セヴァストポリになったコルセア 作:イエローケーキ兵器設計局
翌朝、0600。総員起こしのラッパが鳴り響く。シャワーを0520に済ませたので特に問題はない。0900から航空部隊の演習が始まるのでそれまでやるべきことをやる。
まず点呼。これは問題ない……のだが、この鎮守府、ある程度発展している割に人員が少なすぎない?戦艦2(金剛、榛名)、空母3(加賀、赤城、大鳳)、駆逐艦6(暁、響、雷、電、陽炎、不知火)、潜水艦2(伊19、伊26)の13名+艤装が修復中で現在、戦闘不能な艦娘数名……何があった?重巡、軽巡は何処へ……水上機母艦や補給艦も居ない……工作艦すら……。
07:00。朝の鍛錬を終えて朝食。これが和食……。隅っこで食べよう。人の多いところは余所者が乗り込んできたのだから良くない。
「いただきます。」
『いただきます。』
「いただきます。」
栄養状態は良好。今日のメニューは白ご飯、豚汁、白身魚のフライ、揚げ出し豆腐……タンパク質過多?いや、そんなもの?
ひそひそ話が聞こえる。「アレが提督殺し……。」だの、「解放者」だの……あまり長居はしたくないものだ。
「ガングートさん、隣、よろしいですか?」
加賀と赤城、そして大鳳の三人組だった。
『スー、座ってもらう?』
「ここ座って♪」
ス私赤
ガ大加
図に起こすとこのような配置。テーブルは6人掛け。
「それで、わざわざここに座るということは何か用かな?」
「用が無ければ座ってはいけませんか?」
「いいや、自由席でなかったなら謝る。すまない。」
「あ、いえ。自由席ですので。」
「もー、喧嘩しない!」
「ははは、ごめんよ、スー。」
「あら、ごめんなさいね。」
「……。」
『大鳳さん、でしたっけ?』
「は、はい。」
『新参者ですが、どうかよろしくお願いいたします。』
「こ、こちらこそよろしくお願いいたします。」
特にそれ以上の問題は起きず、ニコニコしたまま食事会は終わった。威嚇……と言えるほどではないけれどちょっとだけ睨んでしまった……気をつけないと……。親睦を深める……親睦を深める……元いた整備会で親睦を深めたことなかったなぁ。まさか、こんな形で後悔する日が来るとは。
『スー、そっち引っ張って。』
「わかったー。」
兄さんは憲兵の処遇や航空部隊の演習等に関して打ち合わせ中。その間、同室の私達が掃除をする。例えば今はベッドシーツの取り替え。
(以下、記録無し)
一回戦。双方同時に偵察機の発艦作業を開始。加賀さんや赤城さんと比べると大鳳さんは練度が低い……らしいが、全くその様子は伺えない。双方共に自信に満ちている。今度は戦闘機の発艦作業に取り掛かる。それにしても艦娘たちはなぜ弓を使うのか。発艦作業は火器型ではいけないのか…………カタパルトの問題か。こんな話を聞いたことがある。火薬式カタパルトの実験では殺人的な加速に搭乗員が耐えられなかった、らしい。つまりはそういう事なのか。
加賀さんは高度5000mと高度2000mにF2Gを滞空させ、高度1500mに彗星艦爆(D4Y1)、高度100mに天山艦攻(B6N1)を飛行させている。
それに対して数で勝る赤城さんたちは零戦21型,62型(A6M2,A6M7)を高度4500m、高度1000mにそれぞれ位置させ、高度5500mに彗星艦爆、高度300mに天山艦攻を飛行させている……ふむ?もしかしてこの作戦……。
『ミッドウェー海戦……。』
「戦闘機や雷撃機を囮に急降下爆撃機で破壊するつもりらしい。」
『加賀さんも、赤城さんもミッドウェー海戦で沈んだ空母……。』
「お互いの偵察機が敵艦を確認、詳細な位置を確認したようだ。」
『5000mのF2Gと4500mのA6M2が交戦を開始……あー……うーん……ここで時間を使わされると……。』
「格闘戦に引き込まれているか。」
『……5000mのF2G、損耗率40%です。』
「21型は?」
『損耗率50%。』
「空戦は基本に正直に、素直に、か。」
『……嘘つきのブラックバーンですか?』
「ファイアブランドなら逆に酷かっただろうな。」
『重戦闘機は重戦闘機らしい飛び方をしないと。』
「それでも一矢報いられているのはカバーさせられる技量の高さ故だろうな。」
『赤城、大鳳隊の彗星が急降下を開始。加賀、回避機動を開始しました。』
「雷撃機は?」
『300mで火達磨にされています。』
「……1000mの62型の迎撃に間に合うか?」
『それは間に合うかと。問題は……急降下爆撃機。』
「間に合わないか。」
『急降下速度的には……機体を信じることができれば。』
「零戦の超過禁止速度を超えて降りられるか、か……。」
『加賀隊の彗星艦爆、緩降下を開始。天山艦攻、雷撃体制に入りました。』
「対空砲も必死だ。」
『赤城、大鳳隊の彗星、残数4。天山、全滅。』
「4発の投弾を確認。彗星の全滅……ヘチマ水か。」
「着弾。煙が晴れたらダメージレポート。」
『加賀、大破。』
苦い顔をしたボロボロの加賀さん。
「赤城、ロケットにより大破。」
『やりました。』
「操ってるの加賀さんだからね?」
