いつも感想と高評価ありがとうございます。
今回とある人物のオリジナルアセンが出ます。オリジナル要素と解釈違いに注意です。
それではどうぞ
ウォッチポイント・アルファで起きた謎の襲撃事件。
これによりV.Ⅲペイターを始めとした多くの犠牲が生まれた。この事実だけでもアーキバスにとっては大損失であるが更なる被害が相次いだ。所属不明の勢力の襲撃に続くように、アーキバスにとある一味が襲撃、更なる被害を齎した。
アーキバスの生き残りが撤退するウォッチポイント・アルファを眼下に見据えるように空を飛ぶとあるACがあった。
『ウォルター! アーキバスが鹵獲してたブツは手に入れられたかい?』
「……あぁ」
アーキバスを襲撃したのはルビコンで活動するならず者集団“ドーザー”の一つ――RaDだ。
今回の襲撃を行った張本人こそRaDの頭目である“灰被り”シンダー・カーラ。そしてカーラが通信を行っている人物こそ彼女の協力者であるハンドラー・ウォルターだ。
621が失踪したことを皮切りにウォルターは増殖を続けるコーラルを焼き尽くすという本来の目的を果たすべく行動に移した。そして彼の協力者にしてコーラルを監視する秘密結社“オーバーシアー”の一員たるカーラと協力し、アーキバスが鹵獲していたアイビスシリーズ唯一の有人型AC“IB-C03:HAL826”を奪取する作戦を実行していたのだった。
結果としてその作戦は無事成功した。疲弊していたアーキバスにとっては寝耳に水の出来事であり、まさかルビコンのならず者集団がアーキバスに奇襲を仕掛けてくることも、そして本命は鹵獲していたアイビスシリーズであるとは予想だにしていない出来事だったのだろう。カーラの情報操作によってヴェスパーを始めとした勢力の多くがまんまと別の座標に誘導されてしまったことで、ウォルターはもぬけの殻と化した拠点の中にまんまと侵入、そして今に至る。
そんなウォルターだが、カーラの問いかけに対して目的を達成したのにも関わらずどこか沈んだような様子を見せていた。そしてその理由を知っているカーラは再びウォルターに話しかける。
『……ビジターのことを気にしているのかい?』
「……否定はしない。だが、どうも腑に落ちない所がある」
『何がだい?』
「アーキバスがウォッチポイントで襲われたという無人機、道中転がっていた連中の残骸を見ていたが……あれは紛れもなく技研の技術が使われていた」
ウォルターがアーキバスからあるモノ――を奪取した帰路で目撃したアーキバスの兵器の残骸に混じった無人機の数々。その中でもウォルターの目を引いたのは無人機に使われていた技術の中に技研の技術が組み込まれていたことだ。
これまでも技研の技術が組み込まれていた無人機とは621を通して遭遇したことのあるウォルターであるが、彼が一番目を付けた点は、技研の技術が組み込まれた無人機を量産できるだけの存在が陰に潜んでいるという事実だ。
技研の遺産の代表例として挙げられるのは、アーキバスが相手にしていた無数の無人機が手にしていた武装の数々だ。
IA-C01W1:NEBULAを始めとしたプラズマライフルや、IA-CO1W2:MOONLIGHTのような光波を飛ばすライトウェーブブレード。それらの廉価版とはいえ、似たような性能を持つ武装を一介の無人機が装備しているというのは余りにも不自然極まりなかった。
「封鎖機構の技術を取り入れたアーキバスと遜色ない技術力、そして装備の性能を充分な程に引き出すAIの精度」
『……どうもきな臭いね。ともあれ、先ずはこちらの仕事を進めようじゃないかウォルター』
アーキバスの追撃を振り切ったウォルターは、洋上都市ザイレムへと向かっているカーラと合流した。カーラはザイレムの隠された機能を解放するために、RaDの技術者と彼女を補佐する提案型のAIであるチャティ・スティックにザイレムのコントロールを奪取しようとしていた。
しかしアーキバスはウォルター達の動向を注視しており、その目論見を知るとアーキバスはたちまちザイレムへと進行開始。その護衛としてHAL826に乗ったウォルターが出撃した。
『ウォルター! 状況は!?』
「持ちこたえているが……手が足りない。あと何分で完了できる」
『あと2分はかかる』
『チャティ、ザイレムの防衛設備を起動させな! 数で押し切られるよ!』
『了解だボス』
コントロール奪取開始から既に3分が経過。アーキバスの勢力は数を増し、ウォルターだけでは処理が追いつきそうにない状況だ。カーラがチャティに命じて防衛設備を起動したが、それでもやはりギリギリといった所だろう。
