V.Ⅸになったのでナインボールを目指す   作:gnovel

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朝起きる→ランキング乗っている→???????

という訳でいつも感想と高評価ありがとうございます。返信することは出来ていませんが全て読ませてもらっております。
それではどうぞ。


壁越え事前掃討任務

 独立傭兵レイヴン……もとい強化人間C4-621が壁越えに参画するという話が持ち上がっていた頃、フィムはスネイルに呼び出されていた。

 

 あれからオールマインドとコーラルリリースについて話し合ったフィムだったが、一先ず暫くの間アーキバスに所属しヴェスパー部隊の戦闘データの回収と……V.Ⅲオキーフを監視するという任につくことになった。

 

 本来であればすぐさまコーラルリリースの計画を修正し、現在計画の根幹を担っている独立傭兵スッラと立場を入れ替えるのではないかとフィムは思っていたが、しかしオールマインドはそうはしなかった。

 

 それこそオールマインドの提示する条件に該当する強化人間であるフィムがいるのになぜかと思われるが、オールマインドとしてはウォッチポイントにおけるとある生存確率が低い作業を行わせて万が一フィムを失うことになる可能性を考慮し、ここでフィムを失うことはかなりの痛手であると考えたのだ。

 

 そして結果的にフィムは計画のサポートとしての役割を担うことになった。

 

 それを聞いて頭を抱えるフィムだが、当のオールマインドはフィムという最高の手駒を手にしたことでスッラを主軸としたコーラルリリース計画がより盤石なものになった、とあくまでスッラを主軸としたままフィムをサポートにつかせて計画を進める方針のようだった。

 

 さらに以前オールマインドと協力関係にあったオキーフを監視するというのも、まだオールマインドがオキーフを計画の協力者と見なしているからこその考えなのだろう。素人目線から見ても穴だらけの計画にフィムは「これ俺が相当奮闘して軌道修正してあげないと不味いのでは……」と思い始めた。

 

 なおその予想は後に大当たりすることになる上に、オールマインドにとってもフィムが尻拭いに奮闘する羽目になったことで後に大痛手をくらうことになるとは誰も知る由も無かった……。

 

 

 そして集合時間よりも少し早く待合室についたフィムは、自分以外にも誰か一人が呼び出されていることに気付く。スレンダーな後姿と体のラインが浮き出たパイロットスーツと頭頂部に掛けられたバイザーが特徴の女性だ。するとフィムの到着を察知した彼女が振り返った。

 

「フィム第九隊長。貴方も今回の任務に?」

「……メーテルリンクか。スネイルは……」

「スネイル第二隊長閣下はじきにご到着なさるようです」

「……成程、ということは」

「はい。今回も共同任務ということになりそうです」

 

 ヴェスパー部隊第六隊長であるメーテルリンクは旧世代型強化人間を完全に無価値化したと評されるニューエイジ、その第八世代強化人間である。

 社命に忠実であり持ち前の慎重な性格も相まって安定した戦績を残し続けている。そんな彼女だが、実はスネイルやフロイトの次にフィムと任務に当たることが多い。どちらも任務の達成率が高く、安定性にも長けているという点から時々こうして組まされることがある。

 

 両者ともに軽い会釈と会話を済ませ、しばらくの沈黙が続いたところで漸くスネイルが現れた。

 

「よろしい、ではこれから貴方達に与えられた壁越えに関する任務について説明しましょう」

 

 端末を操作して机上に現在の状況が事細かに記された図面が投影された。

 

「既知の通り、我々アーキバスはこれからルビコン解放戦線の防衛拠点である壁越えを果たします。壁には我々の進行を妨げる兵器が大量に配置されています」

 

 そう言って新たに投影された画像には事前の調査でも判明していたが、本来の壁に配備されていた兵力のそれを大幅に上回っており、先に突入したベイラムの部隊が壁の近くにすら到達できていないという悲惨な状況が映し出されていた。そしてその中にはあのレッドガンのメンバーであるG4ヴォルタのACと思われるスクラップと化したそれが、壁はおろかその手前で見るも無残な姿になり果てているのが確認できた。他のMT部隊も同様に壁に到達することすら出来ていないようだ。

 

 そんな中フィムの目を引いたのは、ヴォルタのACの近くに鎮座する巨大兵器――重装機動砲台ジャガーノートの姿だった。

 

 重装機動砲台の名の通り、あらゆる攻撃を弾き返す重厚な装甲とそれに搭載された重火器と背面の大型ブースターによる殲滅力と軽快な機動力が特徴だ。本来であれば壁の上に配備されて壁越えを果たそうとする敵対勢力を壁の上から一方的に攻撃する筈だが、その内の一機が地上用に改修されて壁を警備していた。

 

 壁の上に確認された二機のジャガーノートに加えて壁周辺を警護する一機と、壁より遥か外側を周回するもう一機と合わせての合計四機。何が何でも絶対通さないという意思さえも感じられるほどだ。

 

