もしも禪院直哉が割と良いやつだったら 作:まつだ
「恵君おらんやん。俺が一番乗り? そんなことあんの? みんなゆっくりしとるなぁ」
東京に着いて、早速虎杖君を見つけたわけやけど、なんか呪霊狩りしとって派手に暴れとるから速攻で見つけられたわ。
何で呪霊狩りしとるかは知らんし、俺も一緒に呪霊狩りと行きたいとこやが、自分が追われる身っていう危機感があまりにもないもんやから、流石に忠告だけしといたろか。未来ある若モンが処刑されるとこなんて見たないしな。
「君らも何してん? 目立ちすぎやで逃げる気ないん?」
「逃げる?」
「何や知らんのか。君死刑やって。悟君の後ろ盾がのうなったから」
俺じゃ虎杖君の後ろ盾にはなれんけど、匿うところぐらいは用意したれるからな。
確信した。虎杖君はええ子や。この渋谷で追われる身でありながら呪霊退治をしとる。そんな子を死なせたくない。
「悠二、あの男の口振りからするに、おそらく追っ手の術師だ」
「……だよな」
なんかこそこそ話しとって聞こえんけど、とりあえずこの二人と行動しとけば、いずれ恵君と会えるやろ。
「あ……っ⁉︎」
その瞬間、ぬるっとした悍ましい呪力を上から感じ取った。
「あれ? 一人じゃないんだ」
その正体は『乙骨憂太』君。上層部から虎杖君の処刑執行人に任命された特級術師。
とんでもないプレッシャーや。まるで伝説のポケモンみたいやな。
なんやその反応? 御三家でもポケモンぐらいやるで。舐めんなよ。
「誰が虎杖君の……何?」
あかんな。このままでは虎杖君が殺されてまう。
「ちょい待って」
「あなたは?」
「禪院直哉、真希ちゃんのいとこや。君虎杖君を殺そうとしとるんやろ? 悪いけど阻止させてもらうで」
しゃあない。相手が特級術師いうても、腹括るしかないか。
「そうですか…………えっ?」
「は?」
「うん?」
三人とも何か驚いた顔しとるけど、まぁええわ。
とにかく今は乙骨君を阻止することや。
「虎杖君は殺させへんで! 未来ある若モンを守るのが大人ってもんや!」
「どういうことだ悠二……? この男追っ手ではなかったのか?」
「俺に聞かれても困るんだけど?」
(まさか禪院直哉さんも『
なんや、乙骨君喋らんし動かんくなったな。これが強者の余裕ちゅうやつか? それとも、俺らを全員倒して虎杖君を殺す策を練っとるんか?
(そういえば、真希さん言ってたな。禪院家の中に一人だけすごく良い人がいて逆に不気味だったって。あー、それがこの人なのか。そうなると話せば分かってくれそうだけど……)
「直哉さん。ちょっといいですか?」
「なんや?」
すると、乙骨君が近づいてきて、耳打ちしてきた。
「今から虎杖君を殺します」
「あかん!」
「そしてすぐに反転術式で蘇らせます」
「あか……え?」
今乙骨君反転術式言うたよな?
蘇らす……虎杖君を……?
「あー……」
なるほど、虎杖君の処刑執行は、上層部が乙骨君に縛りでも結んだんやな。
でも、乙骨君も虎杖君殺すの反対なんや。確かに、悟君の教え子やもんな、納得やわ。
「……皆まで言わんでええ。喋りすぎると縛りに抵触するかもしれんしな」
「ありがとうございます」
(ほっ、わかってくれた。直哉さん、本当に良い人だな)
「でも、蘇らす言うても一回死ぬとこ見るの嫌やで」
「なら、直哉さんは、虎杖君の隣にいる謎の人の足止めをお願いできますか? その間にサクッと殺すので」
「サクッと殺すって言い方なんやねん。まぁええわ。任しとき」
ちゅーわけで、俺がやるのは虎杖君の隣の謎の男の足止めや。
ま あんま手荒な真似したくないんやけど、これも虎杖君のためや。
「じゃあ、お願いします直哉さん」
作戦会議が終わり、乙骨君が虎杖君に襲いかかる。
俺は乙骨君を阻止しようとしたもう一人の謎の男を妨害し、二人を引き剥がす。
「見てたでさっき、『赤血操術』やろ?」
「!」
「なんで君がそれを持っとんのかは知らんけど、『穿血』以外はそんな怖ない。ほんで『穿血』を出すには『百斂』、デカいタメがいる。あとは言わんでもわかるやろ。詰みや、大人しくしといた方がええで」
「……お前は悠二を死なせないのではなかったのか?」
「状況が変わったんや。君を乙骨君と虎杖君から引き離すのが俺の役割。乙骨君は虎杖君を殺すけど、直ぐに反転術式で蘇らせるらしいで。だから安心しときや」
「む……っ、なるほど」
謎の男が安心した様子で、手を下ろした。
話せばわかる相手で良かったわ。あんまり人殴ったり蹴ったりはしとうないからな。殴るのは呪霊と呪詛師だけでええ。
「手荒な真似してすまんかったな。『縛り』のこともあるから、あんまりペラペラ喋るわけにはいかんかったんや。それより、君何者なん?」
「俺か? 兄さ、十人兄弟のな」
「十人⁉︎ 大家族やな」
「悠二もその一人だ」
「はえ〜。虎杖君のお兄さんやったか。俺にも兄さんがたくさんおってな」
「その話し方からするに、好きなんだな、兄弟が」
「好きやで。皆良い人ばかりや。今の俺があるのは兄さんたちのおかげってのもあると思うで」
「ふっ……お前、良い奴だな」
「そういう君こそええ兄貴なんやな」
話してたら意気投合したんで、二人で兄弟談義をしながら乙骨君を持つことにした。
その後、死んだ虎杖君引きずって来た時は驚いたけど、反転術式で無事蘇生、後は意識の回復を待つだけやな。
何はともあれ、丸く収まって良かったな。
「せや、俺帰りに上層部寄って乙骨君が虎杖君殺したって報告したるわ」
「え、良いんですか?」
「ええよええよ。俺も報告した方が信憑性増すやろ? それに、最近の上層部きな臭いねん。悟君の追放と封印解除が重罪ってのも、なんか仕組まれたもん感じるしな」
「ありがとうございます」
「じゃ、俺はもう帰るわ。真希ちゃんによろしく言うとって」
「わかりました」
嘘つくのは抵抗あるけど、虎杖君たちのためや。
術式使って爆速で上層部に寄り、報告して、爆速で禪院家に帰る。疾風迅雷やね。
「……あ、恵君に会うの忘れてたわ。まぁええか。そのうち会えるやろ」