V.Ⅸになったのでナインボールを目指す   作:gnovel

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閲覧ありがとうございます。
また界隈に新たな火種が投下されていますが、私は元気です。何食ったらレッドガン食堂のババアなんて概念が生まれるんですかねぇ……。

それではどうぞ


集積コーラル地点突入前

 先手を決めたのは621だった。

 621はオキーフに迫る勢いを維持したまま蹴りを叩き込みにいったのだ。

 

「あぁ……そういえばお前だったな。アイツと対峙して生き残ったのは」

 

 オキーフは目の前に迫る灰色の脚部に一瞬、別の色を重ねてしまい思わずそう呟いた。四脚タイプのACバレンフラワーを操作するオキーフは621の繰り出した蹴りに対して、四つの脚部を回転させるような蹴りを返した。

 621を返り討ちにしたオキーフは、自らが得意とする空中戦を展開するべく四脚を変形させてそのまま空中に浮き始めた。一方蹴りを返されたことに驚きつつも、すぐさま体勢を立て直した621は振り返りざまに空に浮かぶバレンフラワー目掛けて小型2連双対ミサイルによる爆撃を行った。

 

「うんざりするが……まだ死ぬつもりはない」

 

 水中を泳ぐ魚のように空中で回避行動を取ったオキーフは、お返しとばかりに右手のバーストライフルの引き金を引いた。チャージが済んだライフルから放たれる三点バーストの実弾は着弾する前に621のブレードによってまとめて切り払われたが、オキーフは追撃に左肩に装備された垂直プラズマミサイルを放った。

 しかし621はブーストをうまく駆使し、素早く横にぶれるように動くことで回避した。お返しに既に再装填が終わったミサイルを放ち、ついでにバズーカの一撃も忘れずに撃ち放った。

 

「この動き……成程。アイツと戦って生き残っただけはある」

 

 バズーカの重たい一撃を回避することに成功したものの、ミサイルの攻撃を回避しきれなかったオキーフは思わずつぶやく。既に目の前にはこちらにあのアイスワームとの戦いで使用したアーキバスの新兵器――スタンニードルランチャーの照準をオキーフに合わせている621の姿があった。それを見たオキーフは思わず冷や汗が流れる。

 

「流石にそれを喰らうのは不味いな……!」

 

 直接戦闘に参加したわけではないが、少なくともアイスワーム討伐に一役買ったアーキバスの新兵器のことを耳にしていたオキーフは迷うことなくブーストを吹かして狙いから外れようと試みる。

 ズドン、と大きな音と共に放たれた大型のニードルはバレンフラワーの肩部を掠めるように飛んでいき、背後で大きな放電をまき散らした。回避することに成功したオキーフだったが、今の回避でホバリングするために維持していた燃料が尽き、回復をせざるを得なくなり、やむを得ず足場に着地しようとした。

 

 しかしそこを逃さないのが621である。

 

 バレンフラワーが着地した瞬間に放たれたバズーカは着弾し、思わずオキーフはうめき声を上げる。そのまま621はバレンフラワーの上を取るようにして肩のミサイル、再装填を終えたスタンニードルランチャーを次々と放っていった。

 オキーフはホバリング用のエネルギーを貯めつつ、地上からもプラズマミサイルや右肩に装備されたコンテナミサイルによる反撃を敢行した。被弾しつつもある程度ダメージを抑えるように地上でも立ち回り、バレンフラワーの上を取るべく浮き上がっている621目掛けて左手のプラズマライフルの照準を合わせ、そして放った。

 

 ライフルによって生じたプラズマ爆発によるダメージを受けつつも、621はミサイルの再装填が終わり次第すぐさまミサイルを放ち続ける。爆炎でオキーフの視界が塞がる中、621はスタンニードルランチャーを容赦なく接近してから叩き込んだ。

 

「くッ……!」

 

 621の容赦ない猛攻に徐々に追いつめられるオキーフ。621と衝突する前までオールマインドの無人機と幾度となく交戦してきたことで弾薬を消耗してしまったこと、機体へのダメージが少なからず蓄積していたことも相まってオキーフが劣勢気味だ。無論そのことを621とエアは知る由もないが。

 ダメージとスタッガーの蓄積を同時に回避すべくオキーフはプライマルアーマーを展開すると同時に最後に残ったリペアキットを惜しむことなく使い切った。しかし反対に621はリペアキットを一度も使用しておらず、更には明確な被弾も特にない。今も浮遊するエネルギーを貯めている為に地上にいるバレンフラワー目掛けて攻撃を仕掛けようとしている最中だ。

 

「オールマインドと関わるのは……止めておけ」

 

 621によるブレード攻撃を回避しながら放ったそれは、オキーフの本心からの一言だった。

 目の前の621に対してのものか、それとも禁忌を知ってしまった己自身への戒めであるのか、それはオキーフ以外判断できないことだった。

 

