V.Ⅸになったのでナインボールを目指す   作:gnovel

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感想と高評価、そして誤字報告ありがとうございます。当初はここまで評価されるとは思わずすっかり仰天しました。本当にありがとうございます。

それではどうぞ


ヴェスパー7排除……?

 独立傭兵レイヴンが壁越えを果たした。

 

 その報せを聞いたフィムは、先日オールマインドとの共同作業で生み出されたある武装の性能試験を兼ねてアリーナで試験運用をしていた。

 

「試作品にしては悪くない」

 

 ナインデッドの右手に握られている銃のディテールを眺めながらフィムは呟いた。

 それはパルスライフルと呼ばれる特殊な銃であり、フィムが収集していたEN武装に関する企業そしてオールマインドのデータとノウハウを参考に作成されたライフル、型番は44-145 WALTZ。

 

 先日の壁周辺の掃討作戦の際にフィムは右手のレーザーハンドガンでは些か火力不足を実感していた。

 

 とはいえかなり愛用していた武器でもあったのでフィムも流石に手放すことや代わりを探すことに悩んだ。しかしこれから先、あの621と接触する機会があるかもしれないと考えるとそれこそ今のままでは決定打に欠けると考えた。そしてフィムは先日オールマインドと協力し、新たな武器の開発に着手し始めたのだ。

 

 それこそが、ナインボールが使用していたパルスライフルの再現だった。

 タキガワハーモニクスが開発したパルスガンが元となっているそれは一度のトリガーで三連バーストが発射される代物に仕上がっており、その出来にはフィムも思わず笑みを浮かべて歓喜した。

 

 とはいえ試作品段階である為か弾数が他のEN武器と比較しても心もとないという点や連続しての使用を続けるとすぐにオーバーヒートを起こすという点も見受けられる。

 それらを加味しても本来のナインボールが扱う六連バーストのパルスライフルに到達するにはまだまだ時間がかかってしまう他、それに伴い機体のアセンブルやジェネレータ等の内部構成も変更しなくてはならない可能性が浮上してきたのだ。出来る限り外装は変更したくないのがフィムの要望だが、いずれ直面する問題を先送りにしているだけに過ぎないのである。

 

 このようにまだまだ課題が目白押しだが、それでもフィムにとっては満足のいく代物に仕上がったと言えるだろう。

 

 ちなみにオールマインドもいずれこのパルスライフルを量産してゴーストと呼ばれる無人兵器に搭載したり、今回のデータを活用して更なるオールマインド製の武器の開発に役立てるようだ。ちなみにフィムの試作品パルスライフルはオールマインド名義で既にショップに並び始めたらしい。

 なおその商品がショップに並んだ際にいの一番に購入したのはあの621だったとのこと。そしてあのスッラも既に購入しており左手に装備していたパルスガンと交換したらしい。

 

『フィム。お疲れ様でした』

「ライフルの実践データを送る。出来る限り早めに改良するとしよう」

『分かりました』

 

 既に一時間にも及ぶ試験運用。その相手はゴーストを中心とした無人機とACだった。

 試作品の試運転とフィムの戦闘データを学習させる目的で行われた訓練の全貌は、主にフィムがただひたすら襲い掛かる無数の無人機を蹴散らし、合間にACを挟んでの繰り返しだった。

 

 最初の内こそただ何も出来ずに撃破されていくゴーストとACだったが、次第にフィムの攻撃を回避するようになったり、フィムに攻撃を当てる頻度が増すようになったりと僅かではあるが明確な成長を見せるようになったのだ。

 

 オールマインドによればフィムによってもたらされた様々なデータとフィム自身の戦闘データを統合したことで、ランク圏内のACや惑星封鎖機構の強力な兵器相手でも充分な成果を望めるレベルにまでAIが仕上がったらしい。着々と来たるべき時に向けて戦力を増強させているが、オールマインドが計画を実行に移すようにフィムも本格的に計画の第一歩を踏み出そうとしていた。

 

