V.Ⅸになったのでナインボールを目指す   作:gnovel

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閲覧ありがとうございます!
いつも高評価と感想ありがとうございます! 前回はパルスアーマーをプライマルアーマーと誤植してしまいました。申し訳ないです……

それではどうぞ


ナインデッド・ネクスト

 ――共にコーラルリリースを成し遂げましょう。

 

 最後の一手を残すのみとなったコーラルリリース計画。ザイレムがフィムの手によって解体されている最中、621はエアが送り込んだ補給シェルパから失ったリニアライフルの代わりとなる武器と弾薬を補給していた。

 

 フロイトを撃破し、チャティの防衛する中枢ブロックのシステムを突破したものの結果として衝突は避けられない結果となり、失敗に終わったかと621は思った。

 しかしその直後、ザイレムの中枢にいる621が感じ取れるほどの轟音と大きな揺れが生じたのだ。そしてオールマインドから通達されたのは作戦の失敗ではなく――作戦の成功。この内容には当然ながら621も疑問を持ち、エアも疑問を抱くことになった。

 

 こうして疑念を持ちつつも、崩壊寸前のザイレムから脱出し621達はオールマインドが指定した座標――LOCステーション31へと向かおうとしていた。

 

 暗闇の中で光る惑星ルビコン、その地表に突き刺さるバスキュラープラント。そして衛星砲が漂う光景が広がるLOCステーション31にゆっくりと着地する621。ルビコンから吸い上げたコーラルを蓄えているバスキュラープラントを眺めている621の視界に、何やら赤いブロックのような何かが漂っているのが見えた。

 

 よく見るとそれは、ACのジェネレーターだった。

 621は直ぐにそれがカーラのACの成れの果てであることを察知し、ふとステーションの中心に佇む鉛色のAC、その足元に転がる何かを目撃する。頭部を失い、完全に機能停止したそれはまごうことなきACの残骸であり、621は先のオールマインドの通達内容を思い出していた。

 

 ――こちらの対処が終わったことも……報告しましょう。

 

 621は直ぐにそれが誰の機体であるかを察し、操縦桿を握る手に僅かに力が籠められる。

 そしてふと621が鉛色のACに視線を向けると、やがてそれがどこかで見たことのあるような機体構成であることとその手に持つ武器がオールマインド製のKRSVであることを知る。

 

「見てください」

 

 目の前の機体――マインドγからオールマインドのものと思しき声が発せられる。

 予めエアがアリーナの情報にアクセスしていた為、直ぐにそれがオールマインドの機体であると分かった。で、あればその中身はオールマインドであると、621は判断した。

 

「企業の吸い上げたコーラルが共振を始めている」

 

 コーラルを抽出していたバスキュラープラントからは内部に詰め込まれているであろうコーラルから発せられている妖しい光が漏れ出ていた。

 そしてこれにて晴れてコーラルリリースが達成――とはならず。621は振り返ったオールマインドからとある宣告をされる。

 

「強化人間C4-621 レイヴン――貴方の役目はもう終わりです」

 

 それは621に対する裏切りであった。否、初めからそのつもりだったのだろう、と621は思った。しかし薄々感じていた所もあったのか、621はすぐさまそっちがその気なら……と身構える。しかしそんな621とエアの耳にとある人物の声が響き渡る。

 

「『よう……待ってたぜ野良犬』」

 

 それは621の前に何度も現れ、幾度となく621に噛みついてきたイグアスの声だった。

 ノイズ交じりではあるが、どこか執着さえも感じさせるその声色は間違いなくイグアスのものであると知った621とエアは声には出さないものの驚愕していた。

 

 なぜオールマインドに協力しているのか、いつから協力者だったのか、尽きぬ疑問に答えるがごとくオールマインドに統合されたイグアスは話を続ける。

 

「『てめぇを消すため……俺はこいつらの一部となった』」

 

 すると空から複数の無人機がマインドγの傍に舞い降りてきた。全部で四機の無人機はいずれもミサイルやブレードなどを装備しており、決して生半可な戦力ではないことを知らしめているかのようだ。