「リリースに夢を見るのも……止めておけ」

 

 ミサイルとライフルを交互に撃ち分けながら話すオキーフの口調からは諦めにも似た感情が込められていた。

 かつての自分が賛同していた計画、そしてそれに反旗を翻すまでの間、オキーフはコーラルリリースによる“未来”よりもうんざりする“今”を生きることを決断するに至った。そこに何があったのか、それを知るのはオキーフのみである。

 

「味気ないレーションを食い、泥水のようなフィーカをすする。うんざりするが……それこそが人間だ」

 

 体勢を立て直したバレンフラワーが再び浮遊すると、621はすかさず接近しブレードによる連撃を叩き込む。パルスアーマーが削られ、更にはスタッガーも蓄積したことで空中で体勢が崩れてしまったバレンフラワーに621の追撃が更に叩き込まれる。

 大きくダメージを受けて後方に吹き飛ばされはしたものの、再びブースターを吹かして距離を取ったバレンフラワーから大量のミサイルが621目掛けて降り注ぐ。

 

「ルビコンには……うんざりすることが多すぎる。お前も、そうは思わないか。……あぁ、予想外の出来事にしてもそうだ。ヤツが何を企んでいるのか……考えるだけで途方もないほどの寒気がして、うんざりする」

『……V.Ⅲオキーフ。厭世的に見えて彼は「今」を必要としている。私達の目指すものとは、相容れません。彼の言う「ヤツ」とは一体……』

「……少し、喋りすぎたか。どちらにしろ、俺は今、死ぬ訳にはいかない」

 

 621に吹き飛ばされはしたものの、巧みに機体を操縦して空中で体勢を整え直したオキーフは、再び大量のミサイルによる攻撃を目下の621目掛けて繰り出した。

 

『レイヴン!』

 

 621はブーストを吹かし、バレンフラワーとの距離を詰めることを選択した。

 飛来するミサイルの隙間をすり抜けるようにして的確に回避しつつ、バレンフラワーに迫る621。それに対してオキーフは後ろに回避するのでは間に合わないと判断、再び蹴りによる反撃を繰り出そうとしたが、今度は621がその先手を奪い、蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐァ……!? これは……!」

『レイヴン、止めを!』

 

 バレンフラワーの胴体目掛けて放たれた蹴りは操縦席のオキーフを揺らし、更に621が至近距離で叩き込んだバズーカによってバレンフラワーはスタッガー状態に陥った。その隙を逃さず621はブレードで姿勢制御に戸惑っているバレンフラワーの無防備な胴体を切り裂いた。

 

(お前なら……あるいは……)

 

 瞬間、バレンフラワーは遂に機体の限界を迎え、スパークが生じ始めた。

 

「ようやく……まともに眠れるか……」

 

 ダメージが限界に到達したことで胴体から連鎖的に爆発が発生。そして徐々に崩壊していく機体の中でオキーフの脳裏に思い浮かんだのは同胞の姿と――。

 

「先に行くぞ……ラスティ。そして……すまない。俺では……無理だった……」

 

 赤い悪夢からの目覚めだった。

 

 

 

 

□■□■□■□■

 

 

 

「ルビコン技研都市……」

「えぇ、まさかウォッチポイント・アルファの下に隠されていたとは」

 

 ブリーフィングルームに集まったヴェスパー部隊の机上には621から提出された調査報告書が並べられていた。

 

「まさかこうも綺麗に残っていたなんて……」

「ともあれその中心にコーラルはあるんだろスネイル?」

「えぇ、ですので既にあのレイヴンには先行調査の打ち切りを命じましたが……まぁあの害獣の飼い主が何かを企んでいるのでしょう。当然私も赴き、周辺に潜みながら機を待ちます」

 

 先行調査の打ち切りを命じたスネイルだが、少なくとも彼は端から621とウォルターのことを信頼しておらず、彼らに露払いをさせようとするのが目論見だろう。

 

「技研都市にはC兵器や防衛兵器の類がうじゃうじゃいるんだろ? 戦力が足りるか? この前もホーキンス……は解放戦線に。そしてオキーフがあの独立傭兵レイヴンにやられたんだろ? 後は誰が……」

「――そこで私ですよ。ヴェスパーの皆さま」

 

 声のする方に振り向いたフロイト。そこにいたのはレッドガンのG3五花海だった。

 胡散臭そうな風貌をしつつ、どこか油断のならない雰囲気を醸し出す五花海に対して、メーテルリンクは露骨に顔をしかめる。飄々とした佇まいの五花海はそのままブリーフィングルームの空席にどさっと腰掛けるとスネイルに説明を促した。

 

「先日、知っての通りレッドガンは第四隊長ラスティの手で壊滅しました。しかし我々も解放戦線の手によって第五隊長のホーキンスがやられました。そして……目の前にいるこの男が鞍替えを提案してきたのです」