強力なコーラル兵器を携えるHAL826であるが、いかんせんその数が多すぎることと元々の弾数が長期戦には向いていない為、ウォルターも厳しい状況を強いられていた。しかしザイレムの防衛設備が起動し、手数が足りて来るとたちまち処理のスピードが速くなり、徐々にアーキバスの軍勢は数を減らしつつあった。
「これで最後……」
ウォルターが最後の一体を撃破し、更にアーキバスが撤退したタイミングでザイレムの制御を奪うことに成功したことで漸くザイレムは機能を解放し、ゆっくりと浮上し始めた。カーラ指導のもと、軌道をバスキュラープラントに定め、コーラルを焼却するべく本格的に動き始める――その時だった。
『……待ちな、遠くから機体反応。増援か?』
センサーが地平線の彼方から飛来する機影を捉えた。ウォルターもその方向に視線を向ける。
「あれは……ACか」
ザイレムを微かに覆う霧の向こうから飛来したのは一体のACだった。
「――オーバーシアー……ルビコンを焼かせはしない」
V.Ⅳ……否、ヴェスパーの番号を捨てたラスティだった。
これまで乗っていたスティールヘイズではなく、ファーロン・ダイナミクスの技術提供を受けて開発した新型の機体“スティールヘイズ・オルトゥス”に乗ってウォルター達の前に立ちふさがった。
「……成程。あのログに載っていた内容はこのことを示唆していたのか」
思い出したのは621が壁越えの後で回収したログに記されていた内容。機体残骸に残されたログにはラスティと解放戦線が何らかの協力関係にあることが示唆されていた。ウォルターは合点のいった様子で思わず呟いた。
「アーキバスのスパイはお前のことだったか」
「ハンドラー・ウォルター。その前に聞かせてもらおう――戦友はどうした?」
「……621は来ない。あいつは自分で選択した、それだけだ」
621は生きている、そう確信しているウォルターの言葉にラスティはコックピット内で僅かに笑みをこぼす。
「奇遇だな。私も戦友が死んでいるとは到底思えなくてね」
「いずれにせよ、621は自分で選択して、敵に回ろうとしている。そして――話は終わりだ」
「このラスティには……為すべきことがある!」
□■□■□■□■
技研都市の秘匿工房にて。
「オールマインド。今の状況は」
『強化人間C4-621レイヴンをスリープ状態に。幾らかの消耗はしましたがゴーストも必要な数は残されています。フィム、そちらの状況は』
「こちらも上々だ。計画には間に合わせられる」
フィムの目の前には忙しなく動く機械の数々と、完成しつつある真紅の機体が鎮座していた。
『フィム。貴方のお蔭でコーラルリリースは容易に達成させられることでしょう。これまでありがとうございました』
「まだ計画は終盤に差し掛かった頃だ。油断するな。確か今はオーバーシアーがザイレムを起動させようとしているが、その対応は?」
『そちらにつきましてはオールマインドからの匿名リーク情報により、ザイレムにラスティを誘導させることに成功。そして今頃独立傭兵ケイト・マークソンも合流し、これにより確実に計画を遂行することが……』
「……どうした」
突然沈黙しだしたオールマインドに疑問を投げかけるフィム。数秒間の沈黙を貫いたかと思うと、漸くオールマインドが話を切り出した。
『フィム残念なお知らせですが……独立傭兵ケイト・マークソン及びラスティが――敗れました』
ある意味予定調和を言うべきか、ケイト・マークソンも、そしてラスティもウォルターに敗れたという情報はフィムにそう思わせるようなものだった。
「……ザイレムは」
『ザイレムはバスキュラープラントに衝突する軌道に乗り、あと数十分もしない内に衝突するかと』
「……ゴーストはどうした?」
『只今ゴーストを向かわせています。これでザイレムのコントロールを正常化し、ザイレムとバスキュラープラントとの衝突を回避させ――フィム』
「……」
『ゴーストが、カーラに乗っ取られました』
「……………………ほう?」
――分かってはいたが、コイツマジか。
フィムの心情はその言葉で一杯だった。やや威圧感を込めた低い声でフィムはオールマインドに疑問を投げかけた。
これの質が悪いのは、本来よりも強化されたゴーストが残らず乗っ取られたことで、本来よりも数段ザイレムの防御が更に強固になってしまったことだ。これが意味することとは――現状オールマインドの抱える戦力の内、フィム以外のヴェスパー部隊のデッドコピーでは手も足も出ないということだ。
「もう時間が無い。レイヴンを覚醒させるしかない。こっちもまだ時間がかかる……!」
『了解しました』
フィムの言う通り、まだNEXT計画の要である機体は完成しておらず、本来であればオールマインドが足止めの時間を稼ぐ筈であった。しかしウォルター達の行動の速さと何よりゴーストが早々に乗っ取られたことで計画はかなり前倒しになっていた。そしてフィムはオーバーシアーがザイレムに到着する前に計画の邪魔となる解放戦線の残存勢力の排除を行いながら、アーキバスに残されたスウィンバーンを始めとした面々に偽装メールを送っていた。
