ディバインゲート:デザイア   作:モファイン

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プロローグ:水

 ぽつり、ぽつり。雨が降る。ずっとずっと降っている。誰かに降ってないじゃないかと言われた事がある。そんな時、僕はこう返した。

 

「きっと、僕だけに降り続ける雨なんだ」

 

 僕を見て、得体の知れない存在の様に見る視線。人の様で、人じゃない様な気配を醸し出している、そう訴える人。

 

「――当たり前じゃないか」

 

 だって、僕は――

 

 大きな罪を犯した、大罪人なのだから。

 

 

 

『君に渡したい物がある』

 

 ある日――晴れていると久しぶりに感じた日。どこか煌びやかな風格を持った、金髪の男が僕にそう言って小さな球を渡してきた。

 どうして僕に。僕は誰かに施しを与える資格も与えられる資格もないのに。だけど、彼はそうするのが当たり前だと言うかのように語った。

 

『君のような存在が必要なんだ』

 

 まだ僕は、その意味が分からないままだ。そして時が流れて、いつか望まれた罰を受けるのを待ち続けるままだ。【ワダツミ】に向ける刃は、僕のはずなんだ。

 

「僕に、そんな資格はない」

 

 罪に染まった僕に、必要とされることなんてない。

 

「僕が求めているのは――」

『――は、馬鹿だね』

 

 あの時言われた言葉。心配しないで。そんなこと、僕自身が一番知っているから。だからこそ――

 

「――君のためなら、僕はなんだって出来るから」

 

 僕が求めているのは、自分に染まった罪を償うことだけ。得るものも、失うものもない。

 僕は歩く。雨の雫を受けながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何も見えない。

 何も感じない。

 何も聞こえない。

 ……否、聞こえるのは水が落ちる音。

 

「……」

 

 そんな世界で、何も動かず、ただ座っている。

 

「……」

 

 彼はこの世界に入ってから、ずっと探している。この世界にしかない、求めているもの。

 

「……」

 

 ――ぽつん。

 

「……!」

 

 男は眼を開く。得るべきものを、得た。

 

 

 

「よっし!これからも修行三昧になっていくだろうな!」

 

 先ほど滝に打たれていた時とは打って変わって、快活そうな声を出す青年。長い髪を後ろに結び、和服よりの衣装を着るその姿は、一言で言うなら「侍かぶれ」というべきか。

 

「次はどこへ向かうか…ああそうだ、この街に行けばいいんだったな」

 

 そんな彼でも、近代的なものを用いて日々を過ごす人間である。手に持つスマホ然り。

 

「遅れた分は取り返すから心配すんなよ、所長」

 

 隣に置いていた刀型ドライバ【スイゲツロウ】を持ち上げ、肩を支えに歩き始める。青年は普段から楽しそうにしていた。自分を高める楽しみを見出して、思い当たる事を出来る限り試して。効果の有無なんて関係ない。やったことに意味がある。それが青年メイキョウの在り方なのだから。

 

「――寧ろ、あんたも満足出来るさ」

 

 口角を上げる。真っ直ぐ見つめるその視線に何を秘めるのか――本人が秘める以上、本人しか知らない。




水編です。明暗が激しい、色々と。
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