次の日、なんかマスコミが校門の前を陣取っていたので気配を消して中に入った。
クラスの皆はマスコミの質問を受けたらしい。
だいたいオールマイトの授業についてだが···
「やっぱりオールマイトの人気ってすごいんだねぇ」
と、言うと緑谷君が凄いてもんじゃないよ! と興奮気味に語る。
どうやら彼のオタク魂に火をつけてしまったらしい。
こういう男子は私の中学校にもいたけど、ここまでヒーローの熱意に溢れて、それを原動力に雄英高校に入る子も珍しいと思う。
いや、もしかしたらこれが普通で、私みたいに裕福になりたいからという邪な思いで入る人は少ないのかもしれない。
「意識の差かぁ···もっと鍛えないと!」
邪念は特訓でカバー。
そうこうしていると相澤先生が入ってきて、今日のホームルームは学級委員長決めをしてもらうと言われた。
委員長···普通なら雑務を押し付けられる役回りだが、ヒーロー科では集団を導くトップヒーローの素地を鍛えられる役である。
皆一斉に手を挙げてやりたいやりたいと言う。
ただ場が混乱するだけだったが、飯田君が多数決で決めるべきと言い始めた。
自分に投票有りらしいので皆自分に入れるだろうから、次の投票で自分以外に投票に切り替えれば良いやと思っていたら、なんか緑谷君が3票入って委員長に、八百万さんが2票で副委員長にあっさり決まった。
昼食、デラックス定食を特盛で注文してバクバク食べていると警報が鳴った。
『セキュリティ3が突破されました! 生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』
だそうだ。
こういう時集団はパニックになる。
入口は狭いのに皆押し合いになって···
私は食べ途中の物を持って壁を歩いて食べながら様子を見る。
窓から見るとどうやらマスコミがセキュリティを突破したらしい。
「熱意凄いなぁ···あむ」
「はい、ごちそうさまでしたっと。別に人が侵入してきたくらいで大げさな。まぁヴィランが侵入してきた可能性もあるのか···んん~」
職員室に見慣れない気配を一瞬感じた。
「先生方···いや? なんか入り込んだな」
一応何か居ても良いように、虫に変化の術で化けて職員室に向かってみると、先生達はマスコミの対応で出払っており、黒い煙の男と顔に手を付けた男が立っていた。
何かを手に取ると、煙の男と手を付けた男は消えていった。
「なんだったんだ?」
私は彼らが漁っていた場所を確認すると授業計画の紙が数枚なくなっていることに気がついた。
「···相澤先生に伝えておこう」
相澤先生に職員室に2人の不審な男が居たことを説明すると、逆になんで屋外に避難しろと言われているのに職員室に向かったんだと怒られた。
そりゃそうだ。
もし不審者がヴィランだった場合自ら人質になりに行くようなものだ···迂闊な行動を反省しなければならない。
職員室の監視カメラで確認したが、その様な不審な男達は居らず、私が侵入して授業計画の書類を見ていた映像が流れたらしい。
「え? えぇ?」
相澤先生から変な行動をするなとこっ酷く叱られた。
ちなみにこの後緑谷君が委員長は飯田君が良いと言い出し、私が職員室に行っている間に飯田君が避難誘導で活躍したらしく、そのまま飯田君が委員長に就任したのだった。
その次の日の放課後、私はまた相澤先生に呼び出しをされていた。
「ほら、バイト先の案内だ。近くにヒーロー事務所を構えるデステゴロさんがお前の要望を聞いて面接してくれる事になった」
「ほ、本当ですか! ありがとうございます」
「···一応言っておくが、しっかり活動を調べてから行けよ」
「はい。それは勿論」
書類を受け取ると住所の書かれた紙を渡された。
デステゴロさんの活動を直ぐに調べる。
「ほうほう、ほう?」
近所である事を除けば仕事が誠実くらいしか情報が出てこない。
言ってしまえばどこにでもいる中堅ヒーローという感じだろうか?