ルビコンからの速やかな撤退を勧めると共に、自分はコーラルと黒幕を打ち倒す為にルビコンに残る、という内容のメール。フィムは最後の障害となりうるアーキバスの介入を妨げるべく行動に移していたのだ。結果としてアーキバスの職員は一部を除いて既にルビコンから退去しており、バスキュラープラントも目的を達成するために必要な人員のみを残している状況だ。
この先起こることを含めて言ってしまえば、無駄な行為でしかない。しかしフィムもフィムでアーキバス及びヴェスパーには愛着が湧いていた。せめて最後まで彼らの心中にある“ヴェスパーが誇る最強”というイメージを崩したくなかった。これはフィムの我儘に過ぎない。
こうした打算と結果ありきの行動ではあるが、これにより少なくとも計画の障害となりうる存在を排除することに成功していた。運が良ければ……生き残るかもしれないと。
「ナインデッドのコピーを全機投入しろ。今更正体がバレた所で何とも……」
残った障害を621とナインデッドのコピーで取り除くべく指示を出すフィム。しかし予想だにしない返答がオールマインドから返ってきた。
『フィム。それについてなのですが……ナインデッドのコピーが残らず――V.Iフロイトに撃破されました』
「なぜフロイトがそこに!?」
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「――無人AC。そういう動きだ」
ザイレムの中枢付近にて最後のナインデッド・コピーが鉄屑となり果てていた。
スタッガー状態に陥り、胴体をなます切りにされたナインデッド・コピーはバラバラとなった。ブレードの冷却を済ませたフロイトは周りに転がる残骸のナインデッド・コピーに目を向けてため息交じりに呟いた。
「どこから仕入れたのかは知らないが……やはりアセンブルを同じにしたとて、中身が違うなら動きも劣る」
「確かにフィムのアセンブルをパクったのはいい考えだが……新しく組み直したロックスミスと、俺の前には無理な話だったな」
度重なるフィムとの戦闘で蓄積していたデータを参考に、フロイトは自らのACのアセンブルを組み直していた。スネイルが居ない今、なるべくアーキバス社製のパーツにしろという言葉をかける者も、フロイトのアセンブルを咎める者も誰一人いない。フロイトは自分の全力を出せるアセンブルへと組み直し、そしてフロイトはルビコンに残った一部の存在、彼はアーキバスの命によりザイレムを落とそうとしていた。
「フィムを必死で演じようとする動きは感じられた。だが、それだけだ」
九体で襲い掛かったナインデッド・コピーを相手にした時はさすがのフロイトも背筋が凍る思いをしたのだが、いざ戦ってみるとフロイトの言う“AI制御の動き”という動きしかしなかったことと、フロイト自身の操縦技術の成長も相まって、容易くナインデッド・コピーを撃破するに至った。
落胆した様子のフロイトが大型ショットガン――SG-027 ZIMMERMANの残弾数を確認しているとふと背後に気配を感じ、振り向いた。
「さて……おっと。次はお前か独立傭兵レイヴン」
後ろを振り返ったフロイトの前にいたのは621。オールマインドからの指令で覚醒し、ザイレムのコントロール権限を奪うべくパラサイトモジュールの排除及び乗っ取られたゴーストの駆除に当たっていた所だ。
『レイヴン! 相手はV.Ⅰフロイトです!』
「丁度いい、アーキバスからもお前の排除命令が下っている。ここで……始末するとしよう」
ナインデッド・コピーとの激戦の影響でフロイトのいる区画だけ綺麗に繰り抜かれたかのように整えられたフィールドが形成されており、双方にとって非常に戦いやすい空間に仕上がっていた。フロイトはブースターを吹かして、621に迫る。
「フィムと並び立つと言われるその実力、見せてもらおうか」
『――全システムチェック終了』
※この世界線でのフロイトのアセンブルは割とガチ。そしてそのフロイトを早く倒さなければいけないという地獄。
右手:ZIMMERMAN
左肩:BML-G1/P32DUO-03
腕:FIRMEZA
ブースター:ALULA/21E
ジェネレーター:VP-20C
あくまで元のフロイトのコンセプトと思われる“スタッガーさせて近接やらで止めを刺す”を参考に、組んでみました。
それ以外は特に変えていません。元あった武器と同じです。
流石にスネイルもいなくなったし、フィムの影響があってアセンブルを変えていないのも不自然だなと思った結果が今話です。許してください。