案の定オールドンマイとKRSVに言及してて草生えますわ。
それではどうぞ
オールマインドからの無茶な依頼を終えて帰還すると、丁度アーキバスとベイラムの共同作戦が終えた所だった。
惑星封鎖機構が管理する自律防衛型C兵器IA-02ことアイスワーム。
圧倒的なまでの防御性能を誇るアイスワームを目の当たりにしたことで両企業は一時停戦協定を結んだ。アーキバスはアイスワームへの対抗手段としてスタンニードルランチャーを供与、そしてベイラムが作戦指揮を執る、といった流れで行われた作戦は独立傭兵レイヴンの協力で成功した。
だがそれだけにとどまらず、アーキバスは惑星封鎖機構の執行部隊との交戦で強襲艦を初めとした様々な主力兵器の鹵獲に成功していた。それによりアーキバスとベイラムのパワーバランスはアーキバス優勢に傾いていた。アーキバスはアイスワームという脅威を排除することを考えつつ、惑星封鎖機構の抱える主力兵器を取り込むことを計画していたのだ。
ガレージに立ち寄ったフィムが目撃したのは、今まさに惑星封鎖機構の主力兵器を解析している者達の姿だった。フィムが何気なしに作業現場を見ていると背後から声がかかった。
「漸く来ましたか。フィム」
「スネイル」
フィムに声を掛けたのはスネイルだった。
「土着の猿共と惑星封鎖機構の露払いご苦労。お蔭でこちらも援軍の心配なく済みました」
「……次はどうする」
「こちらからの指示があるまで待機を。フィムにはまだやってもらうことがあるので」
「……ウォッチポイント・アルファ」
「既に耳にしていましたか」
ウォッチポイント・アルファ。
中央氷原の地下にある広大な地下施設の入り口。アーキバスはその地点をコーラル集積地点であると推測し、既にとある独立傭兵に先行調査の依頼を送ったとスネイルは語る。
「ではフィムも休息を。先行調査が済み次第あなたにも突入してもらいます」
「……了解した」
様々な思惑が交差し、物語が終盤へと差し迫るターニングポイントであるウォッチポイント・アルファ。それはフィムにとっても同じである。
徐に解析作業を行っている現場を見下ろす。主力兵器の全ての解析が終われば、アーキバスは更なる戦力増強が見込めるだろう。それこそ既存のMTやACにも劣らない強大な戦力が加わるとなればアーキバスに多大な利益をもたらすだろう。
――そしてオールマインドにも。
「スネイル」
「なんでしょう」
「一つ頼みごとがある」
一歩、また一歩。
手を進めているのは何もスネイルだけではない。フィムの胸ポケットにしまわれている端末が一つの通知を受信していた。
『設計図完成度――99%』
「惑星封鎖機構の主力兵器のデータ。今後の作戦遂行のために貰えないだろうか」
□■□■□■□■
独立傭兵レイヴン……もとい621によってウォッチポイント・アルファの最奥。その行く手を阻む超高出力レーザー障壁が解除された頃、アーキバスからの依頼を受けてとある人物がその最奥を目指し、ウォッチポイントの深度3を目指していた。
「はぁ……オールマインドもしつこくなったものだ」
V.Ⅲオキーフは先程送られてきた無人機の残骸を踏みつぶしながら呟いた。
オールマインドの計画の協力者だったオキーフは、ここに来て明確に反旗を翻したことでオールマインドからの刺客を何度も送りつけられ、その全てを撃退していた。リリース計画の全貌を知り、早々にオールマインドに見切りをつけたオキーフは、アーキバスの依頼ついでにその計画を潰すべく行動に移そうとしていた。
そんなオキーフにはどうも腑に落ちないことが一つだけあった。
「こいつら、なぜ惑星封鎖機構の連中と同じような装備を?」
オキーフに襲い掛かってきた無人機はこれまで送り込まれてきたのとは違い、その装備の一部に惑星封鎖機構の執行部隊が所有していた武装やその機体構成が組み込まれていたからだ。
オールマインドのことを良くも悪くも知っていたオキーフは、アーキバスや惑星封鎖機構の監視の目を掻い潜ってまで惑星封鎖機構の主力兵器の情報を知るすべがないと踏んでいた。だが、どういう訳か明らかにオールマインドによって遣わされた無人機の数々には惑星封鎖機構の技術が組み込まれている。
「……内通者がいるのか? しかし誰だ?」
内通者の存在、その可能性がオキーフの脳裏に過った。
「ペイターか? スウィンバーン? ……ラスティやスネイルはまずない、メーテルリンク……は違う」
数々の思い当たる人物を思い浮かべては、いずれもその動機や証拠がないとして直ぐに記憶の淵に追いやった。
そんなことを考えるオキーフが深度3に向けて進んでいる中、またしてもオールマインドの勢力と思しきステルス無人機の群れと遭遇したのだった。
「クッ……やはりコイツ等、露骨に動きが良くなっている……」
これまで送られてきた無人機はどれも装備こそ目を見張る性能ではあったが、肝心の操作技術は劣っているように思えた。しかしここウォッチポイントに潜入し始めてから、明らかに無人機の性能が格段に上昇しているのだ。苦戦しつつも何とか撃破したオキーフだったが、ふと経った今撃破した無人機を見つめた。
「あの動き……どこかで見覚えが……」
