私が中央広場の上空に移動すると、相澤先生が脳みそ丸出しのヴィランに拘束されていた。
よく見ると13号先生も負傷している。
ヒーローの先生方がピンチに陥っている状況に私は体が先に動いていた。
「先生から離れろヴィラン!」
私は上空から飛び蹴りをかまして脳みそヴィランに攻撃するが、結構な威力の一撃だったのに、ヴィランはびくとも動かない。
「逃げろ···廻流」
頭から血を流している相澤先生からそう言われるが、そんな状態の相澤先生をほうっておくことはできない。
なんとしても助けないとという気持ちが働く。
「先生が生徒に助けられる···良いじゃねぇか。まぁ殺すがな。やれ脳無」
相澤先生を押さえつけていた脳無と呼ばれたヴィランの腕が私に振るわれる。
私は身代わりの術で近くに転がっていたヴィランと入れ替わり、手が離れた隙に相澤先生を救出する。
「相澤先生大丈夫ですか!」
「すまん、助かった。廻流そのまま避難しろ!」
「相澤先生は!」
「まだ他の生徒が逃げ切れてない。俺が奴を止める!」
「無茶言わないでください! 頭蓋骨がヒビ入ってるんですよ! 腕もろくに動かないでしょうに! 分身!」
「あいよ!」
「相澤先生の治療をお願い」
「合点」
私は分身に相澤先生を任せると、脳無の前に出る。
「師弟ごっこは終わったか? 震えてるぜ女」
「武者震いだよ!」
「そうか···脳無殺れ」
私はすかさず指銃で脳無に攻撃をし、急所をピンポイントで撃ち抜いたが、脳無には全く効いていない。
「な!?」
「こいつは対オールマイト用に作られた怪人だ。ガキの攻撃なんか効くかよ!」
と顔に手を付けた男が叫ぶが、脳無の腹部が抉れた。
「は?」
それを見ていた人達も衝撃的な光景に困惑する。
「螺旋丸!」
脳無は回転しながら吹き飛ぶ。
「おいおいまじかよ。学生にこんな強い奴が居るのかよ···」
「ヴィラン、次はお前だ!」
「脳無起きろ」
「腹部を抉ったんだ! そう簡単には起き···え?」
吹き飛ばしたハズの脳無の拳が目の前に迫っていた。
私は見聞色の覇気でギリギリ察知して受け流す。
その受け流したエネルギーを使い後頭部に裏拳を叩き込むがピンピンしている。
「···マジか!」
脳無が再び拳で攻撃を仕掛けてくるが、私も武装色を纏い、拳で対抗する。
インファイト。
脳無の攻撃を喰らいながらもこちらも拳で対抗する。
硬化をしているが、正直振動がヤバい。
一発一発の威力がゼファー先生の拳に匹敵する。
ボコボコボコと殴り合いをし、顔面や腹部に結構良いのを食らわせている筈なのに全然効いてない。
(どういうことだ? 殴ったそばから回復しているのか? でもこのパワーは個性あってのじゃないのか? 脳の力のリミッターがハズレてるのか? いやそれ以外にも何かあるのか!)
私が脳無と殴り合いをしていると、黒い霧の男が手の男に何かを伝える。
「···ちっ! 黒霧、お前がワープの個性じゃなかったら今頃消してたぞ」
「申し訳ありません死柄木弔」
「···ゲームオーバーだ。帰るか」
「帰るんだったらこいつを早く消してくれないかなヴィランさんよ!」
「なんだ喋る余裕があんのか女」
こちらに注意が向いた瞬間に私の控えさせていた分身が手の男に突っ込む。
「死柄木弔危ない!」
黒霧と呼ばれた男が前に出て私の分身から死柄木と言う男を守るが
「にへへ、かかったな!」
分身の全身には起爆札が貼られており、大爆発を起こす。
黒霧は爆発する瞬間に私の分身をワープさせようとするが、爆発の一部は転送しきれずに受けてしまい、黒霧と死柄木は吹き飛ばされる。
司令塔を失った脳無の動きが止まった瞬間にもう一度螺旋丸を今度は心臓部にぶち込み、螺旋丸の威力で背中が破裂し、臓物が吹き飛ぶ。
一緒に脳無本体も吹き飛ぶ。
「やったか?」
煙が晴れるとボロボロになっていたが黒霧と死柄木はヨロヨロと立ち上がり
「殺す。必ずお前だけでも殺す」
と、殺意がマシマシになっていた。
死柄木が黒霧に手を突っ込むと、私の背後から死柄木の手が伸び私の背中に触れる。