『大鳳、なおも健在。』
「……演習終了。各自、補充と修理を行い、1200の昼食後、1300に再集合。解散。あと、加賀さん、セヴァストポリ、ちょっとよろしいか?」
『了解。』
「……。」
「いやいや、そう固くならなくて良い。加賀さん、この機関銃に見覚えは?」
「……!」
兄さんが手に持っていたもの、それは航空機の機銃。サイズからして……7.7mm系統だろうか。
「加賀さん、実はさっき憲兵から元航空兵だと聞いたが……本当かい?」
『え、そうなんです?』
「……誰に聞いたんですか?」
「それを言ったらおしまいだろう?」
嫌らしいニコニコ顔。これはこれで……。
「……はぁ。確かに私は元航空兵です。」
「志願兵か。」
「はい。海軍は今も昔も志願制ですから。」
「昔は戦闘機に乗っていました。九六式艦上戦闘機です。」
「Claude……。」
「クロード……そのように呼ばれているのですね。」
Claude(クロード)とは九六式艦上戦闘機の識別コードのこと。Cityでは後継機の零式艦上戦闘機がロールアウトするまで最前線を支えていた歴戦の淑女だった。前線を引いた今となっては鬼教官なんて今では言われているらしい。
「それはそうと……航空兵がどうしたのですか?」
「いや、ここに元F2G乗りが居てな。」
『え?』
「……なるほど。」
というわけで操縦方法の講義が始まった。やだよぉ……人に教えるの苦手なのに……。
「ピンチのときは目配せしてくれれば代わるから。」
『今すぐ代わって?』
「それは駄目。」
「……?よろしくお願いします。」
勘弁してほしい……。向上心溢れる目で見られても困る……表情にはなんにも写ってないし……。
結果から言うと……とても飲み込みが早くて助かった。一航戦の誇り……だったかな?がそうさせているのか、私にはわからないけれど、この空母型艦娘のプライドと吸収力は凄まじい。私も見習わなくては。
『というわけで……あの子の元搭乗員として、よろしくお願いします。』
「わかりました。やってみせます。」
「ふぅ……。」
元搭乗員じゃなくて本人(とも言える存在)なのだけれど……まあ、いっか。
1300。埠頭に再集合した演習部隊は再配置に着く。今度こそはうまくやってもらえると非常に助かるのだけれど……。
明らかに飛び方が違う。自信に満ちた飛び方。上昇速度、上昇角も胴体下に懸架した武装も変わっている。
一撃離脱戦法を重視してもらいつつ、格闘戦も2:1であれば可能と伝えた結果……襲いかかってきた零戦隊を損耗率2割で全滅させてしまった。
『あのー……妖精さんたちのパラシュートがまばらにしか見えないんですけれど……大丈夫なんですか?』
「た、多分大丈夫……大丈夫よね?」
想像以上のオーバーキル(パイロットキル)に加賀さんが焦っているように見える。もしかして……相手の妖精さん気絶してる?
「海面高度に敵機!」
「大鳳さん!回避!回避!」
「間に合わない!きゃあっ!」
『装甲空母大鳳、格納庫破損。』
「格納庫の延焼を防いで!急いで!」
クロスボウの予備マガジンを慌てて投棄する大鳳さん。その格納庫を攻撃したF2Gは既に2km先に。
「当たった……次の機体を。」
ティニーティムの癖の強さを加賀さんは至近距離で放つことでカバーしたらしい。
「いったい、どこから……!発見!目標、海面高度!撃ち方始め!」
対空砲を全て海面高度のF2Gに向け、上空への監視を疎かにする2隻。そのツケは直後に。
『赤城、大鳳、被雷により大破。』
「演習終了。両者、攻撃中止。」
急降下した天山がF2Gとは反対方向から最低射程限界スレスレから雷撃。機関部を破壊して速力を奪ってしまった。空母というものは速度が命で、足が止まってしまうと揚力不足で艦上機の発艦ができなくなってしまうという。まあ、あの長さの滑走路だとそうもなるかな……。
2000、夜間戦闘演習。偵察機からの情報だけが頼りになる状態。うーん見えない。
「演習始めー!」
3つ全て書くと長くなるので夜間戦闘演習は要点を記録すると、1時間互いに接敵せずにすれ違ったり離れたりを繰り返し、2時間経過したあたりでようやく哨戒飛行していたF2Gが大鳳さんの偵察機を発見、尾行。帰還したところを加賀さんの偵察機に連絡、照明弾の支援のもとにロケットで飛行甲板を破壊して主砲も攻撃機の爆弾の直撃で使えなくさせてしまった。まあ……一方的な破壊であった。
「スー、頭はちゃんと洗いな〜?髪が長いんだから。」
「うん、わかった〜。」
ここは大浴場。人間だった頃も、DOLLSだった頃も噂話に聞くだけで使ったことはない。だから……そう、初めて使う。
「タオルはお湯に浸すな。」
『は〜い。』
「こんばんは。」
「おや、これはこれは。赤城さん。それに……加賀さんと大鳳さんですか。」
「こんばんはガングートさん。」
ああ、神様。どうして私から豊満な果実を奪われたですか……大鳳さん、私と同じくらいぺたんこ……。
『同志、大鳳!』
「え、え……あー……同志セヴァストポリ……さん?」
あ、でも、兄さんに手を出したら駄目ですよ?
