク。そう気張らずともいいさ!お前さんのやりたいことだ、誰も文句は言わんさ!』

 

『け、けど………』

 

『心配するな!自分のやりたいことを好きにやればいい!俺だってあのアイテムが何なのか知りたいから、俺は仲間を求めたからな!

 

 

 

お前さんは俺の夢に力を貸してくれたんだ!無理はするな!やりたいことをやってくれ!後悔さえしなければ、お前さんの選択に間違いはないさ!』

 

 

「…………そうだった、忘れそうになった」

 

 

記憶から抜け出し、今に立ち直ったタスクは団長からかけられた言葉を思い出し、覚悟を決めた。

 

 

「ありがとう、団長。お陰で迷いが晴れた」

 

 

それだけ呟くと、彼は装甲車から身を乗り出す。驚き隠せずにいる皆を見据え、健軍一佐へと彼は頭を下げた。

 

 

「………ごめんなさい、ケングンさん。俺、助けに行ってきます」

 

「タスク殿────いえ、貴方はあくまでも協力者。我々の立場で物を言うのが失礼でしたな」

 

 

健軍一佐は意外に簡単に頷いた。タスクだけが助けに行くのが最善だと、彼は理解していたのだろう。先の言葉を聞いた上で助けに行くと宣言したタスクの意思を読み取り、これ以上止めることは出来ないと理解したらしい。

 

或いは、彼以外に伊丹を助け出せる者はいない。彼は唯一、上の命令などに縛られない存在だからこそ。問題なく動くことが出来る。

 

 

「────伊丹二尉を任せます、タスク殿」

 

「はい、必ず助けてきます」

 

 

移動中の装甲車から飛び下りたタスクは、着地した瞬間、すさまじい速度で走り出していく。それを見届けた何人かの自衛官が「運転中の車から飛び下りた………」と唖然としているのを、彼の凄さを何度も見てきた一同はだろうなと納得していた。

 

通ってきた道を駆け抜けていくタスク。車でも数分は掛かる道を数秒で走っていく彼は、先程から離れた場所で『薔薇騎士団』と彼女等に痛めつけられたであろう重傷の伊丹を目にした。

 

 

「…………っ、ボーゼス。誰か来ました」

 

「奴等の仲間でしょうか。単独で助けに来る度胸には感心しますが───────」

 

 

呼び止めようとした二人の女騎士だが、タスクの姿は忽然と消え去っていた。慌てた彼女たちは側にいたはずの伊丹が消えていることに気付く。

 

 

「タスク………っ!?何で、戻ってきたんだよ………!」

 

「文句は後で聞くから………少し飲んで、休んでてくれ」

 

 

痛めつけられた伊丹を抱えたタスクはその場から少し離れた場所に、伊丹を下ろす。回復薬を数滴飲ませたタスクは、「さて」とゆっくりと立ち上がる。

 

彼の背後にはボーゼスと呼ばれる女騎士ともう一人が近付いていた。

 

 

「────貴様!勝手な真似を!」

 

 

剣を此方へと突き立てようとする二人に、タスクは即座に動いた。大剣とヘビィボウガンを持ち出し、二つの武器を彼女たちの顔へと向ける。

 

 

────大剣をボーゼスへ、ヘビィボウガンをもう一人の女騎士へと向けたタスク。周囲の女騎士が槍を構える中、タスクは冷徹な顔で二人を狙っていた。彼が攻撃を直前で止めたのは、自分の足を掴んだ伊丹の制止があったからだ。

 

 

「止めろ………ッ!協定違反になる………っ!」

 

「────先に手を出したのは奴等の方だ。こんな風に暴行を加えて、殺されても文句は言えないはずだ」

 

「それでもだ………耐えてくれ────頼むっ!!」

 

伊丹の真剣な頼みを受けて、タスクは大人しく従った。本気で殺そうと思っていたが、痛めつけられた本人が報復を望んでいないのなら仕方ない。彼の望む通り、安全に対応しようと、タスクは女騎士たちに言葉を投げ掛けた。

 

 

「────自分達が何をしているのか、理解しているのか」

 

「貴様こそ、自分が何をしているか分かっているのか!我等が何者か、理解しての蛮行か!」

 

「薔薇騎士団、ピニャ皇女直属の騎士団だろ」

 

「っ!貴様、何故それを────!」

 

 

明らかな動揺を示すボーゼス。彼女の驚きが、他の騎士たちにも伝播したらしい。その戸惑いの隙を、タスクは突いた。

 

 

「イタリカを防衛するピニャ皇女を援助した。つい先程、彼女と協定を結び、帰還していた最中だ」

 

「姫様が!?…………いや、嘘をつくな!貴様のような男の言葉なぞ、誰が信じるものか!」

 

「────なら今すぐイタリカに行って、ピニャ皇女に聞いてみろ。俺達を生きたまま連れていくか、俺達を殺してから聞くか。どちらが最善か、理解できるはずだ」

 

 

感情的に反応する二人を余所に、他の女騎士がヒソヒソと呼び掛ける。どうやら彼女たちも半ば不安になっているようだ。仲間達から諭されたことで、二人も思うところがあったらしい。タスクが武器を下ろすと同時に、彼女たちも剣を下ろした。

 

 

「先の話が嘘だと分かればどうなるか、分かっているな?」

 

