ではどうぞ!
あれから一ヶ月が経過しようとしていた。
俺とスズキはいつものようにフィールドのモンスターを狩っている。
「“インフェルノ・フレア”」
「ホワァォァァァァァァァ!?」
パリリリリリリリィン
相変わらず強過ぎるススギのソードスキルは大量のモンスターを蹂躙し続ける。
「助けて下さりありがとうございます!」
「いいっていいって♪お互い助け合ってなんぼのもんだ!」
そしていつものように右も左も知らないビギナープレイヤーをモンスターから助ける。
「そんな・・・何かお礼でも…」
「礼ならそこの黒髪に言っとけ。アンタを見つけたのはアイツだからよッ♪」
「ええっ!?俺!?」
そしていつものように俺に振り回す。
毎回疲れるよ・・・
「サンキューキリト♪お前の索敵スキルのお陰で上手く見つけられたぜ♪」
「別に・・・俺は何もしてないさ」
「ったく···これだから謙虚なイケメンってのは····」
(そうか?俺が言うのもなんだがスズキの顔はかなり整っている方だと思うんだが・・・)
なんて口にするとまた色々言われるのも面倒くさいし黙っておこう。
「さっきの人から聞いたんだが、今日は第一層の攻略会議があるそうだ」
「随分長引いちまったな・・・もうそろそろ一月経つし・・・うっし!俺達も行くとすっか!」
俺たちは訳あってこれまで攻略に手を加えなかった。
それはさっきのようなビギナープレイヤーを助けるため。
同時に見返りとして情報を得るためでもあった。
まぁ情報共有は毎回俺の仕事なんだが・・・
幸いいまだ第一層ボスの攻略は進んで行われていない。
「いつもありがとよ!キリト」
お陰で約2000人まで上り詰めると思われた死者数も
しかしそれでも400名と言う尊い命が散っていったんだ・・・俺たち2人だけじゃすべてを助けるのは不可能に近い。
俺たちが今こうしている間にもこのデスゲームの恐怖に怯える人達だっている。
そこでスズキと俺は第一層攻略会議に参加しつつ、同じくビギナープレイヤー達の救出するための人員確保を少しでも進めるためのコミュニティを作り上げるべく第一層へと向かった。
「フム・・・想像以上にプレイヤー達は慎重に動いているようだ・・・いくらβテスター達が情報を共有しているとは言えここまで抑えられるものなのか・・・実に面白い」
男茅場晶彦は想定外の事態にも関わらず微笑んでいた。
「どれ。私もそろそろ一人のプレイヤーとして動くとしよう。この一ヶ月ずっとデータ管理で退屈していたからな。アバター名は・・・私の名前から組み取ってヒースクリフってのはどうだろうか?」ドヤァ
と緊急事態が今まさに起きているにも関わらず、自身のアバターを創り上げるべく茅場は余裕の笑みと共に部屋を出ていくのであった。
【第一層:トールバーナ】
「ここが・・・」
「あぁ。やはり攻略会議なだけあって人も多いな」
ここトールバーナの周辺には多くのプレイヤー達が集まっていた。
全員攻略会議参加する奴らだろう。
「お!なんや!そこにおるのはスズキはんやないか?」
特徴的な髪形の男性に俺達は大きな声で呼ばれる。
「キバオウのおっさんか!久しぶりだなッ!」
「生きとったんか!まぁアンタらの実力やったら余裕やろうなッ!ガハハハ!」
このキバオウさんって人は数実前のクエストで世話になった仲だ。
最初は俺達が元βテスターだからといってあまり良い印象を与えなかったが・・・
「キリ坊も一緒やったんか!お互い頑張ろうやッ!」
「はい。今回もよろしくお願いします。キバオウさん」
クエスト攻略を期にこうして仲良くしてもらってる。
「またよろしくな!キバオウのおっさん!」
ワシの名前はキバオウ。
このクソみたいなデスゲームに巻き込まれたナニワのおっさんや。
ワシはあのGMが去ったあとすぐに仲間たちと合流して先陣切ったろうと思った。
せやけど···
「グワァァァァァ!」
「!待っとけ!いま助け」
「ぐっ・・・キバオウさん!ワイのことはいいんで早く逃げて下さい!」
「アホが!何をぬかしとんねん!こんな奴らワシが一気に···」
『グオオオオオオオオオオオ』
せやけどあの時ワシには何にもできんかった。
いくらゲームやと言ってHPが0になったらホンマに死んでしまうかもしれん。
せやからあの時仲間が大量のモンスターに囲まれた時ワシは動けんかった・・・
「キバオウさん!もうアカン!早く逃げましょう!」
「クソっ!クソクソッ!」
ワシらはパーティーメンバーを・・・リアルでもダチやった仲間を一人見殺しにしてしもうた・・
そこでワシは一つ考えた。
(βテスターや・・・)
アイツらがあの広場で事前に情報をくれとったら···
そこからワシの中でβテスターに対する恨みが生まれた。
βテスター達に対する憎しみの想いでいっぱいになってもうて、ベータテスターたちに対する嫌悪感が日に日に膨れ上がるだけやった。
「あんたらが今回ワシらのクエストに協力してくれよるってヤツか?」
あの人と出会うまでは・・・
「おう!俺はスズキ!よろしくな!オッサン!」
なんやこのアホそうなガキは···?