「大鳳さん、妹が申し訳ありません。」
どうして兄さんが頭を下げるの?
「いえ、こちらこそこの鎮守府に来てようやく同志、胸無し族に会えたので……。」
互いに頭を下げている……人間のコミュニケーションはやっぱりよくわからない。
「たのもー!」
浴室のドアを勢いよく開ける音。立っていたのは長身の女性。顔に傷を負った(スカーフェイス)彼女は白い軍服に身を包んでいた。
「提督代理は居るか!」
「兄さん……。」
騒然とする周囲。あんな堂々としてる男性初めてみただの初めて男性の身体見ちゃっただの色々聞こえる。
「セヴァストポリ、スーチュアン、心配するな。彼女はおそらく……新しい提督だろうな。」
とりあえず服を着てから話そうと言うことで脱衣所へ消えていく兄さん。
どうにもこの世界は男女比が変わっている、というか、「男性が女性に裸を見られることを恥じる」というん?となるような常識があるというか……いやまあ、逆でも逆じゃなくてもおかしい?のだけれど。それこそ、さっきの提督来襲だって男装麗人が混浴する男風呂に男性がドアをいきなり開けて入ってくるなり、女が混浴しているぞと叫ぶようなもの……?なるほどなぁ……?
「よろしくお願いいたします。夏姫提督。」
執務室の扉に耳を当てて盗み聞き。気がつけばみんな壁やら扉やらに張り付いている。
「……男性に言われるとこそばゆいな。」
「申し訳ありません、提督。」
「しょうがない……貴官も苦労してきたのだろう。自室に戻って休んでくれ。」
「ありがとうございます。失礼いたします。」
まずい、扉を開けられる……!
「……提督。」
「…………な、なんだ?」
「1つ教えてほしいのですが……以前どこかでお会いしませんでしたか?」
「……ちょっと待って欲しい………………。」
そのまま5分くらい沈黙が続き、1人、また1人と扉や壁から耳を離して帰っていく。
「いえ、無理に思い出していただかなくても大丈夫です。では、今度こそ失礼いたします。」
足音。扉から耳を離しておいてよかった。
「我らが同志提督はどうやら男性に弱いのかもしれん。少し距離を取ろう。」
廊下を歩きながら3人で話す至高の時間。そしてそれを打ち壊す大声。
「男の人とは何を話せば良いのー!!」
夏姫提督が執務室で叫んだらしい。近所迷惑だなぁ。
人物紹介 No.2:加賀
登録番号:不明
全備重量:N/Akg〜N/Akg
装備スロット1:A6M2→F2G(18)
装備スロット2:D4Y1(18)
装備スロット3:B6N1(45)
装備スロット4:D4Y1-C(12)
補助スロット1:バルジ
セヴァストポリやガングートが到着する前から居る古参正規空母。人間だった頃は海軍の航空兵(自称)であり、望んで艦娘になったという。正気だった頃の提督の厚意(提督にとっての義姉だからか?)によって艤装には改造が施されており、補助スロットが存在する。
基本的に艦載機を弓で射出しているが、最近は艤装の装甲化及び艦載機の重量増加により弓以外の射出方法を選択する可能性が浮上しているとか。
人物紹介 No.2.5:土佐
登録番号:抹消済み
全備重量:不明
装備スロット1:不明
装備スロット2:不明
装備スロット3:不明
装備スロット4:不明
加賀型正規空母1番艦の妹及び、加賀型戦艦2番艦。セヴァストポリが到着する以前に戦没した艦娘であり、故提督の妻であった。加賀曰く自分の上位互換だったらしく……よくできた妹だったとのこと。