今見つめている無人機の一体は、オキーフに対してブレードを用いた近接戦を仕掛けていた。
オキーフの放つミサイルの合間を縫うように回避して、近距離でブレードを叩き込む戦闘スタイル。そして何よりもオキーフの目を引いたのは――無人機が積極的に蹴りを叩きこもうとしていたことだ。
これまでただ手持ちの銃やブレードなどに依存した戦闘スタイルを取っていた無人機が、ACのスタッガー状態を誘発し、それによって生じた隙を突く。要するに無人機の動きがやたら人間らしくなっていたのだ。ふと脳裏に一瞬浮かんだのは――ヴェスパー最強の存在。フィムだった。
「――フィムが、内通者?」
パズルのピースが当てはまりそうで当てはまらない。そんな感覚をオキーフは味わっていた。
先日、オキーフは明確にオールマインドの計画に反旗を翻す前に、リリース計画において最も重要となる特別な強化人間についての情報を集めていた。幾つかの情報の中にはあのスッラの名前は勿論、計画に反旗を翻したとして抹殺対象に指定されている己の名前までもあった。
だがその中でも特に気になる箇所があった。
それはオキーフがリリース計画におけるオールマインドの残したファイルに目を通していた所、見覚えのない単語の羅列が記されているのを発見した時のこと。当初オキーフはそれをオールマインドの開発する新武器の案ではないかと思い、速やかにロックを解除しようとしたが、その情報を守るプロテクトが他の情報を守るそれと比較しても明らかに強度が桁違いに跳ね上がっていたことだ。
アーキバスの情報部門所属であったオキーフですら突破が困難な程にプロテクトされたその情報は、傍目から見ても不審極まりないものであり、オキーフも思わず冷や汗を流したほどだった。何重にも張り巡らされたプロテクトに加えて生態認証までも要求されるとくれば、流石のオキーフでも困難を極めた。
そんなオキーフだったが、ここに来て何故かフィムの存在が見え隠れしていることに改めて疑問が湧いていた。
現状アーキバスしか知らない筈の惑星封鎖機構の兵器情報、どこかヴェスパー部隊の面々を彷彿とさせるような動きをする無人機。どう見てもアーキバス内に内通者がいるとしか思えない内容の数々。と、ここまで来てオキーフはある重大な事実に気付く。
「……待てよ? 確かフィムは旧世代型の強化人間……そしてアーキバス内でも比較的自由に動ける奴だ。それに確か……スネイルから惑星封鎖機構に関する情報を得ていたな……?」
オキーフの脳裏には、ヴェスパー最強の存在フィムと、ここ最近の不可解なまでに精度を上げたオールマインドの無人機という二つが結び付こうとしていた。
オールマインドのリリース計画。
その前提条件には特別な強化人間……詳しく言うならコーラルを埋め込む強化人間手術を受けた者が必要だ。そしてフィムも同様にその強化人間の世代に該当する。そしてフィムという逸材をオールマインドが果たして欲しがらないだろうか、いやそんなはずはない。オールマインドは間違いなくフィムを勧誘していただろう。
もし仮にフィムがオールマインドの計画に協力していたのならば――
無人機の性能が上がったのも、ヴェスパー部隊ひいてはフィム自身の戦闘データを使ったから。
アーキバスしか知らないような情報を持っていたのも、フィムが横流ししたから。
そしてとあるファイルにて示唆されていた最悪の存在。オキーフがその概要を見ただけでもヤバイと判断する――“NEXT計画”。それを担う重要な存在と呼称されていた人物の正体。
その全てに辻褄が合う。そして今、パズルのピースが当てはまってしまった。
「……不味いな。スネイルに連絡を……!」
そのことに気付いたオキーフは速やかにスネイルに連絡を取ろうとした。傭兵支援システムのオールマインドは、フィムと手を組んで何か恐ろしいことを企んでいると。
しかし突如として通信妨害が発生し、外部と連絡を取ろうとしていたオキーフの出鼻を大きく挫いた。暫く呆然としていたオキーフだったが、はぁーっと、深く息を吸い込んで吐く重いため息を一つついた。
「オールマインドめ……やってくれたな」
すぐにそれがオールマインドによる妨害だと察知したオキーフ。しかし既に後退する道は閉ざされていると知り、そのままウォッチポイントの最奥に繋がる地下空洞へと足を踏み入れた。
踏み入れた直後、オキーフはカメラの端から迫りくるACを捉え、そしてそれが直ぐにオールマインドから遣わされた刺客であるとオキーフは悟った。
「お前は……なるほど。いよいよ贅沢な人選だ」
オキーフを襲いに来たのは独立傭兵レイヴン――621だ。
オールマインドの計画の協力者なのは調査していた時から既知であったが、いよいよその計画の主軸を以て自分を排除しに来たことにオキーフは思わずオールマインドに毒づく。
しかし今のオキーフには目の前の621に対する興味こそあれど、彼の脳内を支配していたのは襲撃者である621のことでも、オールマインドの計画のことでもなかった。
「お前は果たしてアイツを止められるか……」
誰に向けて放った言葉か、曖昧な口調ではあるが襲撃者に対して今出来るだけの最大限の警告をオキーフは言い放ち……そして621に立ち向かった。
“NEXT計画”
……さてなんのことでしょうね。