ワシ年上やで?せめて敬語くらい付けーや!
「キリトです・・・よ・・・よろしくお願いします」
それに隣の若い兄ちゃんも頼りなさ過ぎる···
ホンマにこの二人と組んで良かったんか?
そんな不安を抱えながらも俺達は目的のクエストへ向かう。
『ブモォォォォォォッ』
『モォォォォォォ』
前には20体くらいのモンスターそしてその奥に親玉らしきデッカイボスがおる。
今回のクエストはこの迷宮区のドロップアイテムとEXPの獲得が目的やった。
誰よりもいち早く強くなる一審でワシは突っ走る。
「ワシらはあの奥のデカいやつをぶっ叩く!お前さんたちは周りの雑魚を頼むわ!」
「!?む・・無茶だ!一人で突っ込んだら···」
「ワシの言う通りにせんかボケェ!」
「!キバオウさん待て!」
黒髪の坊主の警告を無視して、ワシは奥のデカいモンスターへ向かった。
ここまでどれだけ鍛えてきたか自分も十分に理解していた。
せやけど···
『ブモォォドォォォッ!』
「どわぁぉぁぁぁ!」
それはただの過信やった···
そりゃそうや。実際こんなデカい奴となんか現実世界で戦った事ないんやから···
『ブモォォドォォォッ!』
「キバオウさぁぁぉぁぁん!」
ワシの目の前までデカいのが突っ込んでくる・・・巨体からタックル・・・喰らえば即死
突進する姿を見てすぐにワシは悟った。
(アカン···もう無理や····)
死を覚悟した・・・
「"バーニング・クロス!"」
『ブォァァァァァァァァ!!?』
ワシの目の前に一人の男が立ってた。
訳の分からん二本の剣を持ったそいつは目の前のデカブツの突進をソードスキル?で防ぎ、一撃で倒しおった。
「あ・・・アンタは・・・」
「大丈夫っすか?キバオウのおっさん」
ワシはその時初めてススギはんに助けられたんや。
「凄いでキバオウさん!この二人周りの雑魚を一瞬で倒しよった!」
は?はじめは何の冗談やかと思って辺りを見渡したらそれまでおった大量のモンスターはもうおらんかった。
クエストは無事クリアでき、犠牲も出ず今回の依頼はこなせられた。
そこで素直に礼を言っとけばいいものの
「あんたら・・・何が目的や!」
「え?キバオウ・・・さん?」
「あんな強いモンスターを一撃で倒せるってことはあんたら・・・さては元βテスターやろ!」
せやけどあの時のワシはアホやった。
「はい・・・俺達は元ベータテスターです」
「なっ!?か··隠す気もないってことか!?」
何食わぬ顔でスズキはんは返す。
そりゃそうやベータテスターは何も悪ない。心のどこかでそれに気づいていたものの、ワシは冷静ではなかった。
「あんたらの・・・あんたらのせいでワシは大事な仲間をなくしたんやぞ!?」
「!」
「!」
怒りのままにワシは本心を二人にぶつける。
「キ・・・キバオウさん・・・せやけどこの人たち俺たち助けてくれて・・」
「なんでやッ!?元はと言えばコイツらがあの演説の後に広場の連中達に情報提供しとったらアイツは死なんかったんやぞ!?」
ワシやって気づいとったんや・・・
悪いのはコイツらやない。あの時ワシが勝手に突っ走ったから・・・
せやけど認めたくなかったんや・・・
自分のせいでアイツが死んだって事を・・・
やってしもうた・・・一気に感情を爆発させたせいか頭がちょっと冷静になって取り返しのつかんことに気づく。
わしは焦りすぐ謝ろうとした・・・せやのに
「悪かった・・・その・・・俺たちのせいでアンタの大事な仲間を救えなかったことに」
「!?」
「!スズキ!何を!?」
スズキはんはなんとワシに頭を下げおった。
「確かにアンタの言う通りだキバオウのおっさん。俺達は元βテスターにも関わらずあの日平場をすぐに立ち去った。本当ならあの時事前に攻略情報を与えれたはずたったのに・・・」