 フィムの計画……それを実現するためには今の企業の技術ではほぼ不可能と言っても良い。データが足りなさすぎる上に既存のノウハウでは作れない代物だからだ。

 しかしフィムにはそれを実現可能にする代物がごまんと眠っている場所に心当たりがあった。そしてその場所にどこよりも早く到達して占領するのがアーキバスであることもフィムは知っていた。

 

「まずはあの場所に辿りつかなければな。あの場所は後々アーキバスが占領することになるのは確実。それまでは……」

 

 その後直ぐのことだった。

 ウォッチポイントにてスッラが621に撃破され、代わりに621が計画の要であるCパルス変異波形エアと接触したとの情報が入ったのは。

 

 

 

 

□■□■□■□■

 

 

 

 

『メインシステム、戦闘モード起動』

『ミッション開始。提供された情報による目標の指定位置を送信します』

 

 ウォッチポイント襲撃後、エアと名乗る姿なき存在と共に621はルビコン解放戦線の依頼で、アーキバス占領下にある『壁』の奪還の一手を打つべく潜入していた。既にもぬけの殻となった壁周辺に監視部隊を配備するヴェスパー第七隊長スウィンバーンの暗殺、それが621に与えられた任務だ。

 

 621はエアの指示の下、大量に配備された監視部隊の目を掻い潜りながらスウィンバーンがいると思われる目標地点に向けて進行していた。しかしスウィンバーンがいると思われた地点に到達した621が目撃したのは、誰もいない空間だった。目標がいないということで、周囲を散策しようとする621とエアの耳に、遠くから鳴り響く爆音が入った。

 

 621が爆音が鳴った地点を確認すべく、周囲に配置されていた監視部隊を迅速かつ隠密に排除し、リフトを駆使しながら壁の上に上り、音の発生源に目線を向けた。

 

『戦闘状態にある機体反応を検出。おそらく目標のスウィンバーンです』

 

 スタンバットとシールドを装備した四脚が特徴のACを視界に入れた621は、静かに近くに着地し、可能な限り音をたてぬように接近した。

 

「なるほどベイラムか。時代遅れの斜陽グループめ……。まとめて再教育センターにぶち込んでやればスネイル閣下も……おあーっ!?」

 

 スウィンバーンの独り言を遮るかのように621が意識外から二連グレネードを叩き込んだ。

 情けない声を上げながら無防備にグレネードによる爆撃を受けたスウィンバーンは混乱しつつもすぐさまそれが敵による攻撃だと悟り、すぐさま迎撃態勢に入った。

 

「待て! 背後から奇襲するとはなんという卑劣……どこの雇われか知らないが、卑劣な不法者には指導が必要だ!」

 

 シールドによる防御を行いながら合間にミサイルを繰り出すスウィンバーンに対して、621はブレードと蹴りを交互に繰り返し、相手に攻撃をさせない立ち回りを行っていた。時折スウィンバーンもスタンロッドによる打撃を行うが、それを見た621はすぐさま後方に向けてブースターを吹かし回避行動をとる。そしてすぐさまグレネードを叩き込んだ。

 爆風に巻き込まれながら何とか体勢を立て直すスウィンバーンだが、その間も621の絶え間ない攻撃の嵐に押され気味だ。

 

「劣勢!? このスウィンバーンが劣勢だと!?」

『レイヴン、チャンスです。止めを』

 

 機体がスタッガー状態となり劣勢を悟ったスウィンバーンに止めの一手を加えるべくブレードの出力を上げて突進する621。

 

「まっ待て! 落ち着け!」

 

 寸前、唐突に武器を下ろしたスウィンバーンに思わずピタッと立ち止まる。するとスウィンバーンはすぐさまリペアキットを用いて機体の修復を行い、更にパルスアーマーを展開し始めたのだ。

 

 完全に態勢を立て直したと思われるスウィンバーンだったが何やら様子が違っていた。

 

「いいか、私はヴェスパー第七隊長……つまり会計責任者でもあるということだ。部隊の入出金については私に管理権限がある……見逃してくれれば悪いようにはしない、分かるな?」