「スネイル閣下! 流石にこの男は信用なりません! 幾ら鞍替えを宣言したと言ってもまだ繋がりがあるかもしれません!」

「おや、これまた厳しいですね」

 

 メーテルリンクからの非難も何でもないように受け流す五花海の態度にますますメーテルリンクは腹を立てる。先日とある事情から昇格したペイターもあまり良い表情とは言えない様子だ。……なおフロイトに関しては心底どうでもいいといった感じで、五花海が入室した時も一瞥しただけで技研都市に眠るACのパーツや防衛兵器のそれに思いをはせていた。そしてそれはフィムも同じだった。

 

「そして……そちらの方がV.Ⅰのフロイトですか!」

「ん、まぁよろしく」

「それから……おっと、これはこれは、貴方が噂の……V.Ⅸフィム」

「……」

 

 ごく僅か一秒にも満たない間目を合わせた五花海。

 

(これは……何とも……! 総長が危険視する訳です。吉兆が見えない……!)

 

 一瞬僅かに顔を険しくしたかと思うと、すぐさま元の調子に戻った。

 

「……なるほど。これは確かに総長が口にする訳です」

「へぇ、どんな風にだ?」

 

 フロイトが顔を上げて問いかけた。

 

「えぇ、それはそれはもう。私を含むレッドガンの全員に対して…『あのいけ好かない奴は貴様らの2000倍は強い!』と」

「2000倍なのはミシガンのさじ加減か?」

「さて、それはどうでしょう。……生憎総長は、転んで死んでしまったので。なんとも」

 

 ゴホン、とスネイルが咳ばらいをして話を戻した。

 

「話を戻しましょう。一先ず我々の目的は技研都市に存在するコーラルの確保、そして技研都市に眠る遺産、それの解析が目的です。当然道中に何もない何てことはないでしょう。そこで……その露払いを第六隊長メーテルリンク」

「はい!」

「――と、五花海に担当してもらいます」

「なっ……!?」

「喜んで」

 

 呆気に取られるメーテルリンクだが、スネイルの決定には逆らえず渋々ながらも承諾した。

 

「ん? それじゃあ俺とフィムはどうなる? ペイターやスウィンバーンはここに残るって話だろ? あの技研都市に待ち構えている技研の遺産の対処にはあの独立傭兵を使うのか?」

「いいえ、それはあくまであの害獣が我々の通達を無視した場合に任せます。フロイトとフィムには別場所で待機してもらい、あの害獣が来ない、又は万が一が起こった場合に出撃してもらいます」

「その万が一ってのは?」

「可能性は限りなくゼロに近いですが、私があの害獣に発見され、妨害を受けた時です」

「スネイル第二隊長! そのもしその時があれば……その後は私ことペイターに!」

 

 ペイターがいの一番にそう宣言する。

 共感性が皆無であり、自分が慕っていたホーキンスが死んだ時も悲しさと昇進できることの歓びを両立させることが出来るその精神は一周回って尊敬の域に達する。そして今のスネイルが621にやられることを望んでいることを隠さないその発言には流石のメーテルリンクも、そしてスウィンバーンも絶句していた。五花海も異常者を見るような目つきでペイターのことを見ていた。

 

 部屋の空気が絶対零度にまで冷え切った中、スネイルはため息をついた。

 

「はぁ……いいでしょう。その上昇志向の強さに免じて今回の無礼は見逃しましょう」

 

 スネイルも呆れを隠さない様子だ。そして本人からの直々の許しを得たペイターは「はいっ!」と元気な様子で返事をしていた。

 

「……彼も、強化人間の手術の影響で?」

「……あれは素だよ。残念なことに」

「あそこまでポジティブなのは一種の才能ですね……」

「ブレーキ役だったホーキンスが居なくなったのがここまでとはな」

 

 疲れた様子のスウィンバーンから得られた回答に対して、言葉を濁しながらもコメントする五花海とフロイトだった。

 

 

 

(さて……ここからだな)

 

 正史においてスネイルはこの後オールマインドの助言を受けた621に発見され、そのまま退場となる。遂にフィムの計画がいよいよ本格的に動き出すときが来たのだ。

 

(頼むから……これ以上ひやひやさせるなよ、オールマインド)

 

 オキーフ排除が621の仕業であると露呈した時は流石にフィムも焦った。

 しかし何とかフィムについて言及されることなく済んだことで内心ほっとしたが、同時にオールマインドに完全に主導権を握らせたのは間違いだったかとここにきてフィムは若干後悔し始めていた。

 

(ここまで来たら後は……なるようになるか)




※なお、一歩間違えればフィムの計画も破綻していた模様(事後処理が遅れていたら)

フィム「いいか? 俺のことが絶対にバレないようにしろよ? 絶対オキーフの事後処理は完璧にな?」
オールドンマイ「ワカリマシタ」

フィム「危うく計画が破綻しかけたんだが!?」
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