30話
これこそが、西風騎士団のワーカホリック侍たる俺の──剣士、梅山義徳たる俺の夢だ。
人生における最終目標と言い換えても良い。
これを定めたのは13か、14か、はたまた15だったか……
遠い昔のことだ、あまり詳しく覚えてはいない。
だが。何にせよ、その時から俺の鍛錬は、ずっとその為に行われていた。
天を斬るも、世界を斬るも、時間を斬るも、全ては
いわば単なる通過点、幾重もある超えるべき壁のうちの一枚でしかない。
そして、俺の睨めつける先、ヤシオリ島に、その超えるべき壁がもう一枚ある。
遥か高く、高く、高く……いつか挑むとは思っていたが、しかしその余りの高さ故に逃げる事を選択し続けた、俺にとって目下最大の壁。
俺は今日、何があろうともその壁を超えねばならない。
俺が超えなければ、何百人、何千人と言う人々が迷惑を被る。
俺が超えなければ、悲しむ者達がいる。
俺の勝利を願っている者がいる。
「超える」
絶対に。そう、絶対にだ。
どんな手を使ってでも絶対に超える。
出し惜しみなどしない。初手から全力だ。
雷神も、岩神も、ファデュイも、何もかも斬り伏せる。
そして、モンドへと帰る。それでハッピーエンドだ。
「……ヨシノリ」
決意を改めたところで、ディルックさんから声がかかる。
振り向いてみれば、神の目持ちの面々がずらりと揃っていた。
全員が全員、覚悟を決めた面持ちだ。気配も凪いでいる。
頼もしい事この上ない。
「準備は良いな?」
「当然。全て万全だ。ウェンティとの調整も問題なく済んでいる」
万葉少年のおかげで、心に残っていた恐怖心は綺麗さっぱり消え失せた。
今の俺に精神的な綻びは一切無い。
体の方も、当然調整済み。
違和感の一つも無ければ、疲れの一片も無い。
身体は軽く、俺の思うままに動いてくれる事だろう。
絶好調と言うやつだ。
「よし。では、出航だ! 帆を張れ! 錨を上げろ! ウェンティは風だ!」
「りょーかい!」
ディルックさんは鷹揚に頷いてから振り返り、船員達に号令を出せば、船員達はテキパキとあらかじめ割り振られていた役割をこなしてゆく。
一切の無駄も見受けられないその動きは、船の出航準備を最高の効率で進めてゆき、一分が経つこともなく帆は張られ、錨は完全に巻き上げられた。
ウェンティがライアーを奏でれば激しい突風が吹き、船はぐんぐんとその速度を上げてゆく。
「皆さん、どうかご無事で!」
「アタシらに留守番を任せるんだ! 勝たなかったら承知しないよ!!」
海祇島から、声が聞こえてくる。
見てみれば、珊瑚宮、万葉少年、北斗船長、抵抗軍、南十字船団の皆々。その他この三日で世話になった方々が浜辺に立って、こちらへと手を振っていたので、俺も大きく手を振り返す。
「……さぁ、決戦だ」
厳しい戦いになるだろう。
だが、勝算はある。勝ち筋もある。
となれば、後は勝ち筋を無理矢理にでも通るまでだ。
俺が睨んだ島の先、遠い空で、ピシャリと雷鳴が轟いた。
はい、ヤシオリ島決戦編です。
これが終わったら稲妻編は終わりになるでしょう……が、学校の友人からスメール編とフォンテーヌ編は絶対に書けと言われてるので、完結はしないんじゃないかな(他人事)