 

 それは命乞いだった。

 つまるところ621がスウィンバーンを見逃す代わりに後で621にその地位を利用して、見逃したことに対して後で報酬金を与えるとスウィンバーンは直接でないにしろそう言及していた。

 

 それに対して621は数秒間沈黙した後――拒否の意を示した。するとスウィンバーンは……。

 

「なんという頑迷……ものの道理も解さないとは、やはり指導が必要か!」

 

 化けの皮が剥がれたように襲い掛かってきたスウィンバーン。スタンロッドを振ってきたスウィンバーンに621はそれが読めていたかのように紙一重で回避し、そのまますれ違いざまにブレードで胴体を横薙ぎ一閃。スウィンバーンのACに再び強烈なダメージを与えたのだった。

 

「まっ……たっ、助けっ……んんッ!?」

 

 あと一撃、それだけでスウィンバーンは撃破されるという段階に追い込まれ、また先程のように威勢を無くした声色を発するが、それは突然疑問の声に切り替わった。それと同時だった。エアがそれを捉え、壁側からまた別の爆音が鳴り響き、何かが飛来してくるのを捉えたのは。

 

『レイヴン! 後方より急速接近する機体が……!』

『――独立傭兵レイヴン! 突然ですまない! 緊急事態発生だ!』

 

 621がそのことを理解する寸前、突如解放戦線からの通信が割り込んだ。

 ただならぬ事態であると感じた621も思わずスウィンバーンと同じく武装を下げ、周囲の警戒を行った。

 

『君の動向を監視していた六文銭が、何者かの手によってたった今……撃破された! そしてそれは今、君のところへ向かっている! 六文銭からの最期の通信によるとその機体は……』

「この識別反応は……まっまさか!? 来たのか!? 我がヴェスパー部隊が誇る……」

『レイヴン、来ます!』

 

 621が反応のあった後方を振り返る。

 エアが急接近する謎の機体を調べようとしている最中、スウィンバーンだけはそれが何者であるかを理解すると、安堵と驚愕が入り混じった声を漏らした。

 

 

『あの赤い悪夢、V.Ⅸフィムだ!!』

 

 ガシャンと、音を立ててそれが二人の前に現れた。

 

「フィム! 来てくれたのか!」

 

 真紅に輝くAC……ナインデッド。それに搭乗するのは紛れもなくフィム。そう、フィムがこの場にやってきたのだ。

 

 試作品から少し改良したパルスライフルとブレードを携え、更に強力なグレネードなどを背中に装備したナインデッド。後方を陣取るように降り立ったフィムから得体のしれないものを感じ取った621は、思わずスウィンバーンから離れて距離を取った。

 

「よし、よし! よくやった! 後はこのまま離脱する準備を……!」

 

 フィムが来たことに心底安心した様子を見せたスウィンバーンは、621がフィムに釘付けになっている合間にすぐさま戦場を離脱させる準備を済ませ、離脱を試みようとしていた。

 

『アリーナのトップランカー……ACナインデッド、V.Ⅸフィム……レイヴン気を引き締めてください。なんだか、嫌な予感がします』

 

 残された両者が暫くの沈黙の中で睨み合っていると、フィムが口を開いた。

 

「力を持ちすぎるものは、全てを壊す――レイヴン」

 

 感情の一切を感じられないような声色と、機体越しに放たれる威圧感を受け621の額に汗が滲み出る。エアの忠告の通り気を引き締めなければすぐにでもやられてしまう、621はごくりと唾を飲み込んだ。そして不意にフィムがブースターを吹かす。

 

「お前もその一人だ」

 

 言い終わった直後、621目掛けて遂にフィムが襲い掛かった。




※ナインデッド乱入条件
ヴェスパー7排除の際に「取引に応じない」を3周目で選択し、スウィンバーン撃破寸前になるとムービーが入ります。そしてナインデッドが襲撃してきます。

あと地味にオールマインドちゃんの強化が入りました。
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