 そこで今回の任務ではフィムとメーテルリンクは直接壁越えに参加はしない代わりに、ヴォルタを撃破したジャガーノート及びその周辺のMT部隊と砲台の掃討という任務が割り当てられた。壁越えに当たってまずは相手側の戦力を削ぐことを優先したのだろう。その後に控えるラスティと独立傭兵レイヴンによる壁越えを成功させるためにもある程度の露払いを済ませるというのがスネイルの考えだ。

 

 さしものスネイルもこれだけの大規模戦力を相手にいかにヴェスパー部隊であろうとも、名を上げつつある独立傭兵レイヴンですら真っ向から攻め落とすのは確実性が無さすぎると判断してのことなのだろう。とはいえレイヴンについて知っているフィムからすればレイヴンなら案外どうにかなるのではないか、と思ったが流石に口にはしなかった。

 

 また壁上のジャガーノートと比較しても地上用に改修されたジャガーノートは全面的に装甲が分厚く、そして設置された砲門の数が増加していた。周囲の味方を巻き込まないように敢えて機動性を落としてはいるものの、それでも移動できる固定砲台としてみればかなりの脅威であることには間違いないだろう。

 

「そこでフィム。貴方にはこの二体のジャガーノートを撃破してもらいます。メーテルリンクは周囲のMT部隊と砲台の破壊を担当してもらいます」

「了解しました」

 

 そんな中でフィムが担当することになったのは改修型ジャガーノート二体だ。メーテルリンクはMT部隊および周囲の砲台の破壊を担当しつつフィムのサポートをすることになった。

 

「しかしいくら何でもフィム第九隊長でも二体のジャガーノートを相手では……」

 

 メーテルリンクの懸念ももっともだった。任務安定遂行を重視する彼女はたとえフィムであろうとも二体のジャガーノート相手では完全に任務を遂行できるのかと疑問に思うのだろう。しかしそれに対してフィムは。

 

「問題ない」

 

 絶対の自信と溢れんばかりの闘争心を含んだたった一言で返した。

 

「そ、そうですか……」

「よろしい、では頼みますよ」

 

 フィムの返答に釈然としないメーテルリンクと、まぁコイツならやるだろうなとある種の信頼を寄せるスネイルであった。

 

 

 

□■□■□■□■

 

 

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

 

 鳴り響く電子音と共に周囲の景色がコックピット内に映し出された。

 

『ミッション開始だ。まずは友軍アーキバス部隊の露払いを行う』

 

 壁越えにおけるアーキバス部隊の露払いと壁上にいる二体のジャガーノートを撃破することになった621。ウォルターの指示を聞きながら周囲を軽く見渡しながら進んでいると、まるで廃材置き場か何かと勘違いしそうになる位凄惨な状況が広がっていた。

 

『どうやら壁越え前にアーキバスが先んじて脅威を取り除いていたか……待て、それは……?』

 

 多くのMTやガトリング砲台、そして解放戦線側のACが纏めてスクラップと化している中で621とウォルターの目を引いたのは、火花を散らしながら燃え盛っている二体のジャガーノートだった。

 

 周囲に散らばるMT部隊の残骸や解放戦線側のACと以前戦ったことのあるレッドガンのACもさることながら、徹底的なまでに破壊され尽くされたジャガーノートは事前に見せられた画像のような面影は一切感じられず、損傷していない箇所を見つける方が困難なほどだ。特に損傷が激しかった背部の大型ブースターにはグレネードによる爆撃やブレードによって切断された痕跡が見受けられた。

 

 そして何よりも二人が注目したのは、そのジャガーノートが同じ場所で二体同時に破壊されていたことだ。破壊痕が大体同じことから恐らく二体のジャガーノートを撃破したのは同一人物であることが解り、その人物がACとジャガーノート二機を同時に相手していたという事実に621も思わず立ち止まって廃材の山をまじまじと見つめていた。

 

 するとウォルターが何か納得したような様子を見せた。

 

『……成程。あのV.Ⅸが壁越えに参画してないのは不自然だと思ったが、そういうことか。……気にするな621。仕事を続けるぞ』

 

 ウォルターの指示通り爆炎が飛び交う戦場を遮蔽を駆使しながら通り過ぎる621は、眼下に並ぶスクラップの山を視界に収めつつガトリング砲台が並び立つ一つ目の壁の下へと潜り込んだ。アーキバスの依頼の中にガトリング砲台などの防衛設備の破壊も含まれている為621は壁の下から急速に浮上し、出会い頭に右手に装備したバズーカを叩き込んだ。

 

 周囲を巻き込んだ爆発に包まれながらガトリング砲台が破壊され、爆炎に紛れながら621は左手のブレードで進路上の砲台を次々と切り裂いていった。

 

「企業ども……何度来ようともこの『壁』は超えられんぞ……! 『コーラルよ、ルビコンと共にあれ』!」

 

 絶え間なく鳴り響く警告音を頼りとしながら弾幕の嵐を回避する621。移動の最中両肩に備え付けられたマルチロックミサイルで同時に複数のMTと砲台目掛けて発射、的確に着弾したミサイルは容易く標的を木っ端みじんに吹き飛ばした。

 

『ガトリング砲台の破壊を確認。街区の制圧は友軍MT部隊が行う。621、目標の四脚MT三体の排除に移れ』

 