実戦経験の少なさからか、見聞色の覇気の練度不足か、ワープの個性の応用まで意識が回らず、死柄木の五指が私の背中に当たる。
パキパキパキ
私の背中が焼けるような痛みを感じた。
ほんの一瞬で、武装色を貫通してのダメージが入った事に驚愕しながらも、回し蹴りで手を払う。
「ぐっ···いってぇ!」
「こっちも痛いわ!」
でもこれでわかった。
死柄木という男の個性は触れることにより対象にダメージを与える個性、黒霧はワープ、脳無はよくわからんけど回復持ち。
背中は見てないからわからないけど、体操服や下着、ブラまで破れて意味がなくなっているので服を脱ぎ捨てる。
相澤先生の腕も皮膚が無くなり、筋繊維や血管が見えていることから、背中の一部の皮膚も持っていかれたと仮定する。
ムクリと起き上がった脳無を見て、臓物撒き散らしたのにまた復活するのかよと驚愕しながら打開策を考える。
武装色が破られるなんて思いもしなかったが、今の蹴りで、相手がダメージを受けていることから、脳無以外は物理攻撃が効く。
厄介なのはワープ。
ただ黒霧という男も完全に物理攻撃が無効というわけではない。
爆風に巻き込まれてダメージが与えられたということは実体がある。
時間が経過すれば異変を感じた先生方が来てくれるかもしれないが、そんな隙を与えてくれるかはわからない。
この時私は知らなかったが、飯田君が既にこの場から脱出して先生方を呼びに行ってくれていた。
「おい脳無、あの女を抑えろ」
脳無がまた私に突っ込んでくる。
黒霧にまた死柄木が手を突っ込んでいるのでこちらに攻撃が来ると思い、分身を出して地中に逃げる。
私の分身は脳無は無視して、黒霧経由で手を出してきた死柄木に一撃を与え油断させるべく、死柄木の五指に触れる形で思いっきり手を殴った。
パキパキと分身が崩れる音がする。
死柄木という男の高笑いと周りに居た生徒の悲鳴が聞こえてくる。
いや、私は地中にいるんですけどね。
土遁の術で地中をかき分けて空間を作り、分身に医療忍術で治療して貰う。
「本体、背中めっちゃ出血してるから止血して」
「あいよ」
背中の傷を止血し、皮膚の再生治療を行う。
止血と皮膚の損傷くらいは私の医療忍術でも治せる。
なんか上でテキサススマッシュというオールマイトの声が聞こえた気がしたので、穴を掘って少し遠くから顔を出すと、オールマイトが戦っていた。
一時的に脳無にオールマイトが捕まったりもしたが、轟君、爆豪君、切島君に緑谷君が救援に入り、窮地を脱し、私があれだけダメージを与えていた脳無をインファイトからのアッパーでUSJのドームの外に吹き飛ばしてしまった。
その後他の先生方も到着して黒霧と死柄木の2人は他のヴィランを置いてワープで逃走してしまった。
そしてセメントスがオールマイトの周りをセメントで囲い出した。
私のいる位置からはオールマイトの様子が丸見えだったが、なんかオールマイトから煙がめちゃくちゃ出るとガリガリの男が出てきた。
「オールマイト···」
私が感じていた病人の様な感覚の意味がよくわかった。
オールマイトはやはり病人だった。
病人が無理をして平和を維持している。
「···」
私はボコボコと地面から這い出る。
「か、廻流さん!? 大丈夫なの!?」
なんかミッドナイト先生がおばけを見るような目で私を見るが、普通に生きてますから。
「ヤバいと思ったんで地中に緊急脱出しました。一応応急処置はしたんですけど、結構血を流したんで保健室行っていいですか」
「大丈夫? 歩けるの?」
「それは大丈夫です」
こうして雄英高校襲撃事件は幕を下ろした。
私は保健室で輸血されるのかと思ったら、点滴されて応急処置した皮膚の上からリカバリーガールに治癒してもらい、放課後までベッドで眠るのだった。
ちなみに翌朝普通に登校したら皆からめちゃくちゃ心配されて、一部から本当に生きているかと疑問を持たれた。
まぁ確かに分身が粉々に砕け散ったらそりゃ死んだと思うわな。
敵を欺くにはまず味方からとも言うし···って言ったらめちゃくちゃ怒られた。
ちょっとしたジョークなんだけどなぁ···