 

「『今度こそ……死んでもらう』」

 

 

 

 

□■□■□■□■

 

 

 

 

 621を最後の障害と見なしたオールマインドが襲い掛かっていた頃。フィムはというと……。

 

「誰だ惑星封鎖機構にリークしたのは……!」

 

 バスキュラープラントを背景に迫りくる惑星封鎖機構を単騎で相手取っていた。

 

 ザイレムを撃墜した後、オールマインドが621を相手取っている最中に消耗した分の補給を済ませ、万全の状態で621もといイレギュラーに勝負を挑むつもりだった。

 しかしいざ補給を済ませようと考えた直後、ルビコンの遥か彼方からやってくる艦隊の群れをレーダーが捉えた。不思議に思い確認してみると、なんとそれが惑星封鎖機構の艦隊であることが判明、このままだと621との対決はおろか、オールマインドの計画そのものにも支障をきたすことになった。よってフィムは補給を中断し、ナインデッド・ネクストで惑星封鎖機構の艦隊を次々と撃墜しているのだ。

 

「……まさか解放戦線の生き残りか!?」

 

 ルビコンにて勢力を振るっていたベイラムとアーキバス、その二大企業。その内の一つであるベイラムはレッドガンの壊滅をもって撤退、アーキバスもオールマインド率いる無人機部隊によって消耗を強いられ、更にヴェスパー部隊の過半数を消失。

 企業に報復をする最大の好機。そんな好機を逃すわけにはいかないと考えた解放戦線の一部が、死なば諸共と考えて惑星封鎖機構にリークしたのだろう。

 

 ――今ならルビコンに蔓延る企業を撲滅出来る、と。

 

「数が多い……ナインデッド・ネクストではどうとでもなるが……補給を済ませておきたい」

 

 ザイレムを文字通り木端微塵にするまで解体しつくしたことで、少なからずナインデッド・ネクストも消耗していた。

 本来であればオールマインドが621と戦い、そして負ける。それまでに稼いだ時間を使って補給を済ませ、万全を期して621に挑むという内容に計画を修正していたフィムにとって、惑星封鎖機構の奇襲は寝耳に水だった。

 

 しかしそこは流石のフィム。

 ルビコンでも見たことが無いような規模の大艦隊を相手に未だ明確な被弾も無く、戦闘開始から早一分で艦隊の勢力の凡そ四割を撃墜していた。

 

『なんだ……この機体は!?』

『こんなものがルビコンに残っていたのか!? 聞いてないぞ?!』

 

 半ばフィムの私怨が込められてはいるものの、その撃墜までに至るペースが異常だった。瞬き一つの間に艦が三隻沈められているという言葉が比喩表現でもなんでもないと思えるほどのペースで沈められているのだ。

 

 ナインデッド・ネクストから放たれ、縦横無尽に駆け巡るオービットは艦隊の弾幕の間をすり抜け、的確に艦橋目掛けてレーザーを放ち、瞬く間に艦の制御を奪っている。バスキュラープラントに近づこうとした艦隊には直接ナインデッド・ネクストがそのけた外れの推進力で接近し、両腕に備え付けられたブレードで切り裂く。

 

 近距離のみならず、長距離からのパルスキャノンによる絶え間ない射撃や、全十二門から放出されるマルチロックミサイルによる絶え間ない爆撃の嵐に耐えられる艦はいないだろう。極めつけは変形機構による超高速移動によるかく乱に、フライトユニットに備え付けられたチェーンガンとミサイルによる蹂躙がナインデッド・ネクストただ一機により齎されていた。

 

 こうした技研を含めた数々の企業の長所を取り入れ、仕上げたナインデッド・ネクストはまさにフィムの求める性能がこれでもかと詰め込まれていた。

 そして当然ながらそのブレードにも当然技研の技術が使われており、ナインデッド・ネクストがひとたび腕を少し離れた場所に浮かぶ艦隊目掛けて振るえば、たちまちブレードが光波が射出された。

