千早愛音vsクソカスメンヘラ彼氏   作:ANON TOKYO

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続 き ま し た


千早愛音vsクソカスメンヘラ彼氏のSNS

「ねえ愛音。この前愛音のバンドメンバーの女が俺に『おもしれー男』って言ってきたんだけど、あれ何? こんな暗い世の中で必死に息をしてる俺のどこが面白いわけ? ほんっと最低。愛音、あいつと縁切って」

「えぇ……………………」

 

 えっと……千早愛音です。優夜くんも、今日も絶好調みたいです。

 いや、別に楽奈ちゃんのそれは褒め言葉じゃ……? まあでも、全てを悲観的に捉える優夜くんにとってはマイナスな言葉に聞こえるかもな。

 てか優夜くんって面白い? 話しててぶっちゃけつまんなくない? いやまあ、たしかにメンヘラ極めすぎてもはやギャグみたいになっちゃってる時あるけど……

 

「なんで何も言ってくれないの? そっか、愛音は俺のことおもしれー男って思ってるんだ? このまま俺がM◯グランプリ初出場で優勝飾っていつのまにかお茶の間に大人気になって定期的にSNSで持ちネタがバズる有名お笑い芸人になっちゃってもいいんだ?」

「う〜んごめん。優夜くん割とおもしれー男の才能あるかも」

「愛音も俺を見捨てた! あーあ、俺の味方なんて、どこにもいなかったんだね」

 

 ちょっと自分の予想と違う言葉が返ってくるだけですぐ味方とか敵とか決めつけようとするの、正直やめてほしいなぁ。

 でもまあ、このキャラを極めればメンヘラ芸人としてそれなりの地位まで上り詰められ……流石にそれは優夜くんに悪いか。

 

「てか、あのバンドメンバーもそうだけど、みんなして俺のこと馬鹿にするんだよね。俺はただ、俺という人間の存在証明をしてるだけなのに」

「……その言い回しの時点でちょっと面白いかも」

「愛音?」

「あ、あはは、なんでもない〜……」

 

 危ない、また優夜くんの地雷踏むとこだった。優夜くん繊細だから、気をつけてあげないとだった。

 するといきなり優夜くんは不機嫌そうに私の携帯を手に取り、何かを調べ始める。

 

「見て愛音。これ、俺のつぶやきなんだけどさ。俺はただ心の叫びを文字にしてるだけなのに名前も顔も知らない奴らに、定期的に馬鹿にされてるわけ。本当に最悪だよね、インターネットなんて」

 

 そう言って優夜くんがこちらに手渡してきたスマホの画面には、優夜くんのアカウントが。これってつまり、見て欲しいってことなのかな? 

 というか優夜くんがなんかすごい見て欲しそうにしてるし、多分そういうことなんだろうな。私は上の方にあるつぶやきを、とりあえず一通り読んでみることにした。

 

『ほんと最悪。外歩いてたらそこらへんの犬におしっこかけられたんだけど。何? 俺なんてトイレ同然ってこと? 俺のこと、おしっこかけてもいいってぐらい親しみ持ってくれてるってわけ? ほんと最悪。小さくてふわふわで可愛かった』

『今日はちょっとダメかも、なんていうか、しんどい、苦しい、死にたい、だから、河川敷のゴミ拾いしてた、ちょっと綺麗になった』

『親まじうざ、落ち込んだ時に俺の好きなハンバーグ作ってくれるとかマジでタイミング悪、ありがとう』

 

 だめだめ、絶対笑っちゃダメ。優夜くんはこんなにも必死なんだから、微笑ましい気持ちになっちゃダメ。

 正直返信欄にある『普通にいい子で草』『生を謳歌してそう』『おもしれーメンヘラ』というつぶやきに思わずいいねを押してしまいそうになるけど、我慢、我慢。

 優夜くん、とっつきにくい性格してるけど割と親しみやすさはあるんだよな……なんだかんだ優しいし。いい子だし。

 

「優夜くんってさ、一周回ってポジティブ思考だよね」

「は?」

 

 まあ、メンヘラであることに変わりはないんだけどね……でも、このアカウント見たら楽奈ちゃんが優夜くんのことをおもしれー男って言う理由も、なんかわかった気がする。

 この病んでるようで人の良さが滲み出てるつぶやき、正直癖になりそうだし。私はフォロー、と書かれたボタンを押して、その画面を優夜くんに見せる。

 

「へへっ、優夜くんのアカウント、フォローしちゃった!」

「あ、あ、愛音、えと、それは、困る、別に俺、フォローされるようなこと」

「えー? 恋人なんだからいいじゃん! 優夜くんも私のアカウントフォローしていいから、ね?」

「……や、ちが、その、ちがう、えと」

「別に渋ることなくない? そんなに渋るってことは、もしかして私に言えないことでも呟いてたり〜?」

 

 いたずらっぽくそう言うと、優夜くんはさらに焦る。こんなに取り乱す優夜くん見たことないし、もしかしたら、そのアカウントを使って──

 その瞬間、嫌な考えがよぎる。いや、優夜くんにいたってそんなことはないと思うけど、それは私が思ってるだけだし……胸の奥が、ちくりと痛む。

 ああ、そっか。今まで優夜くんのことちょっとめんどくさいだの困るだの言ってたけど、私って、割と優夜くんのこと好きだったんだな。こうなるくらいなら、こんな冗談言わなきゃよかった。

 苦しそうな顔をした優夜くんが恐る恐る口を開く。うん、大丈夫。私は、覚悟できてるから。たとえ何を言われても──

 

「……名前は伏せてるけど、愛音との思い出、たくさんつぶやいてるから、その、愛音に見られるのは、恥ずかしい……」

「そっかぁ〜〜〜! 任せて、全部いいねするから!」

「え、待って愛音、ちょっと、すごい勢いで遡ってる、まって、見ないで、俺のつぶやき! 恥ずかしいから……!」

 

 かなりレアであろう恥ずかしがる優夜くんの写真を連写しながら私は優夜くんの惚気ツイート全てにいいねをつける。優夜くんはやめてって言うけど、絶対やめてあげない! かわいいし!

 それからというもの、落ち込んだ時は優夜くんの照れた顔と一緒に優夜くんのつぶやきを見返すのが日課になったり、なんてね。




急に愛音ちゃんとクソカスメンヘラ彼氏が書きたくなったので書きました!続いたら続きます
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