V.Ⅸになったのでナインボールを目指す   作:gnovel

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いつも感想と高評価ありがとうございます。

それではどうぞ

追記
パルスアーマーをプライマルアーマーと間違えていたので訂正しました。


ザイレム破壊依頼

「いいぞ……まだいけるな」

 

 フロイトは笑みを浮かべつつも額に汗を滲ませていた。アセンブルの制限が消えたフロイトの強さは格段に上昇しており、フィムに並び立つ強さを手に入れた621と互角に渡り合っていた。とはいえ621が繰り出す一切の隙を見せない攻撃の連続に徐々にではあるが押され始めていた。

 

 一方で621も表情こそ変化はないものの、迫り来るタイムリミットに対して焦りを感じていた。既に戦闘開始から二分が経過しているため、ザイレムの中枢をハッキングしなければコーラルリリースが失敗に終わるという危機的状況に追い込まれていた。

 

 タイムリミットは残り二分、いや一分で片付けなければならないだろう。

 

 621は今まで以上に攻撃の密度を上げ、フロイトに反撃の一つを含めて何もさせない戦術と呼べるか怪しい戦術を取ることを決めた。有無を言わさず、一息つく間すら与えない攻撃の連続だ。

 

「おっと、これまで以上に積極的だな……!」

 

 距離を詰めてきたところでフロイトがショットガンを放つ。近距離でのショットガンの強烈な一撃は当然ながらスタッガー状態を容易く引き起こす。フロイトのアセンブルはそれこそが狙いだ。

 

 無論621はアサルトブーストを吹かしながら機体を傾け避ける。しかしただ避けるのではなく、避けた先でチャージされたリニアライフルの射撃を的確に行う。フィムと戦って以来、成長したのはフロイトだけではない。621も同様にそれまで以上にアリーナや任務に打ち込むようになり、目覚ましい成長を遂げているのだ。

 

 フロイトが十分に接近してきた621目掛けて繰り出そうとした拡散バズーカは、拡散弾が出る寸前で621の繰り出したブレードの刺突攻撃によって妨害された。

 

「なんだと!? くっ……パージする!」

 

 煙を上げた刹那の間にフロイトは拡散バズーカをパージ、その数秒後には煙を上げて拡散バズーカは破壊された。流石のフロイトも武装の破壊までは想定していたが、よもやブレードの刺突による破壊を、ましてや放つ瞬間を狙って繰り出してくるとは思いもしなかった。

 

 動揺するフロイトの一瞬の隙を突いて621は蹴りを無防備な胴体に叩き込んで、ロックスミスを押し込んだ。空中にいるロックスミスが衝撃のあまり地面に叩きつけられそうになるが、咄嗟にフロイトがブーストを吹かすことで衝突することは無かったものの、結果的に大きな隙を晒すことになった。そんなロックスミス目掛けて621のスタンニードルランチャーが発射される。

 

「まだだ……まだ終わりじゃない……!」

 

 瞬間、パルスアーマーが展開される。

 

 まだ闘争を終わらせまいとするフロイトを表すように展開されたパルスアーマーは、スタンニードルランチャーの一撃を防いだ。機体の制御を取り戻したフロイトはすかさずアサルトブーストで接近してブレードで前方を切り払う。

 

 それに対して機体のブースターで咄嗟に地上へ向けることで回避する621は、回避ついでにミサイルとリニアライフルによる射撃を敢行する。フロイトは迫りくるミサイルに自分のミサイルをぶつけて対処、リニアライフルに対してはショットガンの散弾をぶつけることでリニアライフルの攻撃を防ぐと共に621にもダメージを与えた。

 

 互いに人間離れした挙動を見せるが、一方は旧世代型の強化人間であるのに対して、片やもう一方は普通の人間である。

 この事実を何も知らない人間が知ったとしても、彼らの闘争は夢物語の類ではないかと疑うだろう。そう思わせるほどに高度な戦闘が繰り広げられているのだ。

 

 そして互いの緊張と集中力がピークに達した時のことだ。遂にフロイトのパルスアーマーが限界を迎え霧散して消滅した。

 

「しまった……!」

『レイヴン! 好機です!』

 

 パルスアーマーが消えた直後を狙って、621から放たれたリニアライフルの攻撃を受けてロックスミスはスタッガー状態に陥った。背筋が凍り付く感覚を覚えたフロイトは、その予感が正しかったことを悟る。目の前でスタンニードルランチャーが発射されようとしていたからだ。

 

「直撃か!? 回避を……グアッ!?」

 

 間一髪胴体の直撃は免れたものの、結果的にロックスミスの頭部の半分が削り取られたかのように消し飛んだ。

 