「────そちらこそ。お前達の姫様への言い訳を考えておくんだな」

 

 

◇◆◇

 

 

薔薇騎士団に連れられた伊丹とタスク。案の定、事態を理解した皇女 ピニャは憤激した。

 

 

「────なんてことをしてくれたのだッ!!」

 

 

額にグラスを投げつけられたボーゼスは唖然としていたが、タスクの言葉が真実だと理解したらしく、もう一人と共に硬直するしかなかった。怒りに震える自らの主の叱責に、彼女たちは返す言葉もなかった。

 

 

「……………」

 

 

タスクはそれを哀れんではいたが、一瞬で無かったことにした。自業自得だ。後先考えずに手を出すからこうなるのだ。敵だと思う相手だとしても、大勢で痛めつけるような奴等だ。常識は違うとはいえ、タスクは助け船を出す気など微塵もなかった。

 

 

「た、タスク殿…………」

 

「────謝罪は伊丹にお願いします。俺は彼女たちを本気で殺そうとしましたけど、伊丹は協定のためと言って抵抗もしませんでした。それどころか、俺を止めたんです」

 

「……………っ」

 

「それを理解した上で、対応を間違えないでください。俺としてはそれだけで十分なので」

 

 

淡白に、暗に下手な真似をするなと釘を刺し、タスクはそれだけ告げて立ち去った。間違いない、怒っている。態度からも分かる彼の雰囲気を読み取ったピニャは蒼白となった顔のまま、頭を抱える。

 

よりによって、最悪なことになってしまった。彼女が恐れる存在を激怒させるという、部下の失態と言っても弁明は出来ない。

 

彼女が信用する側近二人に諭されるまでなく、ピニャの脳裏には一つの結論しかなかった。

 

 

「…………誠心誠意、謝罪するしかない」

 

 

それが帝国の為だと、誰よりも理解していた。あのハンターと自衛隊を敵に回すという選択肢は、彼女の中には存在していなかったのだ。

 

 

◇◆◇

 

 

「すみません、伊丹はどちらに居ますか?」

 

「タスク様ですね。イタミ様なら此方の部屋になります」

 

 

フォルマル伯爵の屋敷内にて。

伊丹を安静な場所で休ませてもらっていたタスクは、その屋敷のメイド長と思われる妙齢の女性の案内を受ける。

 

彼女や屋敷のメイド達から最大級の敬意を向けられるタスク。どうやらイタリカと現当主を守るために戦ってくれたタスクたちへの多大な恩があるとのこと。

 

特に気にしていないタスクだったが、無下にするわけにもいかず、大人しく好意を受けることにした。案内された先でタスクは他のメイドたちに世話されていた伊丹を見やる。

 

 

「伊丹、大丈夫か?」

 

「ああ、何とか………もう傷が治ってるんだけど、マジでどゆこと?」

 

「────タスク様から貰い受けた薬の効果です。あそこまで酷かった傷が完治しているとは」

 

 

自分達ハンターの重傷すら治せる回復薬グレートだから、当然と言えば当然だろう。兎に角、傷が治って良かった、とタスクは安堵からか一息ついた。

 

メイドの許可を取り、近くのお菓子を頬張るタスクに、伊丹は気になっていたであろうことを問いかけた。

 

 

「なぁ、タスク………何で俺を助けに来たんだ?」

 

「─────戦友を助けるのに理由はいらないさ」

 

「戦友って、一度や二度一緒に戦っただけだぞ?」

 

 

たったそれだけのために、一人で助けに来ることもないだろう。そう言わんとした伊丹に、タスクは何を言っているんだと呆れながら答えた。

 

 

「知らないのか?俺達ハンターの大半は、義理や情を大事にする。俺達にとって、一度でも背中を預けた相手は戦友なんだ。……………何より、俺は情に動くタイプだからな。伊丹みたいな奴は嫌いじゃないし、見殺しにしたくもないんだ」

 

「─────スゴいな、ハンターってのは」

 

「人間の数が少ないからさ。いがみあうことはあっても、争うことはそんなに無いよ。人類が手を取り合わないと生きていけないわけだし」

 

 

そんな話を伊丹は羨ましいと思った。自分達の世界では、そんな風に人が手を取り合うことなど出来ない。同じ国の人間ですら対立し合い、足を引っ張り合うのだ。国内でもそうなのだから、世界規模でも同じである。

 

 

もし、タスクの世界のように────人類の脅威でもあれば、人類は互いに手を取り合えるだろうか。伊丹は静かに、そんな疑問を心の中で呟いた。

 

 

 

 




この小説では、モンハンの世界で戦争が起きない理由は人類が手を取り合わないと生存できないからという理由になりました。実際ハンターの大半はいい人ばかりだから、争うという考えなんてなさそう。

じゃあ人を殺さないかって言われたら多分殺せる。タスクさんだって思考はハンターのそれだし、極力殺したりはしないし、敵でも助けたりはするけど、まぁ殺す時は躊躇わない。


分かりやすい話、マイルドな二瓶鉄造みたいな感じ。民間人を積極的に殺したりしないけど、殺人に忌避はないタイプ。
敵でも助けたりはするけど、戦えない人を襲うような奴を殺すことに迷いを持たないみたいな感じです。
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