 荒廃しきった街区の中を疾走しながら見かけたMTや砲台を破壊しつつ、壁の近くにまで迫った621。壁に配置されているスナイパー砲台が邪魔だと感じた621はすぐさまブーストを吹かしながらバズーカを放つと、続けてミサイルのロックを済ませ、たちまち複数の砲台目掛けてミサイルとグレネードが飛来、数秒経たずして着弾した。

 

 粗方片付け終えた621は壁の正面に鎮座する三体の四脚MTを視界に収め、こちらを捉えていない隙に上空からミサイルのロックを済ませると共に、バズーカを発射、そのまま急接近した。

 

「グアァアアア!?」

「どわッ!?」

 

 集中砲火を浴びた四脚MTの一体がスタッガー状態に陥ったのを見るや否、621はブーストの勢いを利用した蹴りを叩き込み、もう一体のMT目掛けて蹴り飛ばした。叩き込まれた衝撃でスタッガー状態に陥った両者に対して621はブレードの出力を最大にして二体を同時に切り刻んだ。

 621の不意打ちから繰り出された集中砲火を叩き込まれたMTは為すすべなく破壊され、もう一体のほうも先程の衝突と近くで爆発したMTの爆炎の巻き添えを喰らってスタッガー状態に陥っていた。そして621は残された一体と銃口が触れ合いそうな距離で躊躇いなくバズーカの引き金を引いた。

 

「『こ、コーラルよ、ルビコンと共に……』」

「おのれ! 独立傭兵め!」

 

 最後まで言い切ることなく二体の四脚MTは爆発四散、そして沈黙。残された一体も奮起してMTに備え付けられた機銃を掃射するがMTの上を取るようにして回避する621には当たらなかった。そして真下にいるMT目掛けてバズーカの引き金を引こうとした621にウォルターからの通信が入った。

 

『621! 気を付けろ!』

「ッ!」

 

 ウォルターの警告と同時に621はこちらに向かって飛来してくるACの機影を捉えていた。

 

「『灰かぶりて、我らあり』!」

『敵ACを補足。ランク圏外のACだが……油断はするな621!』

 

 全身をBAWS製のパーツで固めた鉛色のACが621目掛けて飛来してきたのだ。

 

「死ね! 独立傭兵!」

 

 声を上げながら接近してバースト式のアサルトライフルを連射してくるACに対して、621は咄嗟に空中でブーストを吹かして回避。下にMTが一体、前方から飛来してくるAC。どちらを優先するかを考えた621は――。

 

「ぐああッ!」

 

 解放戦線のACを最初に撃破することにした。

 

 急速接近してACに勢い付けた蹴りを叩き込んだ621は、空中で態勢が崩れたACの裏側に手早く回り、即座にブレードで背中に取り付けられていた武装を残らず解体。そのまま地上に控えるMTの攻撃を避けるための盾として扱った。するとたちまちMTから放たれた機銃が621が盾代わりにしたACに命中し、621は地上からの攻撃を防いだ。

 

「き、貴様ぁあああ!」

『いいぞ621』

 

 弾避けとして仲間が扱われたことに憤慨するMTのパイロットを尻目に621はACの背中を押しながらアサルトブーストを吹かし、そのままMT目掛けて突撃した。盾代わりにしたACの隙間からバズーカを放ち、爆炎でMTの視界を奪いつつACをMTに叩きつけた621は、再びブレードの出力を最大に引き上げそのままACの胴体目掛けて貫いた。ブレードの光はACを貫通し、MT諸共串刺しとなった。ダメ押しと言わんばかりに打ち込まれたバズーカとマルチミサイルが決定打となったのかACとMTは諸共爆炎に包まれた。

 

「企業の……犬め……!」

『BAWS四脚MT三体およびACの排除を確認。街区における脅威は大きく減少した。アーキバスにも後でAC撃破報酬を請求しておくとしよう』

 

 爆炎に包まれながら621は壁の内部に潜り込み残存勢力を撃破しつつ、621は壁内部のリフトに乗り込み壁の上を目指した。道中ウォルターが手配した補給シェルパで弾薬の補給を済ませた621はいよいよ壁上へと繋がるゲートを開けた。

 

 ゲートの隙間から風が流れ込み、外の白い光が621のACを照らす中、空の彼方から一機のACが621の目の前に舞い降りてきた。

 

「君がレイヴンか」

 

 V.Ⅳラスティだ。

 機動性に優れたACスティールヘイズに駆るラスティは621を一瞥した。

 

「……あのハンドラー・ウォルターの子飼いらしいな」

 

 すると突然壁の両端から爆音と共に二つの要塞……ジャガーノートがとうとう姿を現した。

 

「これも巡りあわせだ。ともに壁越えと行こうじゃないか」

 




※なおゲームでは敵ACを盾にすることも、MTを蹴っ飛ばしてぶつけるビリヤードとか出来ません。なのでこの世界線では三体の四脚MTとACを同時に相手取ることになります。あと二体のジャガーノートも

フィムのことを警戒していたらそれと同等レベルの独立傭兵が来たなんて誰も予想できないから仕方ないね。あとオールドンマイちゃんは悔い改めて
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