「会わないとわからないか···」
とりあえず面接をしてくれるらしいので、そのままデステゴロさんのヒーロー事務所に向かう。
インターホンを鳴らすと写真と同じデステゴロさんが出てくれた。
「すみません、雄英高校の廻流瞳です! 面接を受けさせてくれると聞きまして来ました!」
「お、おう。まぁ入んな」
失礼しますと事務所に入る。
お茶を出し、苦学生の支援活動はしているが、雄英から依頼が来て正直驚いたとデステゴロさんは話す。
「一応書類には目を通したが、昨日の今日で来るとは思わなかった。面接予定日今週末ってしたと思うが···」
「書類には今日となっていましたが···」
「あちゃー、すまん、俺のミスだ。悪いな」
「いえ···」
「幾つか質問するが良いか?」
「はい!」
デステゴロさんがして欲しいのは裏方の事務作業員だったが、雄英高校のヒーロー科の生徒ということで、ヒーローの活動も参加したいかと聞かれた。
できれば参加したいですが、能力不足だと思われるのでデステゴロさんが許可した場合のみ参加という形を取りたいと言う。
「雄英の学生と聞いていたから向上心の塊みたいなのを想像していたけどそうではない感じか?」
「いえ、向上心はありますけど、ヒーロー科に入って間もない一般人が下手に事件に関与しても足を引っ張る結果になると思いまして」
「しっかりしてるな。俺が学生の頃は仮免取ったらひたすら現場に送られたんだがな···よし、みっちり鍛えてやる! 覚悟しろよ」
「はい!」
こうしてデステゴロさんの事務所でアルバイトをすることになった。
「おはようございます!」
朝からデステゴロさんの事務所に顔を出す。
「あ? 学校はどうした?」
「今から行くんですけど、私個性の関係で分身できるんで、分身置いていきますね。私と同じ能力持っていますので事務仕事のサポートはできると思います」
「デステゴロさんよろしくお願いします!」
「お、おう」
「じゃあ学校行ってきます!」
と本体は学校の方に走っていった。
「とりあえず中に入れ。どんな事が出来るか確認したい」
「はい!」
分身の私は中に入り、昨日説明された事務所の掃除から始める。
「分身って言っていたが、分身はどれくらい頑丈なんだ?」
「うーん、人が死ぬダメージを受けなければ本体の解除がなければ消えませんね。ちなみに知識とかは消えた時に本体にフィードバックされますので教えられた事を忘れるとかはありません。分身の数だけ経験を積ませる事が出来るって感じですかね」
「それは凄いな。とりあえず掃除が終わったら事務仕事を教える。話から聞くに筋トレとかはしても効果はない感じか?」
「一応体の動かし方みたいなのは蓄積されますので、格闘技を覚えたりとかはできますが、筋トレはあまり効果が無いですね」
「だったら事務仕事をバンバンこなしてもらうほうが為になるか」
「はい! 頑張ります!」
雄英高校に通いながら、デステゴロさんの所でバイトを始め、数日。
ルーティンみたいなのができてきた。
まず分身を2体出す。
1体は家で家事をしたり先生達が残した本を参考に勉強をする分身とデステゴロさんの事務所でアルバイトをする分身、本体は雄英高校で勉強に勤しむ。
雄英高校で授業が終わると少し早い夕食を雄英高校の食堂で食べてからデステゴロさんの事務所に向かい、分身と入れ替わる。
そこでトレーニングをして時々デステゴロさんの地域の見回りに参加させてもらう。
毎回先生に使用届を出してコスチューム姿でデステゴロさんと一緒にパトロール。
事件が起これば野次馬を現場に来ないように封鎖の手伝いをして戦闘には参加しない。
そして夜まで筋トレとかトレーニングで鍛錬をし、晩飯や朝食の食材を買って家に帰る。
家ではニュースを見たり、今日習った事の復習をしたりを分身を増やしながらして疲れ切って泥のように眠るという日々を送るのだった。