「・・・・」
その場しのぎで言うたんちゃうかった・・・スズキはんはホンマに申し訳なさそうな目でワシらに頭を下げる。
(違う・・・ワシはこんな・・・)
「だから・・・俺達はこれまで救えなかった分の奴らを助けたい。その気持ちは元βテスターであろうと同じなんだ!信じてくれ」
その時の言葉、そしてスズキはんの揺るぎない目と信念を見てワシは初めて気づいた。
この人は・・・ホンマにワシらを助けようとしただけやって。
「・・・ちょっと気持ちの整理がつくまで放っといてくれんか?」
「・・・わかりました。スズキ。行こう」
「・・・あぁ。」
そこでひとまずワシらとスズキはん達と別れる。
「キバオウさん・・・」
「ワシは何をやっとんや・・・こんなことしても何も意味ない・・・こんなんでアイツが報われはずないっちゅうのに・・・」
「・・・」
「なぁ・・・ワシはこれからどうすればいいんや?」
「・・・とりあえず謝りましょう。あの二人に」
「・・・せやな。行こうか」
次の日ワシは謝りに行った。
ベータテスター達に対する差別的考えと命の恩人に対する無礼極まりない発言。
「ホンマにすまんかった・・・勝手に怒鳴ったり勝手なことを言って・・・」
正直ワシは責めらえると思ってた。
「いや。アンタの言ってたことは間違ってない。俺達本来やるべきことを怠った」
「俺も色々すみませんでした。元ベータテスターだったにも関わらず・・」
「ちょ・・・ちょっと待ってや・・!二人はホンマに悪ないっちゅうね!悪いのはワシ一人だけやって・・!」
自分よりも明らかに年下にそこまで謝れるのが耐えられんかった。
「二人は間違ってない。酒場の店主から聞いたで。アンタらなんやろ?ここ最近のビギナープレイヤーを助けよる連中ってのは」
どうやらこの二人は元ベータテスターであって、攻略にあまり参加せずワシらのようなビギナープレイヤーを援助しておったんや。
ホンマワシはこの二人になんちゅうことを言ってしもうたんや。
きっとこの二人がおらんかったら今頃もっと死者も出とったろうに・・・もう一生この二人には頭上がらんやろうな・・・
「とにかくクエストで誰も死ななかったのは良かったです。これからはお互い頼り合いましょう」
「そうだな。ってなわけでこれからもよろしくな!キバオウのおっさん!」
「あんたら・・・ワシを許してくれるんか?あんなこと散々言ってしもうたのに」
「・・・失ってしまった奴らはもう戻ってこない・・・だったらここでメソメソしているより前に進んだほうが良い・・少なくとも俺はそう思います!」
スズキはんのその言葉で行き場を失ったワシの決意がようやく固まった。
「ホンマにおおきにや。改めてキバオウや!よろしくなスズキはん!キリ坊!」
「おう!頑張ろうぜ!キバオウのおっさん!」
「誰がおっさんやッ!」
(キ・・・キリ坊・・・?)
その後ワシらはいくつかスズキはんとキリ坊から情報を貰って効率よくレベリングしたりして結構強くなった。
いつかスズキはんに恩返さなあかんな・・・けどあの人はメッチャ強い。
いやだってフレンド登録したときにレベルとか見たんやけどメッチャ強かったで!?チータやチータ!!
「ハハッ・・・・」
「?どうしたんや?キバオウさん?」
「いや、なんもない・・・ワシらもそろそろ会議場に行こか!」
けどワシは前に進むって決めたんや。
いつかあの人が窮地に陥った時に助けられるようワシは今よりもっと強うなる!
決意を抱きながらワシらは広場へと向かう。
今回はほぼキバオウ回です。
関西弁って結構難しいですね・・・・(違和感ないかな・・・・)
ではまた次回お会いしましょう!