「カメラが……! だが、場所は分かる!」

 

 コックピット内の視界が極端なまでに狭まるもフロイトはまるで外が見えているかのように、621目掛けてブーストを吹かしながらミサイルのロックを済ませ、ショットガンを放つ。加速が加わったことで威力と速度が増加、既の所でリニアライフルを盾代わりにして621が防ごうとするもリニアライフルはスクラップと化した。

 

 使い物にならなくなったリニアライフルの銃口を握りしめ、そのままアサルトブーストで迫るフロイト目掛けて投擲する621。錐揉み回転を起こしながら迫りくる残骸を僅かに見えたカメラの視界から情報を取得したフロイトは加速の最中で回避。

 

 ミサイルの雨を降らす621のダメ押しを半円にブレードを展開することで切り払う。たちまち爆炎が発生し、両者の視界が塞がれる。

 

「ッ!」

 

 爆炎の中から現れるだろうと予測していた621を裏切るように、爆炎を切り裂いて621の前に躍り出たのは先程破壊されたロックスミスの拡散バズーカの破片だった。すぐにそれがフェイントであると察知した621は自らの背後目掛けて勢いよくブレードを切り払う。

 同時に繰り出されたブレードが衝突を起こし、スパークを生じながら鍔迫り合いとなった。ブレードから生じる火花が両者に降りかかる中、フロイトは空いた手でショットガンの引き金を621の機体の胴体目掛けて放とうとする。

 

 それを察知した621は空手となった右手でショットガンの側面を勢いよく殴りつける。弾丸は機体の脇を僅かに掠め、殴りつけられた衝撃でショットガンがロックスミスの手から離れてしまう。

 それに冷や汗を流すフロイト。そのままの勢いでロックスミスの頭部目掛けて放たれる拳を防ぐ術はなかった。

 

「カメラが完全に……! 機体の制御が……!?」

 

 頭部から僅かに露出していたケーブルを引きちぎり、カメラの機能を完全に停止させる。頭部を失った影響で機体の制御が前よりもおぼつかなくなったのを見た621は、更に追い打ちとばかりに蹴りを放ち怯ませる。そしてジェネレーターを執拗に殴りつけながらロックスミスを地面に激突させた。

 

「いいや、機体の制御がおぼつかないのなら……俺が手動で!」

『レイヴン! 止めを!』

 

 手動操作に切り替えて立ち上がるロックスミスはブレードの出力を最大に高め、周囲諸共621を薙ぎ払おうとした。

 数秒にも満たないチャージを済ませ、放たれる横薙ぎ一閃。広範囲を二度に渡って巻き込む最大出力のブレードの斬撃を放ったフロイトはある感覚を感じ取っていた。

 

「手ごたえがない……! まさか上に……!?」

 

 反射的に上を見上げるフロイトはロックスミスの装甲のひび割れから見えていた。621が今にもブレードを叩きこまんとする瞬間を。

 

 急降下しつつ621は自身のブレードを展開、そしてブレードを振りきったロックスミス目掛けて621は重力の力を取り込んだブレードの一撃を見舞った。光の刃が右肩から脚部を両断し、その断面からはコックピットから621を見つめるフロイトの姿があった。

 

 必殺の一撃。そう形容される一撃を叩き込まれたロックスミスからはダメージの蓄積によって煙とスパークが生じた。機体の限界を迎えたのだ。脱出しなければすなわち――死である。

 

 だが、そんな中でもフロイトは――

 

「動けロックスミス……! まだ……やれる筈だ! まだ俺は……フィムに、勝っていない……!」

 

 ありったけの渇望が込められた精一杯の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

□■□■□■□■

 

 

 

 

『どうやら……ビジターがやったみたいだよ』

 

 カーラが火花を上げながら機能を停止する最後の無人機を見ながらそう呟いた。ウォルターも同様に最後の無人機をコーラルブレードで貫いて仕留めていた。カーラもウォルターも弾薬の消耗こそあれど、機体自体のダメージは少なく、ウォルターに関して言えばコーラルブレードがある為、これから621を始末するに当たって弾薬の心配はしなくて良いほどだ。

 

「……後は621だけだ」

『システムはチャティに任せているけど……あんたの言うビジターの“友人”がいるから危険だね』

「その前に621は……俺が消す」

『……だけどまぁ、流石にビジターも間に合わないだろうさ』

 

 カーラの指摘通りだった。

 実際の所、621はフロイトとの戦闘で時間を費やし過ぎた。結果としてチャティの護るザイレム制御システムを突破したとしても、既にザイレムはバスキュラープラントに衝突するルートに入ってしまっている。故に――621の任務は失敗に終わろうとしていた。

