西風騎士団のワーカホリック侍である俺の剣が、天を割くことは有名である。
だが、俺の『奥の手』について知っている者は、まずいない。
それはまず完成させたのがつい一年前な上に、使用に際したデメリットも大きいので、披露したことがそもそも少ないと言うのもあるが、例え使われたとしても、使われた側はそれが何であるか気付く事が出来ないからだ。
そして、使用する際のデメリットと言うのが、『確実に俺の存在が気付かれる事』である。
と言うのも、俺の奥の手は周囲にとんでもない高密度の氷元素をばら撒く必要があるので、潜入任務などでこれを使おうものなら、その場は何とか突破できたとしても『侵入者がいる』と言う事には気付かれてしまう。
しかも神の目を持っている人間がいれば元素視覚で追跡もされてしまう可能性もある上、その技を使った直後は消耗が激し過ぎて動けなくなってしまうので、強いは強いが使い所に困る、言わばロマン砲的な技なのだ。
だから、俺はタイミングを待つ必要があった。
そして、今がその時である。
つい数分ほど前、トーマが配下の者に呼ばれ、この場を離れた。
盗み聞きした内容によると、どうやら旅人が綾華嬢の依頼を終え、神里家の屋敷に戻って来たらしい。
奴は俺にこの場に留まっておくよう指示したが、このような絶好の機会を逃すわけがない。
申し訳ないが、逃げさせてもらう。
「………………」
息を深く吸い、精神を統一させる。
ほんの少しの迷いすら、この技には致命的な欠陥となってしまう。
自らを極限の集中状態にまで至らせ、完全に心を無にし、自然と溶け合い────そして。
海から飛び出た岩礁に背を預け、座り込む。
……ふぅ、久々だったが、何とか成功できた。
しかし、やはり消耗が激し過ぎる。
いくら強力な技とは言え、一発でこうも動けなくなってしまうとは、まだまだ俺も未熟らしい。
「ッ、氷元素!? なんて強さだ……体が凍るッ……!!」
「ぐぅっ……いや、待てッ、あの学者は何処へ消えた!?」
遠くの方から、忍者達の慌てる声が聞こえて来る。
「クソッ、綾人様に報告だ! あの学者、只者ではない!」
「早柚、お前は元素の跡を辿れ! この強さの元素だ、移動したのなら痕跡が残っているはず!」
……まぁ、やはりそう来るだろうな。
一応ブラフは幾つか張っておいたが、このままここに居ては危険だ。
鳴神大社の方であれば、雷元素も濃い。さっさと移動して、早くこのこびり着いた元素を落とさなくては。
ちょっと色々あり過ぎて小説どころじゃ無い状態になってるので、次回からちゃんと書くから今はこれで我慢してくれ!