 

『か、艦橋が切断され……!』

『LC及びHC部隊、直ちに出撃せよ!』

 

 艦隊の一部からLC及びHC部隊が出撃され、バスキュラープラントを防衛しているナインデッド・ネクストにぶつけようと画策するも、とある異常事態が発生した。

 

『コ、コード31 指示を要求する……』

『何があった!?』

『敵の位置が不明……! カメラに映っていないぞ!?』

『馬鹿な!? 敵機は確実に前方にいるはずだぞ!?』

『どういうことだ……?』

 

 その報告を皮切りに出撃した筈のLC・HC部隊から立て続けにナインデッド・ネクストが何処にもいないという報告が相次いだ。その報告に慌てた司令部が慌てて確認をするも、やはりそこにはナインデッド・ネクストがいる。部隊は戦場のど真ん中でただ棒立ちするしかないという異常事態に見舞われていた。

 

『まさか……ステルス迷彩か!?』

 

 ナインデッド・ネクストがLC・HC部隊のカメラに映らない理由……それは紛れもなくナインデッド・ネクストに備わったとある機能に由来する。

 

「まさか無人機の技術が役立つとはな……」

 

 それはオールマインドのゴースト。

 フィムはそのステルス能力に目を付け、機体の設計時に周囲に対する隠蔽も兼ねてステルス機能を搭載していたのだ。本来であれば設計完了時に取り除かれる予定だったが、計画の前倒しと、それに基づく計画の修正――詰まるところ、ザイレム撃墜の際に周囲に察知されないようにするためにやむを得ずステルス機能を備えたままにするしかなかった、という事情があった。

 

「……まぁ、肩慣らしには丁度いいと考えればいいほうか……うん、そう思うとしよう」

 

 オールマインドの能力について知っていてもなお、過信をしていたのは紛れもなく自分の責任であると思い、これ以上は考えることを止めた。

 そしてそうしている間にも、フィムは棒立ち状態のLC部隊もまとめて撃墜させていき、直線上に並んだ艦隊を纏めてアサルトキャノンで消し飛ばした所で遂に残りは数えるのみとなった。

 

『艦隊が……たった一機で!?』

『本部に情報を! ルビコンには……』

 

 最後に残された艦にナインデッド・ネクストが目にもとまらぬ速さで迫る。

 

『――紅い悪魔が潜んでいる!!』

 

 

 

 

□■□■□■□■

 

 

 

 

「――こちらフィム」

『フィム、申し訳ありません。もはやオールマインドでは、イレギュラーを止められない……』

 

 惑星封鎖機構の艦隊だったものが対流する暗闇の中、ナインデッド・ネクストはオールマインドから指定された座標に向かい――遂に621と対峙することとなった。

 

 予想通りというか、オールマインドは621に完全敗北を喫しており、621の機体には目立った損傷も無い有様だ。

 ある意味予定調和と言うべきか、621の力はまさにイレギュラーに恥じぬ領域に達していた。そしてそれは――フィムも同様。

 

『この識別反応は……V.Ⅸフィム!?』

 

 エアが驚愕する声を聴きつつ、621の頭上を通り過ぎた後、フィムはオールマインドの機体の近くに着地。オールマインドの機体が最後の力を振り絞ってナインデッド・ネクストに向けて手を向けた。

 するとナインデッド・ネクストのコックピットにオールマインドの声が響き渡る。

 

『これからは、私がオペレーターとして貴方のサポートを致します』

 

 僅かに脳が痺れるような感覚を味わいつつ、カメラ越しに621に目を向ける。

 思う所は無数にあれど、それら全てを飲み込み、フィムにとっての“最強”を体現した一言を投げかける。

 

「『――ターゲット確認 排除開始』」

 

 フィムの声と、オールマインドの声が重なったそれは決戦の火蓋を切った。




※補給はできました。あとオールマインドは五分足らずで撃破されました。
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