 

 と、その時だった。

 

『ウォルター! 後方宙域に敵影……!』

 

 カーラがこちらに迫りくる敵影を捉えた。ウォルターもそれに続いて敵影らしき存在がいる方向に目を向ける。

 

「あの機体は技研の……いや!」

 

 ウォルターとカーラの前に降り立ったのは鉛色のACだった。

 謎の機体が突然現れたことに、二人の間に緊張が走る中、カーラが更なる機影を捉え声を上げる。

 

『ッ!? ザイレム前方に巨大な熱源反応が!?』

「何が起こっている!? なんだ、あれは……!」

 

 ザイレム前方から突如として発生した強大な熱源反応。ウォルターとカーラが前方に視線を向ける。

 

 

『――戦闘モード起動』

 

 

 ルビコンに突き刺さるようにして佇むバスキュラープラント。その中心に小さな紅い機体がバスキュラープラントを守るようにしてザイレムの前に立ちはだかっていた。

 

『ま、まさか!』

 

 カーラの感じた悪い予感。それは考え得る限りの最悪なこと――あの紅い機体がザイレムを墜とそうとしているのではないか、という予感がカーラの脳裏に過る。

 しかし普通に考えればそれは不可能。ザイレム程の巨大な質量を持つ艦をたった一体の謎の機体が、バスキュラープラントに衝突するほんのわずかな時間でザイレムを墜とすというのは滑稽極まる無茶。

 

 

 だがその前提は全て、紅い機体――ナインデッド・ネクストによって覆されることとなる。

 

 

 変形機構により飛行形態から通常形態へと移行したナインデッド・ネクストは幾つかのオービットを展開。

 天輪のようにナインデッド・ネクストの背後に位置するオービットに光が集まり始めると、それら全てがやがてナインデッド・ネクストに収束。遠くに離れている筈のカーラとウォルターのACから強大な熱源反応を知らせる危険信号が発せられる中、チャージを済ませたそれは――放たれた。

 

「馬鹿な……ザイレムが……」

『真っ二つに……!?』

 

 暗闇の中、一瞬強く光輝いた直後にザイレムに放たれたレーザーと見まがう程の強大なアサルトキャノン。

 ナインデッド・ネクストの胴体から放たれた蒼白の巨光がザイレムの先端部位に直撃するや否や、音が僅かに遅れ……たちまちザイレムが着弾点を基準に左右に両断された。続けてナインデッド・ネクストは、バスキュラープラントに衝突しようとするザイレムの左半分に目掛けて、一瞬でその場から消え去ったかと見まがう速度で向かった。完全にザイレムを解体するつもりなのだろう。

 

 ザイレムを文字通り両断したその威力にウォルターとカーラが驚愕する中、沈黙を貫いていたオールマインドの機体がカーラ目掛けて襲い掛かった。

 

『ボス……すまな……い』

『チャティ! なっ、しまっ……!?』

「カーラ!」

 

 オールマインドは自分が残しておいた無人機を操作してカーラを拘束し、その隙を突いて右手のマルチENライフルことKRSVのレーザーとプラズマの複合攻撃をカーラに直撃させた。

 

 機体の損傷もあいまって、ジェネレーターを残してまるごと消し飛ばされたカーラ。ウォルターが素早く身構えると、周囲の無人機がウォルターを取り囲んで一斉射撃を繰り出す。

 ウォルターはコーラルシールドを発生させて防御しながらコーラルブレードによる薙ぎ払い攻撃で無人機にダメージを与える。しかしオールマインドはその間隙をついて再びKRSVによる攻撃を行おうと飛び上がり、眼下のウォルター目掛けて照準を合わせる。

 

(武器の殆どは弾切れ……そしてコーラルブレードも今使ったばかりだ……そしてシールドも……)

 

 大量の無人機と交戦したことで遂に弾切れを起こしたウォルターに為すすべはなく、KRSVから放たれる光がウォルターに迫る。

 

(621。あとはお前の……)

 

 

 ――そして、ウォルターの機体は限界を迎えた。

 

 

 

 

『感謝します、フィム』

「……ザイレムは解体しておく。その間に片付けておけ」




オールマインド「助けてフィム! このままだとザイレムが衝突しそうです!(某RTA風に)」
フィム「……しょうがねぇな」
オールマインド「ちなみにあと十分です!」
フィム「…………なるほど?」

※ナインデッド・ネクストが完成直後の会話(要約)。なお技研都市から地上に向かうまで最低八分はかかるとする。そして地上からはさらに一分かかるとする。
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